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スピード違反の否認事件

2020-08-15

スピード違反否認事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

兵庫県明石市の国道を車で運転していたAさんは、兵庫県明石警察署の速度取締で、法定速度の30キロオーバーで赤切符が切られました。
しかし、Aさんは、法定速度を30キロもオーバーした認識はなく、車の速度メーターでも30キロは超えていなかったと記憶しています。
Aさんは、スピード違反否認事件にも対応してくれる弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

スピード違反:道路交通法違反(速度超過)

警察庁によれば、平成29年及び30年に取り締まった道路交通法違反事件のうち、最も多かったのがスピード違反です。

道路交通法は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度を超える速度で車両を進行してはならないと定めています。(道路交通法第22条1項)

法令で定める最高速度については、高速自動車国道の本線車道以外の道路における、自動車の最高速度は60キロ、自動車が高速自動車国道の本線車道を通行する場合の最高速度は、車種などによって異なりますが、普通自動車の場合は100キロです。
指定又は法定最高速度を超える速度で走行した場合、例えそれが1キロオーバーであっても、速度超過となり、道路交通法に違反することになります。

道路交通法に違反した場合、行政処分や刑事処分を受けることになります。
ここでいう行政処分とは、道路交通法に基づき、都道府県公安委員会が行う免許取消処分、免許停止処分、免許許否処分、免許保留処分、運転禁止処分のことです。
車両の運転において、道路交通法に規定される違反行為があった場合、違反の程度に応じた違反点数が科せられます。
この違反点数が累積され一定の点数になるなど、所定の条件を満たした場合に行政処分を受けることになります。

また、車両の運転者がした違反行為のうち、反則行為については、一定期間内に郵便局か銀行に反則金を納めると、刑事裁判(少年の場合は家庭裁判所の審判)を受けずに事件が処理される「交通反則通告制度」が適用されます。
速度超過による道路交通法違反において、超過速度が30キロ未満の場合には当該制度が適用されます。
しかし、超過速度が高速自動車国道の本線車道以外の道路において30キロ以上の場合、高速自動車国道の本線車道において40キロ以上の場合には、交通反則通告制度は適用されず、刑事手続がとられ、刑事罰(6月以下の懲役又は10万円以下の罰金)が科される可能性が生じます。

スピード違反の否認事件

多くのスピード違反事件は、走行している車の速度計を基準に検挙するのではなく、何らかの方法で警察官が車の速度を測定し、それに基づいて検挙を行います。
警察が行う測定の方法としてレーダー式の測定や、レーザー光線を用いた測定などが知られています。
しかし、これらの測定が常に100%性格であるとは限りません。
科学技術を用いた捜査が行われる場合、その捜査による結果に信用性が認められるためには、一般に①原理が科学的根拠を有すること②(科学的に)適切な方法により検査等が実施されたことが要求されます。
たとえレーダーやレーザー光線自体の原理が科学的に間違いないないとしても(おそらく、多くは間違いないと思われますが)、その実施方法に問題があれば測定結果等は誤ったものになってしまいます。
たとえば、自動車の速度を機械を用いて図る場合には、自動車と機械の位置関係が重要になってきます。
レーダーで波を照射する角度が異なれば、反射時間等が変化しますし、あくまでも機械の設定上は車が真っ直ぐに走行することを想定していますから、車体が何らかの事情で斜めになっていた場合などには、必ずしも測定結果が正確になるとは限りません(ただし、このような場合でも正確に測定できる場合もあります)。
スピード違反を通告され、実際に走行していた速度について争う場合には、ドライブレコーダーの映像や、タコグラフを用いて争い、同時にスピードの測定方法等を争うことになります。
しかし、この主張は,高度に科学的な問題でもありますから、専門的な知識が必要となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
スピード違反否認事件でお悩みであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受付ております。

偽装免許証の行使で逮捕

2020-08-08

偽造免許証行使逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

大阪府河内長野市を車で走行中、一旦停止を怠ったとして、Aさんは、大阪府河内長野警察署の警察官に運転免許証の提示を求められました。
Aさんは、警察官に所持していた運転免許証を提示しましたが、提示された免許証が偽造されたものであったことが発覚し、Aさんは道路交通法違反及び偽造有印公文書行使の疑いで逮捕されました。
(フィクションです)

偽造免許証の行使は何罪?

