ひき逃げ事故で逮捕

2021-01-30

ひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都昭島市で、歩行者の男性がトラックにひかれて重傷を負うひき逃げ事故が起きました。
警視庁昭島警察署は、トラックを運転したAさんを過失運転致傷と道路交通法違反の疑いで逮捕しました。
Aさんは、調べに対し、「何かにぶつかったが、人ではないと思った。」と容疑を否認しています。
(フィクションです)

ひき逃げ」は、人身事故を起こしたにもかかわらず、被害者の救助や警察への通報をせずに、現場から逃走することを指す言葉として一般的に理解されています。
このような行為は、「道路交通法」という法律で運転手に課されている義務に反するものとして、刑罰の対象となります。

救護措置義務

道路交通法第72条は、交通事故があった場合の措置について定めています。

まず、本条第1項は、交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない旨を規定しています。
「負傷者を救護し」とは、現場において応急処置をすることの他、救急通報や負傷者を病院へ運ぶことも含まれます。
「道路における危険を防止する等必要な措置を講じ」るというのは、例えば、その交通事故を起こした車両等をそのまま道路上に放置することは危険なので、これをすみやかに他の場所に移動させることや、負傷者を安全な場所に移動させるなどといった措置です。

そして、道路交通法第117条において、当該義務違反に対する罰則を定めています。
その1項において、当該車両の交通による人の死傷があった場合、つまり、人身事故があった場合に、車両等の運転者が救護措置義務に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨について規定しています。
また、本条第2項は、救護措置義務の規定に違反した運転者のうち、その運転に起因して交通事故を生じさせた者、つまり、当該交通事故の発生に責任のある運転者に対しては、第1項よりも重い罰則、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する旨を定めています。

事後報告義務

道路交通法第72条1項の後段は、救護措置義務が生じて必要な措置をとった場合に、当該車両等の運転者に警察官に対して事故について報告する義務について定めています。
この義務に違反した場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科される可能性があります。

交通事故の認識

交通事故が起きた場合の措置義務違反は、故意犯です。
「交通事故の発生」が当該「義務が生じる前提条件」である以上、当該義務を事故関与者である運転者に負わせるためには、運転者が、その車両等の交通により人の死傷(物の損壊)があったことについて認識していることが必要となります。

車両等の交通により人の死傷があったことについての認識の程度については、人に接触し、若しくはこれを転倒させしめたことのみについての認識で足りるとする見解と、人の死傷を生ぜしめたことの認識まで必要とする見解とがありますが、後者の見解が有力であるとされています。
救護措置義務違反と報告義務違反は、どちらも故意犯であり、人の死傷についての認識が必要とされますが、その認識は、必ずしも確定的なものである必要はなく、未必的(~かもしれない)な認識で足りると理解されています。
認識の程度については、個々の交通事故について具体的情況に基づいて合理的に判断されますが、一般的には、交通事故当時の運転者等の身体、心身の状況、現場の状況(特に路面の状況)、事故発生時の衝撃、音響、叫声の有無、自動車の損傷、事故態様、その他事故発生時の周囲の客観的事情を総合して判断されます。

上の事例において、ひき逃げが成立する場合には、過失運転致死傷罪及び道路交通法違反の2罪が成立することになります。
2罪は、併合罪の関係にあり、併合罪のうち2個以上の罪について有期懲役・有期禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。
そのため、過失運転致傷罪と道路交通法違反(救護措置義務違反)の2罪で有罪となった場合には、15年以下の懲役の範囲内で刑が言い渡されることになります。
一方、過失運転致傷罪のみが成立する場合には、有罪となれば7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金の範囲内で刑が言い渡されます。

交通事故を起こしてしまい、ひき逃げが疑われている場合には、すぐに交通事件に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。
法律の専門家である弁護士に相談し、取調べで誘導に乗り不利な供述がとられてしまわないよう取調べ対応についてのアドバイスを受けることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

Copyright(c) 2016 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.