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赤色信号看過と過失運転致傷罪・危険運転致傷罪
赤色信号看過と過失運転致傷罪・危険運転致傷罪
赤色信号看過と過失運転致傷罪・危険運転致傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
神奈川県平塚市に住むAさんは、深夜午前1時頃、普通乗用自動車を運転して帰宅途中、前方の対面信号の赤色表示を看過し、時速約60キロメートルで交差点に進入しました。
そうしたところ、右方から交差点に進入してきたVさん運転の軽自動車に自車を衝突させ、Vさん運転の軽自動車を電柱に衝突させてVさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせました。
Aさんは、通報を受けて駆け付けた神奈川県平塚警察署に過失運転致傷罪で現行犯逮捕され、その後起訴されました。
(フィクションです)
~ 過失運転致傷罪 ~
過失運転致傷罪とは、どんな罪なのでしょうか?
まずは、過失運転致傷罪が規定されている法律、条文から確認することにします。
過失運転致傷罪は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律)」の5条に規定されています。
法律5条
自動車の運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
つまり、過失運転致傷罪が成立した場合、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。
「自動車の運転上必要な注意義務を怠り」とは、「過失」があることをいいます。
では、「過失」とは何かというと、難しく言えば、犯罪事実の認識又は認容がないまま、不注意によって一定の作為・不作為を行うことをいいます。
そして、「不注意」とは注意義務をいいますから、「過失」とは、要は、注意義務を怠ること(注意義務違反=~すべき(注意義務)だったにもかかわらず、それを怠った、しなかったということ)をいうのです。
~ 本件の場合の「注意義務」とは? ~
では、本事例における「注意義務」とは何かといえば、それはもちろん、信号表示に従って交差点内に進入する義務でしょう。
道路交通法7条では、「道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号・・・・に従わなければならない」と規定されています。
なお、道路交通法施行令2条では、「赤色の灯火」の意味について「車両等は、停止位置を超えて進行してはならないこと」などと規定しています。
このことから、本事例では、「赤色信号に従わなければならない」「停止位置を超えてはならない」とことが「注意義務」、それに違反することが「注意義務違反」=「過失」ということになります。
~ 故意ある場合は危険運転にも ~
なお、これまでは過失を前提としたお話でしたが、対面信号が赤色表示につき故意がある場合、すなわち、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転した場合」は「危険運転」とされるおそれがあることに注意を要します。
危険運転の場合、人を負傷させた場合は「15年以下の懲役」、人を死亡させた場合は「1年以上の有期懲役」です。
なお、「殊更に無視」の意義について、判例(平成20年10月16日)では、「およそ赤色の投下信号に従う意思のないものをいい、対面信号機が赤色の灯火信号を表示しているのを認識し、交差点入口の停止線手前で停止することが十分であるのに、これを無視して交差点に進入する行為はもちろん、赤色の灯火信号であることについて確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色の灯火信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も含まれる」としています。
また、「重大な交通の危険を生じさせる速度」については、「時速約20キロ」がこれに当たると判示した裁判例(札幌高裁平成17年9月8日)があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。
過失運転致死事件を起こし逮捕
過失運転致死事件を起こし逮捕
過失運転致死事件を起こし逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは深夜、東京都新宿区内の道路において自動車を運転中、横断歩道を渡っていたVさんに気付くのが遅れ、衝突してしまいました。
Aさんは救急車を呼び、Vさんは病院に搬送されましたが、Vさんは全身を強打しており、間もなく死亡してしまいました。
Aさんは救急車と同時にかけつけた警視庁四谷警察署の警察官に、過失運転致死罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~過失運転致死罪とは?~
自動車を運転し、人身事故を起こすと、過失運転致死傷罪の疑いをかけられる可能性があります。
一般に、交通事故を起こすと、①刑事上の責任、②民事上の責任、③行政上の責任を負うことになります。
民事上の責任とは、Vさんの遺族に損害を賠償しなければならないことを意味し、行政上の責任とは、Aさんが受けている運転免許を停止されたり、あるいは取り消されたりすることを意味します。
過失運転致死傷罪の嫌疑をかけられ、有罪判決を受ける場合などが、刑事上の責任ということができます。
過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。
法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっております。
