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【事例紹介】白タク取り締まりで職質を受け逃走し逮捕された事例①

2024-03-13

【事例紹介】白タク取り締まりで職質を受け逃走し逮捕された事例①

タクシー

白タクの疑いで職務質問を受け、その場から逃走したとされる容疑者が道路運送法違反の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

無許可で外国人観光客を有料で自家用車に乗せたとして、警視庁交通捜査課は12日、中国籍の男性(36)(中略)を道路運送法違反(有償運送行為の禁止)容疑などで逮捕したと発表した。男性は2月、警視庁による「白タク」の一斉取り締まりの際、羽田空港で警察官に職務質問を受け、その場から逃走していた。
逮捕容疑は2月8日、国の許可を得ずに、神奈川県箱根町のホテルから羽田空港まで、台湾の観光客5人を車で送迎したなどとしている。「生活費のためにやった」と容疑を認めているという。
(3月12日 毎日新聞 「観光客相手に「白タク」か 羽田空港で職質され逃走した男性を逮捕」より引用)

白タク

白タクとは、白いナンバープレートのタクシーの略称です。
タクシー業務を行う際は届け出を行い許可をもらう必要があります。
営業を許可されているタクシーは地域限定のナンバープレートなどを付けている場合を除いて緑色のナンバープレートを付けています。
白タクはタクシー営業の許可を得ていないわけですから、白タクは違法ということになります。

道路運送法第4条1項
一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。

タクシーの営業はこの一般旅客自動車運送事業にあたります。
ですので、タクシー営業を行う場合には国土交通大臣の許可が必要であり、許可なくタクシー営業を行う白タク道路運送法違反にあたる可能性が非常に高いです。
白タクを行って道路運送法違反で有罪になった場合には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。(道路運送法第96条1号)

今回の事例では、容疑者が無許可で外国人観光客を有料で車に乗せたとされています。
実際に容疑者が許可を得ずにタクシー営業を行っていたのであれば、白タクにあたると考えられ、道路運送法違反が成立するおそれがあります。

以上のように、白タクは違法であり、懲役刑や罰金刑を科される可能性があります。
弁護士に相談をすることで、不起訴処分執行猶予付き判決を得られる可能性がありますから、白タクなどの道路運送法違反事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

次回のコラムでは、逮捕された方の釈放に向けた弁護活動についてご紹介します。

【事例紹介】白タク行為をして逮捕された事例

2023-12-27

【事例紹介】白タク行為をして逮捕された事例

取調べを受ける男性

白タク行為をしたとして、道路運送法違反の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

料金を取って観光客を自家用車で運ぶ「白タク」行為をしたとして、警視庁は中国籍の無職の男(30)=埼玉県川口市=を道路運送法違反(有償運送行為)の疑いで逮捕し、14日に発表した。「生活費のためにやった」と容疑を認めているという。
新宿署によると、男は6月29日、東京都港区のホテルから銀座を経由してもとのホテルまで1700人民元(約3万4千円)で運ぶ契約のもと、中国人2人を自家用車に乗車させた疑いがある。
(後略)
(12月14日 朝日新聞デジタル 「白タク容疑で中国籍の男を逮捕 「友達」と説明、客は「知らない」」より引用)

白タクって何?

今回の事例では、容疑者の男が白タク行為をしたとして、道路運送法違反の容疑で逮捕されているようです。
白タク行為とはいったいなんなのでしょうか。

普段街中で走っているタクシーのナンバープレートの色は何色かご存知でしょうか。

通常、街中で走っているタクシーのナンバープレートの色は緑色です。

ですが、ごくまれに普通の白色のナンバープレートをつけたタクシーを見かけることがあるかもしれません。
こういった白色のナンバープレートをつけたタクシーを白タクといいます。

白タクはなぜ違法?

白タク行為でなぜ逮捕されるの?と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
実は、ナンバープレートの色は、車の使用用途などによって異なっています。

多くの人が思い浮かべるナンバープレートの色は、白色ではないでしょうか。
白色のナンバープレートは軽自動車以外の自家用車につけられます。
また、タクシーなどにつけられている緑色のナンバープレートは、旅客自動車運送事業など、人を運送する自動車につけられます。
このように、何に使用するかや車の種類によって、ナンバープレートの色は分けられています。

道路運送法第4条1項では、「一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。」と規定しています。

ですので、一般旅客自動車運送事業にあたるタクシーの経営を行うには、国土交通大臣の許可を得る必要があります。
国土交通大臣から一般旅客自動車運送事業経営の許可を得た場合には、緑色のナンバープレートになるため、白のナンバープレートをつけている白タクは許可を得ずに一般旅客自動車運送事業経営を行っていることになり、道路運送法違反が成立する可能性が高いです。

