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飲酒運転でひき逃げ
飲酒運転でひき逃げした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
会社員のAさんは、神奈川県藤沢市の市道で酒に酔った状態で車を運転し、自転車に乗っていた男性をはねてそのまま逃げた疑いで、神奈川県藤沢警察署に逮捕されました。
Aさんは、取調べに対して「飲酒運転をしていたのは認めるが、人をひいた覚えはない。」と容疑を否認しているようです。
逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
1.飲酒運転に対して問われる罪
飲酒運転は、道路交通法により固く禁じされています。
身体に一定以上のアルコールを保持したまま車などを運転した場合には、道路交通法違反が成立し、刑事罰の対象となります。
(1)酒気帯び運転
呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上、もしくは血液1mlあたり0.3㎎以上のアルコールを含んで車両を運転する行為が、「酒気帯び運転」に当たり、刑事罰は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
(2)酒酔い運転
「酒酔い運転」は、呼気アルコール濃度などは関係なく、飲酒の影響で正常に車両が運転できないおそれがある状態で車両を運転する行為です。
例えば、まっすぐ歩くことができなかったり、呂律が回っていないなどの状況から、正常に車両が運転できない状況か否かが判断されます。
酒酔い運転の刑事罰は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
2.ひき逃げに対して問われる罪
人身事故を起こしてしまった場合、運転手は、負傷者を助けたり、警察に事故を報告しなければなりません。
負傷者を適切に助ける義務を「救護義務」、警察に通報する義務を「報告義務」と呼び、これらの義務を行った場合は、道路交通法違反が成立することになります。
救護義務違反についての刑事罰は10年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
3.人身事故を起こしたことにより問われる罪
飲酒運転で事故を起こしてしまい、人に怪我を負わせた、あるいは、人を死亡させてしまった場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に定められる以下の罪が適用される可能性があります。
(1)過失運転致死傷罪
自動車の運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるとされています。
(2)危険運転致死傷罪
アルコールの影響により、正常な運転が困難な状態で車両を走行させる行為を行い、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
「正常な運転が困難な状態」というのは、道路や交通の状況などに応じた運転をすることが難しい状態になっていることを指します。
飲酒運転の場合、アルコールによる酔いのために、前方をしっかり見て運転することが難しい状態、自分が思ったとおりにハンドルやブレーキなどを操作するのが難しい状態などが該当します。
本罪の法定刑は、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役、人を負傷させた場合は15年以下の懲役となっており、非常に重い罪と言えます。
また、アルコールの影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら車両を運転した上、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を死亡させた場合には15年以下の懲役、人を負傷させた場合には12年以下の懲役が科される可能性があります。(通称、「準危険運転致死傷罪」)
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、正常な運転が困難な状態に陥っているわけではないが、アルコールのために、自動車を運転するのには必要な注意力・判断力・操作能力が相当程度低下しており、危険である状態のことをいいます。
4.飲酒運転でひき逃げした場合は?
飲酒運転で人身事故を起こし、その場から逃走した場合には、次のような罪が成立する可能性があります。
①道路交通法違反(酒気帯び運転)+道路交通法違反(救護義務違反)+過失運転致死傷罪
②危険運転致死傷罪+道路交通法違反(救護義務違反)
③準危険運転致死傷罪+道路交通法違反(救護義務違反)
これらの罪は、併合罪となり、その処断刑は、併合罪のうち2個以上の罪について有期懲役・禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。
①の場合には、長期15年以下の懲役、②死亡の場合は長期30年以下の懲役、怪我をさせた場合は長期22年6月以下の懲役、③死亡の場合は長期22年6月以下の懲役、怪我をさせた場合は長期18年以下の懲役、となります。
このように、飲酒運転でひき逃げをした場合には、重い罪に問われる可能性があります。
公判請求され、正式裁判となることが予想されますので、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が交通事件を起こし対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
ひき逃げで自首して逮捕
ひき逃げで自首をして逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
ある日の深夜、自動車で神奈川県伊勢原市内を走行していたAさん。
しかし道端を歩いていた歩行者をはねてしまいました。
怖くなったAさんは、そのまま逃走してしまいました。