過失運転致死罪とは、上記のうち、被害者が死亡してしまった場合に成立します。
傷害するに留まった場合は、過失運転致傷罪が成立します。
両者を合わせて、過失運転致死傷罪と呼称されます。
被害者の傷害が軽いときは、情状により、刑が免除されることがありますが、死亡させてしまった場合には、この規定により免除されることはありません。
~逮捕後、Aさんはどうなるのか?~
現行犯逮捕された後は、警察署に引致され、犯罪事実の要旨、弁護人選任権があることを伝えられ、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。
留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めます。
勾留の請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日の間勾留されることになり、さらにやむを得ない事由があると認められるときは、最長10日間、勾留が延長されます。
Aさんが勾留されている場合は、勾留の満期日までに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。
~早期の身柄解放を実現するために、弁護士に依頼~
上記のように、勾留・勾留延長されると、捜査段階で最長23日間もの間身体拘束を受けることになります。
23日間もの間会社を無断欠勤したり、学校を欠席すると、Aさんの社会復帰後の生活にも悪影響が生じます。
弁護士に依頼して、なるべく勾留されないように、勾留されてしまった場合は、なるべく早期に釈放されるように活動してもらうことが重要です。
適切な身柄解放活動を早期に開始することが、Aさんの社会復帰への第一歩となります。
~起訴された場合~
過失運転致死事件の場合は、被害者が亡くなっていることもあり、起訴される可能性が比較的高いと思われます。
その場合であっても、保険によりVさんの損害を賠償し、真摯に反省することによって、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まります。
弁護士のアドバイスを受けながら、より有利な判決を獲得するために活動していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、過失運転致死事件についてもご相談いただけます。
ご家族が過失運転致死事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
割り込みによる危険運転致死事件
割り込みによる危険運転致死事件
割り込みによる危険運転致死事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
Aさんは兵庫県川西市を通る高速道路を走行中,前を走るVさんの車が気に入らないと腹を立て,いきなりVさんの車の直前に無理矢理割り込んだ上で急に減速しました。
驚いたVさんはAさんの車に追突しないよう合わせて減速しましたが,後続車に追突され死亡しました。
Aさんは兵庫県川西警察署に危険運転致死罪の容疑で逮捕され,事情を聞かれることになりました。
(フィクションです)
【危険運転致死傷罪】
危険運転致死傷罪は,自動車運転死傷処罰法第2条に定めがあります。
自動車運転死傷処罰法第2条
次に掲げる行為を行い,よって,人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し,人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
1 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4 人又は車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の直前に侵入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって,これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
対象となる「自動車」とは,原動機によりレールまたは架線を用いないで走行する車両のことをいい,自動二輪車や原動機付自転車もこれに含まれます。
上の1号から6号に掲げられた危険運転行為が故意をもって行われなければ,危険運転致死傷罪によって処罰することはできません。
Aさんは意図的にVさんの車の直前に割り込み減速することでVさんが死に至る事故の原因をつくっています。
これは第4号の規定に違反する可能性がある割り込みで,Vさんの通行を妨害する目的があったと判断された場合には危険運転致死罪の適用が考えられます。
【殺人罪】
割り込みや幅寄せなどで死亡事故が発生した時,被害者が事故によって死亡することに対して故意または未必の故意が認定されるようなケースでは,殺人罪(刑法第199条)に問われる可能性もあります。
殺人罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役です。
客観的に見て,割り込みや幅寄せなどが死亡事故を引き起こす可能性の非常に高い態様であったり,または死亡事故に至る可能性が極めて高い状況でこれらの危険運転を敢えて行った場合,被害者を死亡させる故意があったと認定されることもあり得ます。
他にも,車を接近させる行為が人に対する有形力の行使と捉えられて暴行罪(刑法第208条)で立件されることもあります。
暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料となっていますので,危険運転致死罪や殺人罪に比べると軽微な犯罪といえますが,犯罪であることに変わりはなく,もし起訴されて有罪を言い渡されてしまうと前科がつくことになります。
【危険運転致死事件の弁護活動】
