無免許・酒気帯びで交通事故

2020-09-26

無免許酒気帯び交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

深夜、埼玉県行田市の道路を酒気を帯びたまま乗用車を運転していたAさんは、前方を走行していたバイクに衝突し、転倒させてしまいました。
しかし、Aさんは、無免許かつ飲酒運転であることが発覚することを恐れ、被害者の安否を確認することなく、そのまま現場を後にしました。
後日、埼玉県行田警察署は、道路交通法違反および自動車運転処罰法違反の疑いでAさんを逮捕しました。
(フィクションです)

無免許運転で事故を起こした場合

無免許運転とは、公安委員会の運転免許を受けずに、自動車または原動機付自転車を運転することをいいます。
無免許運転には、これまで一度も有効な運転免許証の交付を受けずに運転する行為だけでなく、過去に有効な免許証は交付されていたものの、免許の取り消し処分を受けた人が運転する行為や免停中に運転する行為、そして運転資格のない自動車を運転する行為、運転免許の更新をせずに運転する行為も含まれます。

無免許運転については、道路交通法第64条1項において禁止されており、無免許運転の禁止違反に対する罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

他方、無免許運転をし、人身事故を起こした場合には、自動車運転処罰法が適用されます。

まず、自動車などを運転し、人を負傷させた場合、自動車運転処罰法の定める過失運転致傷罪に問われる可能性があります。
これは、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立する罪です。
前方不注意による人身事故は、多くの場合、過失運転致死傷罪が成立します。
また、危険運転行為を行ったことにより、人を死傷させた場合には、危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。

これらの罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転であった場合には、刑が加重されます。
Aさんは、過失運転致傷罪に問われていますが、過失運転致傷罪の法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですが、無免許運転により刑が加重されるため(無免許運転過失致傷)、法定刑は10年以下の懲役となります。

酒気帯び運転で事故を起こした場合

道路交通法第65条1項は、酒気を帯びて車両等を運転することを全面的に禁止しています。
これに違反して車両を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者については罰則の対象となります。
具体的には、血液1mlにつき0.3mg又は呼気1lにつき0.15mgが基準となります。
酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
アルコール濃度に関係なく、飲酒によって正常な動作や判断ができないおそれがある状態で運転した場合には、酒酔い運転として、酒気帯び運転の罰則より重い5年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。

酒気帯び運転で人身事故を起こした場合には、道路交通法違反(酒気帯び運転)に加えて、自動車運転処罰法の過失運転致傷罪に問われることになります。
また、アルコールの影響により正常な運転をした場合には、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。

その上、そのまま現場を後にした場合

Aさんは、無免許酒気帯び運転で人身事故を起こした上、現場から逃走しています。
いわゆる「ひき逃げ」です。
道路交通法は、交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護儀、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない、という救護措置義務を定めています。
車両等の交通により人の死傷が生じていることを認識しつつ、救護義務を果たさなかった場合、その交通事故が当該運転手の運転に起因するものであれば、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が、運転に起因するものでなければ、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
加えて、救護措置義務が生じ必要な措置をとった場合に、当該車両等の運転手は警察官に事故を報告する義務が課されており、これに対する違反の法定刑は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

さて、Aさんは、無免許酒気帯び運転の上、前方不注意によって人身事故を起こしたものの、被害者を救護することなく現場を後にしました。
その結果、道路交通法違反(救護義務・報告義務違反、酒気帯び運転)及び自動車運転処罰法違反(無免許過失運転致傷)に問われています。
これら3つの罪のうち、酒気帯び運転は無免許運転過失致傷に吸収され、救護義務・報告義務違反と無免許運転過失致傷との2罪は併合罪の関係となり、各罪中最も重い犯罪に対する刑罰に一定の加重を施して、これを併合罪の罪とします。
具体的には、併合罪のうちの2個以上の罪について、有期懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。
つまり、最も重いのは、無免許運転により加重された過失運転致傷罪(無免許過失運転致傷:10年以下の懲役)であり、結果として法定刑は、15年以下の懲役となります。

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