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(事例紹介)暴走行為のほう助で逮捕された事例

2022-12-15

(事例紹介)暴走行為のほう助で逮捕された事例

~事例~

佐賀大前交差点で6月5日にあった暴走行為をほう助したとして、佐賀県警は5日、道交法違反(共同危険行為ほう助)の疑いで3人を逮捕したと発表した。
(中略)
交通指導課によると、建設作業員の男の逮捕容疑は、暴走行為に使われると知りながらオートバイ1台を提供した疑い。ほか2容疑者はオートバイの車体の特徴を隠すためにテープを貼って装飾し、少年らに暴走行為をしやすくさせた疑い。認否は明らかにしていない。
(※2022年12月6日7:00佐賀新聞配信記事より引用)

~ほう助とは~

今回の事例では、「ほう助」という単語が使われています。
ほう助」とは、簡単に言うと、その犯罪をする人が犯罪をしやすくするように手助けをすることを指します。
ですから、例えば、「窃盗罪のほう助」と言った場合には、窃盗行為をするための道具を貸し出すなど、窃盗罪をしやすくする行為をすることを指します。
ほう助については共犯の一種とされており、刑法では以下のように定められています。

刑法第62条第1項
正犯を幇助した者は、従犯とする。

刑法第63条
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

ほう助犯(幇助犯)は、刑法上「従犯」という扱いになり、「従犯」は正犯=実際に犯罪を実行した人の刑罰よりも減軽されるということになっています。
刑罰の減軽の方法としては、刑法で以下のように定められています。

刑法第68条
法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
第1号 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。
第2号 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
第3号 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
第4号 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。
第5号 拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。
第6号 科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。

~共同危険行為のほう助~

今回の事例では、男性が共同危険行為(道路交通法違反)ほう助であるとして逮捕されています。
共同危険行為とは、道路交通法で禁止されている行為で、大まかに言えば、いわゆる暴走族による集団暴走行為などが当てはまります。

道路交通法第68条(共同危険行為等の禁止)
二人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者は、道路において二台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ、又は並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為をしてはならない。

今回の事例では、逮捕された容疑者らは、少年らが暴走行為をすると知りながら、
・オートバイ1台を提供
・オートバイが特定されにくくなるよう車体を装飾
したとされています。
暴走行為をするためのオートバイを貸したのであれば暴走行為をやりやすくしているといえますし、オートバイが特定されづらいよう装飾することで、少年らが暴走行為をしても自分達が特定されにくくなる=暴走行為をしやすい状況を手助けしているといえるでしょう。
こうしたことから、今回の事例では、共同危険行為(道路交通法違反)のほう助という容疑がかけられているのだと考えられます。

刑事事件では、まさにその犯罪を実行したという人だけではなく、その手助けをした人もほう助犯という形で罪に問われることがあります。
具体的にどういった行為がほう助犯となり得るのか、実際にどういった刑罰が考えられるのかなどは、個別的に事案を検討しなければいけませんから、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

0120-631-881では、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のスタッフが、ご相談者様のご状況に合わせたサービスをご案内中です。
刑事事件について弁護士の見解を聞いてみたい、ひとまず弁護士に相談してみたいという場合には、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

【事例紹介】ひき逃げ・飲酒運転・犯人隠避罪で逮捕された事例

2022-12-08

【事例紹介】ひき逃げ・飲酒運転・犯人隠避罪で逮捕された事例

滋賀県で起きた交通事故により、飲酒運転や犯人隠避を疑われ逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警東近江署は1日、自動車運転処罰法違反(過失致傷)と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の疑いで東近江市の足場設置業の男(26)を、犯人隠避容疑で男の妻(26)を逮捕した。
男の逮捕容疑は(中略)酒気帯び状態でトラックを運転し、同市能登川町の交差点で乗用車と衝突し、運転していた女性(55)に肋骨骨折などの重傷を負わせ逃げた疑い。妻は自分が運転していたとうその申告をした疑い。2人は容疑を否認しているという。
(12月1日 京都新聞 「男が酒気帯び運転でひき逃げ疑い 「自分が運転していた」虚偽申告疑い妻も逮捕」より引用)

過失運転致傷罪

過失運転致傷罪は、自動車運転処罰法第5条で規定されています。
過失運転致傷罪は、運転中に必要な注意を怠り、人にけがを負わせた場合に問われる罪で、有罪になった場合には7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)

