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交通事件で刑事裁判
交通事件で刑事裁判を受けることになった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
福岡県春日市の住宅街で車を走行していたAさんは、左の路地から出てきた自転車に気付くのが遅れ、Aさんの運転する車は自転車と衝突しました。
Aさんは、すぐに車を停め、転倒した相手方の様態を確かめたところ、負傷していたので救急車を呼びました。
相手方は救急搬送され、命に別状はないものの全治2か月の怪我を負っています。
Aさんは、福岡県春日警察署で取り調べを受けた後、福岡地方検察庁に呼び出しを受け出頭しました。
Aさんは、過失運転致傷で起訴され、福岡地方裁判所で刑事裁判を受けることになりました。
Aさんは、裁判所から弁護人を付けるよう言われたため、交通事件に詳しい弁護士を探しています。
自動車を運転して交通事故を起こし、人に怪我を負わせたり、死亡させてしまうと、多くの場合、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(通称、自動車運転処罰法)が適用されることになります。
自動車運転処罰法に規定される罪のなかでも、自動車を運転する上での注意義務に反した結果、事故を起こし、人を死傷させた場合には、「過失運転致死傷罪」が、自動車の危険な運転によって人を死傷させた場合には、「危険運転致死傷罪」が成立する可能性があります。
「過失運転致死傷罪」の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金です。
過失運転致傷事件では、運転行為の態様、相手方の怪我の程度、被害者との間に示談が成立しているか否かといった点により、不起訴となる可能性もありますし、略式手続に付され罰金が科されることもあります。
不起訴や略式起訴となれば、正式な刑事裁判を受けることはありません。
過失運転致傷事件で正式な刑事裁判となるのは、相手方が死亡している事件や被害者の怪我の程度が重い事件、飲酒運転に起因する事故やひき逃げ事件などといった単に過失運転致死傷罪だけでなく他の罪にも問われている事件などです。
一方、危険運転致死傷罪の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期20年以下の懲役であり、懲役刑の規定しかありません。
危険運転致死傷事件では、起訴されると正式な刑事裁判を受けることになります。
検察官が公判請求をすると、事件は公開の法廷で審理されます。
被告人は、公判廷に出頭しなければなりません。
原則、被告人がいないときは、開廷することができません。
もちろん、公判期日に出頭するだけでは、被告人は自身の権利・利益を十分に擁護することはできません。
被告人の権利・利益を代弁する、法律の専門家である弁護人による援助が欠かせません。
被告人は、いつでも弁護人を依頼することができます。
弁護人の出頭は、一般的には開廷の要件ではありませんが、死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁固に当たる事件を審理する場合には、弁護人がいなければ開廷することができません。
このような事件を、「必要的弁護事件」と呼びます。
交通事件の場合、過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪に問われることが多いのですが、これらの法定刑は重く、必要的弁護事件に該当します。
ですので、起訴後に弁護人がついていない場合には、裁判所は被告人に弁護人選任についてどうするか確認します。
弁護人には、被疑者・被告人が貧困などの理由で私選弁護人を選任することができない場合に、国がその費用で弁護人を付ける「国選弁護人」と、自分で選任し費用も自己負担する「私選弁護人」とがあります。
どちらも弁護人であることに違いはありませんが、自分で選択できるという点が大きな違いでしょう。
もちろん、私選弁護人を選任すれば、費用を自己負担することになるので、経済的負担は大きくなりますが、交通事件や刑事事件に強い弁護士であれば、安心して弁護を任せられます。
交通事件で公判請求されてお困りの方は、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120631-881で24時間受け付けております。
交通事件における身体拘束からの解放
交通事件における身体拘束からの解放に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
会社の仲間と酒を飲んだ後に、車を運転して帰宅しようとしていたAさんは、交差点で横断中の歩行者を見落とし、はねてしまいました。
飲酒運転がばれると思ったAさんは、倒れた歩行者を助けることなく、その場を後にしました。
しかし、後日、Aさんは、京都府舞鶴警察署の警察官に過失運転致傷、道路交通法違反の疑いで逮捕されることとなりました。
Aさんは、おおむね容疑を認めていますが、この先いつ釈放されることになるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)
交通事件における身体拘束
あなたが交通事故を起こし、何らかの罪が成立する場合、捜査機関が捜査を行う上で身体拘束が必要であると判断した場合、あなたの身柄は確保される可能性があります。
特に、人身事故や無免許、飲酒運転、ひき逃げ事件については、逮捕されることが多いでしょう。
多くが捜査機関に発覚したときに、その場で逮捕される(現行犯逮捕)されますが、ひき逃げであれば、その後の捜査の結果、犯人であることの証拠を一定程度収集した後に、逮捕令状を持って捜査機関が自宅などに来て逮捕することになるでしょう。
逮捕は、比較的短時間(最大で48時間)被疑者の身柄を拘束する強制処分のことですが、捜査を行う上で、逮捕後も引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があると判断される場合には、「勾留」に付される可能性があります。
勾留は、被疑者・被告人の身柄を比較的長期間拘束する強制処分です。
逮捕に引き続いての勾留を「被疑者勾留」と呼びます。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、検察に被疑者の身柄を証拠書類などと共に送ります。
検察に当該事件についての処理を引き継ぐ手続を「送致」と呼び、検察官が事件についての最終的な処分を決めます。