割り込みや幅寄せ,その他あおり運転等で生じた死亡事故で危険運転致死罪の被疑者となってしまった場合,危険運転と考えられる行為が故意をもって行われたものではないことを示すことで無罪を主張することが考えられます。
ただし,必ずしも無罪の主張ができるわけではなく,また事案の内容によっては過失運転致死罪など他の犯罪に問われる可能性も十分にあります。
無罪主張できるかどうかも含め,早期に刑事事件に強い弁護士に相談することで今後どのような手段を取ることが可能なのか,どのような結果となる可能性があるのかを知り,選択することができます。
逆に,早期から対応できないでいると手続きがどんどん進んで取り返しのつかない結果となってしまうこともあります。
被疑事実を認める場合でも,被害者や遺族と示談を行うことなどにより執行猶予などを得られる可能性を高めることも可能な場合があります。
これも早めに行わなければ示談交渉を行うことすらままならなかったり,示談がまとまるより先に起訴されてしまったり裁判に間に合わなかったりすることが考えられます。
とにかく,人身事故を起こしてしまった場合はお早めに弁護士に相談・依頼することが重要になります。
割り込みや幅寄せなどにより人身事故を起こしてしまった方,危険運転致死罪の被疑者となってしまった方,兵庫県川西警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
大阪府豊中市の死亡事故事件
大阪府豊中市の死亡事故事件
大阪府豊中市の死亡事故事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
Aさんは大阪府豊中市内の道路を自動車で走行中,信号のない交差点で原動機付自転車と衝突する事故を起こし,乗っていた男性を死亡させました。
事故当時Aさんはスマホを見ながら運転しており,そのため交差点に進入してきた原動機付自転車の発見が遅れ,この死亡事故につながりました。
Aさんは大阪府豊中警察署で死亡事故を起こした過失運転致死事件の被疑者として取調べを受けることになっています。
(フィクションです)
【過失運転致死傷罪】
過失運転致死傷罪は自動車運転死傷処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)第5条に規定されている罪です。
条文は「自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる」となっています。
過失運転致死傷罪における自動車とは,原動機によって走行する車で,レールや架線を用いないものを意味します。
よって,自動二輪車や原動機付自転車も過失運転致死罪の処罰対象になります。
そして,「自動車の運転」とは,発進に始まり停止に終わるものとされています。
ただし,普通乗用自動車を運転していた者が車を道路左端に停車後,降車しようとして後方を十分確認することなく運転席ドアを開けたため後方から進行してきた自転車にドアをぶつけ,自転車に乗っていた人に傷害を負わせたという事件で,自動車の運転自体はすでに終了しており自動車運転上の過失は認められないものの,自動車の運転に付随する行為であり自動車運転業務の一環としてなされたものから傷害結果が発生したものとして業務上過失傷害罪の成立が認められた判例(東京高判平成25・6・11高刑速平成25年73頁)があります。
また,停止させる場所が不適切だったために事故につながった場合にも自動車運転過失致死傷罪の適用が考えられます。
過失運転致死傷罪が成立するためには,自動車の運転に必要な注意を怠ったこと,すなわち過失が必要です。
ここでの「過失」は,前方不注意やわき見運転,巻き込み確認を怠ったこと,歩行者や自転車等の飛び出しに気付かなかったこと,方向指示器(ウインカー)を点滅させずに方向転換したことなど,ちょっとした不注意でもこれにあたるとされています。
さらには,自分では注意を払ったつもりでも,別の行為をとっていたりより注意深くしていれば事故を避けることができたと裁判所が判断し過失が認定されてしまうケースもあります。
今回のケースでは,Aさんはスマホの画面を見ながら運転しています。
事件の概要からは明らかではありませんが,たとえAさんが適切な速度で運転しており,さらに被害男性が法令に違反するような運転をしていたとしても,Aさんに過失があったと認定される可能性はかなり高いと考えられます。
今回はスマホの画面を見ていた場合ですが,他にもイヤホンで音楽を聞いていたりカーナビ等の画面を見ていた状態で事故を起こしてしまった場合などでも自動車の運転上必要な注意を怠ったとされることがあり得ます。
【死亡事故事件 弁護の方針】
今回のような死亡事故事件では被害者が死亡しており,類型として起訴される可能性が高い事案といえます。
しかし,態様によっては,死亡事故直後から適切な対応をとることにより,起訴を回避したり執行猶予を得られる場合もあります。
刑事裁判にならなくてよい事件なのに裁判になってしまったり,不当に刑が重くなってしまわないよう,早期から交通犯罪に強い弁護士に事件を依頼して適切な弁護活動を行うことが重要です。
死亡事故では被害者や遺族と示談交渉を行い,示談内容にもよりますが示談を成立させることができれば不起訴や執行猶予を得られる可能性を高めることができます。
弁護士に事件を依頼することでより円滑に示談を進められることが期待できます。
また,取調べを受けるにあたっても,弁護士から法的なアドバイスを受けることにより捜査機関に有利な調書を不当に作成されることを防ぐことも期待できます。
過失運転致死罪の被疑者となってしまった方,大阪府豊中警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに交通事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
