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自賠責保険に加入しないと犯罪になるの⁈無保険で事故を起こすとどうなるの?無保険運転で捜査を受けたらどうしたらいい?

2023-11-08

自賠責保険に加入しないと犯罪になるの⁈無保険で事故を起こすとどうなるの?無保険運転で捜査を受けたらどうしたらいい?

無保険状態で事故を起こし、途方に暮れる男性

自賠責保険などの保険に加入せずに車を運転する行為によって、罪が成立してしまう可能性があります。
今回のコラムでは、無保険で車を運転した場合に成立する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

無保険での車の運転

自賠責保険などの加入していない状態、つまり無保険状態での車の運転は、自動車損害賠償保障法で禁止されています。(自動車損害賠償保障法第5条)
この法律は、自賠責保険などの保険への加入を義務づけており、事故発生時の被害者保護を目的としています。

保険への加入は義務ですので、保険未加入の状態で車を運行した場合には、自動車損害賠償保障法違反が成立することになります。
また、無保険で車を運転した場合の法定刑は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。(自動車損害賠償保障法第86条の3)

保険に加入していないだけで懲役刑が科される可能性があるのは重すぎるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、交通事故を起こして被害者が重症を負った場合に保険に加入していないと、被害者に十分な補償がされない可能性が非常に高くなります。
そういった事態を避けるためにも、交通事故による被害者の権利を保護し、運転者に対する責任感を強化するためにこのような罰則が規定されているのでしょう。

法定刑とその適用

繰り返しになりますが、無保険状態で車を運転した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
懲役刑が科されるのか、罰金刑が科されるのかは、事件によって異なります。
例えば、事故を起こしてしまった場合、その責任はさらに重くなり得ます。
また、過去に同様の前科がある場合には、より厳しい刑が科される可能性が高まります。

無保険の車で事故を起こした事例

東京都練馬区で起きた事例を見てみましょう。

30代の女性Aさんは、無保険の状態で車を運転中、前方を歩いている歩行者を見落とし、歩行者に衝突してしまいました。
この事故により歩行者は全治5日の擦り傷を負いました。
Aさんは過失運転致傷罪無保険による自動車損害賠償保障法違反の疑いで東京都練馬警察署の警察官に逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

この事例では、無保険状態で車を運転していたわけですから、自動車損害賠償保障法違反が成立してしまう可能性が高いといえます。

また、逮捕罪名である過失運転致傷罪とは、簡単に言うと、運転上の不注意で事故を起こし、相手にけがを負わせてしまった場合に成立します。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金であり、けがの程度が軽い場合には情状により刑が免除される可能性があります。(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)

事例では、Aさんが事故を起こし、歩行者がけがを負っています。
Aさんが前方を歩いている歩行者を見落としたようなので、この事故は前方不注意が原因で起きた事故=過失による事故だといえます。
過失による事故でけがを負わせていますので、今回の事例では自動車損害賠償保障法違反だけでなく、過失運転致傷罪も成立してしまう可能性があります。
ただ、歩行者が負ったけがは全治5日の擦り傷ですので、けがの程度が軽いと判断され、過失運転致傷罪については刑が免除される可能性もあります。

無保険での事故と弁護士

保険の加入の有無にかかわらず、車で事故を起こした場合には、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。

過失運転致傷罪は被害者と示談を締結することで、不起訴処分を得られる可能性があります。
加害者が被害者と直接示談交渉を行う場合には、被害者保護の観点や証拠隠滅のおそれから、被害者の連絡先を教えてもらえない場合があります。
そうなってしまうと示談締結はおろか、示談交渉さえ行えません。
弁護士が警察官や検察官などを通じて被害者と連絡を取ることで、示談交渉に応じてもらえる場合がありますので、示談交渉を行う際は弁護士を介して行うことが望ましいでしょう。

また、今回の事例のように、被害者のけがの程度が軽微である場合、被害者と示談を締結できなかったとしても、弁護士が検察官と処分交渉を行い、不起訴処分を求めることで、不起訴処分を獲得できる可能性があります。

加えて、無保険運転による自動車損害賠償保障法違反についても、無保険状態での運転は故意ではなく過失であったことや保険に入っていると過信していてもおかしくない状況であったことなどを弁護士が訴えることで、不起訴処分の獲得や略式命令による罰金に抑えられる可能性もあります。

無保険での自動車事故は弁護士に相談を

車を運転する場合には、自賠責保険などの保険に入っていないと、犯罪行為になってしまいます。
無保険運転自動車損害賠償保障法違反が成立し、罰金刑や懲役刑が科されてしまった場合には前科が付くことになります。
そういった事態を避けるためには、自賠責保険に加入することが一番なのですが、気づかないうちに保険の加入期間がきれていたなど、知らないで無保険運転をしてしまうケースもあると思います。
そういった場合でも、弁護士に相談をすることで、不起訴処分など良い結果を得られる場合がありますので、弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
東京にお住まいの方で、無保険運転による自動車損害賠償保障法違反過失運転致傷罪などでお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部(新宿)・八王子支部にご相談ください。

ひき逃げと弁護活動

2023-11-01

ひき逃げと弁護活動

ニュースでひき逃げの報道を目にする人は多いのではないでしょうか。
ですが、ひき逃げをした場合にどのような量刑が科されるのか知らない方もいらっしゃると思います。
今回のコラムでは、具体的な事例を交えて、ひき逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

