自動車保険(自賠責保険と任意保険)
【自動車保険と刑事責任】
交通事故の当事者・関係者になると、必ず問題になるのが自動車保険です。
自動車保険の保険金による補償・賠償は、交通事故の被害者救済とともに加害者の刑事責任・刑事処罰を軽減する事情になるからです。
また、後述する自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)または自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)に加入せずに自動車を運行した場合には、違反点数6点の交通違反として免許停止処分になるだけでなく、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰に処せられます(前科がつきます)。
このページでは、交通事故の被害者救済とともに加害者の刑事責任にも大きく影響する自動車保険について解説します。
【自賠責保険と任意保険の解説】
1 自動車保険について
自動車保険には大きく分けて自動車損害賠償責任保険いわゆる自賠責保険と任意保険の2種類があります。
2 自賠責保険とは
自賠責保険とは、交通事故による被害者を救済するため、交通事故の加害者が負うべき経済的な負担の補てんによる基本的な対人賠償確保を目的として、自動車損害賠償責任保険法によって原動機付自転車とオートバイを含む全ての自動車に加入が義務付けられている保険です。
任意保険との違いから強制保険とも呼ばれています。
3 任意保険とは
任意保険とは、自賠責保険では補償されない損害を補うために、原動機付自転車とオートバイを含む自動車の所有者が任意に加入する保険のことです。
任意保険に加入するかどうかは自動車所有者の意思に任されていますが、実際上、日本では多くの自動車所有者が任意保険に加入しています。
任意保険における補償対象・補償限度額などの補償内容は、各保険会社の保険商品ごとに異なります。
【自賠責保険と任意保険の違い】
法律上加入が義務付けられる自賠責保険と加入が自動車所有者の意思に委ねられている任意保険では、保険の性質及び目的の違いから以下のような違いが見られます。
1 補償対象
保険による補償対象となる交通事故態様は、自賠責保険の場合、人身事故(対人賠償)のみであり自損事故や物損事故においては一切補償がありません。
任意保険の場合は、人身事故だけでなく物損事故や自損事故も補償対象となるものがほとんどです。
2 補償(保険金)限度額
補償限度額については、自賠責保険の場合、支払われる保険金額の上限が法律で定められています。
具体的には、傷害による損害は120万円、後遺障害による損害は後遺障害の等級に応じて75万円から4000万円、死亡事故による損害は3000万円が限度額となります。
任意保険の場合は、基本的に自賠責保険による補償限度額を超えた損害について補償されることになります。
限度額は保険契約の内容に応じて決まります。
3 示談交渉
示談交渉については、自賠責保険の場合、加害者本人が自分で示談交渉を行わねばなりません。
任意保険の場合、保険会社が加害者の代わりに示談交渉をする示談代行制度が付くことが多くなっています。
4 過失割合による減額(過失相殺)
自賠責保険では、対人賠償確保による交通事故の被害者救済という目的から、被害者に大きな過失があった場合にのみ一定の割合で賠償金(保険金)が減額されます。
任意保険では、被害者の過失割合に応じて、加害者の賠償額が減少・免除されることになります。
5 免責事由
任意保険の約款では、保険会社が保険金支払義務を免れる免責事由が細かく規定されています。
自賠責保険では、対人賠償確保による交通事故の被害者救済という目的から、重複契約の場合を除き、保険契約者又は被保険者の悪意によって生じた損害についてのみ免責事由とされています。