暴走運転による危険運転致死罪の疑いで逮捕
暴走運転による危険運転致死罪の疑いで逮捕
暴走運転による危険運転致死罪と逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、神奈川県秦野市内の県道で自動車を運転中、対面信号が赤色信号であることを認識しながら、まったくスピードを落とすことなく、時速130キロメートルで交差点に進入するなどの危険な運転を行っていました。
Aさんが上記の高速度で5分ほど暴走運転を行っていたところ、青色信号に従って交差点に進入してきたVの車の右側にノーブレーキで衝突し、右ハンドル車を運転していたVさんは即死してしまいました。
通報によって駆け付けた神奈川県秦野警察署の警察官は、Aさんの怪我の回復を待ち、危険運転致死罪の疑いで逮捕することを予定しています。
(フィクションです)
~危険運転致死傷罪とは?~
危険運転致死傷罪とはどのような犯罪でしょうか。
時速130キロメートルという明らかな制限速度違反で信号無視を繰り返す行為は、それ自体道路交通法に違反する行為ですし、ケースのような悲惨な結果を招きうる危険な行為であり、絶対に行うべきでないことは言うまでもありません。
しかし、このような危険な運転行為により実際に死傷事故が起きても、従来は自動車運転過失致死傷で罪に問われるだけでした。
こうした行為に対し厳罰を科すべきであるとの社会要請があり、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が成立し、その中に危険な運転行為による死傷事故を特に重く処罰する規定が盛り込まれました。
危険運転致死傷罪は、危険運転行為を行い、よって人を死傷させた場合に成立します。
~危険運転致死傷罪の類型~
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条1号~6号は、
・アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為(1号)
・その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(2号)
・その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(3号)
・人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(4号)
・赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(5号)
・通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(6号)
を行い、人を死傷させることを禁止しています。
被害者が傷害を負ったに留まる場合は、15年以下の懲役、死亡させてしまった場合は1年以上の懲役に処せられます。
また、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条1項~2項は、
・アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させ、または、死亡させること
・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させること
を禁止しています。
法定刑は、被害者が負傷した場合、12年以下の懲役、被害者が死亡した場合、15年以下の懲役となっています。
以上が、危険運転致死傷罪を定める規定です。
~Aさんに必要な弁護活動~
Aさんの場合、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条2号や5号といった条文に該当する危険運転致死罪が成立する可能性があります。
危険運転致死傷罪が疑われている事件でも、犯行態様によっては危険運転致死罪が成立しないことを主張することができるかもしれません。
そうした場合は弁護士に相談しながら取調べ対応等をすることになるでしょう。
今回のAさんのように、時速130キロメートルで自動車を走行させ、信号を無視し、交差点に進入するなどしていた場合においては、上記のような主張は難しいかもしれませんが、不当に重い処罰を避けるためにも、取調べには弁護士のアドバイスを受けてから臨むなどの対応が望ましいでしょう。
また、危険運転致死傷事件は悪質で重大な事件であるとして起訴される可能性も高く、さらに、実刑判決を受ける可能性も十分あります。
裁判では、車を放棄し二度と自動車を運転しないことや、保険で損害を賠償できる場合はVさんの遺族の損害が賠償される見込みであることなど、Aさんの反省や被害の賠償の度合いなどを表せる事情を主張し、より寛大な量刑による判決の獲得を目指す必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、危険運転致死傷事件についてもご相談いただけます。
ご家族が危険運転致死傷事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無免許運転で原付を運転し死亡事故
無免許運転で原付を運転し死亡事故
無免許運転で原付を運転した際の死亡事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、福岡県田川市内の路上で、原動機付自転車を運転することができる免許を受けないまま原動機付自転車を運転していた際、誤ってVに接触し、転倒させてしまいました。
Aさんの通報によりVは病院に搬送されましたが、頭に重い傷害を負っており、間もなく死亡が確認されました。
事故現場にかけつけた福岡県田川警察署の警察官は、Aさんが原動機付自転車を無免許運転していたことを確認した後、無免許過失運転致死罪の疑いで現行犯逮捕しました。
