Archive for the ‘危険運転致死傷罪’ Category
持病を隠して交通事故
持病を隠して交通事故
持病を隠して事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~今回のケース~
京都府に在住のAさん(50歳)は、観光バスの運転手として働いています。
Aさんは、「てんかん」の疑いがあると医師に診断されていましたが、職を失うのを恐れて、会社には報告せず、バスの運転を続けていました。
ある日、Aさんはバスで木津川市内を運転中、発作により意識を失ったためにバスを壁に激突させてしまいました。
その衝撃で乗客のVさん(65歳)は首などに重傷を負いました。
Aさんは危険運転致傷の疑いで、京都府木津警察署で取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
~危険運転致傷罪~
今回のAさんのようなケースでは、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
条文を見てみましょう。
〇自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)
第3条2項
自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状況に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」としては、総合失調症、認知症、てんかん等が挙げられます。(詳しくは警察庁のホームページ等に列記されています。)
上記のような病気の影響が生じるおそれがある状態で、人を負傷させた者は、「12年以下の懲役」、人を死亡させた者は「15年以下の懲役」が科せられます。
てんかんなどの持病を原因とする事故発生をあらかじめ予想できなかった場合には処罰されません。
しかしAさんはてんかんの疑いがあると診断されていました。
このような医師の診断や、過去の発作の経験などからすれば、事故を起こすことが予想可能だったと判断され、処罰されてしまう可能性が十分考えられるところです。
~刑事事件の手続きの流れ~
今回、Aさんは逮捕されていませんが、逮捕されないケースでは、最初に何度か警察の取調べや実況見分などがなされた後、今度は検察官の取調べを受けます。
一通り捜査が終わった段階で、検察官が、被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。
検察官が、事故は予想できなかったとして不起訴とすれば、前科も付かずに刑事手続きが終了となります。
しかし、危険運転致傷罪は軽い犯罪ではないので、てんかんの病状などにもよりますが、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕される可能性もあります。
逮捕された場合、最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間、勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。
勾留期間の最後に検察官が起訴・不起訴の判断をします。
~今回のケースにおける弁護活動~
Aさんは、取調べを受ける前に、一度弁護士に相談に行くことをおすすめします。
例えば前述の条文の「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」がどのような状態で、今回これに当てはまっているのかを判断するのは、難しいところがあります。
ケースによっては、事故を予想できなかったと主張していくことも考えられますが、予想できなかったと言える理由を的確に主張していくことは簡単ではありません。
また、自動車運転処罰法だけでなく、道路交通法などの法律も関わってくる交通事故は、経験と知識が豊富な弁護士に任せるのが一番です。
弁護士は、自分がどのような法律に違反することになりそうなのかや、今後の取調べをどのように受けるべきかなどの不安に対して的確なアドバイスをすることが可能です。
また、本人の代わりに、被害者の方との示談交渉を行うこともできます。
このようなメリットがあるため、もし交通事故を起こしてしまった場合は、1人で解決しようとせず、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、ぜひお問い合わせください。
危険運転致傷罪で逮捕
危険運転致傷罪で逮捕
危険運転致傷罪で逮捕された事案を題材に、交通事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
【事例】
警ら中のパトカーに追いかけられていたAは、これを振り切るため、赤信号の点灯していることを認識しながら交差点を直進したところ、Vさんが運転する車と衝突し、Vさんに怪我を負わせた。
大阪府高石警察署の警察官は、Aを危険運転致傷の疑いで逮捕した。
Aの家族は、交通事件に詳しい弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです)
~危険運転致死傷罪とその類型~
交通事故に関する刑事責任を規定する法律として「道路交通法」以外にも、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、自動車運転死傷行為処罰法)があります。
