交通事故における刑事処分

2020-10-11

交通事故における刑事処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

大阪府松原市の高速道路で、前方を走行していた乗用車に追突し、乗用車に乗っていた男性に重傷を負わせたとして、大阪府高速道路交通警察隊は、車を運転していたAさんを現行犯逮捕しました。
Aさんは、法定速度を大幅に超えて走行していたとみられており、警察は危険運転致死傷も視野に入れて捜査を進めています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、交通事故を起こした場合の刑事処分について詳しく知りたいと思い、すぐに刑事事件に詳しい弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです)

交通事故を起こしたときに課される処分と言えば、違反点数が付けられたり、免許の停止や取消しなどについて思い出される方が多いのではないでしょうか。
これらの処分は、行政機関がその権限を作用させる行政処分です。
交通事故を起こし、人に対して、死亡や傷害などの結果を生じさせる事態が発生した場合には、行政処分だけでなく、刑事罰としての刑事処分が加害者に対して課せられることがあります。
刑事処分は、犯罪に対して刑罰を科する処分であり、人を死亡させたり、怪我を負わせたりする交通事故を起こした場合には、犯罪が成立し、被疑者・被告人として刑事手続に付される可能性があるということです。

人を死亡・負傷させるような交通事故に関連して問題となる犯罪は、危険運転致死傷罪、そして、過失運転致死傷罪です。

1.危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、飲酒や薬物を使用して危険な状態で自動車を運転した結果、人を死傷させた場合に成立し得る犯罪です。
危険運転致死傷罪の対象となる運転行為は、以下の8つです。

①アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③その進行を制御する技術を有しないで自動車を走行させる行為。
④人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為。
⑥高速自動車国道または自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これを著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止または徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為。
⑦赤信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役、危険運転致死罪は1年以上の有期懲役が定められており、実際にも重い刑が科される傾向にあります。

また、危険運転致死傷罪より程度が軽微である飲酒・薬物・病気に起因する運転についても刑事処罰の対象となります。(準危険運転致死傷罪)
①アルコールまたは薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、そのアルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷または死亡させた場合。
②自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、その病気の影響により正常な運転が困難な状況に陥り、人を死傷させた場合。
これらに該当する場合、人を負傷させた者は12年以下の懲役、人を死亡させた者は15年以下の懲役を科されることになります。

2.過失運転致死傷罪

自動車の運転の際に、その過失によって、人を死傷させた場合に成立し得る犯罪です。
ここでいう「過失」とは、法律上の注意義務をいうのであって、その内容については、「結果の発生を予見する可能性とその義務及びその結果の発生を未然に防止する可能性とその義務」が必要となります。
前方不注意や左右確認を怠ったなど、運転をする上で必要とされる注意を怠った結果、人を死傷させてしまったときに過失運転致死傷罪が成立します。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となっており、危険運転致死傷罪よりも軽く定められています。

危険運転致死傷事件においては、刑事裁判となることが多く、加害者は被告人として法廷に立ち審理されることになります。
刑事裁判では、証拠の収集によって結果が左右されると言っても過言ではありません。
無罪を主張する場合には、主張を裏付ける客観的な証拠の収集が重要です。

一方、有罪を認める場合には、情状について争うことになりますが、被告人に有利な犯情やその他の情状を主張し、寛大な処分を求めます。

過失運転致死傷事件の場合、内容によっては不起訴処分となることもありますし、略式手続で事件を処理することもあります。
ただ、被害や事故の程度により、公判請求され、刑事裁判を受けることも少なくありませんので、罪名の如何を問わず、人身事故で刑事手続に付された場合には、弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故による刑事事件にも対応する法律事務所です。
交通事故を起こし、被疑者・被告人として刑事手続に付され、対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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