(フィクションです)
~無免許過失運転致死傷罪について~
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させると、過失運転致死傷罪が成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条前段)。
「自動車」には、道路交通法第2条1項10号の「原動機付自転車」も含まれます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第1条1項)。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金であり、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除されることもあります。
もし、過失運転致死傷罪を犯した者が、罪を犯したときに無免許であった場合はどうなるのでしょうか。
この場合は、過失運転致死傷罪に留まらず、これを加重した「無免許過失運転致死傷罪」が成立することになります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第6条4項)。
法定刑は10年以下の懲役となっており、過失運転致死傷罪の場合と異なり、罰金刑や禁錮刑が予定されていません。
したがって、有罪判決を受ける場合は、執行猶予が付かない限り、実刑判決を受けることになってしまいます。
~無免許過失運転致死罪は成立するか?~
Aさんは、原付免許等の、原動機付自転車を運転することができる免許を受けていません。
したがって、「自動車」を「無免許運転」していたことになります。
ケースでは明らかではありませんが、裁判所によって、原動機付自転車の運転上必要な注意を怠り、よってVを死亡させたと判断された場合には、無免許過失運転致死罪につき有罪判決がなされることになると思われます。
~Aさんに必要な弁護活動~
無免許過失運転致死傷罪の起訴率は統計上も極めて高く、平成29年の「検察統計調査 被疑事件の罪名別起訴人員,不起訴人員及び起訴率の累年比較」によれば、起訴率は約80.8%となっています。
特に、Aさんの場合、Vが死亡している死亡事故であることも相まって、起訴される可能性は高いと思われます。
そのため、起訴されたあと、執行猶予付判決を獲得することが重要な到達目標になるかと思われます。
もちろん、Vが予測不可能な行動をとったために死亡事故が起き、原動機付自転車の運転上必要な注意を怠った事実がないなど、過失運転致死罪が成立しない場合には、無免許過失運転致死罪により起訴されることを阻止しなければなりません。
無免許運転の場合であっても、「自賠責保険」や「自動車保険」に加入していれば、Vに生じた損害を賠償できる場合もあります。
このケースの場合は、公判で保険によりVの遺族の損害が賠償される見込みであることなどの事情があればそういった事情を主張し、より軽い量刑による判決を求めることになるでしょう。
また、原動機付自転車を処分する、あるいは運転免許を取得する用意があることなどを主張し、二度と無免許運転をしないことを明らかにすることも重要です。
弁護士のアドバイスを受けながら、より有利な量刑による判決の獲得に向けて活動していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、無免許過失運転致死傷事件についてもご相談いただけます。
ご家族が死亡事故を起こして無免許過失運転致死傷事件の被疑者となりお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
京都市山科区でひき逃げ
京都市山科区でひき逃げ
京都市山科区のひき逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
Aさんは京都市山科区内を自動車で走行中,歩道から飛び出してきた自転車に乗っていた男子中学生をはね,全治2カ月のけがをさせてしまいました。
事故が京都府山科警察署に発覚することを恐れたAさんは,そのまま車を走らせ逃走しました。
現場付近の店舗に設置されていた監視カメラの映像等からAさんの車が割り出され,Aさんは京都府山科警察署でひき逃げ事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
【ひき逃げ】
ひき逃げとは,人の死傷を伴う交通事故の際に,事故を引き起こした車両等の運転者が,直ちに停止して負傷者を救護する義務や捜査機関等に事故を報告する義務を無視してその場から立ち去ることをいいます。
道路交通法第72条第1項は「交通事故があったときは,当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は,直ちに車両等の運転を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」と規定しています。
これはひき逃げの際に問題となる救護義務と危険防止義務,報告義務を定めたもので,このうち,運転者が当該車両等の事故に関して救護義務・危険防止義務の違反をした場合の法定刑は,5年以下の懲役または50万円の罰金(道路交通法第117条第1項)となっています。
また,死傷の原因がひき逃げした者にある場合には10年以下の懲役または100万円以下の罰金が法定刑となっています(道路交通法第117条第2項)。
また,報告義務に違反した場合には,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金となります(道路交通法119条10号)。
これらは道路交通法による処罰類型ですが,事故の原因が運転者の過失による場合は別に過失運転致死傷罪に問われる可能性もあります。
【過失運転致死傷罪】