これは、かつて刑法によって処罰されていた交通犯罪について、その重大性や悪質性に対応するため、刑罰を重くするなどして新たに平成25年11月に制定された法律です。
本件でAは、危険運転致傷罪で逮捕されていますが、自動車運転死傷行為処罰法のどの規定に反することによるものなのでしょうか。
同法2条は危険運転致死傷罪に該当する危険運転行為を複数定めています。
同条1号は飲酒・薬物摂取状態での運転、2号でスピード違反、3号で技術がない状態での運転、4号で妨害行為、5号で赤信号無視、6号で通行禁止道路進行の危険運転行為がそれぞれ定められています。
本件では、赤信号無視の危険運転行為が問題となることは明らかであり、5号に関して詳しく見ていくこととします。
自動車運転死傷行為処罰法2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
一~四(略)
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
この条文にある通り、「赤信号」を「殊更に無視」して「重大な交通の危険を生じさせる速度」で運転し、事故を起こして他人にケガをさせると危険運転致死傷罪が成立します。
本件Aは、赤信号であることを認識しながら、パトカーを振り切るために、停止位置で停止することが十分可能であるにもかかわらず、これを無視して自車を直進させていると考えられることから、赤信号を「殊更に無視」したものといえます。
そして、「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、この文言だけ見ると、かなりの高速度が要求されているようにも読めますが、判例・実務では時速20~30キロでもこの要件に該当しうると解されています。
したがって、Aさんが交差点に進入した時にこの程度の速度だったとしても、Vさんに怪我を負わせた以上、危険運転致傷罪が成立する可能性があることに注意が必要です。
~危険運転致死傷事件における弁護活動~
一般に交通事件は、逮捕されることなく在宅事件として捜査されることが多い事件類型と考えられています。
また、仮に逮捕されてしまった場合でも、勾留されることなく釈放されるケースが目立ちます。
しかし、交通事件の中でも重い危険運転致死傷罪で逮捕された場合は、勾留されて身柄拘束期間が長くなる可能性が高くなります。
また、軽い事件では今回は大目に見てもらうという意味で、前科も付かずに手続きが終わる不起訴処分になることがありますが、危険運転致傷罪では起訴されて刑事裁判を受けることが多いです。
したがって刑事裁判を受けることを前提とした弁護活動が必要になってきます。
危険運転致死傷罪には罰金刑は法定されていないことから、執行猶予判決を得るための弁護活動を行っていくことが重要となってくるでしょう。
あなたやご家族が交通事故を起こしお困りの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、危険運転致死傷事件などの交通事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
24時間対応のフリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
信号無視で逮捕
信号無視で逮捕
信号無視で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
東京都小平市に住むAさんは、深夜に自動車を運転して帰宅途中、交差点の信号が赤だったにも関わらず、
「深夜だし交差点を通過する車はいないだろう」
「早く家に帰ってゆっくりしたい」
などと思って、そのまま交差点に進入しました。
そうしたところ、右方から交差点に進入してきたVさん運転の自動車と衝突。
Vさん運転の自動車を電柱に衝突させ、Vさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせました。
Aさんは駆け付けた警視庁小平警察署の警察官に現行犯逮捕されましたが、罪証隠滅や逃亡のおそれがないとして釈放されました。
その後、Aさんは在宅事件の被疑者として捜査を受け、正式起訴されてしまいました。
Aさんは今後のことが不安になって正式裁判の刑事弁護を私選弁護人に託すことにしました。
(フィクションです)
~ 過失運転致傷罪 ~
信号無視で人身事故を起こしたAさん。
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」という法律に定められた、過失運転致傷罪や危険運転致傷罪に問われることになります。
まずは、過失運転致傷罪の条文を見てみましょう。
第5条
自動車の運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
つまり、過失運転致傷罪が成立した場合、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
「自動車の運転上必要な注意義務を怠り」とは、要は「過失」があることをいいます。
「過失」とは何かというと「注意義務違反」、つまり、ある注意をする義務が課されているにもかかわらず、その注意義務を怠ったことをいいます。
本件では、Aさんが赤信号に従って交差点の停止線手前で停止すべきであるにも関わらず(注意義務)これを怠り停止しなかったこと、あるいは他の自動車が来ていないか確認し、衝突しないよう停止すべきであるにもかかわらず(注意義務)、これを怠り衝突させてしまったことなどが「注意義務違反=過失」と判断される可能性があります。