今回の事例の容疑者が、報道のとおり、東京都港区のホテルから銀座を経由してもとのホテルに行くまでの運送費としてお金を取り、かつ、一般旅客自動車運送事業の許可を得ていないといった白タク行為を行ったのであれば、容疑者は道路運送法違反に問われる可能性があります。

白タク行為を行い、道路運送法違反で有罪になった場合には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることになります。(道路運送法第96条1項)

逮捕されたら

刑事事件では、逮捕された後に勾留の判断が行われます。
勾留が決定してしまうと、延長も含めて最長で20日間勾留されることになります。
この間は仕事には行けませんし、逮捕後に容疑者自らが職場に連絡をすることもできないため、長期間無断欠勤することになる可能性があります。
また、家族が体調不良などを理由に代理で欠勤の連絡をした場合であっても、勾留が20日間にも及ぶとごまかしきれない可能性が高く、職場に逮捕された事実を知られてしまうおそれがあります。

弁護士は勾留決定前に検察官や裁判官に対して、意見書を提出することができます。
意見書で証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを訴えることで、釈放を認めてもらえる可能性があります。
この意見書勾留が決定する前までに提出をしなければなりません。
勾留逮捕後72時間以内に判断されるため、逮捕後早い段階で提出を行う必要があります。

在留資格に影響も

今回の事例の容疑者は中国籍だと報道されています。
外国籍の方で刑事事件を起こしたときは在留資格などに影響がでないかどうかご不安な方もいらっしゃるかと思います。
実刑判決が下されることで、在留資格などに影響が出たり、強制退去になってしまうおそれがあります。
弊所には、行政書士も在籍しておりますので、刑事事件の弁護活動と併せて、在留資格などに対してのサポートも行えます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
刑事事件に精通した弁護士に相談をすることでより良い結果を得られるかもしれません。
白タクにより道路運送法違反の容疑をかけられている方、外国籍で何らかの犯罪の疑いをかけられている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までご連絡ください。

【事例紹介】タクシーでハトをひいて逮捕された事例

2023-12-20

【事例紹介】タクシーでハトをひいて逮捕された事例

無保険状態で事故を起こし、途方に暮れる男性

東京都新宿区の路上でタクシー運転手がタクシーでハトをひいたとして逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

東京都新宿区の路上で、運転するタクシーでハト1羽をひいて殺したとして、警視庁新宿署は、鳥獣保護法違反の疑いで、(中略)タクシー運転手(中略)を逮捕した。署によると、「道路は人間のもので避けるのはハトの方だ」と供述している。
逮捕容疑は11月13日、新宿区西新宿の路上で、カワラバト1羽をひいて殺したとしている。
(12月5日 産経新聞 「「道路は人のもの」…ハトひき殺した疑い、タクシー運転手を逮捕」より引用)

鳥獣保護法とハト

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律第8条
鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 次条第一項の許可を受けてその許可に係る捕獲等又は採取等をするとき。
二 第十一条第一項の規定により狩猟鳥獣の捕獲等をするとき。
三 第十三条第一項の規定により同項に規定する鳥獣又は鳥類の卵の捕獲等又は採取等をするとき。

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(以下、「鳥獣保護法」といいます。)第8条では、都道府県知事の許可がある場合などの一部の場合を除いて、鳥類などを殺したり、けがをさせることを禁止しています。

また、鳥獣保護法第8条に違反して狩猟鳥獣以外の保護鳥獣の捕獲等をした場合や都道府県知事の登録を受けずに狩猟した場合には、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます。(鳥獣保護法第83条1項1号、5号)

今回の事例では、容疑者がタクシーでハトをひき殺したとして鳥獣保護法違反の容疑で逮捕されたようです。
鳥獣保護法では許可のない者が鳥類を殺したり、狩猟鳥獣ではない鳥類を殺すことを禁止しています。
今回の事例でひき殺したとされているカワラバトは狩猟鳥獣ではないため、狩猟の許可を受けているかどうかに関係なく、故意にカワラバトをひき殺したのであれば、鳥獣保護法違反が成立するおそれがあります。

土鳩と運転

カワラバトは土鳩とも呼ばれています。
普段よく目にするハトはこの土鳩と呼ばれるハトです。

土鳩はいたるところにいるわけですから、今回の事例のように路上にいることも多いでしょう。
もしも土鳩に気づかずに車でひき殺してしまった場合には、鳥獣保護法違反が成立してしまうのでしょうか。

結論から言うと、鳥獣保護法違反が成立しない可能性の方が高いと思われます。

鳥獣保護法では、故意に鳥類を殺した場合などに成立します。
ですので、気づかずにひき殺してしまったなどの過失による場合には、鳥獣保護法違反は成立しません。

ただ、過失により鳥類を傷つけてしまった場合でも、故意によるものだと判断されてしまい、鳥獣保護法違反が成立してしまう可能性があります。
そういった事態を避けるためにも、鳥類を害する気持ちはなかったことを取調べでしっかりと伝え、故意を否認することが重要になります。
弁護士に相談をし、取調べ対策をすることで、鳥獣保護法違反で有罪になることを防げる可能性がありますので、鳥獣保護法違反で捜査を受けている方は、弁護士に相談をしてみることをおすすめします。

