Archive for the ‘危険運転致死傷罪’ Category
危険運転:技能未熟運転
危険運転致死傷罪における技能未熟運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
京都府綾部市の市道において、ワンボックス車を運転していたAさんは、交差点を左折する際に、歩行者をはねる事故を起こしました。
Aさんは、無免許で車を運転していたことが発覚し、京都府綾部警察署は、無免許の過失運転致傷の疑いでAさんを逮捕しました。
その後、Aさんは、危険運転致傷罪(技能未熟運転)で京都地方検察庁福知山支部に起訴されました。
(フィクションです。)
危険運転致死傷罪とは
人身事故を起こした場合、通常は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)で規定される「過失運転致死傷罪」が適用されることになります。
しかし、事故の内容によっては、より法定刑が重い危険運転致傷罪が適用されることがあります。
危険運転致傷罪は、危険な運転で人を死傷させた場合に適用される犯罪です。
自動車運転処罰法の2条と3条に規定されています。
アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難で状態で自動車を運転する、運転をコントロールすることが困難なスピードで運転する、いわゆる「あおり運転」や赤信号無視などを行った結果、人に怪我を負わせてしまった場合には15年以下の懲役に、死亡させてしまった場合には1年以上の有期懲役が科される可能性があります。
自動車運転処罰法2条の危険運転には、技能未熟運転が含まれています。
技能未熟運転とは
「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」が、技能未熟運転です。
この「進行を制御する技能を有しない」とは、どの程度のことを指すのでしょうか。
「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能ですら有しないような運転の技量が極めて未熟なことを意味すると考えられています。
典型的な例としては、これまで一度も運転免許を取得したことがなく、自動車の運転経験もないような者であって、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能がないにもかかわらず、自動車を走行させるような場合です。
「進行を制御する技能を有しない」かどうかの判断は、事故態様、運転状況、運転経験の有無やその程度などを総合的に考慮して判断されるでしょう。
そのため、「進行を制御する技能を有しない」=無免許とはなりません。
技能未熟運転での危険運転致死傷罪が成立するか否かは、さまざまな要素についてしっかりと検討する必要があります。
交通事故を起こし危険運転致死傷に問われてお困りの方は、法律の専門家である弁護士に相談してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
持病発症で人身事故
持病を発症し人身事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
神奈川県大和市に住むAさんは、車で妻を駅まで迎えに行く途中、持病のてんかんの発作で意識を失い、運転していた車ごと車道に乗り上げました。
車は、車道を歩行中の高齢女性に接触し、女性は重傷を負いました。
Aさんは、後日、横浜地方検察庁に自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の罪で起訴されました。
Aさんは、裁判で弁護をしてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
持病を発症し人身事故を起こしたら
自動車を運転中に持病などが発症し、意識を失い、運転手や同乗者、対向車や歩行者が怪我をする、あるいは死亡する事故は少なくありません。
人身事故を起こした場合、多くは、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われることになります。
過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立する罪です。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務を怠ることをいいます。
前方不注意や脇見運転、アクセルとブレーキの踏み間違いなどが該当します。
しかしながら、上記事例のように持病がありながら車を運転し、運転中に持病が発症したことにより人身事故を起した場合には、過失運転致死傷罪ではなく危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。
危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法第3条2項)
自動車運転処罰法は、その3条2項において、
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。」
と規定しています。
①政令で定めるものの影響により
ここでいう「政令で定める病気」というのは、
(1)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する総合失調症
(2)意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
(3)再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であって、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
(4)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれのある症状を呈する低血糖症
(5)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈するそう鬱病(そう秒及び鬱病を含む。)
(6)重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
です。
これらの病気の「影響により」とは、ただただ病気の影響によるものであることまで必要とされず、病気が他の要因と競合して正常な運転に支障が生じるおそれがある状態になった場合も含まれます。
②その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態
「正常な運転に支障が生じるおそれのある状態」というのは、病気のために自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力が相当程度低下して危険性のある状態のことをいいます。
そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態も含まれ、意識を失うような発作の前兆症状が出ている状態であったり、処方された薬を服用しないために運転中に発作で意識を失ってしまうおそれがある状態などがこれに当たります。