過失運転致死傷罪は自動車運転死傷処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)第5条に規定されている罪です。
条文は「自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」となっています。
過失運転致死傷罪における自動車とは,原動機によって走行する車で,レールや架線を用いないものを意味します。
よって,自動二輪車や原動機付自転車も処罰対象になります。
自動車の運転とは,発進に始まり停止に終わるものとされています。
ただし,普通乗用自動車を運転していた者が車を道路左端に停車後,降車しようとして後方を十分確認することなく運転席ドアを開けたため後方から進行してきた自転車にドアをぶつけ,自転車に乗っていた人に傷害を負わせたという事件で,自動車の運転自体はすでに終了しており自動車運転上の過失は認められないものの,自動車の運転に付随する行為であり自動車運転業務の一環としてなされたものから傷害結果が発生したものとして業務上過失傷害罪の成立が認められた判例(東京高判平成25・6・11高刑速平成25年73頁)があります。
また,停止させる場所が不適切だったために事故につながった場合にも過失運転致傷罪の適用が考えられます。
過失運転致死傷罪が成立するためには,自動車の運転に必要な注意を怠ったこと,すなわち過失が必要です。
過失運転致傷罪のいう「過失」は,前方不注意やわき見運転,巻き込み確認を怠ったこと,歩行者や自転車等の飛び出しに気付かなかったこと,方向指示器(ウインカー)を点滅させずに方向転換したことなど,ちょっとした不注意でもこれにあたるとされています。
さらには,自分では注意を払ったつもりでも,別の行為をとっていたりより注意深くしていれば事故を避けることができたと裁判所が判断し過失が認定されてしまうケースもあります。
【ひき逃げ事件の弁護方針】
ひき逃げで道路交通法違反や過失運転致傷罪などの被疑者となってしまった場合,事案にもよりますが起訴される可能性は高いです。
加えて,事件現場から逃亡を図っていることから,逃亡のおそれありとして逮捕されるケースも多いです。
弁護士の活動としては,逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことを主張し早期の身体拘束状態からの解放を目指すことが考えられます。
また,被害者と示談を成立させることができれば,不起訴や執行猶予を獲得できる可能性を高めることができます。
刑事事件に強い弁護士に事件を依頼することによって,示談を円滑に行うことが期待できます。
弁護士から逮捕・勾留中の被疑者に法的なアドバイスを提供することで,被疑者として取調べを受ける際,被疑者としての権利行使に関する知識を持ちながら取調べに対応することも可能です。
ひき逃げで逮捕されてしまった方,過失運転致死傷罪の被疑者となってしまった方,京都府山科警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
神戸市垂水区で人身事故
神戸市垂水区で人身事故
神戸市垂水区での人身事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
神戸市垂水区に住むAさんは,神戸市垂水区内の居酒屋で同僚と飲んだ後,帰宅するため車を走行させました。
この時Aさんはビールをジョッキで2杯,焼酎のお湯割りを3杯飲んでかなり酔っていましたが,車の運転に自信があったAさんはタクシーや運転代行を利用せずに自分で運転をしていました。
5分ほど車を走らせていたところで道を渡ろうとしていた歩行者を発見しましたが,アルコールの影響で認識が遅れ,その歩行者をはねて全治4カ月の重傷を負わせる人身事故を起こしてしまいました。
この人身事故の一部始終を見ていた通行人によって通報を受けた兵庫県垂水警察署の警察官によって,Aさんは道路交通法違反と危険運転致傷罪の疑いで取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
【危険運転致死傷罪】
危険運転致死傷罪は,自動車運転死傷処罰法第2条に定めがあります。
自動車運転死傷処罰法第2条
次に掲げる行為を行い,よって,人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し,人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
1 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4 人又は車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の直前に侵入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって,これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
上の1号から6号に掲げられた危険運転行為が故意をもって行われなければ危険運転致死傷罪によって処罰することはできません。
例えば,自動車を運転するに当たり,自分が酩酊していて正常な運転が困難な状態にあることの認識がなければなりません。
Aさんは自身の運転技術に自信をもっており,事故を起こすことなどないと考えています。
しかし他方ではかなり酔っている自覚もあり,現場のブレーキ痕や飲酒の度合いなどと併せて先述の1号違反として危険運転致傷罪に問われる可能性は十分にあります。
【自動車運転死傷処罰法違反におけるその他の罪】
飲酒をして自動車を運転し人身事故を起こした場合では,他にも以下のような罪に問われる可能性があります。