土鳩の殺害と逮捕

路上のハトをひき殺しただけで逮捕されるの⁈とびっくりした人も多いのではないでしょうか。

刑事訴訟法第199条1項では、通常逮捕の場合、犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときは裁判官が発する逮捕状により逮捕できると定められています。
また、裁判官は容疑者が犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときに逮捕状を発することができますが、明らかに逮捕の必要がないと認めるときには逮捕状を発することができません。(刑事訴訟法第199条2項)
ですので、犯人だと疑うに相当な理由があり、逮捕の必要性がある場合にのみ、逮捕されることになります。

今回の事例では、逮捕は認められるのでしょうか。

今回の事例では、実際に容疑者がハトをひき殺したのであれば、路上の防犯カメラやタクシーに搭載されているドライブレコーダーなどに録画されている可能性が高いように思われます。
防犯カメラやドライブレコーダーなどの映像を確認し、容疑者がハトをひき殺していると判断できる場合には、犯人だと疑うに足りる相当な理由があると判断できるでしょう。

では、逮捕の必要性があるといえるのでしょうか。

刑事訴訟規則第143条の3では、「逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。」と規定しています。
ですので、逮捕の必要性とは、逃亡のおそれ証拠隠滅のおそれがあるかどうかだと考えられます。

今回の事例で容疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかについては、報道からでは明らかではありません。
ですので、裁判官が逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断するような事情があるのであれば、逮捕が認められることになります。

ただ、今回の事例では、事例内容から考えると逃亡のおそれが高い事件だとは思えませんし、ドライブレコーダーや運転していたタクシーなどを押収されれば物的証拠の隠滅は不可能でしょうし、仮に目撃者がいたとしても容疑者には連絡の取りようがありませんので証拠隠滅は容易ではないでしょうから、一見すると逮捕されるような事件ではないように思われます。
このように事件内容を見ただけでは逮捕されないと思うような事件であっても、要件を満たしていれば逮捕されてしまう可能性があります。
逮捕前に弁護士に相談をすることで逮捕を回避できる可能性がありますので、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
刑事事件や交通事故でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

車のナンバープレートの一部を隠して道路を走行

2022-01-24

車のナンバープレートの一部を隠して道路を走行した疑いについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

Aさんは何度かスピード違反で検挙されています。
そこでAさんは、オービスで撮影されても車のナンバーが分からないように、自分の車のナンバープレートの4桁部分に黒いフィルムを貼りました。
ある日Aさんが運転していたところ、警視庁高尾警察署の警察官に車を停められました。
Aさんは警察官に「ナンバープレートを一部分でも隠して運転することは道路運送車両法違反になりますよ。」と言われ、そのまま警視庁高尾警察署で話を聞かれることになりました。
(フィクションです)

自動車登録番号標、車両番号表の表示について

自動車は、自動車登録番号標及びこれに記載された自動車登録番号の識別に支障が生じないものとして国土交通省令で定める方法により表示しなければ、運航の用に供してはならない。(道路運送車両法第19条)
1 法第19条の国土交通省令で定める位置は、自動車の前面及び後面であって、自動車登録番号標に記載された自動車登録番号の識別に支障が生じないものとして告示で定める位置とする。ただし、三輪自動車、被けん引自動車又は国土交通大臣の指定する大型特殊自動車にあっては、前面の自動車登録番号標を省略することができる。
2 法第19条の国土交通省令で定める方法は、次のいずれにも該当するものとする。
① 自動車の車両中心線に直交する鉛直面に対する角度その他の自動車登録番号標の表示の方法に関し告示で定める基準に適合していること。
② 自動車登録番号標に記載された自動車登録番号の識別に支障が生じないものとして告示で定める物品以外のものが取り付けられておらず、かつ、汚れがないこと。
(自動車登録番号標等とはナンバープレートのことで、普通自動車の場合は自動車登録番号標、軽自動車や自動二輪車の場合は車両番号標といいます。)

罰則は50万円以下の罰金(道路運送車両法第109条)です。 

登録番号標等の表示義務

 道路運送車両法では、自動車を運行の用に供する際、自動車の種別に応じてそれぞれ登録、検査を受け、又は届出をしていることや、登録番号標等を表示することを要件としています。
 なお、自動車登録番号標は封印の取付けを受け、車両の種別、型に応じて所定の「見やすい位置」に「確実」に取り付けなければならないと規定され、車両番号標は所定の「見やすい位置」に表示しなければならないと規定されています。