Aさんは、偽の運転免許証を警察官に提示しましたが、この行為は、「偽造公文書行使」という罪に当たる可能性があります。

偽造公文書行使罪

偽造公文書行使罪は、刑法第158条に規定されています。

第158条 第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。

◇客体◇

偽造公文書行使の客体は、刑法第154条から157条に規定された行為によって作成された文書、図画、および電磁的記録です。
刑法第154条は詔書偽造等、155条は公文書偽造等、156条は虚偽公文書作成等、そして、157条は公正証書原本不実記載等の罪について規定しています。

155条は、有印公文書偽造罪、有印公文書変造罪、無印公文書偽造・変造罪を規定しています。
本条の対象となる「公文書・公図画」とは、公務所または公務員が、その名義で、その職務権限に基づいて作成すべき文書・図画のことをいいます。
運転免許証は、都道府県公安委員会によって発行される運転許可を証明する公文書ですので、155条の客体に当たります。
運転免許証は、身分証明書として広く利用されているため、偽造の対象となり易いのです。
最近では、偽造した運転免許証を販売する海外の業者とネットを介して簡単に連絡がとれるため、安易に偽造免許証を入手し行使するケースが多くなっています。

◇行為◇

偽造公文書行使の実行行為は、客体となる偽造文書を「行使」することです。
「行使」とは、偽造文書を真正文書として、または、内容虚偽の文書を内容真実の文書として使用することです。
ここでいう「使用」というのは、文書の内容を相手方に認識させ、または、認識可能な状態に置くことです。
Aさんのように、偽造免許証を警察官に提示する行為は、警察官に提示した免許証を本物の免許証として使用していますので、行使したと言えるでしょう。
本罪の成立には、行為者本人が偽造文書を作成したことまで必要とされません。
Aさんが偽造免許証を作成したか否かにかかわらず、実際に偽造した運転免許証を行使したことで偽造公文書行使罪は成立します。

加えて、Aさんが公安委員会の免許を受けずに車両を運転していたのであれば、無免許運転となり、道路交通法違反も成立することになります。

偽造免許証の行使で逮捕された場合

逮捕後、勾留請求される可能性は高いでしょう。
しかし、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことを証明し、身体拘束を伴う必要がないこが認められれば、裁判官が勾留請求を却下する、又は裁判所が勾留の決定を取消す可能性はあります。
勾留となれば、逮捕から13日もの間身体拘束を受けることになりますので、その間会社や学校に行くことができず、解雇や退学といった可能性も生じてきますので、逮捕となれば、できる限り早期に弁護士に相談し、解放に向けて動くのがよいでしょう。

偽造公文書行使罪は重い罪ですので、公判請求される可能性が高いでしょう。
容疑を否認する場合は、無罪に向けた活動を、容疑を認めている場合には、執行猶予獲得を目指した活動を行うことになります。

このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が偽造免許証行使逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
まずは、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。

ひき逃げ事件で勾留阻止

2020-08-01

ひき逃げ事件で勾留阻止に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

大阪府東大阪市の県道で、車を運転していたAさんは、信号で止まっていたVさんの車に衝突しました。
慌てたAさんは、そのまま現場を立ち去り、現場から近いコンビニに車を停め、コンビニで飲料を買いました。
我に返ったAさんは、現場に戻りましたが、既に通報を受けて駆け付けていた大阪府布施警察署の警察官にひき逃げ事件の被疑者として現行犯逮捕されました。
その後、逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、なんとかすぐに釈放されないかと思い、迅速に対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

ひき逃げ事件で身柄拘束

交通事故を起こした場合、運転手は負傷者を適切に救護し、事故について警察に報告する義務を負います。
このような義務を負っているにもかかわらず、何もせず事故現場から逃亡する行為を「ひき逃げ」といいます。
ひき逃げ事件を起こすと、救護義務違反や報告義務違反で道路交通法違反が成立します。
また、交通事故を起こし、相手方に怪我を負わせてしまったり、死亡させてしまった場合には、多くの場合、過失運転致死傷罪に、場合によっては危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。

ひき逃げ事件では、一度現場から逃走しているため、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあると認められ、逮捕や勾留で身柄が拘束される可能性が高いと言えるでしょう。

ひき逃げ事件で勾留阻止を目指す活動

逮捕に引き続きなされる「勾留」というのは、被疑者または被告人を拘禁する裁判および執行のことです。
起訴前になされる勾留を「被疑者勾留」、起訴後の勾留を「被告人勾留」と呼びます。

被疑者勾留の要件は、①勾留の理由、および②勾留の必要性です。

勾留の理由
勾留の理由とは、
(a)被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由がある場合で、かつ、
(b)住所不定、罪証隠滅のおそれ、、逃亡のおそれ、の少なくとも1つに該当する
ことです。