また、本罪の成立には、運転行為終了までの間に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転したことの認識が必要となります。
そのため、病気が突然発症した場合、運転者は病気の症状について認識しておらず、病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあることの認識はないため、危険運転致死傷罪は成立しないことになります。
③よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた
本罪が成立するためには、病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その結果正常な運転が困難な状態となり、人を死傷したという因果関係が存在しなければなりません。
てんかん発作の影響に関連する判例は、医師からてんかんの診断を受けていた場合、つまり、被告人がてんかんについて十分な知識がある場合だけでなく、てんかんの診断を受けていなくとも、てんかんに見られるような意識喪失をもらたす発作が過去に生じていた場合も、運転中にてんかんの発作が発症し、正常な運転に支障が生じるおそれがあると認識していたことを認めたものがあります。
Aさんの場合、医師からてんかんの診断を受けており、てんかんの症状について十分理解していたのであれば、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し」たことを認識していたと故意が認められ、危険運転死傷罪が成立すると考えられます。
本罪の法定刑は、人を負傷させた場合は12年以下の懲役で、人を死亡させた場合は15年以下の懲役となっており、決して軽い罪とは言えません。
運転中に持病を発症し人身事故を起こし、危険運転致死傷罪に問われた場合には、できる限り寛大な処分となるよう交通事故に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
飲酒運転と危険運転致死傷罪
飲酒運転と危険運転致死傷罪との関係について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、居酒屋で飲酒した後、それ程酔っていないと感じたため、自分の車で帰ることにしました。
Aさんは、千葉県柏市の交差点に向かって進行していましたが、赤信号で停止していた車及びその後ろに停止していたバイクに気が付くのが遅れ、急ブレーキをかけましたが間に合わず、バイクの後方から追突しました。
バイクは、追突された勢いで、前方に停止していた車に追突しました。
バイクの運転手は重傷を負い、車の運転手は軽傷を負っています。
Aさんは、現場に駆け付けた千葉県柏警察署の警察官に事情を聴かれていますが、事故直前についてあまり思い出せません。
警察からは危険運転致傷罪も視野に入れて捜査する旨を伝えられ、とても心配しています。
(フィクションです)
飲酒運転による人身事故
飲酒後にそのアルコールの影響がある状態で車両等を運転した結果、人に怪我を負わせる(最悪の場合には、人を死亡させる)事故を起こした場合には、どのような罪が成立するのでしょうか。
1.道路交通法違反及び過失運転致死傷罪
飲酒運転による人身事故を起こした場合、道路交通法違反(酒気帯び運転又は酒酔い運転)、そして、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)で規定されている過失運転致死傷罪が成立する可能性があります。
◇道路交通法違反◇
まず、飲酒運転について、道路交通法違反が成立します。
道路交通法は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」とし、酒気帯び運転等の禁止について定めています。(道路交通法第65条1項)
つまり、一般的に、飲酒運転は禁止されています。
そのうち、道路交通法は、「酒酔い運転」又は政令数値以上酒気帯び運転に当たるときに限り罰則を設けており、政令数値未満の単なる酒気帯び運転については、訓示規定にとどめています。
呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15ミリグラム以上である状態が、政令数値以上の酒気帯び運転となります。
酒気帯び運転に対する罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
一方、酒酔い運転は、アルコール濃度の検知数に関係なく、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態である場合をいいます。
酒酔い運転に当たるか否かは、例えば、まっすぐに歩けるかどうか、受け答えがおかしいかといった点を総合的にみて判断されます。
酒酔い運転に対する罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
◇過失運転致死傷罪◇
人身事故を起こした場合に適用される罪の多くは、過失運転致死傷罪です。
この罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立するものです。
前方不注意、スピード違反、標識の見落としなどにより、人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪が成立することになるでしょう。
過失運転致死傷罪の罰則は、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金です。
以上、飲酒運転をし、人身事故を起こした場合に成立し得る罪としては、まずは、道路交通法違反及び過失運転致死傷罪が考えられます。
この場合、2つの罪は併合罪となり、2つの罪のうち最も重い罪の刑について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期となります。
2.危険運転致死傷罪
次に、飲酒運転で人身事故を起こした場合に成立し得る罪として挙げるのは、危険運転致死傷罪です。
自動車運転処罰法は、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処することを定めています。(自動車運転処罰法第2条1号)
「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」というのは、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることをいいます。
先の述べた「酒酔い運転」における「正常な運転ができないおそれがある状態」とは異なり、泥酔状態で、前方の注視が困難になったり、ハンドルやブレーキ等の捜査の時期や加減について、これを思い通りに行うことが現実に困難な状態にあることが必要となります。
そのため、運転者において、道路や交通の状況、自動車の性能等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることを認識していたことが求められます。