具体的に言えば、被疑者を起訴するか否かの判断であり、この判断は検察官だけが行うことができます。
検察官は、事件を受理すると、事件処理を行うのですが、通常は事件を受理してすぐに処理についての判断をすることはできませんので、引き続き捜査を行った上で最終的な処分を決定します。
そのために被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があると考える場合には、検察官は裁判官に対して当該被疑者についての勾留請求を行います。
検察官からの勾留請求を受けて、裁判官は、被疑者と面談をし、送られてきた書類を見た上で、当該被疑者を勾留に付すか否かを判断します。
裁判官が勾留の決定をなせば、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、被疑者は引き続き身体拘束を受けることになります。
勾留期間の延長が必要だと検察官が判断すれば、検察官は勾留延長の請求をし、請求を受けた裁判官は勾留延長の許否について判断します。
延長が認められれば、身体拘束の期間は最大で勾留請求の日から20日となります。
身柄事件では、検察官は身体拘束の期限内に起訴・不起訴の判断をします。
この期間中に判断が難しい場合には、最終的な処分を保留して被疑者の身柄を釈放することもあります。
検察官が公判請求をすると、被疑者は「被告人」となり、勾留は「被告人勾留」に切り替わります。
被告人勾留の勾留期間は、原則、公訴の提起があった日から2か月です。
特に継続の必要がある場合においては、1か月毎に更新されます。
逮捕から判決の言い渡しまで身体拘束が継続し、実刑判決となった場合には、そのまま刑務所に入ることになり、一度も外に出ることがないといった事態もあり得なくはないのです。
身体拘束からの解放に向けた活動
最終的にどのような結果になるにしろ、長期の身体拘束は、被疑者・被告人だけでなく、その家族にも多大なる不利益を生じるおそれがあるため、可能な限り避けるべきです。
弁護士は、できる限り早期に釈放となるよう、段階毎に身柄解放活動を行います。
1.捜査段階
逮捕された場合、勾留を回避すべく関係機関に働きかけます。
検察官に事件が送致されたタイミングで、意見書の提出や面会を行うなどして検察官に勾留請求しないよう働きかけます。
ここで、検察官が勾留請求をする必要がないと判断すれば、被疑者は釈放されることになります。
検察官が勾留請求を行った場合には、今度は裁判官に対して、意見書の提出や面談を通じて、勾留の要件を充たさないことを主張し、勾留をしないよう働きかけます。
裁判官が、検察官の勾留請求を却下すれば、即日被疑者は釈放されます。
裁判官が勾留の判断をした場合であっても、その裁判に対して不服申し立てを行います。
不服申し立てをすると、今度は、勾留の裁判をした裁判官ではない3人の裁判官が先の勾留の裁判に誤りがないか否かを判断することになります。
ここで先の裁判を取り消し、検察官の勾留請求を取り消す旨の判断がされると、被疑者の身体拘束は解かれることになります。
交通事件では、重大な罪(危険運転致死傷罪など)やひき逃げ事件では、勾留となるケースが多いですが、人身事故でない無免許・飲酒運転、被害が比較的軽い過失運転致傷事件では、家族などの監督が期待できる場合などは勾留を回避できる可能性は高いでしょう。
2.起訴後
捜査段階では身体拘束を解くことが難しい場合であっても、起訴後に保釈が認められて釈放される可能性もあります。
保釈は、保釈保証金の納付や一定の遵守事項を守ることを条件として、勾留の執行を一定期間猶予する制度です。
弁護士は、起訴されたタイミングで、すぐに保釈請求を行い、早期に釈放となるよう動きます。
ご家族が交通事件で逮捕され、身体拘束からの解放をご希望であれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
自転車事故でひき逃げ
自転車事故でひき逃げした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
兵庫県芦屋市内の四つ角で、通行中のVさは、右側から自転車を運転していたAさんとぶつかりました。
二人とも転倒し、Vさんは頭などを強く打って病院に搬送されました。
Aさんはそのまま自転車で逃走しており、兵庫県芦屋警察署は、ひき逃げ事件として捜査を開始しました。
事故から少しして現場に戻ってきたAさんは、警察が捜査をしている様子を見て不安になり、警察に出頭したほうがよいのではないかと考えています。
(フィクションです)
自転車事故
自転車を運転し、人にぶつかるなどして相手方に怪我を負わせたり、死亡させてしまった場合には、自動車による人身事故で適用される過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪は問題となりません。
過失運転致死傷罪及び危険運転致死傷罪が規定されている「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(いわゆる「自動車運転処罰法」)は、「自動車」の走行・運転行為に起因して、人を負傷・死亡させることを処罰の対象としており、ここでいう「自動車」というのは、道路交通法第2条第1項第9号に規定する自動車及び同項第10号に規定する原動機付自転車を指すのであって、「自転車」は含まれません。
それでは、自転車事故により人を負傷・死亡させた場合には、どのような罪に問われるのでしょうか。
多くの場合、刑法上の過失傷害、過失傷害致死、または、重過失致死傷が問題になります。
1.過失傷害罪
過失傷害罪は、「過失」により人を傷害した場合に成立する罪です。
暴行や傷害の故意がなく、不注意によって人に傷を負わせてしまうものです。
自転車事故の原因が、ちょっとしたよそ見などの場合は、過失傷害罪となるでしょう。
2.過失致死罪
過失致死罪は、過失によって人を死亡させた場合に成立する罪です。
上の過失傷害のように、不注意によって人を死亡させてしまうものです。
3.重過失致死傷罪
「重大な過失」により人に怪我を負わせたり死なせてしまった場合に成立する罪です。
こちらも、暴行や傷害の故意はなく、「重大な過失」の結果、人に傷を負わせたり死亡させて
しまう犯罪です。
「重大な過失」とは、注意義務違反の程度が著しい場合をいいます。
発生した結果の重大性、結果発生の可能性が大であったことは必ずしも必要ではありません。
自転車事故では、
・携帯電話で通話しながらの運転
・スマートフォンを操作しながらの運転
・イヤフォンをつけて音楽を聴きながらの運転
・ものすごいスピードで歩道を走っていた場合
・夜間に無点灯で走っていた場合
などが、重過失致死傷罪に問われる可能性が高いと言えます。