違反成立の要件

①ナンバー隠ぺい行為があること
 登録番号標等に記載された文字、数字を一部でも隠ぺいしている。あるいは登録番号標等を見やすい位置に表示していないことが必要です。

②故意による運行であること
 自己が隠ぺいしたか否かに関係なく、判読できないように隠ぺいされていることの認識をもって運行の用に供したことが必要です。

道路運送車両法違反事件で警察署で話を聞かれることになったら

警察に呼ばれて話を聞かれる(任意出頭や任意同行)というだけでは、必ずしも逮捕されるとは限りません。
しかし、道路運送車両法第19条が成立するには故意である運行であることが必要とされるため、警察署の取り調べにおいては故意であること等、犯罪の立証のため様々なことを聞かれることになると思われます。
交通事件に強い弁護士に弁護を依頼すれば、もし故意の認識が無ければそのことを証明する弁護活動をすることができますし、取り調べへの対処等を状況等に応じお伝えすることができます。
警察署で道路運送車両法違反事件で警察署で話を聞かれることになったら、早急に交通事件に強い弁護士に弁護を依頼することをおすすめいたしたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ナンバープレートの一部を隠して運転したことが不安な方について、弁護士による取調べのアドバイスも行っております。

 

ひき逃げと自首について

2021-12-26

ひき逃げ事件と自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

大阪府内の県道で車を運転していたAさんは、信号で止まっていたVさんの車に衝突しました。慌てたAさんは、そのまま現場を立ち去り、現場から近いコンビニに車を停め、コンビニで飲料を買いました。我に返ったAさんは、現場に戻ろうとも考えましたが、逮捕が怖くそのまま自宅に帰りました。しかし、やはりAさんは逮捕が不安で警察に自首しようか悩んでいます。
(フィクションです)

~ひき逃げの罪~

自動車の運転上必要な注意を怠り(過失により),人に怪我をさせた場合は過失運転致傷罪,死亡させた場合過失運転致死罪が成立します。この罪は,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条に規定されており,罰則は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。
また、交通事故を起こしたにもかかわらず,車両等(軽車両を除く)の運転者が人の救護措置を怠った場合には救護措置義務違反が成立します。義務規定については道路交通法72条1項前段に規定されており,罰則については117条1項・2項に規定されています。2項は,人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときの規定で10年以下の懲役又は100万円以下の罰金,1項はそうでないときの規定で5年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

~自首~

Aさんは自首を検討しているようです。

自首とは、捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に、犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を捜査機関に申告し、その処分を委ねる意思表示のことをいうとされています。
 「捜査機関」とは,主に検察官,警察官のことをいいます。
「自首」というためには、捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に申告することが必要です。
ただし、「犯罪事実又は犯人」とされていますから、犯罪事実は発覚していても,まだ犯人が誰であるか発覚していない段階でも自首に当たる可能性はあります。
自首の方法としては自ら申告する場合のほか、他人を介して自己の犯罪事実を申告させることもできます。また,書面による申告も有効と解されています。ただし,こうした場合は、犯人がいつでも捜査機関の支配下にいることが条件となると解されています。
なお、自首というためには「捜査機関に処分を委ねること」、つまり、犯罪事実を認めていることが前提です。書面のみを提出して所在不明となった場合,氏名を秘匿している場合などは,処分を委ねる意思がないものとみなされるでしょう。

このように、「自首」を主張するためにはいくつかのハードル(要件)を超えなければならないことが分かります。
自首の要件を満たさないのに捜査機関に申告しても、それは「自首」ではなく単なる「出頭」にしか当たりません。

「自首」の最大の特徴は、必ず減刑されることです。
しかし、減軽といっても、その対象は法定刑(強制わいせつ罪であれば6月以上10年以下の懲役、強制わいせつ致傷罪であれば3年以上の懲役)であって、実際の「量刑」は法定刑が減軽された後の範囲で決せられます。したがって、自首に当たるからといって必ずしも執行猶予が確約されたわけではなく、やはり実刑に処せられることもあります。

もう一つの特徴としては、逮捕を免れる可能性があるということです。これは「自首」ではなく「出頭」に当たる場合でも同様です。
罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないと判断されやすいからです。
ただし、反対に、そのおそれがやはりあるとして逮捕される可能性もあります。
ですから、捜査機関に申告する前に、弁護士とよく相談して様々なアドバイスを受け、対策を取る必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが、24時間体制で、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

過失運転致死罪で示談

2021-10-05

過失運転致死罪で示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは自動車を運転して帰宅途中、信号のない交差点で原動機付自転車と衝突する事故を起こし、乗っていた男性を死亡させました。事故当時Aさんはスマホを見ながら運転しており、そのため交差点に進入してきた原動機付自転車の発見が遅れ、この死亡事故につながりました。Aさんは過失運転致死事件の被疑者として取調べを受けることになっています。
(フィクションです)

~過失運転致死罪~

過失運転致死罪は自動車運転死傷処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)第5条に規定されている罪です。
条文は「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる」となっています。