勾留の必要性
勾留の理由がある場合でも、被疑者を勾留することにより得られる利益と勾留されることで被る被疑者の不利益を比較衡量した結果、被疑者を勾留する必要がある場合でなければなりません。

ひき逃げを起こした場合には、①勾留の理由の「逃亡のおそれ」が認められる可能性が高いでしょう。
そのため、勾留の要件を満たしていない旨を主張するためには、①勾留の理由はあるが、②勾留の必要性がないことを客観的に立証していかなければなりません。
例えば、同居の家族などの確実な身柄引受人がおり、彼らによる監視監督が期待できるため、出頭確保のための手段が講じられており、勾留する必要がないことや、勾留されることで被疑者は職を失う可能性が高くなり、被疑者家族の生活が困窮するおそれがあるため、勾留の相当性を欠くことなどを主張した書面を提出します。

逮捕から勾留までは、長くとも3日で決まりますので、迅速に対応する必要があります。

逮捕から48時間以内に、被疑者の身柄は警察署から検察庁に移ります。
検察庁に送致されない場合は、48時間以内に釈放されることになります。
被疑者は担当検察官からの取調べを受けます。
被疑者の身柄を受理してから24時間以内に、検察官は、当該被疑者について勾留請求をするいか否かを決定します。
勾留請求しない決定がなされると、被疑者は釈放されます。
勾留請求がなされた場合、被疑者の身柄が検察庁から裁判所に移ります。
被疑者は、今度は裁判官と面談をし、裁判官は当該被疑者について勾留するか否かを判断します。
裁判官が勾留決定した場合、検察官が勾留請求した日から10日間被疑者の身柄が拘束されることになります。
他方、裁判官が検察官の勾留請求を却下した場合には、被疑者は釈放されます。

以上の流れにおいて、弁護士は勾留阻止すべく、被疑者の身柄が検察庁にある段階で、担当検察官に勾留請求をしないよう求める意見書を提出します。
検察官が勾留請求した場合には、今度は裁判官に対して勾留決定しないことを求める意見書を提出します。
意見書には検察官・裁判官の手元の証拠・資料には記されていない事情が書かれていることもあり、意見書の提出により検察官が勾留請求をしない場合や裁判官が勾留請求を却下することもあります。

裁判官が勾留を決定した後であっても、その決定を不服として申立てを行うこともできます。
その場合、勾留を決定した裁判官以外の裁判官3人によって、先の決定が正しいか否かが判断されます。
ここで、弁護人の申立てが認められると、先の決定が取り消され、検察官の勾留請求が却下され、被疑者は釈放されることになります。

このように、勾留阻止に向けての活動は限られた時間で迅速に行わなければなりません。
そのため、刑事事件や少年事件に精通した弁護士に勾留阻止に向けた活動を依頼するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
ご家族がひき逃げ事件を起こしお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

少年の交通事故

2020-07-25

少年交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

千葉県君津市に住むAさんは,18歳の大学生ですが,大学生になり自動車の免許を取得して,家の車を運転していました。
ある日,Aさんが運転していたところ,友達から電話がかかってきたので,運転中にもかかわらずそのまま電話に出てしまい,Aさんは前方から目を離してしまいました。
前方の道路には信号機のない横断歩道があり,そこをたまたまBさんが横断していたのですが,Aさんはそれに気づかず,ブレーキをかけることなく横断歩道に侵入しました。
結果,AさんはBさんを轢いてしまい,この事故によってBさんは亡くなってしまいました。

Aさんは今後どのようになるのか不安になり,事務所に相談に来ました。
(フィクションです)

交通死亡事故の流れ

Aさんは,前方不注意でBさんを轢いてしまいましたので,Aさんには過失運転致死罪が成立することになります。
過失運転致死罪が成立するような場合では,現場で警察官によって現行犯逮捕になる場合もありますが,逮捕されない場合もあります。
また,仮に逮捕されたような場合でも,飲酒や薬物などの使用が疑われなかったり,過失の内容が単純であるような場合には,翌日に釈放されることもあります。
しかし,逮捕されるかどうかは,捜査をどのように進めるかという方法の問題ですから,仮に逮捕されなかったり,釈放された場合でも,その後警察に何度か呼び出しを受けることとなります。