また、本罪が成立するためには、アルコールの提供により正常な運転が困難な状態であったということと、当該事故との間に因果関係がなければなりません。
つまり、当該事故が、的確な運転行為を行っても避けることができないと認められる場合には、因果関係が否定され、本罪は成立しませんが、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態下での運転行為においては、道路や交通の状況を正確に認識し、これらの状況に応じた運転操作を的確に行うことが困難な心身の状態にあり、そうした中において脇見をしたり、ハンドル操作を誤ったり、前方不注視を行った場合であれば、正常な運転が困難な状態に起因するものであるため、因果関係が認められることになります。
自動車運転処罰法は、「アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する」と規定しています。(自動車運転処罰法第3条1項)
先の危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法第2条1号)は、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で、そのことを認識して自動車を運転し、人を死傷させた者を処罰対象としているのに対して、自動車運転処罰法第3条1項は、アルコールの影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態という抽象的な危険性がある状態で、そのことを認識しつつ自動車を運転し、その結果としてアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた者を処罰対象とするものです。
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」というのは、自動車運転処罰法第2条1号における「正常な運転が困難な状態」には至っていないが、アルコールの影響のために自動車を運転するために必要な注意力、判断能力、捜査能力が相当程度低下して危険性のある状態や、そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態を指します。
酒気帯び運転に当たる程度のアルコールを身体に保有する状態は、この状態に当たるとされています。
ただ、本罪は、酒気帯び運転のように、客観的に一定の基準以上のアルコールを身体に保有しながら車両等を運転する行為を処罰するものではなく、運転の危険性や悪質性に着目した罪であるため、アルコールの影響を受けやすい者が、酒気帯び運転に該当しない程度のアルコールを保有している場合であっても、自動車を運転するのに必要な注意力等が相当程度減退して危険性のある状態にあれば、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」に該当すると考えられます。
しかし、本罪の成立には、単に酒気帯び運転に該当する程度のアルコールを身体に保有する状態であることを認識しているだけでなく、それが「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」であることを認識していることが必要となります。
自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪は、道路交通法の酒気帯び運転又は酒酔い運転を前提にしているため、前者が成立する場合には後者の罰則は適用されません。
Aさんの場合、運転開始当初は、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」でしかなかったと考えられますが、事故前の運転状況や事故態様如何によっては、事故を起こした際には「正常な運転が困難な状態」にあったと認定される可能性もあります。
飲酒運転で人身事故を起こした場合、どのような罪が成立するかは、事故の内容によって異なりますので、交通事件に精通する弁護士にきちんと相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にお電話ください。
交通事故における刑事処分
交通事故における刑事処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府松原市の高速道路で、前方を走行していた乗用車に追突し、乗用車に乗っていた男性に重傷を負わせたとして、大阪府高速道路交通警察隊は、車を運転していたAさんを現行犯逮捕しました。
Aさんは、法定速度を大幅に超えて走行していたとみられており、警察は危険運転致死傷も視野に入れて捜査を進めています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、交通事故を起こした場合の刑事処分について詳しく知りたいと思い、すぐに刑事事件に詳しい弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです)
交通事故を起こしたときに課される処分と言えば、違反点数が付けられたり、免許の停止や取消しなどについて思い出される方が多いのではないでしょうか。
これらの処分は、行政機関がその権限を作用させる行政処分です。
交通事故を起こし、人に対して、死亡や傷害などの結果を生じさせる事態が発生した場合には、行政処分だけでなく、刑事罰としての刑事処分が加害者に対して課せられることがあります。
刑事処分は、犯罪に対して刑罰を科する処分であり、人を死亡させたり、怪我を負わせたりする交通事故を起こした場合には、犯罪が成立し、被疑者・被告人として刑事手続に付される可能性があるということです。
人を死亡・負傷させるような交通事故に関連して問題となる犯罪は、危険運転致死傷罪、そして、過失運転致死傷罪です。
1.危険運転致死傷罪
危険運転致死傷罪は、飲酒や薬物を使用して危険な状態で自動車を運転した結果、人を死傷させた場合に成立し得る犯罪です。
危険運転致死傷罪の対象となる運転行為は、以下の8つです。
①アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③その進行を制御する技術を有しないで自動車を走行させる行為。
④人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為。
⑥高速自動車国道または自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これを著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止または徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為。
⑦赤信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役、危険運転致死罪は1年以上の有期懲役が定められており、実際にも重い刑が科される傾向にあります。
また、危険運転致死傷罪より程度が軽微である飲酒・薬物・病気に起因する運転についても刑事処罰の対象となります。(準危険運転致死傷罪)