Aさんは、北海道札幌市中央区の道路で車を運転していました。
道路を左折しようとした際に、道路を横断していたVさんにに気づかず巻き込んでしまいました。
怖くなったAさんはその場を離れました。
Vさんは事故が原因で全治3か月のけがを負っており、後日、Aさんは札幌方面中央警察署の警察官に逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

ひき逃げとは

ひき逃げという言葉は、交通事故を起こした後、その場から逃げる行為を指します。
ひき逃げはひき逃げ罪というものがあるわけではなく、道路交通法で規定されています。

道路交通法第72条第1項前段では、交通事故が発生した場合、関係する車両の運転手は直ちに停車し、負傷者に対する救護や危険の防止など、必要な措置を講じなければならないとされています。
この義務を怠った場合、救護義務違反となる可能性があります。

また、道路交通法第72条第1項後段では、交通事故を起こした場合に、警察署へ事故を報告しなければならないと定めています。
この警察への事故の報告も救護義務と同様に義務ですので、事故の報告を怠った場合は、報告義務違反になるおそれがあります。

救護義務違反報告義務違反にあたる場合に、ひき逃げとして扱われます。

道路交通法におけるひき逃げの罰則

ひき逃げ事件が発生した場合、その運転手は道路交通法に基づいて厳しく罰せられる可能性があります。
具体的には、加害者の運転が原因で被害者がけがを負い、救護をしなかった場合には、道路交通法第117条第2項により、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。

この罰則は、交通事故によって人々が受ける影響の深刻さと、運転手が負うべき社会的責任を反映しています。
特に、ひき逃げ事件では事故後すぐに被害者が適切な医療措置を受けられない可能性が高く、その結果、命に関わる事態にもつながりかねません。

また、罰則が厳しい理由の一つとして、ひき逃げ行為が他の交通違反とは異なり、故意によるものであることが多い点も挙げられます。
運転手が故意に逃走することで、事故の解決が困難になる場合が多く、そのために厳罰化されているのです。

また、報告義務違反に該当し道路交通法違反で有罪になる場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第119条第1項第19号)

今回の事例のAさんは事故を起こしたにもかかわらず、事故現場を去っていますので、ひき逃げにあたり、道路交通法違反が成立するおそれが高いといえます。

過失運転致傷罪とは

ひき逃げ事件においては、救護義務違反報告義務違反による道路交通法違反だけでなく、過失運転致傷罪も問われる可能性があります。
この罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)で規定されています。

簡単に説明すると、運転上必要な注意を怠って事故を起こし、人を傷つけた場合に過失運転致傷罪が成立します。
過失運転致傷罪で有罪になると、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)
ただし、その傷害が軽い場合には、情状によっては刑罰が免除される可能性もあります。

過失運転致傷罪は、故意ではなく過失によって人を傷つけた場合に適用される罪です。
しかし、その過失が重大であればあるほど、罰則も厳しくなる傾向にあります。

この罪に問われると、運転免許の剥奪や社会的信用の失墜、さらには職を失う可能性も考えられます。
そのため、過失運転致傷罪は、単なる交通違反以上の深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。

今回の事例のAさんに過失運転致傷罪は成立するのでしょうか。

今回の事例では事故に巻き込まれたVさんが全治3か月のけがを負っています。
この事故はAさんが周囲の確認をしっかりと行わずに左折したことで起きた事故だと考えられます。
今回の事故の原因はAさんによる過失だと推測できますので、Aさんの運転上の過失によりVさんにけがを負わせた行為は、過失運転致傷罪が成立する可能性が極めて高いといえます。

ひき逃げ事件での弁護活動のポイント

ひき逃げ事件が発生した場合、被疑者やその家族が最初に考えるべきは、適切な弁護活動を行うことです。

ひき逃げ事件で行う弁護活動として、大きく以下の4つが挙げられます。

①釈放を求める活動

逮捕された場合は逮捕後72時間以内勾留の判断が行われます。
勾留が決定してしまった場合には、最長で20日間勾留されますので、早期釈放を目指す場合には勾留を阻止する弁護活動を行う必要があります。
弁護士は勾留の判断前であれば、意見書を検察官や裁判官に提出することができます。
意見書を提出することで、早期釈放を認めてもらえる可能性があります。

勾留が決定し、身体拘束が続けば、学校や職場に事件のことを知られるリスクが高く、最悪の場合には退学処分解雇処分に付されてしまう可能性もあります。
弁護士に相談をすることで勾留を阻止できる可能性があるので、早期釈放を目指す場合には弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

②不起訴処分を目指す活動

ひき逃げによる交通事件では、被害者と示談を締結することで不起訴処分を獲得できる可能性があります。
加害者本人が示談交渉をしても応じてもらえない場合が多々あります。
弁護士を介して示談交渉を行うことで示談に応じてもらえる場合があります。

③執行猶予の獲得を目指す活動

示談を締結することで、執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
また、示談を得られない場合であっても、加害者が反省し、二度と事故を起こさないような対策を立てていることなどを弁護士が裁判官に主張することで、不起訴処分を得られる場合があります。