家庭裁判所送致

警察が捜査を終えると,事件は検察庁に送られます。
検察庁は,被疑者が成人である場合には,自ら起訴するかどうかについて判断をしますが,被疑者が少年(20歳未満の者。男女問いません)である場合には,事件を家庭裁判所に送致します。
これは,交通事故の場合でも変わりませんので,Aさんの事件は,家庭裁判所に送致されることになります。
なお,捜査をする警察署や,検察庁,成人の場合裁判を開く裁判所は,通常事件が起きた場所(つまり,事故現場)を管轄する機関となります。
しかし,少年事件の場合は,一旦は事件が起きた場所を管轄する家庭裁判所に事件が送致されますが,その後少年の住所を管轄する家庭裁判所に移送されることとなっています。
そのため,たとえばたまたま旅行先で事故を起こしてしまったような場合には,捜査などは旅行先の警察署で行われますが,家庭裁判所の手続き自体は,自宅を管轄する家庭裁判所で行われることになります。

調査

家庭裁判所に事件が送られると,家庭裁判所から自宅に呼び出し状が届き,少年と親権者揃って家庭裁判所に出頭することになります。
そこで,家庭裁判所調査官と呼ばれる人から,事故の原因等を尋ねられることとなります。この手続きのことを,調査と呼んでいます。

少年審判

調査が終了すると,家庭裁判所で少年審判が開かれます。
少年審判は,成人の裁判とは異なり,非公開で行われますし,審判の結果それ自体も前科になるようなものではありません。
少年審判は,裁判官が少年に対して何らかの判断を言い渡して終了しますが,その判断として
①少年院送致②保護観察処分③不処分④試験観察⑤検察官送致といった種類のものがあります。
それぞれの細かい内容は別の記事に譲りますが,これらの言渡しが終われば,少年審判の手続きは終了します。

少年の交通事故

少年交通事故を起こした場合には,上記の検察官送致の決定がなされることが多くなっています。
検察官送致決定とは,家庭裁判所に送られてきた事件を,もう一度検察官のところに戻すという決定です。
そして,戻された検察官は,基本的には事件を起訴することになります(少年法45条5号)。起訴するということは,つまり成人と同様の裁判を受けることになります(細かい点は異なりますが,少なくとも法廷には立たなければなりません)。
つまり,検察官送致決定を受けると,家庭裁判所の手続きで事件が終了せず,その後再度裁判を受けなければならないということを意味します。
そして,少年審判と異なり,裁判は基本的には弁護士が付かなければ開かられないことになっていますから(交通事故の場合には,弁護士がいなければなりません),少年や家族は,弁護士を選任する必要があります。

お子様が交通事故を起こし対応にお困りの方は、少年交通事故にも対応する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
刑事事件・少年事件専門弁護士が、迅速に対応いたします。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

酒類提供で書類送検

2020-07-18

酒類提供書類送検された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

埼玉県飯能市の居酒屋で店長を務めるAさんは、常連客のBさんが車を運転すると知りながら酒を提供したとして、埼玉県飯能警察署に道路交通法違反(酒類提供)の疑いで取調べを受けました。
その後、Aさんは、同罪名でさいたま地方検察庁川越支部書類送検され、取調べのため出頭するようにとの連絡を受けました。
どのような処分を受けることになるのか不安になったAさんは、出頭前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

道路交通法違反~酒類提供~

飲酒運転が法律で禁止されていることや、一定程度以上のアルコール濃度を体内に保持した状態で車を運転する行為が犯罪に当たることは、みなさんご存知でしょう。
しかし、飲酒運転をした者だけでなく、運転することを知りながら客に酒を提供した者や車両を提供した者についても犯罪が成立することがあります。

1.酒類提供

何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。(道路交通法第65条3項)

本項は、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがある者に、酒類を提供することや飲酒をすすめることを禁止したものです。
酒類を提供する行為については、罰則が設けられています。

「車両等を運転することとなるおそれがある者」とは、車両等を提供すれば、酒気を帯びて車両等を運転することとなる蓋然性があることをいいます。

「酒の提供」とは、自らが事実上支配している酒類を飲酒できる状態におくことをいいます。
提供を受ける者の要求の有無や有償・無償は問いません。
酒類の提供者となり得るのは、酒類を事実上支配している者であるため、飲食店の従業員で、経営者や責任者等から指示された酒を運ぶだけの役割しかない場合には、酒類を提供しているとは言えません。