①アルコールまたは薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、そのアルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷または死亡させた場合。
②自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、その病気の影響により正常な運転が困難な状況に陥り、人を死傷させた場合。
これらに該当する場合、人を負傷させた者は12年以下の懲役、人を死亡させた者は15年以下の懲役を科されることになります。
2.過失運転致死傷罪
自動車の運転の際に、その過失によって、人を死傷させた場合に成立し得る犯罪です。
ここでいう「過失」とは、法律上の注意義務をいうのであって、その内容については、「結果の発生を予見する可能性とその義務及びその結果の発生を未然に防止する可能性とその義務」が必要となります。
前方不注意や左右確認を怠ったなど、運転をする上で必要とされる注意を怠った結果、人を死傷させてしまったときに過失運転致死傷罪が成立します。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となっており、危険運転致死傷罪よりも軽く定められています。
危険運転致死傷事件においては、刑事裁判となることが多く、加害者は被告人として法廷に立ち審理されることになります。
刑事裁判では、証拠の収集によって結果が左右されると言っても過言ではありません。
無罪を主張する場合には、主張を裏付ける客観的な証拠の収集が重要です。
一方、有罪を認める場合には、情状について争うことになりますが、被告人に有利な犯情やその他の情状を主張し、寛大な処分を求めます。
過失運転致死傷事件の場合、内容によっては不起訴処分となることもありますし、略式手続で事件を処理することもあります。
ただ、被害や事故の程度により、公判請求され、刑事裁判を受けることも少なくありませんので、罪名の如何を問わず、人身事故で刑事手続に付された場合には、弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故による刑事事件にも対応する法律事務所です。
交通事故を起こし、被疑者・被告人として刑事手続に付され、対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
危険運転:制御することが困難な高速度
制御することが困難な高速度による危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、東京都小平市の道路を自車で走行しているとき、制限時速60キロとされ、左に大きく湾曲した道路(限界旋回速度は時速100キロ)に差し掛かったものの、速度を出しすぎていたので曲がり切れず、右に逸走して対向車線を走行していた車両に衝突し、運転手を負傷させてしまいました。
Aさんは、警視庁小平警察署に危険運転致傷の疑いで逮捕されました。
(フィクションです)
危険運転致死傷罪
従前、刑法第208条の2に規定されていた「危険運転致死傷罪」における悪質かつ危険な一定の運転行為と同等に通行禁止道路において重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為により人を死傷させたことも「危険運転致死傷罪」として、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(いわゆる、「自動車運転死傷処罰法」。)が規定しています。
「危険運転致死傷罪」は、次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処せられます。
①アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接見することとなる方法で自動車を運転する行為。
⑥高速自動車国道において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為。
⑦赤信号等を殊更無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑧通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
これら①から⑧に該当する行為をしたことによって、人を死傷させた場合に、危険運転致死傷罪が成立することになります。
制御することが困難な高速度とは
危険運転致死傷罪の対象となる行為、「制御することが困難な高速度」で自動車を走行させる行為における「制御することが困難な高速度」とは、どの程度のものか、という点が問題となります。
ここでは、「湾曲した道路」について過去の裁判でどのように解釈されてきたのかについてご紹介します。
◇限界旋回速度を超えた速度での進行◇
平成22年12月10日の東京高等裁判所の判決によれば、「進行を制御することが困難な高速度」とは、「速度が速すぎるため自動車を道路の状況に応じて進行させることが困難な速度をいい、具体的には、そのような速度での走行を続ければ、道路の形状、路面の状況などの道路の状況、車両の構造、性能等の客観的事実に照らし、あるいは、ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになるような速度をいうと解される。」としています。
この点、道路が湾曲していた場合については、どのような速度を指すのかが問題となります。
一般的には、その湾曲した道路の限界旋回速度(自動車がカーブに沿って走行することができる最高速度)を超えて走行した場合、車輪が遠心力により横滑り等を起こし、運転操作が困難になるため、制御が困難な速度と言えます。
先の東京高等裁判所の判決で示された各要素も併せて検討されることとなりますが、基本的には、限界旋回速度を超えて走行している場合、ハンドル操作等のミスによって事故を起こしたのであれば、進行を制御することが困難な高速度での走行による危険運転致死傷罪が成立するものと考えらるでしょう。
◇限界旋回速度を超えてはいないが、それに近い速度での進行◇
限界旋回速度を超えることはないものの、それに近い速度で走行した場合について、上の東京高等裁判所の判決は、「被告人車の速度は、本件カーブの限界旋回速度を超過するおのではなかったが、ほぼそれに近い高速度であり、そのような速度での走行を続ければ、ハンドル操作のわずかなミスによって自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになるような速度であったというべきであるから、進行を制御することが困難な高速度に該当すると認められる。」とし、平成21年10月20日の福岡高等裁判所の判決は、「本件カーブの限界旋回速度に近い速度で進行していた本件車両について、本件カーブに沿って適度にハンドルを右に切り、その終点に向けてそれまで右に切っていたハンドルをタイミングよく左に戻していくという操作や対向車線にはみ出していたのを自車線内に戻すために、それまで右に切っていたハンドルを、単に戻すだけでなく、横滑りの状態を引き起こさないように適度に左に切り返す捜査は、いずれもわずかなミスも許されない極めて繊細で高度な判断と技術を要すると考えられ、したがって、本件車両の走行は、刑法第208条の2第1項後段[当時]所定の『進行を制御することが困難な高速』であったと認められる。」としています。