④ひき逃げについて争う

運転する車の種類や事故の程度によって、人を轢いたことに気づけない場合があります。
そういった場合には、弁護士がひき逃げの成否を争うことで、ひき逃げによる道路交通法違反について無罪を得られる可能性があります。

ひき逃げに強い弁護士を

ひき逃げ事件は、その行為自体が非倫理的であるだけでなく、法的にも厳しく罰せられる行為です。
事件後すぐに弁護士に相談をすることで、不起訴処分執行猶予付き判決の獲得など、良い結果を得られる可能性があります。
ひき逃げで捜査を受けている方、ご家族が逮捕された方は、お早めに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪③

2023-10-18

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪③

前回のコラムに引き続き、大阪府寝屋川市で起きた無免許運転によるひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

無免許運転でひき逃げ事故を起こしたとして、大阪府警寝屋川署は3日、自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)や道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、大阪府守口市(中略)容疑者(64)を逮捕したと発表した。逮捕は2日付。「無免許がばれて処罰されるのが怖くなった」などと容疑を認めているという。
逮捕容疑は(中略)、大阪府寝屋川市仁和寺町の府道交差点で車を無免許運転して右折しようとしたところ、横断歩道を歩いていた(中略)男性(49)と衝突したが、逃走したとしている。男性は右足骨折などで全治2カ月の重傷。
(10月3日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「「無免許ばれるのが怖くて…」ひき逃げ 容疑で64歳男逮捕 大阪・寝屋川署」より引用)

ひき逃げ

救護義務報告義務といった言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
救護義務は、事故を起こした場合に負傷者を救護する義務。
報告義務は、事故を起こした場合に警察に事故を報告する義務を指します。

道路交通法第72条1項では、交通事故があったときは負傷者を救護し、警察官に事故を報告しなければならないとしています。
ですので、救護義務報告義務を怠った場合、つまり、事故を起こして相手にけがを負わせたのに救護をしなかった場合や、警察に事故の報告をしなかった場合には、道路交通法違反が成立することになります。

ひき逃げは事故を起こしたのに救護を行わなかったり、事故の報告をしないことをいいますので、ひき逃げをした場合は、道路交通法違反が成立することになります。

自分の運転により人にけがを負わせ、なおかつ、救護を行わなかったことで道路交通法違反で有罪になった場合には、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条2項)
また、事故を起こしたのに報告を行わず、道路交通法違反で有罪になった場合は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第119条1項17号)

今回の事例では、車を運転している容疑者が歩行者に追突し、逃走したと報道されています。
実際に容疑者が歩行者の救護や事故の報告をしていないのであれば、ひき逃げにあたり、道路交通法違反が成立することになります。

逮捕とひき逃げ

逮捕されると刑罰が確定するまでは留置場などから出られないと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、釈放が認められれば、刑罰が確定していなくても普段通りの生活に戻れる場合があります。

刑事事件では、逮捕されるとそのまま身体拘束が続くのではなく、逮捕後72時間の間に、勾留をするかどうかの判断が行われます。
勾留は1回につき10日間認められており、1回までであれば延長が認められていますので、勾留が決定してしまうと長い場合には20日間勾留が続く可能性があります。

勾留の判断基準については、刑事訴訟法第60条1項で規定されています。

刑事訴訟法第60条1項
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まった住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

上記の3つのうちの1つでも当てはまるのであれば、勾留が決定するおそれがあります。

ひき逃げ事件では、一度容疑者が事故現場から逃走していますので、3つ目の「逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」に該当してしまう可能性が高いです。

ですが、ひき逃げをしたからといって、必ずしも勾留が決定してしまうわけではありません。

弁護士は勾留が決定される前であれば、検察官や裁判官に働きかけを行うことができます。
ですので、勾留が決定する前に、容疑者に身元引受人がいることや、容疑者が逃亡しないように監視監督ができる人がいることを検察官や裁判官に訴えることで、勾留されずに釈放される可能性があります。

この勾留前の検察官や裁判官への働きかけは、逮捕後72時間以内に行う必要があります。
提出する書類等の準備もありますので、早期釈放を目指す場合には、早い段階で弁護士に相談をすることが望ましいです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービスを行っています。
初回接見サービスのご予約は、0120―631―881で受け付けておりますので、ご家族が逮捕された方、ひき逃げでお困りの方は、即日対応可能弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪②

2023-10-11

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪②

前回のコラムに引き続き、大阪府寝屋川市で起きた無免許運転によるひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

無免許運転でひき逃げ事故を起こしたとして、大阪府警寝屋川署は3日、自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)や道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、大阪府守口市(中略)容疑者(64)を逮捕したと発表した。逮捕は2日付。「無免許がばれて処罰されるのが怖くなった」などと容疑を認めているという。
逮捕容疑は(中略)、大阪府寝屋川市仁和寺町の府道交差点で車を無免許運転して右折しようとしたところ、横断歩道を歩いていた(中略)男性(49)と衝突したが、逃走したとしている。男性は右足骨折などで全治2カ月の重傷。
(10月3日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「「無免許ばれるのが怖くて…」ひき逃げ 容疑で64歳男逮捕 大阪・寝屋川署」より引用)