なお、後述のように、今回の事例の容疑者は、過失運転致傷罪だけでなく酒気帯び運転の容疑もかけられています。
過失運転致傷罪は、先ほど紹介したように、注意を怠った=過失により交通事故を起こし、人を負傷させた際に成立する犯罪ですが、飲酒運転の影響が著しく大きいことにより交通事故を起こしたという場合には、別の犯罪が成立することもあります。
アルコールにより正常な運転が困難であったと判断された場合には、過失運転致傷罪ではなく危険運転致傷罪の容疑をかけられる可能性があります。
その場合に有罪になれば、危険運転致死傷罪15年以下の懲役ですので、過失運転致傷罪よりも重い量刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第2条第1号)
過失運転致傷罪飲酒運転(道路交通法違反)という犯罪に問われるのか、危険運転致傷罪という犯罪に問われるのかは、事故当時どれほど酔っていたのか、それによって運転にどれほど影響があったのかなどの事情によって判断されることになります。

ひき逃げ

人身事故を起こした際に、被害者の救護や事故の報告を行わなかった場合は、ひき逃げにあたります。

事故により人にけがを負わせ、救護しなかった場合には5年以下の懲役または50万円以下の罰金が、その事故が救護を行わなかった運転者に起因する場合は10年以下の罰金または100万円の罰金が有罪になった際にそれぞれ科されることになります。(道交法第117条)
ですので、実際に容疑者男性の運転が原因で事故を起こし、被害者の救護を行っていなかった場合には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、事故不申告で有罪になった場合には、3月以下の懲役か5万円以下の罰金が科されることになります。(道交法第119条第1項第17号)

酒気帯び運転

先ほども触れましたが、飲酒運転酒気帯び運転についてもひき逃げと同様に道交法で規定されています。

容疑者の男性が報道のとおりに酒気帯び運転を行っていた場合には、有罪になると、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されます。(道交法第117条2の2第1項第3号)
また、千鳥足であったりろれつが回っていなかったりといった酔いの程度がひどい状態であった場合には、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されることになります。(道交法第117条の2第1項第1号)

犯人隠避罪

犯人隠避罪は、簡単に説明すると、罰金刑以上の重さの刑罰が科される罪を犯した者を、匿まったり、証拠を隠滅する以外の方法で警察官に逮捕や犯人だと発覚しないように手助けをした場合に成立します。

今回の報道によると、容疑者の女性は、男性が運転していたにもかかわらず、自分が運転していたと申告したとされています。
報道内容が事実であった場合には、女性が事故を起こした男性の身代わりになることで、男性が逮捕されたり嫌疑がかけられないように手助けしてることになるため、犯人隠避罪の容疑をかけられたということなのでしょう。
犯人隠避罪で有罪になった場合には、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。(刑法第103条)

なお、犯人隠避罪は、犯人の親族が隠避を行った際には刑が免除される場合があります。(刑法第105条)
ですので、もしも今回の事例の容疑者が隠避行為を行っていたとしても、刑罰を科されない可能性があります。

今回の事例では、報道によると容疑者らは容疑を否認しているとのことです。
容疑を否認している場合、容疑を認めている場合に比べて警察官の取調べが厳しくなる可能性があります。
厳しい取調べが行われる中で、親身に相談に乗る弁護士の存在はあなたや家族にとって支えになるかもしれません。
冤罪や過失運転致傷罪、犯人隠避罪などの刑事事件でお困りの方は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)通行人にぶつかり逃走 ひき逃げ事件として捜査

2022-12-01

(事例紹介)通行人にぶつかり逃走 ひき逃げ事件として捜査

通学中の小学生3人に車がぶつかり逃走している事件を参考に、ひき逃げした場合に、どのような犯罪が成立するかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

4日午前7時50分ごろ、堺市西区北条町2丁の住宅街の路上で、登校中の小学校の児童3人に車が接触した。
大阪府警によると、3人はいずれも7~8歳の小学2年生で、後ろから来た車が追い抜きざまに接触。
男児(7)が転倒し、右ひじを擦りむいたという。
車は逃走し、西堺署がひき逃げ事件とみて捜査している。
(後略)
(11月4日配信の朝日新聞デジタルの記事より引用)

ひき逃げをすると

ひき逃げとは、交通事故を起こし、負傷者がいるにも関わらず救護その他の必要な措置をとらずに逃げることをいいます。
これにより成立する可能性の犯罪としては、救護措置をとらなかったことによる道路交通法上の救護義務違反、及び警察に交通事故を報告しなかったことによる報告義務違反による罪が考えられます。