本罪が成立するためには、提供を受けた者が飲酒運転を行ったことの認識まで必要とされません。
酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがある者であることを認識しつつ酒類を提供し、酒類の提供を受けた者酒酔い運転をした場合、酒類の提供者は、道路交通法第117条の2の2第5号(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)、酒気帯び運転であれば、同法第117条の3の2第2号(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)の罰則が適用される可能性があります。

なお、本項の罰則が適用されるのは、酒類の提供行為であり、「すすめる行為」に対しては罰則が設けられていません。
単に飲酒を「すすめる行為」だけでは、飲酒運転への関与が弱く、罰則を設けるまでの必要性がないためです。
ただ、この行為が教唆や幇助に当たる場合は、教唆犯、幇助犯として処罰されることになります。

2.車両等提供

何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。(道路交通法第65条2項)

本項は、酒気を帯びている者であって、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがある者に、車両等を提供することを禁止したものです。

車両の「提供」とは、提供を受ける者が利用し得る状態に置くことをいいます。
車両等の所在を教え、車のエンジンキーを渡す行為も提供行為に当たります。

本罪の成立には、提供を受けた者が飲酒運転を行ったことの認識までは必要とされず、車両等の提供者において、提供を受ける者が酒気を帯びている者で、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがあるとの認識が必要となります。

酒気を帯びていることを認識しつつ車両等を提供し、車両等の提供を受けた者が酒酔い運転をした場合、車両等提供者は、道路交通法第117条の2第2号(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)、酒気帯び運転であれば同法第117条の2の2第4号(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)の罰則が適用されることになります。

3.車両同乗

何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第百十七条の二の二第六号及び第百十七条の三の二第三号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。(道路交通法第65条4項)

本項は、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、運転者に対し、車両を運転して自己を運送することを要求または依頼して、車両に同乗することを禁止したものです。

同乗者において、運転者が酒に酔った状態であることを認識し、運転者が酒酔い運転をしたばあいは、道路交通法第117条の2の2第6号(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)、同乗者において車両が運転者が酒気を帯びた状態と認識したが、実際に運転者が酒に酔った状態または酒気を帯びた状態で車両を運転した場合や、運転者は酒に酔っていると認識したが、実際には運転者が酒気を帯びた状態で車両を運転した場合には、同法第117条の3の2第3号(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)の罰則が適用されることになります。

このように、実際に飲酒運転をした者でない場合でも、飲酒運転に関与した者として処罰の対象となることがあります。

あなたが、道路交通法違反(酒類提供)や飲酒運転で被疑者となり、書類送検されて対応にお困りであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

飲酒運転でひき逃げ

2020-07-11

飲酒運転ひき逃げした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

会社員のAさんは、神奈川県藤沢市の市道で酒に酔った状態で車を運転し、自転車に乗っていた男性をはねてそのまま逃げた疑いで、神奈川県藤沢警察署に逮捕されました。
Aさんは、取調べに対して「飲酒運転をしていたのは認めるが、人をひいた覚えはない。」と容疑を否認しているようです。
逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

1.飲酒運転に対して問われる罪

飲酒運転は、道路交通法により固く禁じされています。
身体に一定以上のアルコールを保持したまま車などを運転した場合には、道路交通法違反が成立し、刑事罰の対象となります。

(1)酒気帯び運転

呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上、もしくは血液1mlあたり0.3㎎以上のアルコールを含んで車両を運転する行為が、「酒気帯び運転」に当たり、刑事罰は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

(2)酒酔い運転

「酒酔い運転」は、呼気アルコール濃度などは関係なく、飲酒の影響で正常に車両が運転できないおそれがある状態で車両を運転する行為です。
例えば、まっすぐ歩くことができなかったり、呂律が回っていないなどの状況から、正常に車両が運転できない状況か否かが判断されます。
酒酔い運転の刑事罰は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

2.ひき逃げに対して問われる罪

人身事故を起こしてしまった場合、運転手は、負傷者を助けたり、警察に事故を報告しなければなりません。
負傷者を適切に助ける義務を「救護義務」、警察に通報する義務を「報告義務」と呼び、これらの義務を行った場合は、道路交通法違反が成立することになります。
救護義務違反についての刑事罰は10年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

3.人身事故を起こしたことにより問われる罪

飲酒運転で事故を起こしてしまい、人に怪我を負わせた、あるいは、人を死亡させてしまった場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に定められる以下の罪が適用される可能性があります。