過失運転致死傷罪における自動車とは、原動機によって走行する車で、レールや架線を用いないものを意味します。
よって、自動二輪車や原動機付自転車も過失運転致死罪の処罰対象になります。

そして、「自動車の運転」とは、発進に始まり停止に終わるものとされています。
ただし、普通乗用自動車を運転していた者が車を道路左端に停車後、降車しようとして後方を十分確認することなく運転席ドアを開けたため後方から進行してきた自転車にドアをぶつけ、自転車に乗っていた人に傷害を負わせたという事件で、自動車の運転自体はすでに終了しており自動車運転上の過失は認められないものの、自動車の運転に付随する行為であり自動車運転業務の一環としてなされたものから傷害結果が発生したものとして業務上過失傷害罪の成立が認められた判例(東京高判平成25・6・11高刑速平成25年73頁)があります。
また、停止させる場所が不適切だったために事故につながった場合にも自動車運転過失致死傷罪の適用が考えられます。

過失運転致死傷罪が成立するためには、自動車の運転に必要な注意を怠ったこと、すなわち過失が必要です。
ここでの「過失」は、前方不注意やわき見運転、巻き込み確認を怠ったこと、歩行者や自転車等の飛び出しに気付かなかったこと、方向指示器(ウインカー)を点滅させずに方向転換したことなど、ちょっとした不注意でもこれにあたるとされています。
さらには、自分では注意を払ったつもりでも、別の行為をとっていたりより注意深くしていれば事故を避けることができたと裁判所が判断し過失が認定されてしまうケースもあります。

今回のケースでは、Aさんはスマホの画面を見ながら運転していますから、Aさんに過失があったと認定される可能性はかなり高いと考えられます。

~示談~

交通死亡事故で示談する意義は正式起訴を回避できる(略式起訴での罰金刑で済む)という点です。
正式起訴とは公開の法廷で刑事裁判を受ける必要のある起訴のことです。正式起訴されると刑事裁判を受け、裁判で有罪の認定を受ければ禁錮刑に処されます。
一方、略式起訴は公開の法廷で刑事裁判を受ける必要のない起訴のことです。略式起訴されると禁錮刑ではなく罰金刑に処されます。
略式起訴を目指すには、検察官が刑事処分を出す前に示談を成立させなければなりません。
しかし、ご遺族側とすれば、何も加害者の刑事処分が決まる前に示談しなければならない理由はありません。ですから、この場合、刑事処分前に示談できるよう、検察官、ご遺族側の弁護士等と円滑に交渉を進めていく必要があるのです。仮に、ここで示談できずに正式起訴されたとしても、その後示談できれば正式裁判で執行猶予付き判決を獲得できたり、禁錮刑ではなく罰金刑となる可能性は十分に考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。

赤信号無視で危険運転

2021-09-28

赤信号無視で危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは、深夜午前1時頃、普通乗用自動車を運転して帰宅途中、前方約70メートルにある交差点の対面信号が赤色表示をしていたにも関わらず、「深夜だし交差点を通過する車はいないだろう」「早く家に帰ってゆっくりしたい」などと思って、時速約60キロメートルで交差点に進入したところ、右方から交差点に進入してきたVさん運転の軽自動車に自車を衝突させ、Vさん運転の軽自動車を電柱に衝突させてVさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせました。Aさんは、警察官に過失運転致傷罪で現行犯逮捕され、その後、検察庁において、罪名を危険運転致傷罪に切り替えられて起訴されました。
(フィクションです)

~過失運転致傷罪、危険運転致傷罪~

過失運転致傷罪、危険運転致傷罪とも「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律)」に規定されています。
過失運転致傷罪は法律5条に、危険運転致傷罪は法律2条に定められています。
危険運転致死傷罪については法律2条1号から6号にその類型が定められており、本件は法律2条5号が適用されそうです(罰則15年以下の懲役)。
法律2条5号には赤色信号(略)を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為定められています。

「赤色信号を殊更に無視し」とは、故意に赤色信号に従わない行為のうち、およそ赤色信号に従う意思のないものをいいます。この意思があるかどうかは、運転者が、どの地点で対面信号が赤色表示していたのを認識していたかにもよります。

次に、「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、自車が相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度、あるいは、相手方の動作に即応するなどしてそのような大きな事故を回避することが困難と認められる速度のことをいい、通常時速20~30キロメートルであればこれに当たると考えられています。

~両罪の違い~

まず、大きな違いは法定刑です。
過失運転致傷罪が「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」であるのに対し、危険運転致死傷罪は「人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役」です。
特に、危険運転致死罪の場合、1年以上の有期懲役ですから、起訴され、有罪となれば実刑判決を受ける可能性も十分にあります。