また、自動車の運転での過失行為により相手を死傷させた場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称「自動車運転処罰法」)に定められている、過失運転致死傷罪が成立する可能性があります。

道路交通法上の救護・報告義務違反について

道路交通法72条では、交通事故があったときは、交通事故に係る車両等の運転手は負傷者を救護し道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない旨、及び交通事故の日時、場所や死傷者の状況を報告しなければならない旨が定められています。

そして、車両等の運転手が、当該車両等の交通による人の負傷があったにも関わらず、救護義務に反した場合は、道路交通法117条1項違反として、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金を課されるおそれがあります。
また、死傷が運転手の運転に起因するものであるのに運転手が救護義務に反した場合は、刑が加重され10年以下の懲役又は100万円以下の罰金を課されるおそれがあります。

次に、報告義務の違反については、道路交通法119条1項10号違反として、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金を課されるおそれがあります。

過失運転致死傷罪について

まず、過失運転致死傷罪は、自動車運転処罰法の5条に定められています。

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

過失運転致死傷罪が成立する場合の具体例としては、脇見運転などの過失行為により交通事故を起こし相手を死傷させたような場合が考えられます。

このように、ひき逃げをすると道路交通法違反だけでなく、自動車運転処罰法の過失運転致死傷罪も成立する可能性があります。
また、防犯カメラの映像や事故現場にいた人の目撃証言などから犯人が特定されれば逮捕されてしまう可能性も高いでしょう。
ご自身・ご家族がひき逃げをしてしまったら、今後どのような手続きが進行していくか、事件の見通しを把握することは大切なことです。
まずは、弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、お問い合わせをフリーダイヤル0120-631-881で受け付けていますので、お気軽にお電話下さい(24時間受付中)。
また、ご家族やご友人が警察に逮捕されてしまった場合は、初回接見サービスをご利用ください。

(データ紹介)令和3年で多かった交通違反・道路交通法違反

2022-11-25

(データ紹介)令和3年で多かった交通違反・道路交通法違反

記事でも度々取り上げている通り、多くの交通違反道路交通法違反という犯罪であり、比較的軽微とされる交通違反は反則金を支払うことで刑事事件化せずに終息させることができますが、それ以外の交通違反道路交通法違反などの容疑で検挙されることになります。

今回の記事では、警察庁の統計(参考)を基に、令和3年に検挙された交通違反道路交通法違反について取り上げていきます。

~令和3年の道路交通法違反~

警察庁の統計によると、令和3年に告知・送致された道路交通法違反554万6,115件とされています。
そのうち、一番多かった交通違反は、一時不停止であり、158万8,628件でした。
これは全体の3割弱を占める数字であり、いかに一時不停止の交通違反が多いかお分かりいただけるのではないでしょうか。

刑事事件となりやすい交通違反道路交通法違反といえば、スピード違反飲酒運転無免許運転が挙げられます。
令和3年中のスピード違反は全体で106万4,818件であり、全体の2割弱を占めました。
スピード違反のうち、一般道では30km/h以上、高速道路では40km/h以上の超過が刑事手続となりますが、統計では、超過速度が30km/h~49km/hであるスピード違反が14万3,567件、超過速度が50km/h以上のスピード違反が1万2,106件となっています。
つまり、年間でスピード違反による道路交通法違反刑事事件となったものが15万件程度はあっただろうと考えられるのです。

また、飲酒運転は令和3年中、1万9,801件告知・送致されており、無免許運転は1万8,844件告知・送致されています。

これらの一定程度のスピード違反や飲酒運転、無免許運転は反則金制度の対象ではなく、刑事事件となる道路交通法違反ですから、1年間で約20万件程度は道路交通法違反事件として刑事事件化していると考えられます。
こうした数字を見ると、交通違反といえど、道路交通法違反刑事事件は身近な話であると感じられるのではないでしょうか。

交通違反であったとしても刑事事件となりますし、刑事裁判となり刑務所へ行くことも考えられます。
刑事手続に対応するには、被疑者の権利としてどういったものがあるのか、全体の流れはどういった形になるのかなど、把握しておくべきことが多いです。
交通違反だからと軽視せず、刑事事件となった段階で弁護士に相談しておくことをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、交通違反から刑事事件となったケースについても対応しています。
刑事事件を多数取り扱う弁護士がご相談いたしますので、刑事手続に対する不安のある方は、お気軽にご相談ください。