無免許運転と過失運転致傷罪

前回のコラムでは、今回の事例で過失運転致傷罪が成立する可能性があると解説しました。
報道によると、今回の事例は無免許運転による事故だそうです。
無免許運転事故を起こした場合は、どのような罪が成立するのでしょうか。

無免許運転

無免許運転で事故を起こした場合に成立する罪を解説する前に、無免許運転について解説していきます。

無免許運転とは、その名の通り、免許を取得しない状態で運転する行為を指します。

道路交通法第64条第1項
何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。

道路交通法第64条第1項では、無免許運転を禁止しています。
ですので、無免許運転を行った場合、道路交通法違反が成立することになります。

無免許運転により道路交通法違反で有罪になった場合は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条の2に2第1項第1号)

無免許過失運転致傷罪

では、無免許運転で事故を起こしてしまった場合には、道路交通法違反以外の罪は成立するのでしょうか。

前回のコラムで解説したように、事故を起こして相手にけがを負わせた場合には、ほとんどの場合、過失運転致傷罪が成立します。

過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第5条に規定されています。
自動車運転処罰法には、無免許運転過失運転致傷罪が成立した場合の加重規定が存在します。

自動車運転処罰法第6条第4項
前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

上記が無免許過失運転致傷罪の条文になります。
無免許過失運転致傷罪は、過失運転致傷罪が成立する場合に無免許運転だったときに成立します。

過失運転致傷罪の法定刑が七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金(自動車運転処罰法第5条)なのに対し、無免許過失運転致傷罪十年以下の懲役です。
無免許過失運転致傷罪は罰金刑や禁固刑の規定がないので、有罪になると、懲役刑が科されることになり、罰金刑の規定のある過失運転致傷罪と比べると、圧倒的に重い刑罰が科されていることがわかります。

今回の事例では、容疑者が無免許運転だと報道されています。
前回のコラムで解説したように、今回の事例では、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
過失運転致傷罪が成立する場合で、無免許運転であれば無免許過失運転致傷罪が成立しますので、今回の事例では、無免許過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

無免許過失運転致傷罪と弁護活動

過失運転致傷罪無免許過失運転致傷罪は、示談を締結することで、科される刑罰を軽くできる場合があります。

交通事故の場合、被害者と知り合いではない場合がほとんどだと思います。
被害者の連絡先を知らないと示談締結はおろか、示談交渉すらできません。
ですので、警察官などに被害者の連絡先を聞くことから始める必要があるのですが、被害者保護などの事情から加害者本人には被害者の連絡先を教えてもらえない場合があります。
しかし、弁護士であれば連絡先を教えてもらえる場合がありますので、示談交渉を行う場合には弁護士を介して行うことが望ましいといえます。

また、弁護士を介して示談交渉を行うことで、トラブルを回避できる可能性があります。
一度示談を断られた場合であっても、弁護士が再度示談交渉を行うことで、示談が締結できる場合もありますので、示談締結を考えている方は、弁護士に相談をしてみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
示談のことでお悩みの方、過失運転致傷罪無免許過失運転致傷罪などで捜査されている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

次回のコラムでは、ひき逃げについて解説します。

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪①

2023-10-04

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪①

大阪府寝屋川市で起きた無免許運転によるひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

無免許運転でひき逃げ事故を起こしたとして、大阪府警寝屋川署は3日、自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)や道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、大阪府守口市(中略)容疑者(64)を逮捕したと発表した。逮捕は2日付。「無免許がばれて処罰されるのが怖くなった」などと容疑を認めているという。
逮捕容疑は(中略)、大阪府寝屋川市仁和寺町の府道交差点で車を無免許運転して右折しようとしたところ、横断歩道を歩いていた(中略)男性(49)と衝突したが、逃走したとしている。男性は右足骨折などで全治2カ月の重傷。
(10月3日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「「無免許ばれるのが怖くて…」ひき逃げ 容疑で64歳男逮捕 大阪・寝屋川署」より引用)

過失運転致傷罪

車で事故を起こし、相手にけがを負わせた場合には、罪に問われる可能性があります。
では、車の事故でけがを負わせた場合にはどのような犯罪が成立するのでしょうか。

車の事故でけがを負わせた場合の多くが、過失運転致傷罪という犯罪が成立します。
過失運転致傷罪は、簡単に説明すると、車を運転するのに必要な注意を怠り事故を起こしてけがを負わせた場合に成立する犯罪です。

過失運転致傷罪は刑法に規定はなく、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)で規定されています。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

上記が過失運転致傷罪の条文です。
過失運転致傷罪で有罪になった場合には、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金が科されることになります。
しかし、けがの程度が軽い場合には、刑罰が科されるのを免除できる場合があります。

今回の事例では、容疑者が交差点を右折する際に、横断歩道を歩行していた男性と追突したと報道されています。
右折する際には、歩行者などがいないか注意し、安全を確認してから右折する必要があります。
容疑者が男性に気付かずに右折してしまったのであれば、車を運転するうえで必要な注意をはらえていなかったことになります。
また、この追突により男性が全治2か月のけがを負ったと報道されていますので、今回の事例では、過失運転致傷罪が成立する可能性があるといえます。

報道によると、今回の事例は無免許運転だと報道されています。
無免許運転事故を起こした場合は、どのような刑罰が科されるのでしょうか。
次回のコラムでは、無免許運転事故を起こした場合に成立する犯罪、科される刑罰を解説していきます。