翌日、冷静になったAさんは神奈川県伊勢原警察署に出頭し、昨夜のひき逃げは自分がしたものだと告げ、そのまま逮捕されました。
(事実をもとにしたフィクションです)
~人を死傷させて成立する犯罪~
自動車で人身事故を起こし、さらにひき逃げまでした場合には、多くの犯罪が成立してしまい、厳しい判決を受けることが予想されます。
一通り、成立する可能性のある犯罪を見ていきましょう。
まず、自動車で人をひいて負傷させた場合は過失運転致傷罪が、死亡させた場合は過失運転致死罪が成立する可能性があります。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第5条(過失運転致死傷)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
さらに、ひいてしまった原因が飲酒運転やスピード違反などにあり、中でも悪質なケースでは、より重い刑罰が定められた危険運転致死傷罪が成立する可能性もあります。
同法第2条(危険運転致死傷)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
第1号 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
第2号 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
(以下略)
このように、事故原因によっては非常に重い刑罰を受ける可能性があります。
なお、最初に条文を上げた過失運転致傷罪の場合、運転者にあまり落ち度がなければ罰金や不起訴処分で終わったり、刑罰が免除される可能性も残されています。
ところが逃げてしまった場合にはそうはいかなくなってしまいます。
~逃げたことで成立する犯罪~
人身事故を起こした後、被害者を助けず逃げてしまった場合には、道路交通法に定められた①被害者を救護する義務と、②警察官への報告義務に違反したことになります。
それぞれ以下のような刑罰が定められています。
①救護義務違反(道路交通法72条1項前段・117条2項)
→10年以下の懲役または100万円以下の罰金
②報告義務違反(道路交通法72条1項後段・119条1項10号)
→3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
さらに、単純に怖くなって逃げたのではなく、飲酒運転の発覚をおそれて逃げてしまった場合には、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪という犯罪が成立する可能性があります。
一度逃げて、アルコールが抜けてから自首すれば、アルコールの影響による事故かどうかがわからなくなり、前述の危険運転致死傷罪には問えなくなるという事態は不合理なので、このような犯罪を設けて重く罰することができるようにしているのです。
罰則は12年以下の懲役です。
このように、ひき逃げをすると様々な犯罪が成立し、重い処罰を受ける可能性が出てきてしまいます。
~自首したことで罪が軽くなる?~
Aさんのように自首したことで、刑罰が軽くなる可能性もゼロではありません。
刑法42条1項
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
ただし、ひいた犯人がまだわかっていない段階で出頭しないと、この条文は適用されないことになっています。
遅かれ早かれ見つかって逮捕されますから、怖くなってつい逃げてしまった場合でも、出来るだけ早く自首することを考えた方がいいでしょう。
~お早めに弁護士にご相談を~
あなたやご家族が、交通事件を含む何らかの犯罪をしてしまった場合、早く釈放してほしい、出来るだけ軽い処罰にしてほしい、被害者の方にはしっかり謝罪・賠償したいといった状況だと思います。
しかし具体的にどう動いていったらよいのか、わからないと思います。
弁護士はより良い事件解決に向けて弁護活動をしてまいりますので、ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。
京都市山科区でひき逃げ
京都市山科区でひき逃げ
京都市山科区のひき逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
Aさんは京都市山科区内を自動車で走行中,歩道から飛び出してきた自転車に乗っていた男子中学生をはね,全治2カ月のけがをさせてしまいました。
事故が京都府山科警察署に発覚することを恐れたAさんは,そのまま車を走らせ逃走しました。
現場付近の店舗に設置されていた監視カメラの映像等からAさんの車が割り出され,Aさんは京都府山科警察署でひき逃げ事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
【ひき逃げ】
ひき逃げとは,人の死傷を伴う交通事故の際に,事故を引き起こした車両等の運転者が,直ちに停止して負傷者を救護する義務や捜査機関等に事故を報告する義務を無視してその場から立ち去ることをいいます。
道路交通法第72条第1項は「交通事故があったときは,当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は,直ちに車両等の運転を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」と規定しています。
これはひき逃げの際に問題となる救護義務と危険防止義務,報告義務を定めたもので,このうち,運転者が当該車両等の事故に関して救護義務・危険防止義務の違反をした場合の法定刑は,5年以下の懲役または50万円の罰金(道路交通法第117条第1項)となっています。
また,死傷の原因がひき逃げした者にある場合には10年以下の懲役または100万円以下の罰金が法定刑となっています(道路交通法第117条第2項)。
また,報告義務に違反した場合には,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金となります(道路交通法119条10号)。