(事例紹介)スピード違反で刑事裁判 執行猶予判決となった事例

2022-11-17

(事例紹介)スピード違反で刑事裁判 執行猶予判決となった事例

~事例~

千葉市の市道で法定速度を85キロ上回る時速約145キロでスポーツカーを運転したとして、道交法違反(速度超過)の罪に問われた(中略)被告(20)に千葉地裁は3日、懲役5月、執行猶予2年(求刑懲役5月)の判決を言い渡した。
中野雄壱裁判官は判決理由で「法令順守を監督すべき立場にありながら速度を出してみたい、車の性能を試してみたいという欲求のまま犯行に及び、危険運転であったことは間違いない」と指摘。一方で、反省の態度を示していることや母親が今後の監督を誓約していることなどを挙げて刑の執行を猶予した。
判決によると、1月10日午後1時半ごろ、同市稲毛区黒砂の市道で速度超過したとしている。
(後略)
(※2019年6月3日16:31産経新聞配信記事より引用)

~スピード違反で刑事裁判に?~

今回取り上げた事例では、速度超過、いわゆるスピード違反による道路交通法違反に問われた男性が起訴され、刑事裁判を受けています。
刑事裁判には大きく分けて2種類の裁判があり、1つは非公開かつ簡単な手続で終わる略式裁判と呼ばれる裁判、もう1つは公開の法廷で行われる正式裁判となります。
略式裁判は、科される刑罰が100万円以下の罰金である場合、かつ被告人がその起訴内容を認めている場合のみに開かれるもので、そこで有罪判決を受け、罰金刑を言い渡されると、罰金を支払って事件が終了するということになります。
対して、正式裁判の場合には、ドラマで見るような法廷に行き、検察官・裁判官・弁護人と裁判手続を行うことになります。

今回取り上げた事例では、正式裁判を受けているようです。
先ほど触れたように、罰金を支払って事件を終了させる略式裁判の形式では、言い渡される刑罰は罰金に限定されますので、検察官が禁錮刑や懲役刑を求めるつもりであれば、略式起訴(略式裁判のための起訴)ではなく、公判請求(正式裁判を求める起訴)をすることになり、公開の法廷で裁判が行われることになります。
スピード違反=交通違反であり、逮捕や裁判とは縁がないというイメージをもつ方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそもスピード違反自体は道路交通法という法律に違反する犯罪行為です。

道路交通法第22条第1項
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。

道路交通法第118条
第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
第1号 第22条(最高速度)の規定の違反となるような行為をした者

第3項 過失により第1項第1号の罪を犯した者は、3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する。

このように、本来、スピード違反をするということは道路交通法違反という犯罪であり、「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」もしくは「3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金」という刑罰が科されることになります。
ですから、スピード違反の悪質性や危険性が高かったり、前科がありスピード違反を繰り返していたりといった事情があれば、懲役刑や禁錮刑が適切であると判断され、公判請求され、公開の法廷で刑事裁判を受けることになることも予想されますし、場合によっては刑務所に行くこともあるということになります。

しかし、「スピード違反をしたが少額のお金を支払って終わった」という経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、スピード違反の程度によっては、「反則金」というものを支払うことで刑事処分に代えるという制度(交通反則通告制度)が適用されることがあります。

「反則金」を支払うことで刑事処分に代えるというケースでは、反則金を支払えば、前述したような裁判を受けることもなくなりますし、刑罰を受けることもなくなります(反則金は刑罰ではなく、あくまで行政処分です。)。
いわゆる「青切符」を切られたケースがこのケースに当たります。

一方で、いわゆる「赤切符」を切られたケースは、この反則金の制度の対象外となり、先ほど紹介した刑事裁判手続を受ける可能性がありますし、道路交通法違反として有罪になり刑罰を受ける可能性があります、
「青切符」によって反則金を支払った場合に前科はつきませんが、「赤切符」によって刑事手続が進み、有罪となって罰金や懲役刑などを受けた場合には前科が付くことになります。

では、スピード違反の場合、どこが「青切符」「赤切符」の境目になるのでしょうか。
スピード違反の場合、一般道路で30km/h以上高速道路で40km/h以上の超過があると「赤切符」=刑事手続に則って事件が処理されることとなっています。
今回取り上げた事例に当てはめてみると、男性は千葉県の市道で法定速度より85km/hを超える速度で自動車を運転していたということですから、反則金の対象外となり、道路交通法違反で刑事処分を受けることになり、その超過の度合いが大きいことなどから罰金よりも重い処罰が妥当と考えられ、正式起訴されたということなのでしょう。

