【事例紹介】赤信号無視による事故 危険運転致傷罪で起訴された事例

2023-12-06

【事例紹介】赤信号無視による事故 危険運転致傷罪で逮捕された事例赤信号を無視して走る車

赤信号を故意に無視して事故を起こしたとして、危険運転致傷罪道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で起訴された事例について、弁護士法人あいち刑事総合法律事務所が解説します。

事例

札幌地検は29日、危険運転致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪で石狩市の(中略)を起訴しました。
起訴状などによりますと、(中略)被告は11月8日、乗用車を運転し、パトカーからの追跡を免れるために、赤信号を故意に無視して時速約42キロから49キロで交差点に進入。
横断歩行中の韓国籍の観光客で27歳の女性と31歳の女性を乗用車のフロントガラスに衝突させ、それぞれ全治約3日と約1週間のけがをさせました。
さらに、乗用車を停止させて救護に必要な措置をせず、その場から立ち去り、警察官に報告しなかったとされています。
(後略)
(11月30日 STVニュース 「韓国人女性2人をひき逃げ 赤信号を故意に無視 23歳男を危険運転致傷などの罪で起訴」より引用)

赤信号無視と危険運転

アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での運転や進行を制御することが困難な高速度での走行、赤信号の殊更な無視かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転などで、人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第2条)

今回の事例では、容疑者は故意に赤信号を無視して時速約42キロから49キロで交差点に進入したと報道されています。
時速42キロから49キロで走行している車が歩行者などに追突すれば、何らかのけがを負わせる可能性がありますので、時速42キロから49キロでの交差点の侵入は、交通の危険を生じさせる速度での運転だと判断される可能性があります。
実際に容疑者が赤信号を故意に無視したのであれば、赤信号の無視かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転をして人にけがをさせたとして、容疑者に危険運転致傷罪が成立するおそれがあります。

赤信号無視による危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役ですので、危険運転致傷罪で有罪になった場合には必ず懲役刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第2条)

赤信号無視と過失運転

危険運転致傷罪を規定している自動車運転処罰法では、過失運転致傷罪についても規定しています。
過失運転致傷罪とは、簡単に説明すると、運転上払うべき注意を怠り、人にけがを負わせた場合に成立する犯罪です。

例えば、赤信号を青信号だと誤信して横断歩道を横断中の歩行者をはねてけがを負わせてしまった場合、運転手は信号を確認するといった運転上払うべき注意を怠ったことで、歩行者にけがを負わせたことになりますので、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。
赤信号だと認識しながら殊更に赤信号を無視して事故を起こしけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立するおそれがあり、過失により赤信号を見落とし事故を起こしてけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。

今回の事例では、赤信号を故意に無視して事故を起こしたとして、危険運転致傷罪の容疑で起訴されています。
もしも赤信号無視が故意ではなく、信号の見落としなどの過失であった場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金であり、相手のけがの程度が軽い場合には情状により刑が免除される場合があります。(自動車運転処罰法第5条)
赤信号無視による危険運転致傷罪15年以下の懲役ですので、危険運転致傷罪過失運転致傷罪よりも科される量刑が重くなります。

取調べと危険運転致傷罪

赤信号での事故の場合、故意による赤信号無視なのか、過失による赤信号の見落としなのかで、危険運転致傷罪過失運転致傷罪のどちらの罪が成立するかが変わってきます。
先ほども述べたように、危険運転致傷罪過失運転致傷罪に比べてはるかに科される刑罰が重い犯罪です。
過失運転致傷罪では罰金刑の規定がありますが、危険運転致傷罪にはないため、危険運転致傷罪で有罪になった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り刑務所で刑務作業に従事することになります。

逮捕されると、警察官や検察官から連日、取調べを受けることになります。
取調べでは、警察官や検察官が供述を誘導することがあります。
誘導された供述で作成された供述調書だったとしても、署名押印してしまった場合には内容の訂正をすることができません。
供述調書は裁判で証拠として使用されますので、意に反した供述調書を作成されてしまった場合には、裁判で不利な状況に陥ってしまう可能性が非常に高くなります。

例えば、過失により赤信号を見落とした事故の場合に、警察官などに「赤信号だとわかっていて突っ込んだよね」と言われ、赤信号の見落としと故意の赤信号無視どちらも一緒だろうと思い「はい」と答えたとします。
赤信号だとわかっていた場合には、過失によって赤信号を見落としたわけではありませんので、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
ですので、実際には過失により赤信号を見落とした事故であっても、故意に赤信号を無視したという内容の供述調書が作成されることで、危険運転致傷罪で実刑判決が下されてしまうおそれがあります。
こういった事態を避けるためにも、取調べ前に弁護士と取調べ対策を行い、成立する可能性のある犯罪やその犯罪の成立要件を理解したうえで供述すべき内容を整理することが非常に重要になります。

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