過失運転致傷罪と弁護活動

今回の事例では、過失運転致傷罪を解説しましたが、自動車運転処罰法では危険運転致傷罪という犯罪が規定されています。
危険運転致傷罪は、大まかに説明すると、アルコールなどで正常な運転や、悪質なあおり運転など、危険な運転事故を起こし、相手にけがを負わせた場合に成立する犯罪です。

危険運転致傷罪の法定刑は、十五年以下の懲役です。(自動車運転処罰法第2条)
過失運転致傷罪の法定刑は七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金でしたので、危険運転致傷罪ではかなり重い刑罰が科されることになります。
また、過失運転致傷罪の場合は、けがの程度が軽い場合に刑の免除規定がありましたが、危険運転致傷罪にはありません。

過失運転致傷罪危険運転致傷罪のどちらが成立するかの判断基準は明確に規定されているわけではありません。
そのため、当初は危険運転致傷罪の容疑をかけられていたが、最終的に過失運転致傷罪が成立する場合などもあります。
過失運転致傷罪危険運転致傷罪の境界線は曖昧であるため、過失運転致傷罪が成立するような事故であっても、危険運転だと判断され、危険運転致傷罪が成立してしまう可能性もあります。

繰り返しになりますが、危険運転致傷罪過失運転致傷罪に比べてかなり刑罰が重いため、危険運転致傷罪の容疑をかけられた場合の多くは、過失運転致傷罪の成立を目指していくことになります。

弁護士は、あなたの主張を検察官に訴えることができます。
弁護士が、危険運転ではなく過失による事故だったと検察官へ訴えることで、危険運転致傷罪ではなく、過失運転致傷罪での起訴や略式命令による罰金刑が望める場合があります。
また、事故を起こした加害者本人が取調べなどで、危険運転はしていない、過失による事故だったと弁明しても警察官や検察官に聞く耳すらもってもらえないことが多々あります。
そういった場合でも、弁護士が弁護人として付くことで、あなたの主張を弁護士が検察官に訴えることができます。
ですので、危険運転致傷罪の容疑をかけられている場合や、取調べで訴えを聞いてもらえないなど、取調べで困っている方は、弁護士に相談をしてみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故の豊富な弁護経験をもつ法律事務所です。
交通事故に強い弁護士を選任することで、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪の成立を目指せる可能性がありますし、弁護士があなたの主張を検察官に訴えることができます。
危険運転致傷罪過失運転致傷罪などの交通事故でお困りの方は、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までご連絡ください。

(事例紹介)電動キックボードでひき逃げした事例②~過失運転致傷罪~

2023-09-20

(事例紹介)電動キックボードでひき逃げした事例②~過失致傷罪~

前回のコラムに引き続き、電動キックボードで歩行者をひき逃げしたとして、道路交通法違反の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

電動キックボードで歩行者をひき逃げしたとして、警視庁池袋署は、道交法違反(ひき逃げ)などの疑いで、埼玉県吉川市、(中略)容疑者(23)を再逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。調べに対し「当たってはいないが、女性が転倒したのは私が原因だと思う」と容疑を一部否認している。
再逮捕容疑は、(中略)電動キックボードを運転中、東京都豊島区東池袋の歩道で、商業施設から出てきた60代の女性と衝突し、肋骨(ろっこつ)骨折などの重傷を負わせたが、立ち去ったとしている。
(中略)容疑者が乗っていた電動キックボードはレンタルしたもので、歩道を走行できない機種だった。(後略)
(9月11日 産経新聞 THE SANKEI NEWS  「電動キックボードでひき逃げ 女を再逮捕 警視庁」より引用)

電動キックボードと過失致傷罪

今回の事例では、容疑者が運転する電動キックボードが被害者に衝突し、被害者が肋骨を骨折したと報道されています。
電動キックボードで人にけがを負わせた場合には、罪に問われるのでしょうか。

車で事故を起こし、人にけがを負わせると過失運転致傷罪が成立する場合があります。

過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます)第5条で、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています。

原動機付自転車は、車と同様に自動車運転処罰法が規定する「自動車」に該当します。(自動車運転処罰法第1条1項)
前回のコラムで解説したように、電動キックボード原動機付自転車にあたりますので、電動キックボードであっても、運転上必要な注意を怠って人にけがを負わせた場合には、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

では今回の事例では過失運転致傷罪は成立するのでしょうか。

今回の事例では、容疑者が歩道を電動キックボードで走行し、被害者と衝突したと報道されています。
一部の電動キックボード歩道の走行を許可されていますが、容疑者が運転していた電動キックボード歩道の走行を禁止されていました。
歩道の走行を禁止されている以上、容疑者が運転していた電動キックボード歩道を走行すると事故の危険性があったのだと考えられますので、容疑者が歩道の走行を認められていない電動キックボード歩道を走行する行為は、歩道は走行しないといった運転上必要な注意を怠っていたと判断される可能性があります。
今回の事例では、被害者は肋骨を骨折するけがを負っていますので、容疑者の運転によりけがを負ったのであれば、過失運転致傷罪が成立するかもしれません。