なお、たとえ反則金の制度の対象となる「青切符」のスピード違反でも、反則金を支払わないなどの事情があれば、刑事手続へ移行することとなるため、注意が必要です。

スピード違反のような身近な交通違反でも、事情によっては刑事事件となり、裁判を受けたり前科が付いたりすることがあります。
たかが交通違反と軽く考えず、刑事事件の当事者となってしまったら、早めに弁護士に相談しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、交通に関連する刑事事件についてもご相談やご依頼を受け付けています。
まずはお気軽にご相談ください。

(制度紹介)青切符と赤切符 交通違反と刑事事件

2022-11-10

(制度紹介)青切符と赤切符 交通違反と刑事事件

交通違反をすると切符を切られる」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この「交通違反」は刑事事件に発展することもありますが、そのことを意外に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、交通違反刑事事件に関連して、青切符赤切符についても触れていきます。

~青切符と赤切符~

交通違反をした際に警察官からいわゆる切符をもらうことになりますが、この切符の正式名称は、「交通反則告知書」といいます。
交通違反の切符は「交通反則通告制度」という制度に則って交付されています。
「交通反則通告制度」とは、比較的軽微な交通違反=道路交通法違反について、一定の期間のうちに反則金を納めることによって、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けずに事件を処理する=刑事事件化・少年事件化しないで事件を終了させるという制度を指します。

そもそも、「交通違反」というと軽いイメージを持ちがちですが、多くの交通違反道路交通法(通称「道交法」)の定めに違反している、道路交通法違反という犯罪になります。
ですから、「交通反則通告制度」では、本来は犯罪であり、捜査を受けて起訴・不起訴が決められ、刑事裁判を受けるようなものであるけれども、違反が比較的軽微なものである場合、反則金を支払うことでその手続をせずに終了させようということになるのです。
そのため、「交通反則通告制度」の対象となる交通違反は比較的軽微なもの(悪質性・危険性が比較的低いもの)に限られますし、反則金を支払わない場合には、通常の取り扱い通り、刑事事件として立件されることになります。

この交通反則通告制度の対象となった交通違反で切られる切符が「青切符」、制度の対象外、すなわち通常の取り扱い通り、刑事事件として立件される交通違反で切られる切符が「赤切符」と呼ばれます。

青切符」を切られた場合は、先ほど触れた通り、反則金を支払えば刑事事件として立件されることはなくなります。
一方、「赤切符」を切られた場合には、反則金制度の対象外となるため、反則金の支払いはなく、警察等の捜査を経て、起訴・不起訴や有罪になった場合の刑罰の重さが決められます。
赤切符」の対象(反則金制度の対象外)となる交通違反の代表的な例としては、飲酒運転(いわゆる酒酔い運転・酒気帯び運転どちらも)、無免許運転、時速50km以上のスピード違反などが挙げられます。

刑事事件として立件されれば、当然前科がつくリスクもありますし、場合によっては刑務所へ行くことも考えられます。
「単なる交通違反だから」と軽く考えてはいけません。
まずは弁護士に相談し、適切な対応の仕方や見通しを知っておくことが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、交通違反から発展した刑事事件についてもご相談・ご依頼いただけます。
まずはお気軽にお問い合わせください。

(事例紹介)10代の集団暴走事件 道路交通法違反と共同危険行為

2022-11-05

(事例紹介)10代の集団暴走事件 道路交通法違反と共同危険行為

~事例~

(略)
福岡県警城南署は10日、署付近の歩道を走行するなどの集団暴走をしたとして、福岡市早良区や城南区に住む18~19歳の少年4人を道路交通法違反(共同危険行為)の疑いで福岡地検に書類送検した。
署によると、4人は5月27日午後11時ごろ、バイクに乗って、城南区七隈7丁目の城南署前から早良区荒江2丁目付近まで、約4キロにわたって蛇行運転や信号無視をしながら暴走した疑いがある。
(後略)
(※2022年8月12日12:00YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)

・道路交通法違反と共同危険行為

今回の事例で取り上げたような集団暴走行為は、道路交通法でいう「共同危険行為」にあたることが多く、その場合には共同危険行為をしたことによる道路交通法違反となります。

道路交通法第68条(共同危険行為等の禁止)
二人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者は、道路において二台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ、又は並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為をしてはならない。

道路交通法第68条の条文によると、「道路において二台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ、又は並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為」がいわゆる共同危険行為になると考えられます。