自転車事故でひき逃げ
自転車で人身事故を起こした場合、自動車とは異なり、過失運転致死傷罪又は危険運転致死傷罪は問題とはなりませんが、相手方を救護せず、警察にも報告せずに現場を後にする行為については、自動車と同様に、道路交通法違反に問われることになります。
道路交通法第72条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
この条文は、救護義務を当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員に課していますが、「車両等」には自転車などの軽車両も含まれます。
そのため、自転車事故であっても、救護義務・報告義務に違反すれば、道路交通法違反が成立することになるのです。
自転車事故であっても、相手方に怪我を負わせたにもかかわらず、現場から逃亡しているのであれば、逮捕される可能性はあると言えるでしょう。
自転車事故や自動車事故などの交通事件で対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご相談ください。
飲酒運転で交通事故を起こしたら
飲酒運転で交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府泉佐野市に住むAさんは、自宅で朝まで飲酒していました。
Aさんは、「酒が残っている感じはあるけど、どうせバレないだろう。」と思い、バイクで知人宅に向かうことにしました。
知人宅に向かう途中、Aさんのバイクは、信号待ちのために止まっていた車に追突してしまいました。
Aさんは、すぐにバイクを止め、前の車に駆け寄り運転手の安否を確認しました。
幸い、運転手に怪我はありませんでしたが、通報を受けて駆け付けた大阪府泉佐野警察署の警察官が呼気検査をしたところ、0.5mgのアルコールが検出されたため、警察官はAさんを道路交通法違反の容疑で現行犯逮捕しました。
(フィクションです)
先月、元アイドルが酒を飲んでバイクを運転したとして逮捕されるという事件がありました。
飲酒運転で検挙される方の多くが、「ちょっとそこまでだからバレないだろう。」、「事故さえ起こさなければ大丈夫。」などと飲酒運転を甘く見た結果、事故を起こしたり、警察による検問に引っかかったりして飲酒運転が発覚する、といった経緯を経ている傾向にあります。
飲酒運転に対する処罰
飲酒運転とは、一般的に、酒を飲んだ後に車などを運転することをいいます。
飲酒運転は、「道路交通法」という法律によって禁止されています。
道路交通法第65条
1 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
「酒気を帯びて」とは、社会通念上、酒気帯びと言われる状態をいうものであって、外見上認知できる状態にあることをいうものと理解されています。
本条は、酒気を帯びて車両等を運転することを禁止するものであり、この禁止に違反した場合、その違反が、「酒酔い運転」または政令数値以上の「酒気帯び運転」に当たるときに限って、罰則が設けられています。
本条は、政令数値未満である酒気帯び運転については、訓示規定にとどめており、これについては罰則が設けられていません。
①酒気帯び運転
道路交通法は、酒気帯び運転等の禁止の規定(道路交通法第65条1項)に違反し車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者について罰則を定めています。
「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態」というのは、血液1mlにつき0.3mgまたは呼気1lにつき0.15mgです。
これに該当する者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
②酒酔い運転
酒気帯び運転等の禁止(道路交通法第65条1項)の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態であった者についても、道路交通法において罰則が定められています。
「酒に酔った状態」というのは、①酒気帯び運転のように、アルコール保有についての基準値があるわけではなく、アルコールの影響によって運転に支障をきたしている状態のことをいいます。
当該状態であったか否かは、まっすぐ歩くことができるかどうか、呂律が回っていないか等、客観的にみてアルコールが原因で正常な判断・動作ができているかが判断されます。
酒酔い運転に対する罰則は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金であり、①酒気帯び運転よりも重くなっています。
酒酔い運転は、基準値にかかわらず、酒に酔った状態にあるか否かが問題となるため、理論上は、①酒気帯び運転に該当しない程度のアルコール保有量であっても、酒に弱い体質であるため足元がふらついていたり、呂律が回っていない場合には、酒酔い運転に該当することもあります。
飲酒運転で交通事故を起こしたら
飲酒運転それ自体についても上のような罪が成立する可能性がありますが、飲酒運転の結果、交通事故を起こしてしまった場合には、他の罪も成立することがあります。
①過失運転致死傷罪
自動車の運転上必要な注意を怠ったことにより、人を死傷させた場合に成立する罪です。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務を怠ることをいいます。
前方不注意や左右確認を怠るなどといったことが原因で交通事故を起こし、人を死傷させた場合には、本罪が成立する可能性があります。
飲酒運転で人身事故を起こし、人身事故について過失運転致死傷罪が成立する場合、道路交通法違反(酒気帯び運転/酒酔い運転)との2罪が成立しますが、両罪は併合罪となり、法定刑は刑の長期を罪が重い方の刑期の1.5倍とします。
②危険運転致死傷罪
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行い、よって、人を死亡または負傷させる罪です。
「正常な運転が困難な状態」とは、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることをいいます。
正常な運転が困難な状態であることの認定は、呼気検査等の結果、直立・歩行能力や事故直後の言動等の鑑識結果、飲酒事実の裏付け、事故の態様、事故前後の運転状況や運転者の状況についての目撃者の供述、本人の供述等を総合的に判断して行われます。
本罪の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役です。
