ひき逃げと弁護活動

2023-11-01

ひき逃げと弁護活動

ニュースでひき逃げの報道を目にする人は多いのではないでしょうか。
ですが、ひき逃げをした場合にどのような量刑が科されるのか知らない方もいらっしゃると思います。
今回のコラムでは、具体的な事例を交えて、ひき逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

Aさんは、北海道札幌市中央区の道路で車を運転していました。
道路を左折しようとした際に、道路を横断していたVさんにに気づかず巻き込んでしまいました。
怖くなったAさんはその場を離れました。
Vさんは事故が原因で全治3か月のけがを負っており、後日、Aさんは札幌方面中央警察署の警察官に逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

ひき逃げとは

ひき逃げという言葉は、交通事故を起こした後、その場から逃げる行為を指します。
ひき逃げはひき逃げ罪というものがあるわけではなく、道路交通法で規定されています。

道路交通法第72条第1項前段では、交通事故が発生した場合、関係する車両の運転手は直ちに停車し、負傷者に対する救護や危険の防止など、必要な措置を講じなければならないとされています。
この義務を怠った場合、救護義務違反となる可能性があります。

また、道路交通法第72条第1項後段では、交通事故を起こした場合に、警察署へ事故を報告しなければならないと定めています。
この警察への事故の報告も救護義務と同様に義務ですので、事故の報告を怠った場合は、報告義務違反になるおそれがあります。

救護義務違反報告義務違反にあたる場合に、ひき逃げとして扱われます。

道路交通法におけるひき逃げの罰則

ひき逃げ事件が発生した場合、その運転手は道路交通法に基づいて厳しく罰せられる可能性があります。
具体的には、加害者の運転が原因で被害者がけがを負い、救護をしなかった場合には、道路交通法第117条第2項により、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。

この罰則は、交通事故によって人々が受ける影響の深刻さと、運転手が負うべき社会的責任を反映しています。
特に、ひき逃げ事件では事故後すぐに被害者が適切な医療措置を受けられない可能性が高く、その結果、命に関わる事態にもつながりかねません。

また、罰則が厳しい理由の一つとして、ひき逃げ行為が他の交通違反とは異なり、故意によるものであることが多い点も挙げられます。
運転手が故意に逃走することで、事故の解決が困難になる場合が多く、そのために厳罰化されているのです。

また、報告義務違反に該当し道路交通法違反で有罪になる場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第119条第1項第19号)

今回の事例のAさんは事故を起こしたにもかかわらず、事故現場を去っていますので、ひき逃げにあたり、道路交通法違反が成立するおそれが高いといえます。

過失運転致傷罪とは

ひき逃げ事件においては、救護義務違反報告義務違反による道路交通法違反だけでなく、過失運転致傷罪も問われる可能性があります。
この罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)で規定されています。

簡単に説明すると、運転上必要な注意を怠って事故を起こし、人を傷つけた場合に過失運転致傷罪が成立します。
過失運転致傷罪で有罪になると、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)
ただし、その傷害が軽い場合には、情状によっては刑罰が免除される可能性もあります。

過失運転致傷罪は、故意ではなく過失によって人を傷つけた場合に適用される罪です。
しかし、その過失が重大であればあるほど、罰則も厳しくなる傾向にあります。

この罪に問われると、運転免許の剥奪や社会的信用の失墜、さらには職を失う可能性も考えられます。
そのため、過失運転致傷罪は、単なる交通違反以上の深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。

今回の事例のAさんに過失運転致傷罪は成立するのでしょうか。

今回の事例では事故に巻き込まれたVさんが全治3か月のけがを負っています。
この事故はAさんが周囲の確認をしっかりと行わずに左折したことで起きた事故だと考えられます。
今回の事故の原因はAさんによる過失だと推測できますので、Aさんの運転上の過失によりVさんにけがを負わせた行為は、過失運転致傷罪が成立する可能性が極めて高いといえます。

ひき逃げ事件での弁護活動のポイント

ひき逃げ事件が発生した場合、被疑者やその家族が最初に考えるべきは、適切な弁護活動を行うことです。

ひき逃げ事件で行う弁護活動として、大きく以下の4つが挙げられます。

①釈放を求める活動

逮捕された場合は逮捕後72時間以内勾留の判断が行われます。
勾留が決定してしまった場合には、最長で20日間勾留されますので、早期釈放を目指す場合には勾留を阻止する弁護活動を行う必要があります。
弁護士は勾留の判断前であれば、意見書を検察官や裁判官に提出することができます。
意見書を提出することで、早期釈放を認めてもらえる可能性があります。

勾留が決定し、身体拘束が続けば、学校や職場に事件のことを知られるリスクが高く、最悪の場合には退学処分解雇処分に付されてしまう可能性もあります。
弁護士に相談をすることで勾留を阻止できる可能性があるので、早期釈放を目指す場合には弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

②不起訴処分を目指す活動

ひき逃げによる交通事件では、被害者と示談を締結することで不起訴処分を獲得できる可能性があります。
加害者本人が示談交渉をしても応じてもらえない場合が多々あります。
弁護士を介して示談交渉を行うことで示談に応じてもらえる場合があります。

③執行猶予の獲得を目指す活動

示談を締結することで、執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
また、示談を得られない場合であっても、加害者が反省し、二度と事故を起こさないような対策を立てていることなどを弁護士が裁判官に主張することで、不起訴処分を得られる場合があります。

④ひき逃げについて争う

運転する車の種類や事故の程度によって、人を轢いたことに気づけない場合があります。
そういった場合には、弁護士がひき逃げの成否を争うことで、ひき逃げによる道路交通法違反について無罪を得られる可能性があります。

ひき逃げに強い弁護士を

ひき逃げ事件は、その行為自体が非倫理的であるだけでなく、法的にも厳しく罰せられる行為です。
事件後すぐに弁護士に相談をすることで、不起訴処分執行猶予付き判決の獲得など、良い結果を得られる可能性があります。
ひき逃げで捜査を受けている方、ご家族が逮捕された方は、お早めに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。

Copyright(c) 2016 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.