(1)過失運転致死傷罪

自動車の運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるとされています。

(2)危険運転致死傷罪

アルコールの影響により、正常な運転が困難な状態で車両を走行させる行為を行い、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
「正常な運転が困難な状態」というのは、道路や交通の状況などに応じた運転をすることが難しい状態になっていることを指します。
飲酒運転の場合、アルコールによる酔いのために、前方をしっかり見て運転することが難しい状態、自分が思ったとおりにハンドルやブレーキなどを操作するのが難しい状態などが該当します。
本罪の法定刑は、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役、人を負傷させた場合は15年以下の懲役となっており、非常に重い罪と言えます。

また、アルコールの影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら車両を運転した上、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を死亡させた場合には15年以下の懲役、人を負傷させた場合には12年以下の懲役が科される可能性があります。(通称、「準危険運転致死傷罪」)
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、正常な運転が困難な状態に陥っているわけではないが、アルコールのために、自動車を運転するのには必要な注意力・判断力・操作能力が相当程度低下しており、危険である状態のことをいいます。

4.飲酒運転でひき逃げした場合は?

飲酒運転で人身事故を起こし、その場から逃走した場合には、次のような罪が成立する可能性があります。

①道路交通法違反(酒気帯び運転)+道路交通法違反(救護義務違反)+過失運転致死傷罪

②危険運転致死傷罪+道路交通法違反(救護義務違反)

③準危険運転致死傷罪+道路交通法違反(救護義務違反)

これらの罪は、併合罪となり、その処断刑は、併合罪のうち2個以上の罪について有期懲役・禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。
①の場合には、長期15年以下の懲役、②死亡の場合は長期30年以下の懲役、怪我をさせた場合は長期22年6月以下の懲役、③死亡の場合は長期22年6月以下の懲役、怪我をさせた場合は長期18年以下の懲役、となります。

このように、飲酒運転ひき逃げをした場合には、重い罪に問われる可能性があります。
公判請求され、正式裁判となることが予想されますので、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が交通事件を起こし対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

携帯電話使用で交通事故

2020-07-04

携帯電話使用交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

東京都立川市の道路を自家用車で走行していたAさんは、スマートフォンを手に取り、メッセージを確認していたところ、横断歩道があることに気が付かず、横断中の歩行者にぶつかってしまいました。
Aさんは、すぐに車を停車し、歩行者の安否を確認し、すぐに119番通報しました。
幸い、歩行者の怪我の程度は軽く済みましたが、Aさんは駆け付けた警視庁立川警察署の警察官に事故の原因について話を聞かれています。
(フィクションです)

携帯電話使用等に関する罰則の強化

スマートフォンや携帯電話は、今や私たちの生活に欠かすことができない必需品となっていますよね。
しかし、運転中にスマートフォンや携帯電話の画面を注視していたことに起因する交通事故が多く、運転中の「ながらスマホ」が社会的に問題となっています。
運転中のスマートフォンや携帯電話の使用は、スマートフォンや携帯電話に気をとられ、運転をする上での注意義務を欠くことで重大な交通事故を引き起こし得る大変危険な行為です。

令和元年12月1日に施行された改正道路交通法は、携帯電話使用等に関する罰則を強化しました。

(1)携帯電話使用等(保持)

携帯電話を保持して通話する行為や携帯電話の画面を注視する行為が禁止されています。
これに違反した場合、改正前は普通車に対する反則金が6,000円だったのに対し、改正後は18,000円と3倍に引き上げられました。
また、罰則については、改正前が5万円以下の罰金となっていたものが、改正後には6月以下の懲役または10万円以下の罰金と、罰金刑のみならず懲役刑が設けられました。

自動車や原動機付自転車の運転者がした違反行為のうち、反則行為については、一定期間内に郵便局か銀行に反則金を納めると、刑事裁判(少年の場合は、家庭裁判所の審判)を受けずに事件が処理される制度(交通反則通告制度)があります。
ですので、反則金の適用がある場合には、期限内に反則金を納付することで刑事処分を受けることなく事件を終了させることができます。
ただし、反則金を納付しなければ、刑事裁判(少年の場合には、家庭裁判所の審判)を受けることになります。

(2)携帯電話使用等(交通の危険を生じさせた場合)

携帯電話を保持しての通話や画面の注視、カーナビの画面の注視によって交通の危険を生じさせる行為については、交通反則通告制度の適用はなく、罰則は1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

携帯電話使用で事故を起こした場合

さて、携帯電話を保持して画面を注視したことにより、交通事故を起こしてしまった場合について考えてみましょう。

交通事故は、物損事故と人身事故とに分けられます。

物損事故は、物にぶつかって破損させる交通事故です。
人が乗車している車にぶつかった場合であっても、相手方に怪我を負わせていなければ、物損事故として処理されることがあります。
運転中の携帯電話使用に起因して物損事故を起こした場合には、先述したように交通の危険を生じさせた場合として、道路交通法違反が成立し、法定刑の1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