これらは道路交通法による処罰類型ですが,事故の原因が運転者の過失による場合は別に過失運転致死傷罪に問われる可能性もあります。
【過失運転致死傷罪】
過失運転致死傷罪は自動車運転死傷処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)第5条に規定されている罪です。
条文は「自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」となっています。
過失運転致死傷罪における自動車とは,原動機によって走行する車で,レールや架線を用いないものを意味します。
よって,自動二輪車や原動機付自転車も処罰対象になります。
自動車の運転とは,発進に始まり停止に終わるものとされています。
ただし,普通乗用自動車を運転していた者が車を道路左端に停車後,降車しようとして後方を十分確認することなく運転席ドアを開けたため後方から進行してきた自転車にドアをぶつけ,自転車に乗っていた人に傷害を負わせたという事件で,自動車の運転自体はすでに終了しており自動車運転上の過失は認められないものの,自動車の運転に付随する行為であり自動車運転業務の一環としてなされたものから傷害結果が発生したものとして業務上過失傷害罪の成立が認められた判例(東京高判平成25・6・11高刑速平成25年73頁)があります。
また,停止させる場所が不適切だったために事故につながった場合にも過失運転致傷罪の適用が考えられます。
過失運転致死傷罪が成立するためには,自動車の運転に必要な注意を怠ったこと,すなわち過失が必要です。
過失運転致傷罪のいう「過失」は,前方不注意やわき見運転,巻き込み確認を怠ったこと,歩行者や自転車等の飛び出しに気付かなかったこと,方向指示器(ウインカー)を点滅させずに方向転換したことなど,ちょっとした不注意でもこれにあたるとされています。
さらには,自分では注意を払ったつもりでも,別の行為をとっていたりより注意深くしていれば事故を避けることができたと裁判所が判断し過失が認定されてしまうケースもあります。
【ひき逃げ事件の弁護方針】
ひき逃げで道路交通法違反や過失運転致傷罪などの被疑者となってしまった場合,事案にもよりますが起訴される可能性は高いです。
加えて,事件現場から逃亡を図っていることから,逃亡のおそれありとして逮捕されるケースも多いです。
弁護士の活動としては,逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことを主張し早期の身体拘束状態からの解放を目指すことが考えられます。
また,被害者と示談を成立させることができれば,不起訴や執行猶予を獲得できる可能性を高めることができます。
刑事事件に強い弁護士に事件を依頼することによって,示談を円滑に行うことが期待できます。
弁護士から逮捕・勾留中の被疑者に法的なアドバイスを提供することで,被疑者として取調べを受ける際,被疑者としての権利行使に関する知識を持ちながら取調べに対応することも可能です。
ひき逃げで逮捕されてしまった方,過失運転致死傷罪の被疑者となってしまった方,京都府山科警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
自転車で高齢者ひき逃げ②
自転車で高齢者ひき逃げ②
京都府八幡市に住むAさんはスポーツタイプの自転車で出勤途中、左右の見通しがきかない十字路交差点を徐行せず、時速約30キロメートルで通過しようとしたところ、右方から歩いてきた高齢者Vさん(82歳)に自転車を衝突させて、Vさんを路上に仰向けに転倒させるなどしました。
Aさんは、Vさんが路上に仰向けに転倒したことには気づきましたが、「たいした怪我ではないだろう。」「このままでは出勤に遅れる。」などと思ってVさんを救護することなく現場を立ち去りました。
Vさんは近くを通りかかった人に119番通報されて病院に搬送され、肋骨などを折る怪我を負ったことが判明しました。
その後、京都府八幡警察署の捜査により、ひき逃げをした犯人がAさんであることが特定され、Aさんは過失傷害罪、道路交通法違反(救護措置義務違反、報告義務違反)で逮捕されてしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~前回(自転車で高齢者ひき逃げ①)のおさらい~
前回の自転車で高齢者ひき逃げ①では、
・「過失」とはなんなのか
・自転車にも「過失」が認められる場合があること
・自転車に過失が認められた場合、自転車の運転手が過失傷害罪(刑法209条)、過失致死罪(刑法210条)、重過失致死傷罪(刑法211条後段)に問われる可能性がある
といったことをご説明いたしました。
本日は「ひき逃げ」つまり道路交通法の救護措置義務違反、事故報告義務違反についてご説明いたします。
~「ひき逃げ」について~
ひき逃げについては、道路交通法(以下「法」)72条1項に定められています。
すなわち、その前段では車両等の運転者の「救護措置義務」を、後段では警察官に対する「事故報告義務」を定めています。
車両等の運転者は、交通事故があった場合、負傷者の救護や道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならず(救護措置義務)、さらに、警察官に対し当該交通事故の内容(日時、場所、死傷者の数、負傷の程度等)を報告しなければならない(事故報告義務)のです。
救護義務違反の罰則は、法117条1項で「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、法同条2項で「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の2種類がありますが、2項は、人の死傷が当該運転者の運転に起因する場合に適用される罰則です。
つまり、過失運転致傷罪が成立する場合は、通常2項が適用されます。
そして、事故報告義務の罰則は、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」です。
~自転車事故では勝手に現場を立ち去らない~