今回の事例を例に考えてみましょう。
報道によれば、18歳~19歳の少年4人が、バイクに乗って蛇行運転や信号無視をしながら暴走したとされています。
少年らは4人でバイクを運転していたようですから、道路交通法の条文にある「二人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者」という主体に当てはまり、かつ、「道路において二台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ、又は並進させる場合」であったと推測されます。
そして、少年らは一緒に蛇行運転や信号無視をしてバイクを走らせる集団暴走をしたとのことですので、複数人で一緒になって道路上で事故を引き起こすような行為をしたといえます。
こうしたことから、「共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為」に当たる=共同危険行為をしたと判断され、道路交通法違反で検挙されるに至ったのでしょう。

・10代の集団暴走事件

今回取り上げた事例では、18歳~19歳の少年が複数人で集団暴走をしたと報道されています。
今年の4月、改正民法の施行により、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。
しかし、少年法上では20歳未満の者は「少年」として扱われ(少年法第2条第1項)、10代の者が罪を犯せば少年法が適用され、原則として家庭裁判所で開かれる審判を受けることになります。
こういった集団暴走事件では、関与した者が暴走族的な集団に属しているかどうかに限らず、仲間内で集団暴走行為に及んでしまうというケースが度々見られます。

少年事件として手続が進んでいく場合には、その後の更生に適切な環境を整えることが求められます。
特に今回のような集団暴走事件では、先ほど触れたように、仲間内で集団暴走をしたというケースが多いため、関係の精算や生活環境の改善が課題となってくることが考えられます。

また、今回取り上げた事例のような、18歳~19歳の少年であった場合、少年事件の手続ではなく、成人の刑事事件の手続同様の扱いとなる可能性もあります。
そうなると、罰金刑となることも考えられますし、場合によっては刑事裁判となる可能性もあります。
手続の見通しを立てるためにも、適切な処分を求めていくためにも、弁護士に相談するなどして専門家の意見を聞いてみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年の集団暴走による道路交通法違反事件なども取り扱ってきました。
まずは手続の把握や今後の見通しを知りたいという方にも対応できる、初回無料法律相談や初回接見サービスをご用意していますので、お気軽にお問い合わせください。

【事例紹介】無免許運転によるひき逃げ事故で逮捕(京都市伏見区)

2022-10-27

【事例紹介】無免許運転によるひき逃げ事故で逮捕(京都市伏見区)

無免許運転交通事故を起こしそのまま逃亡(ひき逃げ)した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

京都府警伏見署は17日、自動車運転処罰法違反(無免許過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、京都市伏見区、解体業の男(29)を逮捕した。
逮捕容疑は、(中略)無免許でオートバイを運転中、前方を走行していた会社員女性(36)の軽乗用車に追突し、首に捻挫を負わせ、そのまま逃げた疑い。
(後略)
(10月18日 京都新聞 「無免許で軽乗用車に追突、運転女性にけが負わせ逃走 ひき逃げ疑いで男逮捕」より引用)

無免許運転による過失運転致傷罪

おおまかに説明すると、運転中の過失により人にけがを負わせた場合は、過失運転致傷罪が適用されます。

今回の事例の報道によると、おそらく容疑者の男性は被害者が運転する車に追突しようと思って追突したのではないでしょうから、運転中に何かしらの過失があり追突してしまったのだと考えられます。
そして、追突された被害者は首に捻挫(けが)を負っているので、容疑者の男性には過失運転致傷罪の容疑がかけられています。
なお、もしも今回の事例の容疑者が、過失ではなく、被害者にけがを負わせるつもりで追突した場合は傷害罪などの別の罪が適用されることになります。

今回の事例のように、無免許運転により過失運転致傷罪に問われるような事故を起こした場合は、免許を所持した状態での過失運転致傷罪に比べて罪が重くなります。
過失運転致傷罪の量刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(自動車運転処罰法第5条)ですが、無免許運転だった場合には10年以下の懲役(自動車運転処罰法第6条第4項)になります。

報道によると、容疑者の男性は無免許運転をしていたとされており、この報道が事実であれば、容疑者の男性が過失運転致傷罪で有罪になった場合、執行猶予が付かない限り懲役刑が科されることになります。

ひき逃げ

道路交通法第72条第1項では、事故を起こした場合について、以下のことをしなければならないと定めています。

①負傷者の救護
②事故現場等の安全の確保
③警察官への事故の報告

以上の3つは事故を起こした際に必ずしなければならないことですので、今回の事例のように事故を起こしてそのまま事故現場から逃げた場合は道路交通法違反(ひき逃げ)になります。

また、①負傷者の救護や②事故現場の安全の確保を行わずに道路交通法違反で有罪になった場合は、以下のような量刑が科されます。
(ア)被害者がけがをしていた場合
5年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条第1項)