また、アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた場合には、12年以下の懲役が、人を死亡させた場合には15年以下の懲役が科される可能性があります。
危険運転致死傷罪の成立には、酒酔い運転などに該当していることが前提であるため、道路交通法違反は別途成立しません。
以上のように、飲酒運転自体に対しても厳しい罰則が設けられていますが、飲酒運転で交通事故を起こした場合には、より厳しい罰則が科されることになります。
飲酒運転で交通事故を起こしてしまい、刑事事件として立件されたのであれば、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
交通事故における刑事処分
交通事故における刑事処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府松原市の高速道路で、前方を走行していた乗用車に追突し、乗用車に乗っていた男性に重傷を負わせたとして、大阪府高速道路交通警察隊は、車を運転していたAさんを現行犯逮捕しました。
Aさんは、法定速度を大幅に超えて走行していたとみられており、警察は危険運転致死傷も視野に入れて捜査を進めています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、交通事故を起こした場合の刑事処分について詳しく知りたいと思い、すぐに刑事事件に詳しい弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです)
交通事故を起こしたときに課される処分と言えば、違反点数が付けられたり、免許の停止や取消しなどについて思い出される方が多いのではないでしょうか。
これらの処分は、行政機関がその権限を作用させる行政処分です。
交通事故を起こし、人に対して、死亡や傷害などの結果を生じさせる事態が発生した場合には、行政処分だけでなく、刑事罰としての刑事処分が加害者に対して課せられることがあります。
刑事処分は、犯罪に対して刑罰を科する処分であり、人を死亡させたり、怪我を負わせたりする交通事故を起こした場合には、犯罪が成立し、被疑者・被告人として刑事手続に付される可能性があるということです。
人を死亡・負傷させるような交通事故に関連して問題となる犯罪は、危険運転致死傷罪、そして、過失運転致死傷罪です。
1.危険運転致死傷罪
危険運転致死傷罪は、飲酒や薬物を使用して危険な状態で自動車を運転した結果、人を死傷させた場合に成立し得る犯罪です。
危険運転致死傷罪の対象となる運転行為は、以下の8つです。
①アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③その進行を制御する技術を有しないで自動車を走行させる行為。
④人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為。
⑥高速自動車国道または自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これを著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止または徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為。
⑦赤信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役、危険運転致死罪は1年以上の有期懲役が定められており、実際にも重い刑が科される傾向にあります。
また、危険運転致死傷罪より程度が軽微である飲酒・薬物・病気に起因する運転についても刑事処罰の対象となります。(準危険運転致死傷罪)
①アルコールまたは薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、そのアルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷または死亡させた場合。
②自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、その病気の影響により正常な運転が困難な状況に陥り、人を死傷させた場合。
これらに該当する場合、人を負傷させた者は12年以下の懲役、人を死亡させた者は15年以下の懲役を科されることになります。
2.過失運転致死傷罪
自動車の運転の際に、その過失によって、人を死傷させた場合に成立し得る犯罪です。
ここでいう「過失」とは、法律上の注意義務をいうのであって、その内容については、「結果の発生を予見する可能性とその義務及びその結果の発生を未然に防止する可能性とその義務」が必要となります。
前方不注意や左右確認を怠ったなど、運転をする上で必要とされる注意を怠った結果、人を死傷させてしまったときに過失運転致死傷罪が成立します。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となっており、危険運転致死傷罪よりも軽く定められています。
危険運転致死傷事件においては、刑事裁判となることが多く、加害者は被告人として法廷に立ち審理されることになります。
刑事裁判では、証拠の収集によって結果が左右されると言っても過言ではありません。
無罪を主張する場合には、主張を裏付ける客観的な証拠の収集が重要です。
一方、有罪を認める場合には、情状について争うことになりますが、被告人に有利な犯情やその他の情状を主張し、寛大な処分を求めます。
過失運転致死傷事件の場合、内容によっては不起訴処分となることもありますし、略式手続で事件を処理することもあります。
ただ、被害や事故の程度により、公判請求され、刑事裁判を受けることも少なくありませんので、罪名の如何を問わず、人身事故で刑事手続に付された場合には、弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故による刑事事件にも対応する法律事務所です。
交通事故を起こし、被疑者・被告人として刑事手続に付され、対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
無免許・酒気帯びで交通事故
無免許・酒気帯びで交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
深夜、埼玉県行田市の道路を酒気を帯びたまま乗用車を運転していたAさんは、前方を走行していたバイクに衝突し、転倒させてしまいました。