Aさんのような自転車事故を起こした場合は、とにかく「現場を勝手に立ち去らない」ことが大切です。
現場に留まり、まずは負傷者の救護活動に当たることが第一優先です。
ここで「怪我してなさそうだ。」「大丈夫そうだ。」などと勝手に判断してはなりません。
この点、判例(昭和45年4月10日)は「全く負傷していないことが明らかであるとか、負傷が軽微なため被害者が医師の診療を受けることを拒絶した場合」を除き、交通事故を起こした運転者には救護措置義務が課せられるとしています。
また、全く負傷していないことが明らかであるかどうかも、結局は、医師の診断により明らかにされることですから、運転者が「全く負傷していないことが明らか」などと判断しても、運転者が認識した事故態様等によってはやはり救護措置義務が課されることがあると考えられます。
また、急用のある場合でも勝手に現場を立ち去ってはいけません。
自ら、あるいは第三者を介して警察官に事故状況、氏名、住所等を伝え、急用がある場合はその旨伝えて警察官の指示を待ちましょう。
なお、被害者の方が善意で警察官に報告した場合でも、直ちに救護措置義務が免除されるものではなく、また、警察官が現場に到着するまでの間は現場に留まり続けることが必要です。
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24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。
自転車で高齢者ひき逃げ①
自転車で高齢者ひき逃げ①
京都府八幡市に住むAさんは、スポーツタイプの自転車で出勤途中、左右の見通しがきかない十字路交差点を徐行せず、時速約30キロメートルで通過しようとしたところ、右方から歩いてきた高齢者Vさん(82歳)に自転車を衝突させて、Vさんを路上に仰向けに転倒させるなどしました。
Aさんは、Vさんが路上に仰向けに転倒したことには気づきましたが、「たいした怪我ではないだろう。」「このままでは出勤に遅れる。」などと思ってVさんを救護することなく現場を立ち去りました。
Vさんは近くを通りかかった人に119番通報されて病院に搬送され、肋骨などを折る怪我を負ったことが判明しました。
その後、京都府八幡警察署の捜査により、ひき逃げをした犯人がAさんであることが特定され、Aさんは過失傷害罪、道路交通法違反(救護措置義務違反、報告義務違反)で逮捕されてしまいました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~自転車も道路交通法上は「車両」~
道路交通法上、車両とは自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいうとされ、軽車両とは自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛車を含む。)であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいうとされています。
したがって、道路交通法上では、自転車=「軽車両」=「車両」であることがお分かりいただけるかと思います。
~左右の見通しがきかない場合の通行方法~
道路交通法42条では、車両等(車両又は路面電車)が左右の見通しがきかない交差点を通行する場合の徐行義務について規定しています。
道路交通法42条
車両等は、(略)及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
1号
左右のみとおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右のみとおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行われている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)
以上からすると、車両である自転車にも、左右の見通しがきかない交差点での徐行義務が課せられることがわかると思います。
ここで、「徐行」とは車両等が直ちに停止できるような速度で進行することをいいますから、おおよそ時速10キロメートル未満をいうのではないかと思われます。
~本件自転車事故の「過失」とは~
「過失」とは、不注意によって注意義務を怠ること、そして、「注意義務」とは、少し難しいですが、結果予見可能性を前提にした結果予見義務と結果回避可能性を前提にした結果回避義務からなると言われています。
左右の見通しがきかない交差点を通過する者(Aさん)にとって、通常、人や車両が通行してくる可能性があること、人や車両に自車を衝突させ、歩行者や車両の運転手を死傷させてしまうことを予見することは容易ですから、この場合、結果予見可能性を前提にした結果予見義務を認めることができます。
また、上記のように、左右の見通しがきかない交差点を通行する車両には徐行義務が課されていますから、Aさんがこの義務を果たすことができたといえる場合(主観的回避可能性)には(通常あると思われますが)、結果回避可能性を前提にした結果回避義務も認めることができ、「過失」を認めることができるのです。
~自転車事故で「過失」が認められると?~
自転車事故で「過失」が認められ、それによって人を死傷させた場合は過失傷害罪(刑法209条1項、30万円以下の罰金又は科料)、過失致死罪(刑法210条、50万円以下の罰金)、過失の程度が重ければ重過失致死傷罪(刑法211条後段、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)が成立する可能性があります。
次回はひき逃げ(道路交通法違反(救護措置義務違反、報告義務違反))についてご説明いたします。
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人身事故を起こし、ひき逃げ
人身事故を起こし、ひき逃げ
Aさんは埼玉県川口市内で自動車を運転中、赤信号を見落として交差点に進入し、Aさんからみて右方向から青信号に従い交差点に進入してきたバイクと接触し、運転手Vさんに傷害を負わせてしまいました。