他方、人に怪我を負わせた人身事故の場合には、道路交通法違反の他に、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律で定められる過失運転致死傷罪が成立するでしょう。
この場合、事件内容にもよりますが、公判請求され、刑事裁判を受ける可能性が高いでしょう。

刑事裁判での弁護は、交通事件を含めた刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
迅速かつ適切な弁護活動により、執行猶予判決の獲得を目指します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
交通事故を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

覚醒剤使用後に運転し事故を起こしたら

2020-06-27

覚せい剤使用後運転事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

東京都世田谷区の国道で自家用車を運転中に、歩道を歩いていた歩行者をはねて死亡させ、そのまま逃げた疑いで、警視庁世田谷警察署は、運転していたAさんを過失運転致死および道路交通法違反の容疑で逮捕しました。
しかし、Aさんの尿から覚せい剤の陽性反応が出たため、警察はAさんが覚せい剤を使用した状態で車を運転していたとみて、危険運転致死の適用も視野に捜査しています。
(フィクションです)

車を運転し人身事故を起こした場合

交通事故には、物損事故と人身事故とがあります。
物損事故と人身事故の違いは、簡単に言えば、交通事故により物が壊れたのか、人が怪我をしたり死亡してしまったりしたのか、にあります。
人身事故の場合、加害者は行政処分、民事処分、そして刑事処分の対象となります。

人身事故を起こした多くの場合、刑事事件として立件され、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転致傷処罰法」といいます。)により過失運転致死傷罪に問われることになります。

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
その法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですが、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるとされています。

覚醒剤使用後に運転し人身事故を起こした場合

覚せい剤を使用した後に車を運転し、人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪ではなく危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。

危険運転致死傷罪は、薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を死傷させた場合に成立します。
「正常な運転が困難な状態」とは、道路や交通の状況などに応じた運転をすることが難しい状態になっていることをいいます。
人を負傷させた場合の法定刑は、15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役と非常に重くなっています。

また、薬物の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら自動車を運転した上、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた場合も、危険運転致死傷罪に問われることになります。
この場合の法定刑は、人を負傷させた者については12年以下の懲役、人を死亡させた者は15年以下の懲役です。
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、正常な運転が困難な状態に陥っているわけではないが、薬物のために、自動車を運転するのに必要な注意力・判断力・操作能力が相当程度低下して、危険である状態のことをいいます。

加えて、覚せい剤を使用していたことにより、覚せい剤取締法違反(覚せい剤使用)についても罪に問われることになります。

危険運転致死傷罪は非常に重い罪であり、前科がなくともいきなり実刑となる可能性は大いにあります。
このような場合には、言い渡される刑が少しでも軽くなるよう刑事事件に精通する弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。

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あおり運転で刑事事件に

2020-06-20

あおり運転刑事事件になる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

福岡県久留米市の車道を走行していたVさんでしたが、後方の車が急接近するなどのあおり運転を繰り返してきたため、Vさんは恐怖を感じて何とか逃げようと速度を上げました。
後方の車は、追い越し車線でVさんを追い越し、Vさんの前に割り込み、今度は低速度での運転をはじめました。
その車は、急に停止したため、Vさんはその車を回避しようとハンドルを左にきったため、ガードレールに衝突してしまいました。
後日、福岡県久留米警察署は、あおり運転をし事故を誘発したとして会社員のAさんを逮捕しました。
(フィクションです)

あおり運転により成立し得る罪は?

あおり運転は、一般的に、道路を走行する自動車やバイクなどに対して、車間距離を極端に詰めて威圧したり、幅寄せや急停止で運転を妨害するなど、意図して嫌がらせを行う危険行為のことを指します。
あおり運転は、重大な交通事故につながる悪質かつ危険な行為です。

現状、あおり運転については、道路交通法違反や刑法上の暴行罪を適用して対処しています。

1.道路交通法違反

道路交通法は、「あおり運転罪」なる罪を設けているわけではありません。
あおり運転」とみなされる個々の運転行為が、道路交通法に違反するのです。
以下、よくある「あおり運転」の行為についてみていきましょう。

(A)車間距離を必要以上に詰める行為:車間距離所持義務違反

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

車間距離所持義務違反の罰則は、高速道路を走行中のケースでは、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金、その他の道路を走行中のケースでは、5万円以下の罰金です。