過失運転致傷罪と示談

今回の事例では、被害者が肋骨を骨折するという大けがを負っています。
被害者が重症であり、禁止されている歩道を走行していることから、悪質であると判断されるおそれがあり、裁判になってしまう可能性が考えられます。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、裁判になってしまうと懲役刑が科される可能性があり、刑務所に行かなければならなくなってしまうおそれがあります。

刑事事件では示談を締結すると科される罪が軽くなると聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
これは交通事故の場合も例外ではなく、事故被害者と示談を締結することで、科される罪が軽くなる場合があります。

示談交渉をするには、相手の連絡先を知る必要があります。
交通事故の場合、被害者の連絡先を知らないことがほとんどでしょうから、警察官などを通じて連絡先を手に入れることになります。
しかし、連絡先を教えてもらえるように警察官に頼んでも、被害者保護や証拠隠滅の観点から、加害者には連絡先を教えてもらえないことがあります。
警察官に連絡先の入手を断られてしまっても、再度弁護士が依頼することで教えてもらえる場合がありますので、示談交渉を考えている方は、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

また、連絡先を教えてもらえた場合であっても、加害者本人が被害者に直接示談交渉をすることで、被害者の処罰感情が激化し、トラブルを生んでしまうおそれがあります。
弁護士が代わりに示談交渉を行うことで、そういったトラブルを回避できる可能性がありますので、示談交渉を行う際は、事前に弁護士に相談をした方がいいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
示談を締結することで、執行猶予付き判決の獲得や不起訴処分を獲得できる場合があります。
弁護士が代理人となって示談交渉をすることで、円滑に示談を締結できる場合がありますので、示談を考えている方、示談交渉でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)無免許運転で事故を起こし逮捕 福岡

2023-08-17

(事例紹介)無免許運転で事故を起こし逮捕 福岡

無免許運転で事故を起こし、けがを負わせた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

福岡市で今年6月、車を無免許運転し別の車に追突する事故を起こして運転手にケガをさせたまま逃走した疑いで、17日、38歳の男が逮捕されました。
無免許運転過失致傷とひき逃げの疑いで逮捕されたのは、福岡市西区の自営業(中略)容疑者(38)です。
博多警察署によりますと、(中略)福岡市博多区の路上で無免許で車を運転し、信号待ちをしていた前の車に追突して、運転していた医師の男性(57)に軽いケガをさせ、そのまま逃走した疑いです。
(後略)
(8月17日 TNCテレビ西日本 「9年前に飲酒運転で免許失効も…“無免許運転でひき逃げ” 38歳男を逮捕 「バレるのが怖かった」 福岡」より引用)

過失運転致傷罪

過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます)で定められています。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

上記の条文が過失運転致傷罪の条文となります。
過失運転致傷罪は簡単に説明すると、運転中の不注意により、人にけがを負わせた場合に成立します。
また、けがの程度が軽い場合には、刑が免除される場合があります。

今回の事例では、前の車に追突し、前の車の運転手に軽いけがを負わせたとされています。
事故の詳しい状況はわかりませんが、おそらく前方不注視などの理由で追突したのでしょう。
運転中の不注意により事故を起こし、相手にけがを負わせた場合には過失運転致傷罪が成立しますので、今回の事例では、過失運転致傷罪が成立してしまう可能性があります。

また、過失運転致傷罪無免許運転であった場合に、科される刑罰が重くなります。

自動車運転処罰法第6条4項
前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、10年以下の懲役に処する。

無免許運転での過失運転致傷罪は、法定刑が10年以下の懲役ですので、通常の過失運転致傷罪と異なり、罰金刑の定めはありません。
今回の事例では、容疑者が無免許運転だと報道されていますので、過失運転致傷罪で有罪になった場合には、懲役刑が科されてしまう可能性があります。

過失運転致傷罪と執行猶予

繰り返しになりますが、無免許での過失運転致傷罪は懲役刑しか定められておらず、有罪になった場合には必ず懲役刑が科されることになります。
ですが、有罪になった場合に必ずしも、刑務所に収容されるわけではありません。
執行猶予付き判決を得ることができれば、刑務所に行くことなく、普段通りの生活を送ることができます。

刑事事件では、警察官などから取調べを受けることになります。
取調べの際に作成される調書は裁判の際に重要な証拠として扱われます。
ですので、あなたにとって不利な調書が作成されてしまうと、裁判で不利に働く可能性が高く、重い刑罰を科されてしまう可能性があります。
そのような事態を避けるためにも、取調べ対策は重要になります。

今回の事例では、無免許運転による事故ですので、なぜ車を運転したのか、事故の原因は何かなどを聴かれるでしょう。
取調べでは、あらかじめ聴かれる内容を予測して供述すべき内容やそうでない内容を整理しておく必要があります。
弊所では、取調べのアドバイスなども行っていますので、過失運転致傷罪などの容疑をかけられた方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

交通事故に精通した弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決の獲得など、あなたにとって良い結果を得られる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881にご連絡ください。

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例②

2023-07-26

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例②

睡眠障害をもつバスの運転手追突事故を起こし、危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例を基に、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた際の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