Aさんは車を停めてVさんの様子を見に行きましたが、怪我の様子を見て怖くなり、そのまま事故現場を立ち去り、帰宅しました。
次の日、Aさんの自宅に逮捕状を携えた埼玉県川口警察署の警察官が現れ、Aさんは過失運転致傷罪、救護義務違反の疑いで逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~Aさんは上記の罪に問われるか?~
ここ数年間で、自動車を運転し、人を死傷させる行為の厳罰化が進んでいます。
Aさんは過失運転致傷罪、救護義務違反の嫌疑で逮捕されていますが、これらの犯罪はどのような罪なのか解説したいと思います。
(過失運転致死傷罪)
過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させる犯罪です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条本文)。
簡単に言えば、自動車の運転中、運転ミスにより人を死亡、あるいは傷害した場合に成立する犯罪です。
人の死傷結果につき故意がある場合は、過失運転致死傷罪の成否ではなく、殺人罪、傷害罪の成否が検討されることになります。
「自動車の運転上必要な注意」とは、自動車運転者が、自動車の各種装置を操作し、そのコントロール下において自動車を動かす上で必要な注意義務をいいます。
道路を通行する車両等は、信号機の表示する信号に従わなければならず(道路交通法7条)、ケースの場合には、Aさんに「交差点の信号の色に留意し、これに従って自動車を進行させる」注意義務があったと考えられます。
こうしたことから、Aさんには赤信号に留意すべき注意義務を怠り、漫然と交差点に進入した過失があると判断される可能性が極めて高いと思われます。
この不注意により右からやってきたバイクと衝突し、傷害を負わせてしまったのですから、この時点でAさんに過失運転致傷罪が成立する可能性は高いでしょう。
過失運転致傷罪につき、有罪が確定すると、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処せられます。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除されることがあります。
(救護義務違反の罪)
交通事故があったときは、車両等の運転者その他の乗務員には、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません(道路交通法72条1項前段:救護義務)。
車両等(軽車両を除きます)の運転者が、その車両等の交通による人の死傷があった場合に、この人の死傷が運転者の運転に起因するものであるときに上記の義務に違反すると、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(道路交通法第117条2項)。
一般的に「ひき逃げ」と呼ばれる犯罪です。
Aさんは、自動車の運転者であり、その自動車の運転上必要な注意を怠ってVを傷害したのに、これを救護するなどの必要な措置を講じず、そのまま立ち去り帰宅したということなので、Aさんに救護義務違反の罪が成立する可能性は高いでしょう。
~Aさんの身柄解放活動その他弁護活動~
過失運転致傷罪の嫌疑だけであれば、逮捕されずに済むケースも多くありますが、これにひき逃げによる救護義務違反が加わると、自宅まで警察がやってきて逮捕される可能性が高まります。
また、ひき逃げによる救護義務違反という犯罪の性質上、逃亡のおそれがあると判断される可能性が高く、したがって、勾留される可能性も比較的高いと思われます。
起訴されてしまった場合には、保釈請求が可能なので、起訴された場合には、保釈保証金の準備などを行っていく必要があります。
また、Vさんと示談交渉を行うことも重要です。
Vさんと示談が成立すれば、Aさんが釈放される可能性、検察官による不起訴処分がなされる可能性も高まり、また、起訴された場合も、より軽い量刑による判決がなされることが期待できます。
加えて、後日、損害賠償請求を受けるなどの民事紛争に巻き込まれるリスクを無くすこともできます。
このように、示談を成立させることには、多くのメリットがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件に熟練した弁護士が多数在籍しており、過失運転致傷事件・救護義務違反事件の解決実績も豊富です。
ご家族が過失運転致傷事件、救護義務違反事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
スピード違反の人身事故で逮捕
スピード違反の人身事故で逮捕
神奈川県相模原市に住むAさんは、自動車でスピードを出したときの爽快感が忘れられず、制限速度を大きくオーバーして運転することを繰り返していました。
ある日、Aさんがいつものように制限速度オーバーで運転していると、道端から猫が飛び出してきました。
慌てて避けようとしてブレーキを踏みつつハンドルを切ったAさん。
その結果、自動車は操縦不能に陥り、歩道に乗り上げ、偶然歩いていた歩行者Vさんをひいてしまいました。
怖くなったAさんはその場から逃走しましたが、神奈川県津久井警察署の捜査の結果、Aさんの犯行であると判明し、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)
~Aさんに成立しうる犯罪~
制限速度を守っていても、突発的な出来事により人身事故が起こる可能性はあります。
ましてや制限速度を大きくオーバーしていれば、人身事故が起こる可能性は高まりますし、人身事故が起こった時の被害も大きくなりやすいです。
Aさんの場合、行政処分として免許停止等となるほか、以下の犯罪が成立する可能性があります。
①過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)
→7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