このように、限界旋回速度に近い速度での進行は、わずかなミスをも許されないような状況に追い込まれるため、この限界旋回速度を基準にして、超える場合だけでなく、それに近い速度であっても、「進行を制御することが困難な高速度」と認定される可能性があります。
◇限界旋回速度未満であるが、制限速度を超える速度での進行◇
限界旋回速度よりは遅いものの、制限速度は超えている場合、制限速度は、「進行を制御することが困難な高速度」を考慮する上で、どのように位置付けられるのでしょうか。
過去の判決には、限界旋回速度を基準とせず、制限速度をはるかに上回る高速度であることが制御不能を来す原因の一つとして考えられ、「進行を制御することが困難な高速度」を認めたものがありますが、必ずしもすべての判決で「進行を制御することが困難な高速度」を検討する際に制限速度超過が重視されているわけではありません。
平成20年1月17日の松山地方裁判所の判決は、最高時速が時速50キロとされた道路を時速約80キロで走行し、右方の湾曲した道路に沿って走行することができず、左斜め前方に逸走させたという事案において、事故現場の限界旋回速度が時速約93ないし120キロであったところ、限界旋回速度の下限を約13キロも下回っていること、そして時速約70キロで走行していた車両が存したことなどが考慮され、「進行を制御することが困難な高速度」とは認めませんでした。
「制御することが困難な高速度」での危険運転致死傷罪に問われている場合には、「進行を制御することが困難な高速度」で運転する行為により、ハンドル操作等のミスが生じたため、人を死傷させてしまったか否かについて、科学的な根拠に基づいて争います。
危険運転致死傷事件における弁護活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件をはじめとした刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
危険運転や交通事故を起こし対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
覚醒剤使用後に運転し事故を起こしたら
覚せい剤使用後に運転し事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都世田谷区の国道で自家用車を運転中に、歩道を歩いていた歩行者をはねて死亡させ、そのまま逃げた疑いで、警視庁世田谷警察署は、運転していたAさんを過失運転致死および道路交通法違反の容疑で逮捕しました。
しかし、Aさんの尿から覚せい剤の陽性反応が出たため、警察はAさんが覚せい剤を使用した状態で車を運転していたとみて、危険運転致死の適用も視野に捜査しています。
(フィクションです)
車を運転し人身事故を起こした場合
交通事故には、物損事故と人身事故とがあります。
物損事故と人身事故の違いは、簡単に言えば、交通事故により物が壊れたのか、人が怪我をしたり死亡してしまったりしたのか、にあります。
人身事故の場合、加害者は行政処分、民事処分、そして刑事処分の対象となります。
人身事故を起こした多くの場合、刑事事件として立件され、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転致傷処罰法」といいます。)により過失運転致死傷罪に問われることになります。
過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
その法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですが、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるとされています。
覚醒剤使用後に運転し人身事故を起こした場合
覚せい剤を使用した後に車を運転し、人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪ではなく危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。
危険運転致死傷罪は、薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を死傷させた場合に成立します。
「正常な運転が困難な状態」とは、道路や交通の状況などに応じた運転をすることが難しい状態になっていることをいいます。
人を負傷させた場合の法定刑は、15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役と非常に重くなっています。
また、薬物の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら自動車を運転した上、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた場合も、危険運転致死傷罪に問われることになります。
この場合の法定刑は、人を負傷させた者については12年以下の懲役、人を死亡させた者は15年以下の懲役です。
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、正常な運転が困難な状態に陥っているわけではないが、薬物のために、自動車を運転するのに必要な注意力・判断力・操作能力が相当程度低下して、危険である状態のことをいいます。
加えて、覚せい剤を使用していたことにより、覚せい剤取締法違反(覚せい剤使用)についても罪に問われることになります。
危険運転致死傷罪は非常に重い罪であり、前科がなくともいきなり実刑となる可能性は大いにあります。
このような場合には、言い渡される刑が少しでも軽くなるよう刑事事件に精通する弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件も含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
交通事件でお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
あおり運転で刑事事件に
あおり運転で刑事事件になる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
福岡県久留米市の車道を走行していたVさんでしたが、後方の車が急接近するなどのあおり運転を繰り返してきたため、Vさんは恐怖を感じて何とか逃げようと速度を上げました。
後方の車は、追い越し車線でVさんを追い越し、Vさんの前に割り込み、今度は低速度での運転をはじめました。
その車は、急に停止したため、Vさんはその車を回避しようとハンドルを左にきったため、ガードレールに衝突してしまいました。
後日、福岡県久留米警察署は、あおり運転をし事故を誘発したとして会社員のAさんを逮捕しました。
(フィクションです)
あおり運転により成立し得る罪は?