次に、前者は過失、すなわち不注意によって交通事故を起こした場合に適用されるのに対し、後者は故意、すなわち法律5条各号に規定されている状態・状況を運転者が認識しながらあえて自動車を運転して交通事故を起こした場合に適用される法律です。

たとえば、前述の5号の「赤色信号」を例にとりましょう。
運転者が前方の赤色信号を認識しつつ、あえてこれに従わず交差点に進入したと認められる場合(かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転した場合)は危険運転が適用される可能性が高いでしょう。他方、不注意によって赤色信号を示していた交差点に進入してしまい交通事故を起こした場合は過失運転が適用されるでしょう。

危険運転か過失運転かは、交通事故態様や事故時。事故後の状況などを総合して判断されます。
よって、捜査の結果、危険運転から過失運転になったり、あるいはその逆となることもあります。

危険運転で捜査を受けお困りの方は弁護士までご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

無免許で原付を運転中に人身事故を起こし逃亡

2021-09-07

今回は、無免許で原付を運転している際に人身事故を起こし、逃亡してしまった場合に問われうる犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

Aさんは、無免許で原付を運転中、誤って歩行者Vと接触してしまい、怪我を負わせてしまいました。
しかし、無免許運転が発覚するとまずいと考えたAさんは、警察や救急車を呼ばずにその場から逃走してしまいました。
Aさんはいつ逮捕されるのかと、不安にかられています。
どうすればよいのでしょうか。(フィクションです)

~Aさんに成立しうる犯罪~

(無免許過失運転致傷罪)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、10年以下の懲役に処せられます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第6条4項・5条)。

「自動車」には、原付も含まれます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第1条1項)。
Aさんは原付を運転中、誤ってVと接触し、怪我を負わせていますが、この時Aさんは無免許運転をしていました。
上記の事実関係によれば、無免許過失運転致傷罪が成立する可能性が高いと考えられます。

(救護義務違反、危険防止等措置義務違反)
一般に「ひき逃げ」と呼ばれる犯罪です。
道路交通法第72条1項前段は、
「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない」
としています。

Vの怪我は明らかにAさんの運転に起因するものと考えられますが、無免許運転が発覚するとまずいと考えたAさんは、救急車を呼び、Vを救護することも、道路の危険を防止する措置を講じることもなく、事故現場から立ち去ってしまいました。
上記行為は、道路交通法違反の罪(救護義務違反・危険防止等措置義務違反)を構成する可能性が高いと思われます。
法定刑は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。

~Aさんは今後どうなる?~

ひき逃げ事件の犯人が数日以内に検挙されることは珍しくありません。
ある日、警察がAさんの自宅に現れ、そのまま逮捕されてしまう可能性は十分あります。
すぐにでも刑事事件に詳しい弁護士と相談し、アドバイスを受ける必要があります。

~自首・出頭を検討~

とはいえ、弁護士を依頼することによって、逃走の支援を受けたり、証拠隠滅のアドバイスを受けることはできません。
ケースの場合は、自首・出頭することを検討することになると思われます。

(自首・出頭を行うメリット)
自首が成立すれば、有罪判決を受ける場合に刑の減軽がなされる場合があります。
また、自ら犯罪事実を申告したことが評価され、逮捕されずに済む場合もあります。

自首が成立するためには厳格な要件があり、これを満たさない場合には「出頭」扱いとなります。
出頭に留まった場合には、これによって刑が減軽されることはありませんが、いずれにしても自ら犯罪事実を申告したことが肯定的に評価される可能性は存在します。

また、Aさんはいつ逮捕されてしまうのか、と不安にかられています。
自首・出頭することにより、そのような状況に終止符を打つことができるでしょう。

(自首・出頭を行うデメリット)
ケースの場合、自首・出頭を行うことにより、ほとんど確実に無免許過失運転致傷・ひき逃げ事件の被疑者となってしまいます。
また、ケースの事件は比較的悪質な事件であり、自首・出頭後に逮捕されてしまう可能性も存在します。

「自分が事件の犯人である」と申告するのですから、被疑者とされるのは仕方がないという他にありませんが、逮捕・勾留されてしまうリスクも考えなければなりません。
自首・出頭により事件解決を目指す場合には、被疑者となってしまうことについて覚悟ができる場合に限られます。

~自首・出頭前に弁護士を依頼する~

上記のように、自首・出頭することによってデメリットを被る可能性は否定できません。
自首・出頭前にあらかじめ弁護士を依頼しておくことにより、被疑者となってしまった後、あるいは、逮捕されてしまった後において、早期に弁護活動を開始することができます。
まずは弁護士と相談し、今後の対策についてアドバイスを受けることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無免許過失運転致傷事件・ひき逃げ事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