しかし、Aさんは、無免許かつ飲酒運転であることが発覚することを恐れ、被害者の安否を確認することなく、そのまま現場を後にしました。
後日、埼玉県行田警察署は、道路交通法違反および自動車運転処罰法違反の疑いでAさんを逮捕しました。
(フィクションです)
無免許運転で事故を起こした場合
無免許運転とは、公安委員会の運転免許を受けずに、自動車または原動機付自転車を運転することをいいます。
無免許運転には、これまで一度も有効な運転免許証の交付を受けずに運転する行為だけでなく、過去に有効な免許証は交付されていたものの、免許の取り消し処分を受けた人が運転する行為や免停中に運転する行為、そして運転資格のない自動車を運転する行為、運転免許の更新をせずに運転する行為も含まれます。
無免許運転については、道路交通法第64条1項において禁止されており、無免許運転の禁止違反に対する罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
他方、無免許運転をし、人身事故を起こした場合には、自動車運転処罰法が適用されます。
まず、自動車などを運転し、人を負傷させた場合、自動車運転処罰法の定める過失運転致傷罪に問われる可能性があります。
これは、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立する罪です。
前方不注意による人身事故は、多くの場合、過失運転致死傷罪が成立します。
また、危険運転行為を行ったことにより、人を死傷させた場合には、危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。
これらの罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転であった場合には、刑が加重されます。
Aさんは、過失運転致傷罪に問われていますが、過失運転致傷罪の法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですが、無免許運転により刑が加重されるため(無免許運転過失致傷)、法定刑は10年以下の懲役となります。
酒気帯び運転で事故を起こした場合
道路交通法第65条1項は、酒気を帯びて車両等を運転することを全面的に禁止しています。
これに違反して車両を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者については罰則の対象となります。
具体的には、血液1mlにつき0.3mg又は呼気1lにつき0.15mgが基準となります。
酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
アルコール濃度に関係なく、飲酒によって正常な動作や判断ができないおそれがある状態で運転した場合には、酒酔い運転として、酒気帯び運転の罰則より重い5年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
酒気帯び運転で人身事故を起こした場合には、道路交通法違反(酒気帯び運転)に加えて、自動車運転処罰法の過失運転致傷罪に問われることになります。
また、アルコールの影響により正常な運転をした場合には、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
その上、そのまま現場を後にした場合
Aさんは、無免許・酒気帯び運転で人身事故を起こした上、現場から逃走しています。
いわゆる「ひき逃げ」です。
道路交通法は、交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護儀、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない、という救護措置義務を定めています。
車両等の交通により人の死傷が生じていることを認識しつつ、救護義務を果たさなかった場合、その交通事故が当該運転手の運転に起因するものであれば、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が、運転に起因するものでなければ、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
加えて、救護措置義務が生じ必要な措置をとった場合に、当該車両等の運転手は警察官に事故を報告する義務が課されており、これに対する違反の法定刑は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。
さて、Aさんは、無免許、酒気帯び運転の上、前方不注意によって人身事故を起こしたものの、被害者を救護することなく現場を後にしました。
その結果、道路交通法違反(救護義務・報告義務違反、酒気帯び運転)及び自動車運転処罰法違反(無免許過失運転致傷)に問われています。
これら3つの罪のうち、酒気帯び運転は無免許運転過失致傷に吸収され、救護義務・報告義務違反と無免許運転過失致傷との2罪は併合罪の関係となり、各罪中最も重い犯罪に対する刑罰に一定の加重を施して、これを併合罪の罪とします。
具体的には、併合罪のうちの2個以上の罪について、有期懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。
つまり、最も重いのは、無免許運転により加重された過失運転致傷罪(無免許過失運転致傷:10年以下の懲役)であり、結果として法定刑は、15年以下の懲役となります。
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交通事件と交通反則通告制度
交通反則通告制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
神奈川県茅ヶ崎市の国道を自家用車で走行していたAさんは、神奈川県茅ヶ崎警察署の警察官に停止を求められました。
法定速度を25キロオーバーしていたとして、交通切符の交付を受けたのですが、Aさんは25キロもオーバーしていた認識はなく、反則金の納付を拒否し、警察署にもその旨を主張しました。
反則行為を争いたいAさんでしたが、このまま反則金納付を許否した場合、どのような手続となるのか心配になり、翌日、交通事件にも対応する弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
交通違反をした際に支払う「反則金」を、刑罰である「罰金」と混同されている方が多くいらっしゃいますが、反則金と「交通反則通告制度」に基づく行政処分で科せられる過料のことを指し、罰金とは、刑事処分の一種です。