あおり運転は、一般的に、道路を走行する自動車やバイクなどに対して、車間距離を極端に詰めて威圧したり、幅寄せや急停止で運転を妨害するなど、意図して嫌がらせを行う危険行為のことを指します。
あおり運転は、重大な交通事故につながる悪質かつ危険な行為です。
現状、あおり運転については、道路交通法違反や刑法上の暴行罪を適用して対処しています。
1.道路交通法違反
道路交通法は、「あおり運転罪」なる罪を設けているわけではありません。
「あおり運転」とみなされる個々の運転行為が、道路交通法に違反するのです。
以下、よくある「あおり運転」の行為についてみていきましょう。
(A)車間距離を必要以上に詰める行為:車間距離所持義務違反
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
車間距離所持義務違反の罰則は、高速道路を走行中のケースでは、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金、その他の道路を走行中のケースでは、5万円以下の罰金です。
(B)隣の車線に車を幅寄せする行為:進路変更禁止違反
第二十六条の二 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
3 車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示をこえて進路を変更してはならない。
一 第四十条の規定により道路の左側若しくは右側に寄るとき、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためその通行している車両通行帯を通行することができないとき。
二 第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のため、通行することができなかつた車両通行帯を通行の区分に関する規定に従つて通行しようとするとき。
罰則は、5万円以下の罰金です。
(C)急ブレーキをかける行為:急ブレーキ禁止違反
第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
罰則は、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。
2.暴行罪
刑法第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪の「暴行」とは、「不法な有形力の行使が人の身体に対して加えられる」場合を指します。
殴る蹴るといった暴力のみならず、狭い四畳半の部屋で在室中の被害者を脅かすために、日本刀の抜き身を振り回す行為も「暴行」に当たります。
「あおり運転」の場合、車間距離の接近、幅寄せや威嚇といった行為が「有形力の行使」に当たるとみなされると、暴行罪が適用される可能性があります。
このように、あおり運転とみなされる運転行為を行っただけでも、道路交通法違反や暴行罪が成立し、刑事事件として処理されることになります。
あおり運転の結果、事故を起こした場合は?