準酩酊運転致死傷罪,いわゆる準危険運転致死傷罪(第3条第1項)は,事故時に意識を失っていたなどして危険運転の故意が認められない場合であっても,アルコール等の影響により走行中に正常な運転ができない状態に陥る危険性を予め認識しており,運転中アルコール等の影響で正常な運転ができない状態に陥り事故を起こした場合に成立する罪です。
法定刑は負傷させた場合で12年以下の懲役,死亡させた場合は15年以下の懲役です。
アルコールや薬物の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し,運転上必要な注意を怠り人を死傷させた場合で,運転時のアルコールや薬物の影響の発覚を免れるなどの目的でそのまま現場から離れるなどした場合は,過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(第4条)として12年以下の懲役となります。
【危険運転致死傷事件の弁護活動】
ここまで見てきたように,アルコールを摂取して酔った状態で運転をして人身事故や死亡事故を起こした場合,重い法定刑が規定された罪に当たることがあります。
そのときは起訴されると正式裁判となり,長期に及ぶ身体拘束を受けたり,執行猶予の付かない懲役の実刑判決が言い渡される可能性もあります。
だからこそ,人身事故や死亡事故を起こして捜査が開始された場合は,早急に刑事事件に強い弁護士に事件を依頼することをお勧めします。
弁護士に依頼することで,事故に至った経緯や動機,状況などを調査し,早期の身体拘束からの解放,不起訴処分,執行猶予の獲得,情状酌量による刑の減軽など,依頼者の状況や事件に応じた適切な弁護活動を展開していきます。
人身事故・死亡事故を起こしてしまった方,危険運転致死傷罪の被疑者となってしまった方,兵庫県垂水警察署で取調べを受けることになってしまった方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
自動車で人身事故を起こし逮捕
自動車で人身事故を起こし逮捕
Aさんは、深夜、東京都世田谷区内の公道において自動車を運転中、道路を横断しているVに気付かず、これに接触し、全治1か月の傷害を負わせてしまいました。
Aさんは救急車を呼びましたが、救急車と一緒に駆け付けた警視庁世田谷警察署の警察官により、過失運転致傷罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~自動車で人身事故を起こすとどうなるか?~
自動車を運転中に人身事故を起こすと、①民事上の責任(被害者や遺族への損害賠償)、②行政上の責任(免許停止、取消などの行政処分)に加え、③刑事上の責任を負うことになります。
今回は、ケースの交通事故に関し、刑事上の責任について解説したいと思います。
自動車で人身事故を起こした場合に成否が検討される犯罪類型として、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、無免許運転過失致死傷罪などが挙げられますが、今回は過失運転致傷罪の嫌疑がかけられています。
過失運転致傷罪とはどのような犯罪類型なのでしょうか。
(過失運転致死傷罪について解説)
過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させる犯罪です。
法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっています。
ただし、傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除されることがあります。
被害者が死亡した場合には「過失運転致死罪」、傷害を負ったに留まる場合は、「過失運転致傷罪」に問われることになります。
「自動車の運転上必要な注意」とは、自動車運転者が、自動車の各種装置を操作し、そのコントロール下において自動車を動かす上で必要な注意義務をいいます。
ケースのAさんには、自動車を進行させるに当たり、道路を横断する歩行者の有無に留意すべき注意義務があったと考えられます(道路交通法38条参照)。
上記の注意義務に違反し、道路を横断するVの存在に気付かず、自動車を進行させた過失があると判断された場合、「自動車の運転上必要な注意を怠った」と判断される可能性が極めて高いと思われます。
これによりVと接触し、傷害を負わせたということなので、Aさんに過失運転致傷罪が成立する可能性はかなり高いと思われます。
~人身事故を起こして逮捕…Aさんの今後は?~
現行犯逮捕された後は、警察署に引致され、犯罪事実の要旨、弁護人選任権があることを伝えられ、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。
留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めます。
勾留の請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日の間勾留されることになり、さらにやむを得ない事由があると認められるときは、最長10日間、勾留が延長されます。
Aさんが勾留されている場合は、勾留の満期日までに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。
~人身事故で早期の身柄解放を求める~
過失運転致傷事件の場合は、事故を起こしても適切に通報して実況見分などに応じていれば逮捕されずに済むことも多いです。
もし逮捕されてしまった場合であっても、勾留が付かずに釈放される可能性も十分考えられます。
身柄を拘束されたまま事件が進行するのと、在宅で事件が進行するのとでは、Aさんの負担が大きく違ってきます。
家族が身元引受人になるなどして、逮捕直後は、身体拘束が長期化しないように活動することが重要です。
~示談を行い人身事故事件を有利に解決する~