交通反則通告制度とは、自動車や原動機付自転車の運転者がした違反行為のうち、反則行為については、一定期間内に郵便局又は銀行に反則金を納めることによって、刑事裁判、少年の場合は家庭裁判所の審判を受けることなく事件が処理される制度のことです。
自動車による交通が増加し、道路交通法違反事件の数が飛躍したことで、検察庁や裁判所の業務に負担をかけることになったため、軽微な交通違反については刑事手続によらず処理することとし、交通反則通告制度が設けられました。
反則行為が発覚すると、交通反則告知書(通称、交通切符、青切符)と反則金仮納付書が交付されます。
告知を受けた日の翌日から起算して7日以内に反則金を納付すれば、納付をもって手続は終了します。
他方、7日以内に反則金を納付しない場合には、通告センターに出頭し、通告書及び納付書の交付を受ける、出頭できなかった場合には、通告書及び納付書が送付されるので、通告を受けた日の翌日から起算して10日以内に反則金を納付することによって手続を終了させることができます。
10日以内に反則金を納付しなかった場合には、刑事手続に移行し刑事裁判、少年の場合には家庭裁判所の審判を受けることになるので留意が必要です。
反則金を納付すれば、刑事手続に移行することなく手続が終了するため、前科が付くことはありません。
ちなみに、前科とは、過去に有罪判決を受けたという事実のことを指します。
無免許運転、飲酒運転、反則行為の結果交通事故を起こした場合には、交通反則通告制度は適用されません。
反則行為を認めている場合、そして反則金を納付することによって刑事手続を避けたい場合には、交通反則通告制度に従い反則金を納付するのがよいでしょう。
しかし、反則行為を認めないのであれば、刑事裁判で争うことになります。
最初に警察官から交付される反則金仮納付書に従って納付せず、次の交付される納付書についても同様に対応した場合には、刑事手続に移行することになり、今度は検察庁から出頭を要請されます。
検察庁では、取調べを受けた上で、略式手続を提示されることになりますが、これについても拒否した場合には、検察官は公判請求をすることになり、刑事裁判がひらかれます。
検察官が、嫌疑不十分での不起訴又は起訴猶予での不起訴となれば、事件は終了となります。
そうでなければ、略式手続を断ると、正式な裁判となります。
反則行為を争う場合には、交通事件にも対応する刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めて刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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危険運転:制御することが困難な高速度
制御することが困難な高速度による危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、東京都小平市の道路を自車で走行しているとき、制限時速60キロとされ、左に大きく湾曲した道路(限界旋回速度は時速100キロ)に差し掛かったものの、速度を出しすぎていたので曲がり切れず、右に逸走して対向車線を走行していた車両に衝突し、運転手を負傷させてしまいました。
Aさんは、警視庁小平警察署に危険運転致傷の疑いで逮捕されました。
(フィクションです)
危険運転致死傷罪
従前、刑法第208条の2に規定されていた「危険運転致死傷罪」における悪質かつ危険な一定の運転行為と同等に通行禁止道路において重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為により人を死傷させたことも「危険運転致死傷罪」として、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(いわゆる、「自動車運転死傷処罰法」。)が規定しています。
「危険運転致死傷罪」は、次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処せられます。
①アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接見することとなる方法で自動車を運転する行為。
⑥高速自動車国道において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為。
⑦赤信号等を殊更無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑧通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
これら①から⑧に該当する行為をしたことによって、人を死傷させた場合に、危険運転致死傷罪が成立することになります。
制御することが困難な高速度とは
危険運転致死傷罪の対象となる行為、「制御することが困難な高速度」で自動車を走行させる行為における「制御することが困難な高速度」とは、どの程度のものか、という点が問題となります。
ここでは、「湾曲した道路」について過去の裁判でどのように解釈されてきたのかについてご紹介します。
◇限界旋回速度を超えた速度での進行◇
平成22年12月10日の東京高等裁判所の判決によれば、「進行を制御することが困難な高速度」とは、「速度が速すぎるため自動車を道路の状況に応じて進行させることが困難な速度をいい、具体的には、そのような速度での走行を続ければ、道路の形状、路面の状況などの道路の状況、車両の構造、性能等の客観的事実に照らし、あるいは、ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになるような速度をいうと解される。」としています。
この点、道路が湾曲していた場合については、どのような速度を指すのかが問題となります。
一般的には、その湾曲した道路の限界旋回速度(自動車がカーブに沿って走行することができる最高速度)を超えて走行した場合、車輪が遠心力により横滑り等を起こし、運転操作が困難になるため、制御が困難な速度と言えます。
先の東京高等裁判所の判決で示された各要素も併せて検討されることとなりますが、基本的には、限界旋回速度を超えて走行している場合、ハンドル操作等のミスによって事故を起こしたのであれば、進行を制御することが困難な高速度での走行による危険運転致死傷罪が成立するものと考えらるでしょう。
◇限界旋回速度を超えてはいないが、それに近い速度での進行◇