あおり運転をした結果、交通事故を起こし、人を死傷させてしまった場合には、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)に該当する可能性があります。
危険運転致死傷罪とは、以下の行為を行うことにより人を負傷又は死亡させた場合に成立する犯罪です。
①アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状況で自動車を走行させる行為
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
③進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
④人・車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人・車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑤赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑥通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
あおり運転は上の④に該当し得、結果、相手方に怪我を負わせてしまった場合には、危険運転致傷罪が成立する可能性があるでしょう。
あおり運転、危険運転で逮捕されてお困りであれば、交通事件・刑事事件に精通する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
持病を隠して交通事故
持病を隠して交通事故
持病を隠して事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~今回のケース~
京都府に在住のAさん(50歳)は、観光バスの運転手として働いています。
Aさんは、「てんかん」の疑いがあると医師に診断されていましたが、職を失うのを恐れて、会社には報告せず、バスの運転を続けていました。
ある日、Aさんはバスで木津川市内を運転中、発作により意識を失ったためにバスを壁に激突させてしまいました。
その衝撃で乗客のVさん(65歳)は首などに重傷を負いました。
Aさんは危険運転致傷の疑いで、京都府木津警察署で取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
~危険運転致傷罪~
今回のAさんのようなケースでは、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
条文を見てみましょう。
〇自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)
第3条2項
自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状況に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」としては、総合失調症、認知症、てんかん等が挙げられます。(詳しくは警察庁のホームページ等に列記されています。)
上記のような病気の影響が生じるおそれがある状態で、人を負傷させた者は、「12年以下の懲役」、人を死亡させた者は「15年以下の懲役」が科せられます。
てんかんなどの持病を原因とする事故発生をあらかじめ予想できなかった場合には処罰されません。
しかしAさんはてんかんの疑いがあると診断されていました。
このような医師の診断や、過去の発作の経験などからすれば、事故を起こすことが予想可能だったと判断され、処罰されてしまう可能性が十分考えられるところです。
~刑事事件の手続きの流れ~
今回、Aさんは逮捕されていませんが、逮捕されないケースでは、最初に何度か警察の取調べや実況見分などがなされた後、今度は検察官の取調べを受けます。
一通り捜査が終わった段階で、検察官が、被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。
検察官が、事故は予想できなかったとして不起訴とすれば、前科も付かずに刑事手続きが終了となります。
しかし、危険運転致傷罪は軽い犯罪ではないので、てんかんの病状などにもよりますが、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕される可能性もあります。
逮捕された場合、最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間、勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。
勾留期間の最後に検察官が起訴・不起訴の判断をします。
~今回のケースにおける弁護活動~
Aさんは、取調べを受ける前に、一度弁護士に相談に行くことをおすすめします。
例えば前述の条文の「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」がどのような状態で、今回これに当てはまっているのかを判断するのは、難しいところがあります。
ケースによっては、事故を予想できなかったと主張していくことも考えられますが、予想できなかったと言える理由を的確に主張していくことは簡単ではありません。
また、自動車運転処罰法だけでなく、道路交通法などの法律も関わってくる交通事故は、経験と知識が豊富な弁護士に任せるのが一番です。
弁護士は、自分がどのような法律に違反することになりそうなのかや、今後の取調べをどのように受けるべきかなどの不安に対して的確なアドバイスをすることが可能です。
また、本人の代わりに、被害者の方との示談交渉を行うこともできます。
このようなメリットがあるため、もし交通事故を起こしてしまった場合は、1人で解決しようとせず、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、ぜひお問い合わせください。
危険運転致傷罪で逮捕
危険運転致傷罪で逮捕
危険運転致傷罪で逮捕された事案を題材に、交通事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
【事例】
警ら中のパトカーに追いかけられていたAは、これを振り切るため、赤信号の点灯していることを認識しながら交差点を直進したところ、Vさんが運転する車と衝突し、Vさんに怪我を負わせた。
大阪府高石警察署の警察官は、Aを危険運転致傷の疑いで逮捕した。
Aの家族は、交通事件に詳しい弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです)
~危険運転致死傷罪とその類型~
交通事故に関する刑事責任を規定する法律として「道路交通法」以外にも、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、自動車運転死傷行為処罰法)があります。
これは、かつて刑法によって処罰されていた交通犯罪について、その重大性や悪質性に対応するため、刑罰を重くするなどして新たに平成25年11月に制定された法律です。
