酒類提供で書類送検

2020-07-18

酒類提供書類送検された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

埼玉県飯能市の居酒屋で店長を務めるAさんは、常連客のBさんが車を運転すると知りながら酒を提供したとして、埼玉県飯能警察署に道路交通法違反(酒類提供)の疑いで取調べを受けました。
その後、Aさんは、同罪名でさいたま地方検察庁川越支部書類送検され、取調べのため出頭するようにとの連絡を受けました。
どのような処分を受けることになるのか不安になったAさんは、出頭前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

道路交通法違反~酒類提供~

飲酒運転が法律で禁止されていることや、一定程度以上のアルコール濃度を体内に保持した状態で車を運転する行為が犯罪に当たることは、みなさんご存知でしょう。
しかし、飲酒運転をした者だけでなく、運転することを知りながら客に酒を提供した者や車両を提供した者についても犯罪が成立することがあります。

1.酒類提供

何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。(道路交通法第65条3項)

本項は、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがある者に、酒類を提供することや飲酒をすすめることを禁止したものです。
酒類を提供する行為については、罰則が設けられています。

「車両等を運転することとなるおそれがある者」とは、車両等を提供すれば、酒気を帯びて車両等を運転することとなる蓋然性があることをいいます。

「酒の提供」とは、自らが事実上支配している酒類を飲酒できる状態におくことをいいます。
提供を受ける者の要求の有無や有償・無償は問いません。
酒類の提供者となり得るのは、酒類を事実上支配している者であるため、飲食店の従業員で、経営者や責任者等から指示された酒を運ぶだけの役割しかない場合には、酒類を提供しているとは言えません。

本罪が成立するためには、提供を受けた者が飲酒運転を行ったことの認識まで必要とされません。
酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがある者であることを認識しつつ酒類を提供し、酒類の提供を受けた者酒酔い運転をした場合、酒類の提供者は、道路交通法第117条の2の2第5号(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)、酒気帯び運転であれば、同法第117条の3の2第2号(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)の罰則が適用される可能性があります。

なお、本項の罰則が適用されるのは、酒類の提供行為であり、「すすめる行為」に対しては罰則が設けられていません。
単に飲酒を「すすめる行為」だけでは、飲酒運転への関与が弱く、罰則を設けるまでの必要性がないためです。
ただ、この行為が教唆や幇助に当たる場合は、教唆犯、幇助犯として処罰されることになります。

2.車両等提供

何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。(道路交通法第65条2項)

本項は、酒気を帯びている者であって、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがある者に、車両等を提供することを禁止したものです。

車両の「提供」とは、提供を受ける者が利用し得る状態に置くことをいいます。
車両等の所在を教え、車のエンジンキーを渡す行為も提供行為に当たります。

本罪の成立には、提供を受けた者が飲酒運転を行ったことの認識までは必要とされず、車両等の提供者において、提供を受ける者が酒気を帯びている者で、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがあるとの認識が必要となります。

酒気を帯びていることを認識しつつ車両等を提供し、車両等の提供を受けた者が酒酔い運転をした場合、車両等提供者は、道路交通法第117条の2第2号(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)、酒気帯び運転であれば同法第117条の2の2第4号(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)の罰則が適用されることになります。

3.車両同乗

何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第百十七条の二の二第六号及び第百十七条の三の二第三号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。(道路交通法第65条4項)

本項は、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、運転者に対し、車両を運転して自己を運送することを要求または依頼して、車両に同乗することを禁止したものです。

同乗者において、運転者が酒に酔った状態であることを認識し、運転者が酒酔い運転をしたばあいは、道路交通法第117条の2の2第6号(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)、同乗者において車両が運転者が酒気を帯びた状態と認識したが、実際に運転者が酒に酔った状態または酒気を帯びた状態で車両を運転した場合や、運転者は酒に酔っていると認識したが、実際には運転者が酒気を帯びた状態で車両を運転した場合には、同法第117条の3の2第3号(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)の罰則が適用されることになります。

このように、実際に飲酒運転をした者でない場合でも、飲酒運転に関与した者として処罰の対象となることがあります。

あなたが、道路交通法違反(酒類提供)や飲酒運転で被疑者となり、書類送検されて対応にお困りであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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