睡眠障害を自覚しながら路線バスを運転して事故を起こし、乗客7人に重軽傷を負わせたとして、警視庁は29日、バス会社(中略)社員の男(60)(東京都町田市)を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検した。(中略)
捜査関係者によると、男は(中略)睡眠障害で正常な運転ができない恐れがあると認識しながら、東京都町田市内で路線バスを運転。居眠りして住宅の外壁に衝突し、10~60歳代の乗客の男女7人に顔の骨を折るなどの重軽傷を負わせた疑い。
男は事故直後、「貧血を起こしたような感じで記憶がなくなった」と説明した。警視庁が持病を捜査したところ、医師から睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、呼吸を楽にする装置を就寝時に着けるよう指導されていたのに、着けていなかったことなどが判明したという。
(中略)は取材に「産業医からは(SASの)治療を受けながらの通常勤務が可能との診断を受けていた」としている。
(6月30日 読売新聞オンライン 「「睡眠障害」自覚しながら路線バス運転、7人重軽傷事故…「危険運転」適用し書類送検」より引用)

危険運転致傷罪と刑事罰

危険運転致傷罪は有罪になった際に、12年以下の懲役が科されます。(自動車運転死傷行為処罰法第3条1項、2項)
危険運転致傷罪には罰金刑の規定がありませんので、有罪になってしまった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り、刑務所に行かなければなりません。

事故の報道で過失運転致傷罪という罪名を目にする方も多いと思います。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金(自動車運転死傷行為処罰法第5条)であり、危険運転致傷罪過失運転致傷罪と比べると、刑期も長く、罰金刑の定めがないなど、かなり重い刑罰が規定されていることが窺えます。

また、今回の事例では、バスによる事故ですし、容疑者はバスの運転を職業としています。
バスのような大型車での事故や、車の運転を業務としている場合は、事故の危険性や責任が重いと判断され、科される刑罰が重くなる可能性が高いです。

持病による危険運転致傷罪と弁護活動

刑事事件の重要な証拠のひとつに供述調書というものがあります。
供述調書取調べの際に作成される書類のひとつで、容疑者が供述した内容を基に作成されます。
供述調書は裁判などの証拠として扱われますので、万が一、供述内容とは異なる内容や貴方の不利になるような内容の供述調書が作成されてしまった場合は、後の裁判で窮地に陥ってしまう可能性があります。
そういう状況にならないためにも、事前に取調べの対応を行っておくことが大切です。

とはいえ、取調べ対応と言われてもイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。
取調べでは、事故の状況や原因などを聴かれることになります。
今回の事例であれば、睡眠障害の程度や事故の前日に呼吸を楽にする装置を付けていたのかどうか、運転時に眠気があったか、睡眠障害により事故を起こす可能性を自覚していたのかなどを聴かれるのではないでしょうか。
取調べでは、事前に聴かれる内容を想定し、供述すべき内容を整理しておくことが重要になります。
弁護士であれば、聴かれる内容を事前に予測することで、供述内容をアドバイスすることが可能です。
ですので、取調べを受ける際には、事前に弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

また、今回の事例の事故の原因が、容疑者による睡眠障害ではない可能性もあります。
危険運転致傷罪は、簡単に説明すると、政令で定められている病気が運転に支障をきたすおそれがある状態で、その病気の影響により事故を起こし、人にけがを負わせた場合に成立します。
ですので、容疑者の持病である睡眠時無呼吸症候群が事故の原因でない場合には、危険運転致傷罪が成立しない可能性があります。

交通事故に精通した弁護士による弁護活動で、危険運転致傷罪ではなく、過失運転致傷罪での適用を目指せる可能性があります。
事故の状況持病の程度によって事件の見通しは異なりますので、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた場合は、一度、弁護士に相談をすることをお勧めします。

危険運転致傷罪でお困りの方は、ぜひ一度、交通事故に精通した弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例①

2023-07-19

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例①

睡眠障害をもつバスの運転手追突事故を起こし、危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

睡眠障害を自覚しながら路線バスを運転して事故を起こし、乗客7人に重軽傷を負わせたとして、警視庁は29日、バス会社(中略)社員の男(60)(東京都町田市)を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検した。(中略)
捜査関係者によると、男は(中略)睡眠障害で正常な運転ができない恐れがあると認識しながら、東京都町田市内で路線バスを運転。居眠りして住宅の外壁に衝突し、10~60歳代の乗客の男女7人に顔の骨を折るなどの重軽傷を負わせた疑い。
男は事故直後、「貧血を起こしたような感じで記憶がなくなった」と説明した。警視庁が持病を捜査したところ、医師から睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、呼吸を楽にする装置を就寝時に着けるよう指導されていたのに、着けていなかったことなどが判明したという。
(中略)は取材に「産業医からは(SASの)治療を受けながらの通常勤務が可能との診断を受けていた」としている。
(6月30日 読売新聞オンライン 「「睡眠障害」自覚しながら路線バス運転、7人重軽傷事故…「危険運転」適用し書類送検」より引用)

持病と危険運転致傷罪

危険運転致傷罪は、刑法ではなく、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」といいます。)の第2条、3条に規定されています。

自動車運転死傷行為処罰法第3条
1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

自動車運転行為処罰法第3条2項が規定しているように、車の運転に支障をきたすような持病があり、その持病により事故を起こしてけがをさせた場合は、危険運転致傷罪が適用される可能性があります。