交通事件での身体拘束

2021-08-21

交通事件での身体拘束の可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
ある朝、警視庁西新井警察署の警察官が東京都足立区にあるAさん宅を訪れました。
Aさんは、先日の交通事故の件で話が聞きたいと警察官から言われ、西新井警察署に連れて行かれました。
お昼ごろ、Aさんの妻に連絡があり、「ご主人をひき逃げ事件の件で逮捕しました。」と言われ、妻はまさか逮捕されるとは思っておらず大変驚いています。
このままAさんの身体拘束が続くのかどうか心配になったAさんの妻は、すぐに対応してくれる弁護士をネットで探すことにしました。
(フィクションです。)

刑事事件での身体拘束

あなたが罪を犯したと疑われた場合、捜査機関によってあなたの身柄が拘束されることがあります。
すべての事件において、被疑者・被告人が身体拘束を強いられるわけではありません。
人の身体の自由を一定期間奪うわけですから、法律に定められている要件を満たす場合にのみ、被疑者・被告人の身柄を拘束することが許されるのです。

捜査段階では、まず、「逮捕」という身体拘束を伴う強制処分があります。
これは、被疑者の取調べを目的として、被疑者の意思に反して、身体・行動の自由という重要な権利利益を侵害する処分です。
ですので、この処分を実施するためには、法律、ここでは刑事訴訟法と呼ばれるものですが、それに定められている要件を満たしていることが前提となります。
逮捕には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3種類があります。
ここでは、①通常逮捕の要件について説明します。

通常逮捕とは、事前に裁判官が発行する逮捕令状に基づいて、被疑者を逮捕するもので、これが逮捕の原則的な形態です。
逮捕の要件は、①逮捕の理由、および、②逮捕の必要性です。
①逮捕の理由とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることです。
そして、②逮捕の必要性というのは、被疑者が逃亡するおそれや罪証隠滅するおそれがある場合をいいます。
検察官または司法警察員が逮捕状の請求を行い、その請求を受けて、裁判官が逮捕の理由と逮捕の必要性を審査し、逮捕状を発布するか、請求を却下するかを判断します。

逮捕に引き続いて行われ得る身体拘束を伴う強制処分として、「勾留」というものがあります。
勾留は、比較的長期間の身体拘束を伴うものです。
勾留は、起訴前の勾留(「被疑者勾留」ともいいます。)と起訴後の勾留(「被告人勾留」ともいいます。)とに分けられます。

被疑者勾留の要件は、①犯罪の嫌疑、②勾留の理由、③勾留の必要性、の3つです。
①犯罪の嫌疑の要件とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることをいいます。
②勾留の理由については、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ、のいずれかに該当する場合にあるものと判断されます。
そして、②勾留の理由がある場合であっても、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これによって生じる不利益を比較してつり合いがとれないようなときは、被疑者を勾留することは許されません。
これを③勾留の必要性(もしくは相当性)といいます。
検察官が勾留を請求し、裁判官が勾留の要件を満たしているかどうかを判断します。
被疑者勾留の期間は、原則、検察官が勾留請求をした日から10日間です。
ただし、検察官が勾留延長の請求をし、それを裁判官が認めた場合には、最大で更に10日間となります。

被疑者が起訴されると、勾留も被疑者勾留から被告人勾留へと切り替わります。
勾留されている被疑者が起訴された場合、当然に被告人勾留が開始されます。
被告人勾留の要件は、被疑者勾留のそれと同じです。
ただし、勾留期間は起訴の日から2か月で、裁判所は、特に継続の必要があるときは、勾留期間を1か月ごとに更新することができます。

以上のように、刑事事件において身体拘束は絶対ではありませんが、要件を満たす場合には長期間の身体拘束を余儀なくされることがあります。

交通事件での身体拘束の可能性

交通に関する刑事事件、例えば、無免許運転や飲酒運転による道路交通法違反や、人身事故による過失運転致死傷や危険運転致死傷事件を起こした場合、通常の刑事事件と同様に、先に述べたように身柄が拘束される可能性があります。
単純な無免許運転や飲酒運転の場合、多くが現行犯逮捕となりますが、逃亡のおそれも罪証隠滅のおそれもないと判断され、その後釈放されるケースが多いでしょう。
人身事故を起こした場合については、過失運転致死傷に該当するケースであり被害がそこまで大きくないのであれば、勾留されずに釈放となる可能性が高いでしょう。
一方、危険運転致死傷に該当するような重大な事故の場合や、ひき逃げ事件では、被疑者の身柄を確保して捜査を継続する必要がある判断される傾向にあります。
特に、ひき逃げ事件については、いったん現場から逃走しているため、逃亡のおそれが高いと判断されるからです。
しかしながら、長期の身体拘束は、退学や懲戒解雇といった過度な不利益を被疑者・被告人に課すものであるため、不当不要な身体拘束は避けなければなりません。
そのため、逮捕された場合や、逮捕されそうな場合には、早期に弁護士に相談し、身柄解放に向けて動いてもらいましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件で逮捕されて対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