限界旋回速度を超えることはないものの、それに近い速度で走行した場合について、上の東京高等裁判所の判決は、「被告人車の速度は、本件カーブの限界旋回速度を超過するおのではなかったが、ほぼそれに近い高速度であり、そのような速度での走行を続ければ、ハンドル操作のわずかなミスによって自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになるような速度であったというべきであるから、進行を制御することが困難な高速度に該当すると認められる。」とし、平成21年10月20日の福岡高等裁判所の判決は、「本件カーブの限界旋回速度に近い速度で進行していた本件車両について、本件カーブに沿って適度にハンドルを右に切り、その終点に向けてそれまで右に切っていたハンドルをタイミングよく左に戻していくという操作や対向車線にはみ出していたのを自車線内に戻すために、それまで右に切っていたハンドルを、単に戻すだけでなく、横滑りの状態を引き起こさないように適度に左に切り返す捜査は、いずれもわずかなミスも許されない極めて繊細で高度な判断と技術を要すると考えられ、したがって、本件車両の走行は、刑法第208条の2第1項後段[当時]所定の『進行を制御することが困難な高速』であったと認められる。」としています。
このように、限界旋回速度に近い速度での進行は、わずかなミスをも許されないような状況に追い込まれるため、この限界旋回速度を基準にして、超える場合だけでなく、それに近い速度であっても、「進行を制御することが困難な高速度」と認定される可能性があります。
◇限界旋回速度未満であるが、制限速度を超える速度での進行◇
限界旋回速度よりは遅いものの、制限速度は超えている場合、制限速度は、「進行を制御することが困難な高速度」を考慮する上で、どのように位置付けられるのでしょうか。
過去の判決には、限界旋回速度を基準とせず、制限速度をはるかに上回る高速度であることが制御不能を来す原因の一つとして考えられ、「進行を制御することが困難な高速度」を認めたものがありますが、必ずしもすべての判決で「進行を制御することが困難な高速度」を検討する際に制限速度超過が重視されているわけではありません。
平成20年1月17日の松山地方裁判所の判決は、最高時速が時速50キロとされた道路を時速約80キロで走行し、右方の湾曲した道路に沿って走行することができず、左斜め前方に逸走させたという事案において、事故現場の限界旋回速度が時速約93ないし120キロであったところ、限界旋回速度の下限を約13キロも下回っていること、そして時速約70キロで走行していた車両が存したことなどが考慮され、「進行を制御することが困難な高速度」とは認めませんでした。
「制御することが困難な高速度」での危険運転致死傷罪に問われている場合には、「進行を制御することが困難な高速度」で運転する行為により、ハンドル操作等のミスが生じたため、人を死傷させてしまったか否かについて、科学的な根拠に基づいて争います。
危険運転致死傷事件における弁護活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件をはじめとした刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
危険運転や交通事故を起こし対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
駐車場での当て逃げ
駐車場での当て逃げ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都目黒区のスーパーマーケットでの買い物を終えたAさんは、駐車場に停めていた車を発進させました。
Aさんがハンドルを右にきって駐車場を出ようとしたところ、前に駐車してあった車の前方に当ててしまいました。
Aさんは、「たいしたことないだろう。ここは駐車場だから、道路上での事故ではないから、警察に通報しなくてもいいだろうし。」と思い、その場を後にしました。
数日後、警視庁碑文谷警察署の警察官が、Aさんの留守中にAさんの自宅を訪ね、「先日、〇×マーケットの駐車場で当て逃げ事件が発生したのですが、被害に遭った車のドライブレコーダーにAさんの車が映っていましたので、お話を伺えればと思いまして。」とAさんの妻に言いました。
Aさんは留守だったため、警察官は「また日を改めて伺います。」と言って帰って行きました。
妻から話を聞いたAさんは、素直に出頭しようと思っていますが、その前に今後の流れについて弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
駐車場での当て逃げ事件は、残念ながら少なくありません。
人身事故ではなく物損事故であることや、被害に遭った車の持ち主がその場にいないことが多いので、「バレないだろう。」と多寡を括り、そのまま駐車場を後にするケースが多いようです。
また、「駐車場内の事故は交通事故ではない。」と思われている方も多いようですが、「駐車場内での事故」は、「交通事故」として処理されないのでしょうか。
道路交通法における「道路」とは
「交通事故」というのは、陸上・海上・航空交通における事故の総称をいいますが、ここでは道路上の交通事故(道路交通事故、自動車事故)を指すものとします。
交通事故の定義を定める主要な法律は、「道路交通法」です。
道路交通法第67条2項によれば、交通事故とは、「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」をいいます。
道路交通法上の「車両」には、「自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバス」が含まれます。
「交通」とは、道路、すなわち歩道や路側帯をも含めた道路上における交通のことをいいます。
ですので、道路以外の場所で車両等の走行により人が死傷し、物が損壊したとしても、交通事故とはならないのです。
それでは、道路交通法における「道路」とは何を指すのでしょうか。
道路交通法第2条1項1号は、「道路」の意義について、「道路法第2条第1項に規定する道路、道路運送法第2条8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう」と定義付けています。
「道路法第2条1項に規定する道路」とは、一般交通の用に供する道で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道をいい、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等道路と一体となってその効用を全うする施設又は工作物及び道路の付属物でその道路に附属して設けられているものを含むとしています。