前述の通り、捜査の最終段階において、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めることになります。
不起訴処分を獲得できれば、前科が付かずに済みます。
不起訴処分を獲得できる可能性を高めるために、Vと示談をすることを強くおすすめします。
また、示談を成立させたことにより、上記の民事上の責任を果たしたことになるので、後日、民事紛争に巻き込まれるリスクを無くすことができます。
示談交渉は、Aさん本人でもできますが、法律的に有効な示談にならないリスクがあり、そもそも身体拘束中はVと接触することもできません。
法律の専門家である弁護士に、Vとの間に立ってもらって、交渉を進めることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースのような過失運転致傷事件の解決実績も豊富です。
ご家族が過失運転致傷事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
人身事故を起こし、ひき逃げ
人身事故を起こし、ひき逃げ
Aさんは埼玉県川口市内で自動車を運転中、赤信号を見落として交差点に進入し、Aさんからみて右方向から青信号に従い交差点に進入してきたバイクと接触し、運転手Vさんに傷害を負わせてしまいました。
Aさんは車を停めてVさんの様子を見に行きましたが、怪我の様子を見て怖くなり、そのまま事故現場を立ち去り、帰宅しました。
次の日、Aさんの自宅に逮捕状を携えた埼玉県川口警察署の警察官が現れ、Aさんは過失運転致傷罪、救護義務違反の疑いで逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~Aさんは上記の罪に問われるか?~
ここ数年間で、自動車を運転し、人を死傷させる行為の厳罰化が進んでいます。
Aさんは過失運転致傷罪、救護義務違反の嫌疑で逮捕されていますが、これらの犯罪はどのような罪なのか解説したいと思います。
(過失運転致死傷罪)
過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させる犯罪です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条本文)。
簡単に言えば、自動車の運転中、運転ミスにより人を死亡、あるいは傷害した場合に成立する犯罪です。
人の死傷結果につき故意がある場合は、過失運転致死傷罪の成否ではなく、殺人罪、傷害罪の成否が検討されることになります。
「自動車の運転上必要な注意」とは、自動車運転者が、自動車の各種装置を操作し、そのコントロール下において自動車を動かす上で必要な注意義務をいいます。
道路を通行する車両等は、信号機の表示する信号に従わなければならず(道路交通法7条)、ケースの場合には、Aさんに「交差点の信号の色に留意し、これに従って自動車を進行させる」注意義務があったと考えられます。
こうしたことから、Aさんには赤信号に留意すべき注意義務を怠り、漫然と交差点に進入した過失があると判断される可能性が極めて高いと思われます。
この不注意により右からやってきたバイクと衝突し、傷害を負わせてしまったのですから、この時点でAさんに過失運転致傷罪が成立する可能性は高いでしょう。
過失運転致傷罪につき、有罪が確定すると、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処せられます。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除されることがあります。
(救護義務違反の罪)
交通事故があったときは、車両等の運転者その他の乗務員には、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません(道路交通法72条1項前段:救護義務)。
車両等(軽車両を除きます)の運転者が、その車両等の交通による人の死傷があった場合に、この人の死傷が運転者の運転に起因するものであるときに上記の義務に違反すると、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(道路交通法第117条2項)。
一般的に「ひき逃げ」と呼ばれる犯罪です。
Aさんは、自動車の運転者であり、その自動車の運転上必要な注意を怠ってVを傷害したのに、これを救護するなどの必要な措置を講じず、そのまま立ち去り帰宅したということなので、Aさんに救護義務違反の罪が成立する可能性は高いでしょう。
~Aさんの身柄解放活動その他弁護活動~
過失運転致傷罪の嫌疑だけであれば、逮捕されずに済むケースも多くありますが、これにひき逃げによる救護義務違反が加わると、自宅まで警察がやってきて逮捕される可能性が高まります。
また、ひき逃げによる救護義務違反という犯罪の性質上、逃亡のおそれがあると判断される可能性が高く、したがって、勾留される可能性も比較的高いと思われます。
起訴されてしまった場合には、保釈請求が可能なので、起訴された場合には、保釈保証金の準備などを行っていく必要があります。
また、Vさんと示談交渉を行うことも重要です。
Vさんと示談が成立すれば、Aさんが釈放される可能性、検察官による不起訴処分がなされる可能性も高まり、また、起訴された場合も、より軽い量刑による判決がなされることが期待できます。
加えて、後日、損害賠償請求を受けるなどの民事紛争に巻き込まれるリスクを無くすこともできます。
このように、示談を成立させることには、多くのメリットがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件に熟練した弁護士が多数在籍しており、過失運転致傷事件・救護義務違反事件の解決実績も豊富です。
ご家族が過失運転致傷事件、救護義務違反事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。