本件でAは、危険運転致傷罪で逮捕されていますが、自動車運転死傷行為処罰法のどの規定に反することによるものなのでしょうか。
同法2条は危険運転致死傷罪に該当する危険運転行為を複数定めています。
同条1号は飲酒・薬物摂取状態での運転、2号でスピード違反、3号で技術がない状態での運転、4号で妨害行為、5号で赤信号無視、6号で通行禁止道路進行の危険運転行為がそれぞれ定められています。
本件では、赤信号無視の危険運転行為が問題となることは明らかであり、5号に関して詳しく見ていくこととします。
自動車運転死傷行為処罰法2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
一~四(略)
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
この条文にある通り、「赤信号」を「殊更に無視」して「重大な交通の危険を生じさせる速度」で運転し、事故を起こして他人にケガをさせると危険運転致死傷罪が成立します。
本件Aは、赤信号であることを認識しながら、パトカーを振り切るために、停止位置で停止することが十分可能であるにもかかわらず、これを無視して自車を直進させていると考えられることから、赤信号を「殊更に無視」したものといえます。
そして、「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、この文言だけ見ると、かなりの高速度が要求されているようにも読めますが、判例・実務では時速20~30キロでもこの要件に該当しうると解されています。
したがって、Aさんが交差点に進入した時にこの程度の速度だったとしても、Vさんに怪我を負わせた以上、危険運転致傷罪が成立する可能性があることに注意が必要です。
~危険運転致死傷事件における弁護活動~
一般に交通事件は、逮捕されることなく在宅事件として捜査されることが多い事件類型と考えられています。
また、仮に逮捕されてしまった場合でも、勾留されることなく釈放されるケースが目立ちます。
しかし、交通事件の中でも重い危険運転致死傷罪で逮捕された場合は、勾留されて身柄拘束期間が長くなる可能性が高くなります。
また、軽い事件では今回は大目に見てもらうという意味で、前科も付かずに手続きが終わる不起訴処分になることがありますが、危険運転致傷罪では起訴されて刑事裁判を受けることが多いです。
したがって刑事裁判を受けることを前提とした弁護活動が必要になってきます。
危険運転致死傷罪には罰金刑は法定されていないことから、執行猶予判決を得るための弁護活動を行っていくことが重要となってくるでしょう。
あなたやご家族が交通事故を起こしお困りの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、危険運転致死傷事件などの交通事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
24時間対応のフリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
信号無視で逮捕
信号無視で逮捕
信号無視で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
東京都小平市に住むAさんは、深夜に自動車を運転して帰宅途中、交差点の信号が赤だったにも関わらず、
「深夜だし交差点を通過する車はいないだろう」
「早く家に帰ってゆっくりしたい」
などと思って、そのまま交差点に進入しました。
そうしたところ、右方から交差点に進入してきたVさん運転の自動車と衝突。
Vさん運転の自動車を電柱に衝突させ、Vさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせました。
Aさんは駆け付けた警視庁小平警察署の警察官に現行犯逮捕されましたが、罪証隠滅や逃亡のおそれがないとして釈放されました。
その後、Aさんは在宅事件の被疑者として捜査を受け、正式起訴されてしまいました。
Aさんは今後のことが不安になって正式裁判の刑事弁護を私選弁護人に託すことにしました。
(フィクションです)
~ 過失運転致傷罪 ~
信号無視で人身事故を起こしたAさん。
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」という法律に定められた、過失運転致傷罪や危険運転致傷罪に問われることになります。
まずは、過失運転致傷罪の条文を見てみましょう。
第5条
自動車の運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
つまり、過失運転致傷罪が成立した場合、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
「自動車の運転上必要な注意義務を怠り」とは、要は「過失」があることをいいます。
「過失」とは何かというと「注意義務違反」、つまり、ある注意をする義務が課されているにもかかわらず、その注意義務を怠ったことをいいます。
本件では、Aさんが赤信号に従って交差点の停止線手前で停止すべきであるにも関わらず(注意義務)これを怠り停止しなかったこと、あるいは他の自動車が来ていないか確認し、衝突しないよう停止すべきであるにもかかわらず(注意義務)、これを怠り衝突させてしまったことなどが「注意義務違反=過失」と判断される可能性があります。
~ 危険運転致傷罪 ~
信号をわざと無視して事故を起こしたことから、より重い刑罰が定められた危険運転致傷罪に問われる可能性もあります。
第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
5号 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
Aさんは赤信号だとわかっていながら交差点に進入したわけですので、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視」したと言えるでしょう。
したがって進入時のスピードが、交差点の見通しの悪さの程度や交通量なども考慮して、「重大な交通の危険を生じさせる速度」といえるものだった場合には、危険運転致傷罪が成立し、15年以下の懲役となる可能性があります。
~ 正式起訴、正式裁判 ~
正式起訴とは、正式裁判を受けるための起訴です。
正式裁判とは、実際に公開の法廷に出廷しなければならない裁判です。
これに対し略式起訴・略式裁判というものもあり、書面の審理のみで罰金刑にするもので、公開の法廷に出廷する必要はありません。
交通事故の大半が略式起訴、略式裁判で終わることが多いですが、本件のように、
・過失が重たい事故(責任が重たい事故)
・被害者の怪我の程度が重たい事故
などは正式起訴され、正式裁判を受けなければならないおそれがあります。
正式起訴されると、弁護人を自費で雇う私選弁護人にするか、どの弁護士にするかは選べませんが国の費用で付けられる国選弁護人にするかの判断に迫られます。
お困りの方はまず弊所の無料法律相談や、釈放されていない場合に利用できる初回接見サービスをご利用の上、どちらを選択すべきか決められてもよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。