睡眠導入剤の影響による危険運転致死傷罪

2021-08-14

睡眠導入剤影響による危険運転致死傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは、運転中に意識障害に陥り、福岡県うきは市の道路の左端を歩いていた歩行者に衝突し、全治1か月の怪我を負わせる事故を起こしてしまいました。
Aさんは、前夜に睡眠導入剤を服用しており、その影響があったのではないかと、福岡県うきは警察署危険運転致死傷の適用も視野に入れて捜査をしています。
(フィクションです。)

危険運転致死傷罪とは

人身事故を起こした場合、通常は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)に規定されている「過失運転致死傷罪」が適用されます。
これは、自動車を運転する上で必要な注意を怠り、人を死傷させる罪です。
しかし、過失の程度がひどく、故意や故意に近いような重大な過失によって交通事故を起こした場合には、自動車運転処罰法に規定されている「危険運転致死傷罪」に問われることになります。

自動車運転処罰法2条1号は、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」を行い、よって、人を負傷させた場合は15年以下の懲役に、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役に処することを定めています。

■薬物の影響により正常な運転が困難な状態■

「薬物」とは、覚せい剤や麻薬といった規制薬物や、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」(以下、「医薬品医療機器等法」といいます。)で指定された指定薬物に限らず、中枢神経系の興奮もしくは抑制または幻覚の作用などを有する物質であって、自動車を運転する際の判断能力や運転操作能力に影響を及ぼす性質を持つ物質であればよいとされています。

「薬物の影響」とは、薬物の摂取により正常な身体又は精神の状態に変化を生じ、運転に際して注意力の集中、距離感の確保等ができないため、運転者に課せられた周囲義務を果たすことができないおそれのある状態をいいます。
「薬物の影響により」とあるように、運転操作に対する障害は、薬物の「影響により」もたらされなければなりません。
そのため、薬物を摂取した場合であっても、睡眠不足や過労の影響で注意力が散漫になり、その結果、事故を起こしたのであれば、それは薬物の影響により惹起されたものではなく、本罪は成立しません。

「正常な運転が困難な状態」については、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることをいいます。

そして、「よって」という文言があるように、本罪が成立するためには、薬物の影響により正常な運転が困難な状態であったということと、当該事故との間に因果関係があることが必要です。
つまり、当該事故が、的確な運転行為を行っていたとしても回避不能であると認められる場合には、因果関係が否定されることになります。

■故意■

危険運転致死傷罪は故意犯であるため、罪を犯す意思がなければなりません。
つまり、被疑者が当該車両を運転している際に、自己が「薬物の影響により正常な運転が困難な状態」にあることを認識している必要があるのです。
この点、被疑者に求められる認識は、法的評価の伴う「薬物の影響により正常な運転が困難な状態」ではなく、それを基礎付ける事実についての認識です。
薬物を摂取して頭がふらふらするとか、幻覚がちらついているとか、正常な運転が困難な状態に陥るための事実関係を認識していれば足りるとされています。
単に、被疑者自身が「正常に運転できる」と思っていたとしても、過去に薬物を摂取して運転して意識障害を何度も起こしている、薬物の効能を知っている、といった事実があれば薬物の影響により正常な運転が困難である状態であることを認識していたものと認められます。

また、同法3条1号は、「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り」、人を負傷させた場合は12年以下の懲役に、人を死亡させた場合は15年以下の懲役に処する、と規定しています。

■その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で■

「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、先の「正常な運転が困難な状態」であるとまではいえないものの、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力または操作能力が、そうではないときの状態と比べると相当程度減退して危険性のある状態、そして、そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態をいうとされています。

■故意■

運転開始前、または運転中に薬物を摂取し、それによって「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」となっていることを認識しながら運転したのであれば、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」を認識していたと言えます。
先に述べたように、薬物の薬理作用を知っていながら摂取した場合は、「正常な運転が困難な状態」の認識があったことになるものと考えられます。
しかし、初めて当該薬物を用いる場合、その薬理作用について正確な知識がない場合でも、少なくとも精神・神経に何らかの影響を与えることは十分承知しているはずであるから、その未必的な危険性については認識しており、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」についての認識があったと認められるでしょう。

睡眠導入剤の影響による危険運転致死傷罪

睡眠導入剤には、脳の機能を低下させ、大脳辺縁系や脳幹網様体と呼ばれる部分の神経作用を抑えることで睡眠作用をもたらす薬理作用があります。
睡眠導入剤影響による危険運転致死傷罪の成立が争われる場合、
①運転操作に睡眠導入剤影響を与えたか否かが不明であるから、薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転してはいない、薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥ってもいない。
②薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転することについての認識がない。
といった主張がなされるケースが想定されます。
睡眠導入剤影響のよる危険運転致死傷罪が成立し得るのか、事案によって異なりますので、交通事件に対応する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が危険運転致死傷事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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