「道路運送法第2条8項に規定する自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で、先の道路法による道路以外のものをいいます。
そして、「一般交通の用に供するその他の場所」とは、道路法第2条1項に規定する道路及び道路運送法第2条8項に規定する自動車道を除いた場所において、現実の交通の有無をとらえてこの法律上の道路とするものをいいます。
事実上道路の体裁をなしてい交通の用に供されている私道や、道路の体裁はなしてはいないけれども、広場、大学の構内の道路、公園内の通路といった、一般交通の用に供され開放され、かつ、一般交通の用に客観的にも使用されている場所を指します。
駐車場というのは、基本的に私有地に当たりますが、不特定多数の人、車両等が交通のために利用している場所であれば、道路の形態を備えていなくとも、「一般交通の用に供するその他の場所」に当たり、道路交通法における「道路」に該当することになります。
そのため、「駐車場」での事故は、交通事故として処理される場合もあるのです。
交通事故を起こした場合には、当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員は、
①直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならず(救護措置義務)、
②救護措置義務を生じ、必要な措置をとった場合に、当該車両等の運転手は、警察官に対して事故について報告しなければなりません(事故報告義務)。
物損事故の場合、負傷者が出ていないため、警察に報告する義務がないと誤解されていることが多いのですが、事故報告義務は、車両等の交通により人の死傷があったときはもとより、単に物の損壊があっただけの場合においても、その損壊の大小を問わず、また、その交通事故により交通秩序が混乱したかどうか、すでに負傷者が救護されたかどうか等の具体的状況のいかんに関係なく、当該車両等の運転者は警察官に報告しなければなりません。
よって、駐車場内で物損事故を起こし、そのまま立ち去った場合には、道路交通法違反が成立し、刑事責任に問われる可能性があります。
人身事故のひき逃げ事件と比べて、当て逃げ事件においては、身体が拘束された上で捜査がされる可能性は低いでしょう。
しかし、被疑者として取調べを受けることになりますので、取調べ対応や被害者への謝罪・被害弁償等、事件を穏便に終わらせるためにも弁護士に相談の上対応するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
交通事故を起こしてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
自転車の交通事故
自転車の交通事故で刑事事件となった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
出前の配達業務を自転車で行っていたAさんは、京都府城陽市を走行中、歩行者のVさんとぶつかり、Vさんに怪我を負わせてしまいました。
事故後、すぐに目撃者が警察に通報し、京都府城陽警察署の警察官が現場に駆け付けました。
Aさんは、逮捕されることなく、在宅で捜査を受けることになり、警察からは「後日また連絡する。」と言われました。
Aさんは、Vさんとの示談交渉や今後の刑事手続の流れについて弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
自転車の交通事故
外出自粛が求められるようになり、以前より出前の需要が増えています。
それに伴い、配達員による事故も増えており、特に自転車の交通事故が増加傾向にあります。
自動車で人身事故を起こした場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」における過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪が適用されるのですが、自転車を走行中に人身事故を起こした場合、どのような罪が成立するのでしょうか。
(過失傷害)
第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(過失致死)
第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
自転車を運転し、人に怪我を負わせてしまった場合には、刑法の過失傷害、又は重過失傷害に問われることになります。
過失傷害・過失致死
傷害罪の成立には、「故意」の存在が必要となりますが、「過失」によって人に怪我を負わせたり、死亡させてしまった場合には、過失傷害や過失致死が成立する可能性があります。
過失傷害罪の法定刑は、30万円以下の罰金または科料であり、被害者等が行為者を告訴した場合のみ起訴が可能という親告罪となっています。
また、過失致死罪の法定刑は50万円以下の罰金にとどまります。
重過失致死罪
「重大な過失」によって人を死傷させた場合には、重過失致死罪に問われる可能性があります。
ここでいう「重大な過失」とは、注意義務違反の程度が著しい場合をいいます。
発生した結果の重大性、結果発生の可能性が大であったことは必ずしも必要とされません。
スマートフォンを操作してのながら運転、イヤホンで音楽を聞きながらの運転、スピードを出しての運転などは、「重大な過失」に当たるでしょう。
上の事例は、Aさんは出前の宅配業務を自転車で行っている最中に、歩行者とぶつかったというものですが、Aさんがスピードを出し周囲への注意を怠っていたために起こったものであれば、重大な過失が認められ、重過失致死傷罪が成立すると考えられます。
自転車の交通事故で弁護活動
自転車による交通事故も、自動車による交通事故と同様に、被害者への対応が最終的な刑事処分の結果に大きく影響します。
そのため、自転車の交通事故においても、被害者への被害弁償や示談に向けた活動は重要です。
示談交渉は、当事者間で直接することも可能ですが、当事者同士での話し合いでは、感情的になり交渉が難航することが多いため、弁護士を介して行うことが一般的です。
弁護士は、被害者の気持ちに配慮しつつ、示談のメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、示談締結に向けて粘り強く交渉していきます。
示談で、加害者に処罰を求めない旨の条項を入れることが出来れば、起訴猶予となる可能性は高まります。
このような活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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