②危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条2号)
→被害者負傷15年以下の懲役、被害者死亡1年以上20年以下の懲役
③救護義務違反(道路交通法72条1項前段・117条2項)
→10年以下の懲役または100万円以下の罰金
④報告義務違反(道路交通法72条1項後段・119条1項10号)
→3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
今回のAさんの場合、少なくとも①過失運転致死傷罪は成立するでしょう。
さらに、大幅に制限速度を超えていれば、進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させたと判断され、より重い②危険運転致死傷罪が成立する可能性もあります。
また、被害者を助けずに逃げた行為については③救護義務違反となります。
加えて、事故を警察に報告しなかったことから④報告義務違反にもなります。
~刑事手続きの流れ~
逮捕されたAさんは、まずは最大で3日間の身体拘束がなされます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大で20日間の身体拘束がされます。
その後、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り、身体拘束が続きます。
そして裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。
運転の悪質さや被害の程度にもよりますが、これらの手続に関し、弁護士としては以下のような弁護活動を行うことが考えられます。
まず、検察官が勾留請求しなければ、あるいは裁判官が勾留を許可しなければ、最初の3日間で釈放されます。
そこで検察官や裁判官に対し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことや、身体拘束が続くことによる本人や家族などに過度の不利益が生じることを具体的事情に基づいて主張し、勾留をしないよう要請していきます。
また、起訴するか否かの判断は検察官が行いますが、検察官が罰金刑が適切と判断した場合、簡易な裁判手続で罰金刑にする略式起訴をすることもあります。
過失運転致死傷罪にとどまれば罰金刑もありえますので、本人が反省していること、被害者のケガが軽いこと、被害者と示談が締結できたことなど、本人に有利な事情があれば出来る限り主張し、略式起訴を目指していきます。
罰金刑が無理な場合も、執行猶予や、より短い懲役・禁錮を目指して弁護活動をすることになります。
~弁護士に相談を~
人身事故を起こして逮捕された場合、どのような罪が成立するのか、今後の刑事手続きはどうなるのか、取調べにはどのように受け答えしたらよいのかなど、不安点が多いと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います(初回接見サービス)。
仮に逮捕されていない場合には、事務所での法律相談を初回無料で行っております。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。
スピード違反やそれに起因する人身事故で逮捕された、捜査を受けたといった場合には、ぜひご相談ください。
大阪府箕面警察署管内のひき逃げ事件
大阪府箕面警察署管内のひき逃げ事件
【事件】
通勤中のAさんは、大阪府箕面市の路上を会社に向かって自動車で走行中、信号がついている交差点に進入したところで何か物に当たったような重たい音と小さな揺れを感じました。
場所は住宅街で死角も多く、Aさんはもしかしたら人をはねたかもしれないと思いましたが、会社に急いでいたためそのまま走り去りました。
そのとき信号はちょうど黄色から赤色に変わったところでした。
帰宅途中、Aさんは通勤中に物音と揺れを感じたあたりで、大阪府箕面警察署の警察官に停止を求められ、Aさんは停車しました。
警察官は、今朝この付近で人が車にはねられてけがをする事件が発生しておりその犯人を捜していること、被害者の証言と一致した車種と色の車に職務質問をしていることを告げ、何か知っていることや心当たりのあることはないかAさんに質問しました。
Aさんはもしかしたら自分かもしれないと思い、その旨を告げると警察官とともに大阪府箕面警察署に向かいました。
Aさんの証言と自動車についた傷などの状況から、警察官はAさんを過失運転致傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第5条)および道路交通法違反(同法72条)の容疑者として捜査を行うことにしました。
(フィクションです)
【ひき逃げ】
一般にいうひき逃げとは、道路交通法の第72条に違反することをいいます。
交通事故に関係した車両等の運転者等について、道路交通法第72条には次のような義務があると定められています。
① 直ちに運転を停止する義務
② 負傷者の救護義務
③ 道路上の危険防止の措置義務
④ 警察官に、発生日時、死傷者・物の損壊の状況や事故後の措置、積載物を報告する義務
⑤ 報告を受けた警察官が必要と認めて発した場合に、警察官が到着するまで現場に留まる命令に従う義務
これらのうち②救護義務違反と④報告義務違反の場合がひき逃げとされることが多いです。
今回のケースを見れば、Aさんは被害者を救護する行為や警察に報告する行為をしていないため、②と④の義務に違反していると認められひき逃げとなると考えられます。
ひき逃げをした場合の法定刑は、
②救護義務違反の場合は10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(事故の原因が本人に無い場合は5年以下の懲役または50万円以下の罰金)
④報告義務違反の場合は3月以下の懲役または5万円以下の罰金
となります。
①の救護義務違反と④の報告義務違反は「一個の行為」であり観念的競合とするとした判例がありますので、この場合はより重たい10年以下の懲役又は100万円以下の罰金の範囲で刑が決まります。