(イ)被害者のけがが加害者の運転に起因するものであった場合
10年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法第117条第2項)

(ウ)被害者がけがをしていなかった場合
1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法第117条の5第1号)

今回の事例で考えてみると、被害者は捻挫(けが)を負っていますので、(ア)か(イ)のどちらかのパターンが考えられます。
今回の事例の場合、容疑者の過失がなければ追突しなかった場合には、(イ)の容疑者本人の運転が原因でけがをした場合が適当だと考えられます。
しかし、もしも被害者側にも事故の原因の一端があった場合(例えば急ブレーキをかけたなど)には、(ア)が適用されるかもしれません。

ですので、報道内容が事実であった場合に、①負傷者の救護、②安全確保を行わずに道路交通法違反で有罪になれば、容疑者の男性は(ア)~(イ)の中で一番重い10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、③事故を申告せずに道路交通法違反で有罪になった場合には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第119条第1項第10号)が科されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強い法律事務所です。
刑事事件に強い弁護士を付けアドバイスや示談交渉のサポートを受けることによって、手続をスムーズかつ有利に進められることが期待できます。
また、今回の事例のように逮捕されてしまっている場合には、できるだけ早く釈放に向けた弁護活動を行う必要があります。
交通事故により、捜査・逮捕された方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)神戸市中央区 無免許当て逃げ事件で逮捕された事例

2022-10-20

(事例紹介)神戸市中央区 無免許当て逃げ事件で逮捕された事例

~事例~

無免許でトラックを運転し、当て逃げ事故を起こしたとして、兵庫県警葺合署は7日、道交法違反(無免許運転、事故不申告など)の疑いで、明石市の会社員の男(62)を逮捕した。
逮捕容疑は7日午前10時20分ごろ、神戸市中央区磯上通1の市道を無免許で運転。上り坂の交差点で信号待ち中にブレーキ操作を誤って後退させ、後続の大型トラックにぶつかったが、そのまま走り去った疑い。容疑を認めているという。
(後略)
(※2022年10月8日8:35神戸新聞NEXT配信記事より引用)

~当て逃げ事件~

今回取り上げた事例では、会社員の男性が無免許運転の末に当て逃げをしたとして、道路交通法違反の容疑で逮捕されています。

当て逃げとは、物損事故を起こしたにも関わらず、事故を起こした際に果たさなければならない義務を果たさなかったことを指します。
道路交通法では、交通事故を起こした際に果たさなければならない義務を定めています。

道路交通法第72条第1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

この道路交通法第72条第1項では、その前段で交通事故があったときには直ちに運転を停止して、負傷者の救護をすること(救護義務)や道路上の危険を防止する措置を取ること(危険防止措置義務)を定めており、後段では、警察などに交通事故を報告する義務(報告義務)を定めています。
これらは運転者に科せられている義務であるため、この義務を果たさなければ道路交通法違反という犯罪になります。

通常、交通事故のうち、人に対して怪我をさせたり人を死亡させてしまったりする人身事故ではなく、物が壊れたというだけの物損事故の場合、上記の道路交通法に定められている義務を果たせば、犯罪が成立することはありません。
物損事故では死傷者がいませんから、上記の道路交通法で定められている義務のうち、救護義務については問題にならないでしょう。
ですから、物損事故の場合は、その物損事故によって道路上に危険がないようにする(危険防止措置義務)とともに、物損事故を警察に届け出る(報告義務)ことをすればよいということになります。
しかし、物損事故を起こした際にこの危険防止措置義務や報告義務を果たさずにいれば、先述のように道路交通法違反となります。
これが一般に「当て逃げ」と呼ばれる犯罪行為になるのです。

今回の事例では、逮捕された男性は後続のトラックにぶつかる交通事故を起こしています。
この交通事故で死傷者が出ていないのであれば物損事故ということになりますから、報告義務などを果たせば刑事事件になることは基本的にはないということになります。
ですが、報道によると運転していた男性は警察への通報などをせずに現場から逃げているようです。
これは、先ほど触れた道路交通法の報告義務を果たしていない=当て逃げをしたことによる道路交通法違反に当たる行為となりますので、男性の逮捕容疑に事故不申告による道路交通法違反が含まれていると考えられます。

