(事例紹介)スピード違反で刑事裁判 執行猶予判決となった事例

2022-11-17

(事例紹介)スピード違反で刑事裁判 執行猶予判決となった事例

~事例~

千葉市の市道で法定速度を85キロ上回る時速約145キロでスポーツカーを運転したとして、道交法違反(速度超過)の罪に問われた(中略)被告(20)に千葉地裁は3日、懲役5月、執行猶予2年(求刑懲役5月)の判決を言い渡した。
中野雄壱裁判官は判決理由で「法令順守を監督すべき立場にありながら速度を出してみたい、車の性能を試してみたいという欲求のまま犯行に及び、危険運転であったことは間違いない」と指摘。一方で、反省の態度を示していることや母親が今後の監督を誓約していることなどを挙げて刑の執行を猶予した。
判決によると、1月10日午後1時半ごろ、同市稲毛区黒砂の市道で速度超過したとしている。
(後略)
(※2019年6月3日16:31産経新聞配信記事より引用)

~スピード違反で刑事裁判に?~

今回取り上げた事例では、速度超過、いわゆるスピード違反による道路交通法違反に問われた男性が起訴され、刑事裁判を受けています。
刑事裁判には大きく分けて2種類の裁判があり、1つは非公開かつ簡単な手続で終わる略式裁判と呼ばれる裁判、もう1つは公開の法廷で行われる正式裁判となります。
略式裁判は、科される刑罰が100万円以下の罰金である場合、かつ被告人がその起訴内容を認めている場合のみに開かれるもので、そこで有罪判決を受け、罰金刑を言い渡されると、罰金を支払って事件が終了するということになります。
対して、正式裁判の場合には、ドラマで見るような法廷に行き、検察官・裁判官・弁護人と裁判手続を行うことになります。

今回取り上げた事例では、正式裁判を受けているようです。
先ほど触れたように、罰金を支払って事件を終了させる略式裁判の形式では、言い渡される刑罰は罰金に限定されますので、検察官が禁錮刑や懲役刑を求めるつもりであれば、略式起訴(略式裁判のための起訴)ではなく、公判請求(正式裁判を求める起訴)をすることになり、公開の法廷で裁判が行われることになります。
スピード違反=交通違反であり、逮捕や裁判とは縁がないというイメージをもつ方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそもスピード違反自体は道路交通法という法律に違反する犯罪行為です。

道路交通法第22条第1項
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。

道路交通法第118条
第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
第1号 第22条(最高速度)の規定の違反となるような行為をした者

第3項 過失により第1項第1号の罪を犯した者は、3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する。

このように、本来、スピード違反をするということは道路交通法違反という犯罪であり、「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」もしくは「3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金」という刑罰が科されることになります。
ですから、スピード違反の悪質性や危険性が高かったり、前科がありスピード違反を繰り返していたりといった事情があれば、懲役刑や禁錮刑が適切であると判断され、公判請求され、公開の法廷で刑事裁判を受けることになることも予想されますし、場合によっては刑務所に行くこともあるということになります。

しかし、「スピード違反をしたが少額のお金を支払って終わった」という経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、スピード違反の程度によっては、「反則金」というものを支払うことで刑事処分に代えるという制度(交通反則通告制度)が適用されることがあります。

「反則金」を支払うことで刑事処分に代えるというケースでは、反則金を支払えば、前述したような裁判を受けることもなくなりますし、刑罰を受けることもなくなります(反則金は刑罰ではなく、あくまで行政処分です。)。
いわゆる「青切符」を切られたケースがこのケースに当たります。

一方で、いわゆる「赤切符」を切られたケースは、この反則金の制度の対象外となり、先ほど紹介した刑事裁判手続を受ける可能性がありますし、道路交通法違反として有罪になり刑罰を受ける可能性があります、
「青切符」によって反則金を支払った場合に前科はつきませんが、「赤切符」によって刑事手続が進み、有罪となって罰金や懲役刑などを受けた場合には前科が付くことになります。

では、スピード違反の場合、どこが「青切符」「赤切符」の境目になるのでしょうか。
スピード違反の場合、一般道路で30km/h以上高速道路で40km/h以上の超過があると「赤切符」=刑事手続に則って事件が処理されることとなっています。
今回取り上げた事例に当てはめてみると、男性は千葉県の市道で法定速度より85km/hを超える速度で自動車を運転していたということですから、反則金の対象外となり、道路交通法違反で刑事処分を受けることになり、その超過の度合いが大きいことなどから罰金よりも重い処罰が妥当と考えられ、正式起訴されたということなのでしょう。

なお、たとえ反則金の制度の対象となる「青切符」のスピード違反でも、反則金を支払わないなどの事情があれば、刑事手続へ移行することとなるため、注意が必要です。

スピード違反のような身近な交通違反でも、事情によっては刑事事件となり、裁判を受けたり前科が付いたりすることがあります。
たかが交通違反と軽く考えず、刑事事件の当事者となってしまったら、早めに弁護士に相談しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、交通に関連する刑事事件についてもご相談やご依頼を受け付けています。
まずはお気軽にご相談ください。

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