(B)隣の車線に車を幅寄せする行為:進路変更禁止違反

第二十六条の二 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
3 車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示をこえて進路を変更してはならない。
一 第四十条の規定により道路の左側若しくは右側に寄るとき、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためその通行している車両通行帯を通行することができないとき。
二 第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のため、通行することができなかつた車両通行帯を通行の区分に関する規定に従つて通行しようとするとき。

罰則は、5万円以下の罰金です。

(C)急ブレーキをかける行為:急ブレーキ禁止違反

第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

罰則は、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

2.暴行罪

刑法第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

暴行罪の「暴行」とは、「不法な有形力の行使が人の身体に対して加えられる」場合を指します。
殴る蹴るといった暴力のみならず、狭い四畳半の部屋で在室中の被害者を脅かすために、日本刀の抜き身を振り回す行為も「暴行」に当たります。
あおり運転」の場合、車間距離の接近、幅寄せや威嚇といった行為が「有形力の行使」に当たるとみなされると、暴行罪が適用される可能性があります。

このように、あおり運転とみなされる運転行為を行っただけでも、道路交通法違反や暴行罪が成立し、刑事事件として処理されることになります。

あおり運転の結果、事故を起こした場合は?

あおり運転をした結果、交通事故を起こし、人を死傷させてしまった場合には、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)に該当する可能性があります。

危険運転致死傷罪とは、以下の行為を行うことにより人を負傷又は死亡させた場合に成立する犯罪です。
①アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状況で自動車を走行させる行為
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
③進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
④人・車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人・車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑤赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑥通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

あおり運転は上の④に該当し得、結果、相手方に怪我を負わせてしまった場合には、危険運転致傷罪が成立する可能性があるでしょう。

あおり運転、危険運転で逮捕されてお困りであれば、交通事件・刑事事件に精通する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

スピード違反による交通事故

2020-06-13

スピード違反による交通事故が起きた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

京都府長岡京市の高速道路を時速180キロで走行していたAさんは、前方を走行していた車が車線変更したことに気が付くのが遅く、速度を十分に落とすことができず、前を走っていた車に衝突してしまいました。
前の車に乗車していた夫婦は、怪我をしているようで、通報を受けて駆け付けた救急車に運ばれていきました。
Aさんは、京都府警察の警察官に過失運転致傷および道路交通法違反(速度超過)の疑いで現行犯逮捕されました。
(フィクションです。)

スピード違反について成立する罪

法定速度を超える速度で運転した場合、いわゆるスピード違反は、重大な事故につながるおそれがあることから、道路交通法で厳しく規制されています。
スピード違反は、道路交通法において「速度超過」と呼ばれ、次のように禁止されています。

道路交通法第22条 
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。

政令で定める最高速度とは、一般道では時速60キロ、高速道路では時速100キロです。
法定速度を1キロでもオーバーすれば速度超過となります。
一般道路において、超過速度が30キロ未満であれば、反則金の納付による行政処分で終了しますが、超過速度が30キロ以上となれば、行政処分ではなく刑事処分の対象となります。
高速道路であれば、超過速度が40キロ以上で刑事手続に付されます。
速度超過による道路交通法違反の罰則は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
お金を納めるという点では、反則金も罰金も同じですが、罰金は刑事罰であり、有罪判決を受けたことが前提となりますので、前科が付くことになります。

スピード違反による交通事故を起こした場合

スピード違反交通事故を起こし、相手に怪我を負わせてしまった場合、以下の罪が成立する可能性があります。

(1)過失運転致死傷罪

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるとされています。

(2)危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させる罪です。
①アルコールや薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③信仰を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤赤信号等を殊更無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑥交通禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
スピード違反の程度が、②の「進行を制御することが困難な高速度」である場合には、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
「進行を制御することが困難な高速度」であるか否かは、スピードだけでなく、走行していた道路の状況等を考慮して判断されます。
危険運転致死傷罪の刑罰は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合には1年以上の有期懲役と、過失運転致死傷罪よりも重くなっています。

スピード違反交通事故を起こした場合、道路交通法違反や過失運転致死傷罪、場合によっては危険運転致死傷罪が成立することがあります。
多くが正式裁判となり、危険運転致死傷罪で有罪となれば実刑の可能性もあります。
ですので、交通事件にも対応する刑事事件に強い弁護士に相談・依頼し、できる限り寛大な処分となるよう動くことが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
交通事件でお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

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