【過失運転致死傷罪】
過失運転致死傷罪は、自動車の運転に必要な注意を怠ったために人を死傷させた場合に成立します。
この事件の場合、被害者はけがをしたにとどまっていますので、過失運転致傷罪になります。
この罪の法定刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
また、この罪は但書で被害者のけがが軽い場合はその刑を免除することができるとされています。
今回、Aさんは信号が赤色の灯火に変わった交差点に進入し、もしこのときに赤色の灯火を不注意により認識していなかったこと等の事情が認められれば、自動車運転上必要な注意を怠った(過失がある)と認められることになります。
【危険運転致傷罪】
注意しなければならないのは、今回の事件のようなケースですと、さらに重い罪に問われる可能性があるということです。
それは、危険運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第2条)です。
この罪は、
1.アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状況で自動車を走行させる行為
2.進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3.進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4.人または車の通行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を走行させる行為
5.赤色信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を走行させる行為
6.通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
のいずれかに当たる行為を行って人を死傷させた場合に成立します。
法定刑は、被害者を死亡させた場合に1年以上の有期懲役、負傷させた場合は15年以下の懲役となっています。
「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、判例によれば、時速20キロから30キロの速度で走行していれば、危険速度に当たるとされる場合が多いようです。
今回の場合ではAさんは赤信号の交差点に減速することなく進入しけがをさせていますので、場合によっては5.の類型に当たることも考えられます。
赤信号を殊更に無視するとは、赤色信号であることの確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為をも含(最決平20・10・16刑集62巻9号2797頁)みます。
Aさんは仕事に遅れないよう信号に従わず車を走行させていますので、危険運転致傷罪の容疑に切り替わる可能性もありそうです。
【弁護活動】
Aさんに依頼された弁護士の活動としては、まず被害者との示談を目指して活動していくことが考えられます。
示談をすることで被害感情の治まりをアピールすることができ、不起訴処分や罰金刑での事件収束、執行猶予の獲得も期待できます。
対人の交通事故を起こしてしまった方、ご家族やご友人が大阪府箕面警察署でひき逃げ事件の取り調べを受けて困っている方は、交通犯罪に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談下さい。
ひき逃げ,当て逃げの弁護方針は?
ひき逃げ,当て逃げの弁護方針は?
東京都杉並区に住むAさんは,ひき逃げ事故を起こしたとして警視庁杉並警察署に,過失運転致傷罪,道路交通法違反の容疑で逮捕されました。
逮捕の知らせを受けたAさん妻は,交通事件に強い弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)
~ ひき逃げと当て逃げの違い ~
「ひき逃げ」は,①車両等(軽車両を除く)の運転者が,当該車両等の交通による人の死傷があった場合(交通事故のうち人身事故があった場合)において,直ちに車両等の運転を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない(以下,救護義務)にもかかわらず,救護義務を果たさなった場合,あるいは,②①の場合において,人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるのに,救護義務を果たさなかった場合に成立する犯罪です(道路交通法72条1置く)。
①の法定刑は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金(道路交通法117条1項),②は10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(117条2項)です。
* ①と②の違い *
①と②との法定刑は大きく違います。
なぜ,このように違いがあるかというと,②の場合は「人の死傷が当該運転者の運転に起因」した場合の救護義務違反の規定で,①の場合よりも悪質であるからです。
これが①と②の大きな違いです。
例えば,道路脇の影から子供が突然飛び出し(当該車が適法に走っていた際のスピードの制動距離範囲内に飛び込んできた),怪我を負わせたあるいは死亡させたとします。
この場合,通常,子供の死傷が「当該運転者の運転に起因」したとは認められません。
よって,この場合,救護義務違反をすれば①が適用されることになります。
言い方を変えれば,自己に過失なく人を死傷させた場合でも救護義務は発生しますから注意が必要です。
* 同時に処理される罪 *
よく,ひき逃げと同時に処理される罪として過失運転致死傷罪(7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金),危険運転致傷罪(15年以下の懲役),危険運転致死罪(1年以上の有期懲役)などがあります。
危険運転致死傷罪には罰金刑がありませんから,同時に起訴されれば,ひき逃げでも懲役刑を選択されます。