今回の事例では、容疑者に睡眠障害があり、居眠り運転により衝突事故を起こしたとされています。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令第3条6号では、運転に支障を及ぼすおそれがある病気として、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害を挙げていますので、容疑者が罹患している睡眠時無呼吸症候群が車の運転に支障をきたす持病にあたる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群睡眠障害のひとつであり、症状として日中の眠気が挙げられます。
容疑者が睡眠障害を自覚しながら、睡眠時無呼吸症候群の症状による日中の眠気が原因で事故を起こしたのであれば、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決の獲得や罪の減軽など、あなたにとって良い結果を得られる可能性があります。
危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までお電話くださいませ。

次回のコラムでは、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた際の弁護活動についてご紹介します。

【7月1日法改正】電動キックボードで交通事故に

2023-05-24

【7月1日法改正】電動キックボードで交通事故に

令和5年7月1日施行の改正道路交通法により、電動キックボードに関する条文が一部変わります。
当ブログでは、電動キックボードの交通ルールについて解説致します。

【ケース】

山梨県大月市在住のAさんは、大月市内の会社に勤める会社員です。
Aさんは電動キックボードとよばれる電動式モーターの付いた車輪の小さな車両で出勤していました。
事件当日、Aさんは仕事終わりに飲酒して帰宅しようと電動キックボードを運転していたところ、歩行者Vさんと接触してしまい、Vさんは全治3週間の怪我を負いました。
Aさんの通報を受けて臨場した大月市内を管轄する大月警察署の警察官は、Aさんを酒気帯び運転の罪(道路交通法違反)過失運転致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律違反)で捜査することにしました。

≪ケースはすべてフィクションです。≫

【電動キックボードについて】

電動キックボードとは、電動式モーターが付いていて車輪が小さく、バイクなどと違って立って乗るという特性があります。
電動キックボードは便利で安く、メンテナンスなどの手間も少ないため、便利な乗り物として普及しつつあります。
一方で、報道では電動キックボードが絡む事故や違反も生じているようで、電動キックボードに乗っていて刑事事件の加害者になるということが考えられます。

電動キックボードは車両として扱われますので、道路交通法をはじめとした交通法規が問題となります。

①2023年6月30日までの扱い
このブログがアップロードされている時点で、電動キックボードはバイクとして扱われます。
このうち0.60kw以下の電動キックボードについては原動機付自転車に、0.60kwを超える電動キックボードは普通自動二輪などのバイクに該当します。
原動機付自転車とはいわゆる原付バイク、普通自動二輪は学科試験や技能試験を経て交付される免許を以て運転ができる車両です。
それらと同じ扱いである以上、電動キックボードについても以下のようなルールを順守する必要があります。

・区分(「原付」や「普自二」といった分類)に従った運転免許証が必要
・ヘルメットの着用義務
・車道の通行を厳守、二段階右折等
・ナンバープレートや前照灯などの設置
・自動車賠償責任保険等(いわゆる自賠責)の加入義務

となります。
人身事故を起こした場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の定める過失運転致死傷罪に該当し処罰されます。

②2023年7月1日以降の扱い
2023年(令和5年)7月1日施行の改正道路交通法では、原動機付自転車の一類型として「特定小型原動機付自転車」が新たに設置されます。
これにより、電動キックボードはその出力に応じて3つに分類されます。

Ⅰ.(一般)原動機付自転車等
これは①と同様です。
改正後も免許証の取得が必須です。

Ⅱ.特定小型原動機付自転車
新設された分類です。
大きさ・速さの要件があり、原動機付自転車より速度等の制限があります。
運転免許証の取得は不要ですが、16歳以上でなければ運転できません。
・車体が長さ190cm以下、幅60cm以下
・20km/hを超える速度を出すことが出来ないこと
・その他設定がなされていること(ATであること、最高速度表示があること、等)
・自動車損害賠償責任保険に加入していること
・ナンバープレートを付けていること
・ヘルメット着用の努力義務

Ⅲ.特例特定小型原動機付自転車
電動キックボードの出力が最も弱い場合に該当する分類です。
Ⅱの要件に加え、6km/hを超える速度で走行できないこと、速度表示灯を点滅させることが要件となっています。

法改正後も原則として車道を走行することになりますが、Ⅲについては「普通自転車等及び歩行者等専用」という親子と自転車が描かれた青い標識がある歩道についてのみ、走行が認められています。

【電動キックボードで刑事事件に】

上記で紹介したとおり、法改正により電動キックボードは車両の性能により分類が異なることになりますが、ⅠはもとよりⅡ特定小型原動機付自転車とⅢ特例特定小型原動機付自転車についても原動機付自転車の一類型となるため、人身事故を起こした場合には自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の過失運転致死傷罪により処罰されると考えられます。
また、電動キックボードも車両であり、飲酒をしての運転も認められていません。

その気軽さから電動キックボードは益々普及することが考えられますが、車やバイクと同じ車両であることを踏まえ、法律に従って安全に運転する必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、人身事故や飲酒運転といった交通事件・事故を数多く経験して参りました。
電動キックボードに関しては、法改正により間違った認識で違法行為をしてしまう・捜査を受けてしまうといった恐れもあります。
山梨県大月市にて、電動キックボードの運転が原因で刑事事件に発展した場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。

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