「けが人がいないから」「単なる物損事故だから」と通報などを怠れば、当て逃げとなり、道路交通法違反という犯罪が成立します。
当て逃げをすることにより、刑事事件とならずに済んだ交通事故でも刑事事件として立件されたり、逮捕・勾留によって身体拘束を受けたりするため、交通事故を起こしてしまったら、すぐに通報等を行い、道路交通法上の義務を果たすようにしましょう。
それでも、咄嗟の交通事故で気が動転してしまったなどの理由によって当て逃げをしてしまった場合には、すぐに弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、当て逃げ事件についてのご相談やご依頼についても承っています。
0120-631-881では、ご相談者様のご状況に合わせたサービスのご案内を行っていますので、まずはお問い合わせください。

(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

2022-10-13

(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

~事例~

滋賀県警草津署は25日、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、滋賀県守山市に住むフィリピン国籍の飲食店経営の女(28)を逮捕した。
逮捕容疑は、同日午前1時41分ごろ、滋賀県栗東市で軽乗用車を運転し、左折するため減速した甲賀市の男性(48)のオートバイに追突、首にけがを負わせてそのまま逃げた疑い。
(※2022年5月26日20:30京都新聞配信記事より引用)

~ひき逃げをした際の刑罰は?~

今回取り上げた事例では、ひき逃げの容疑で女性が逮捕されています。
よく「ひき逃げ」と呼ばれる行為は、「事故を起こしてそのまま逃げた」というイメージだと思われます。
この「ひき逃げ」は、実は正式な犯罪名ではありません。

そもそもひき逃げとは、人身事故を起こした後、道路交通法に定められている義務を果たさずにそのまま事故現場から離れることを指します。
道路交通法では、人身事故を起こしてしまった場合、負傷者を救護する義務(いわゆる「救護義務」)や、警察署などに通報し事故を報告する義務(いわゆる「報告義務」)、道路上の危険を防止する措置をする義務(いわゆる「危険防止措置」)を定めています。
よくイメージされる「事故を起こして逃げた」ひき逃げは、義務を果たさずに事故現場から逃げていることになる=これらの義務に反するため、道路交通法違反という犯罪になるのです。

加えて、ひき逃げ事件の場合、そもそも人身事故を起こしているということにも注意が必要です。
この時成立する罪は、人身事故がどのように起きたか、例えば、わき見運転などの不注意による人身事故なのか、赤信号を殊更に無視するなどの危険運転行為による人身事故なのかといった事情によって異なります。
不注意=過失によって起こった人身事故であれば、今回取り上げた事例同様、自動車運転処罰法に定められている過失運転致傷罪となるでしょう。

なお、この際に無免許運転や飲酒運転といった事情があれば、当然その分も罪が成立することになります。

おさらいをすると、ひき逃げ事件では、人身事故を起こしたこと自体による過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪、義務を果たさなかったこと(ひき逃げ)による道路交通法違反という2つの犯罪が成立します。
さらに、無免許運転や飲酒運転の事情があれば、上記2つの犯罪に加えてその犯罪も成立します。
今回取り上げた事例でも、女性の逮捕容疑は過失運転致傷罪と道路交通法違反という2つの犯罪になっています。

ひき逃げ事件では、単なる不注意による人身事故よりも成立する犯罪の数が増えていることだけでなく、義務を果たさずにその場から離れるという悪質性の高い行為をしていることからも、起訴され正式な刑事裁判を受ける可能性や厳しい処分を受ける可能性が高いと考えられます。

例えば、過去には以下のような裁判例があります。
・普通貨物自動車の運転中、横断歩道上の歩行者に気が付かず衝突し、加療約11日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、被害者との示談が成立し懲役10月執行猶予3年となった事例(判決:平成26年5月)
・普通乗用車の運転中、一時停止標識を無視して一時停止をせず、普通乗用車と衝突し、同乗者に加療約22日間の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年執行猶予4年が言い渡された事例(判決:平成26年8月)
・普通乗用自動車の運転中、前方左右の安全確認を怠り、被害者と衝突し、加療約94日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年6月執行猶予3年が言い渡された事例(判決:平成25年4月)
(参照:第一東京弁護士会刑事弁護委員会・編(2018)『量刑調査報告集Ⅴ』第一東京弁護士会)

もちろん、刑罰の重さは人身事故の態様や原因、被害者が亡くなっているのか、けがの重さはどの程度か、被害弁償はできているのかといった様々な事情に左右されますので、詳細な見通しなどは弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げ事件に関連したご相談・ご依頼も承っています。
在宅捜査されている方向けの初回無料法律相談から、逮捕・勾留中の方向けの初回接見サービスまで、様々なご事情に合わせたサービスをご用意していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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