過失運転致死傷罪で罰金刑を選択された場合は,ひき逃げでも罰金刑が選択されますが,①の場合,150万円(100万円+50万円)以下の罰金,②の場合,200万円(100万円+100万円)以下の範囲ので刑が科されます。
「当て逃げ」は,交通事故のうち物損事故があった場合において,当該交通事故に係る車両等の運転手等が救護義務を果たさなかった場合に成立する犯罪です。法定刑は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金(道路交通法117条の5第1号)です。
~ ひき逃げ,当て逃げの弁護方針 ~
ひき逃げの場合も当て逃げの場合も,交通事故を起こしたなどたことの認識(「人を怪我させた死亡させた」,人を怪我させたかもしれない,死亡させたかもしれない」など)がなければ成立しません。
そこで,運転者本人から交通事故に至るまでの経緯,交通事故の状況等を詳しくお聴き取りをする必要が出てくる場合もございます。
また,上記のとおり,運転者本人の運転に起因するかどうかで法定刑が異なりますから,客観的証拠から事故の状況を詳しく検討する必要が出てくる場合もございます。
ひき逃げ,当て逃げいずれの場合も,被害者への謝罪,被害弁償が必要である点はいうまでもありません(罪を認める場合)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,ひき逃げ,当て逃げなどの交通事故・刑事事件専門の法律事務所です。
ひき逃げ,当て逃げを起こしお困りの方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。
(警視庁杉並警察署までの初回接見費用:35,200円)
東京都調布市の重過失傷害罪およびひき逃げ・在宅事件
東京都調布市の重過失傷害罪およびひき逃げ・在宅事件
東京都調布市の歩道を自転車で走っていたAは、前方を注視することもなく、いきなり車道に進路を変更した。
車道を自転車で運転していたVは、いきなりAが正面から割り込んできたことから、これをかわすためにハンドル操作を誤り、転倒し怪我を負った。
しかしAは、110番や119番をすることなく、その場から逃走した。
その後、警視庁調布警察署の警察官は、Aを重過失傷害罪および道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕した。
AはAの家族を身元引受人として釈放されたが、その後の手続きや処分が不安になり、交通事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~重過失傷害罪と道路交通法上の救護義務違反(ひき逃げ)~
昨今では、ロードバイクなどが流行していることもあり、自転車同士あるいは自転車と自動車等との重大な人身事故などを見聞きする機会も増えているかもしれません。
本件で自転車に乗っていたAは、道路交通法上の救護義務違反(ひき逃げ)に加えて重過失傷害罪の容疑でも逮捕されています。
重過失傷害罪とは、一般的にはあまり耳慣れない犯罪かもしれません。
刑法典においても、「業務上過失致死傷等」との見出しを持つ刑法211条の後段において、「重大な過失により人を死傷させた者も、同様(注:前段の業務上過失致死傷と同様ということ)とする」と、定められています。
単純な「過失傷害」が209条において定められているのとは対照的に、やや見落としやすい規定となっています。
刑法209条の過失傷害罪が罰則として罰金と科料のみを規定しているのに対し、刑法211条後段にある重過失傷害罪は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」と罰則を定めており、法定刑に大きな差があることも見逃せません。
本件のような場合、Aがわずかにでも注意を払えば、車道に対向している自転車を発見することができたといえる場合には「重大な過失」が認められるといえ、これによりVを負傷させていることから重過失傷害罪が問われることになります。
自動車運転死傷行為処罰法が自動車や原動機付自転車には適用されるのに対し、自転車には適用がないことから、自転車による重大な人身事故等に対しては重過失傷害罪が適用される事例が増えつつあります。
また、AはVを放置し現場から逃走していることから、道路交通法72条1項の救護義務違反(ひき逃げ)の成否も問題となります。
道路交通法117条1項は救護義務違反(ひき逃げ)を「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定していることから、こちらの罪も問われうることになるのです。
~交通事件(人身事故)における弁護活動~
人身事故では、被疑者が逮捕されることも少なくありませんが、留置の必要性がないとしてその日のうちに釈放されることもあります。
ただし、釈放されたからといって微罪処分などの警察限りでの不送致処分ではないことに注意が必要です。
こういった場合にも、在宅捜査としてなお、起訴され刑事裁判の対象となる可能性は十分にあるのです。
在宅捜査の場合、逮捕・勾留された事件(いわゆる身柄事件)のような時間的制約がない分、どのように捜査が進行しているかが分かりづらいことがしばしばあります。
したがって、身体拘束を受けていない場合でも、専門知識を有する弁護士による事件の見通しやアドバイスを受けることが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、重過失傷害やひき逃げなどの交通事件を含む刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
身柄事件・在宅事件ともに経験が豊富な弁護士が、相談者様の不安やご不明点等を解消いたします。
重過失傷害事件やひき逃げ事件を起こしてしまった方やそのご家族は、フリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐお問い合わせいただくことをお薦めいたします。
(警視庁調布警察署までの初回接見費用:37,300円)