~ 危険運転致傷罪 ~
信号をわざと無視して事故を起こしたことから、より重い刑罰が定められた危険運転致傷罪に問われる可能性もあります。
第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
5号 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
Aさんは赤信号だとわかっていながら交差点に進入したわけですので、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視」したと言えるでしょう。
したがって進入時のスピードが、交差点の見通しの悪さの程度や交通量なども考慮して、「重大な交通の危険を生じさせる速度」といえるものだった場合には、危険運転致傷罪が成立し、15年以下の懲役となる可能性があります。
~ 正式起訴、正式裁判 ~
正式起訴とは、正式裁判を受けるための起訴です。
正式裁判とは、実際に公開の法廷に出廷しなければならない裁判です。
これに対し略式起訴・略式裁判というものもあり、書面の審理のみで罰金刑にするもので、公開の法廷に出廷する必要はありません。
交通事故の大半が略式起訴、略式裁判で終わることが多いですが、本件のように、
・過失が重たい事故(責任が重たい事故)
・被害者の怪我の程度が重たい事故
などは正式起訴され、正式裁判を受けなければならないおそれがあります。
正式起訴されると、弁護人を自費で雇う私選弁護人にするか、どの弁護士にするかは選べませんが国の費用で付けられる国選弁護人にするかの判断に迫られます。
お困りの方はまず弊所の無料法律相談や、釈放されていない場合に利用できる初回接見サービスをご利用の上、どちらを選択すべきか決められてもよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。
危険運転致死罪で逮捕
危険運転致死罪で逮捕
今回は、危険運転致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、東京都北区内の交通量の少ない車道を自動車で、時速140キロメートルもの速度を出し、走行していました。
運転中、Aさんは交差点の対面信号が赤色であることを認識しました。
そのまま適切にブレーキを操作すれば、交差点手前の停止線までに車を停止させることが十分可能でしたが、他に交差点に入ってくる車や歩行者も無いだろうと考え、そのまま進入したところ、青色信号により左から交差点に進入してきたVの運転する車の右側面に衝突してしまい、Vは即死しました。
Aさんも重傷を負い、病院に搬送されました。
警視庁赤羽警察署は、Aさんの回復を待って、危険運転致死の疑いで逮捕する方針です。(フィクションです)
~危険運転致死罪とは?~
危険運転致死傷罪にはいくつかの類型がありますが、今回のケースの場合に成立するのは、「赤信号殊更無視」という類型の危険運転致死罪が成立する可能性が高いと思われます。
以下、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条を引用します。
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一~四 省略
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 省略
これによれば、①赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、②重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為を行い、③よって人を死傷させた場合に、危険運転致死傷罪が成立することになります。
以下、①②について詳しく解説します。
~「殊更に無視」とは?~
「赤色信号を確定的に認識し、交差点手前の停止線で停止することが十分可能であるのにこれを無視して交差点に侵入した場合」は、当然、「殊更に無視」に該当します。
また、裁判例上、「赤色信号に気付いたときの速度から停止線で停止できず、停止線を越えて停止することになるが特段の道路上の危険を生じさせない場所に停車することが可能であるのにそのまま交差点を通過した場合」も、「殊更に無視」に該当します。
Aさんは、赤色信号を確定的に認識していて、ブレーキを踏めば停止線までに停止することができたのに、これを無視して交差点に進入しています。
この場合は、「殊更に無視」したものと評価される可能性が高いでしょう。
~「重大な交通の危険を生じさせる速度」~
自車が相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせる速度、あるいは、相手方の動作にすぐに応じて大きな事故を回避することが困難であると認められる速度をいいます。
時速140キロメートルで走行中に相手方と衝突すれば、被害者の即死を含む悲惨な事故が生じ得ることは容易に想像できますし、また、事故を回避する行動をとることも困難でしょう。
したがって、ケースの場合は、「重大な交通の危険を生じさせる速度」で自動車を運転したものと評価される可能性が高いと思われます。
以上によれば、Aさんに危険運転致死罪が成立する可能性は高いでしょう。
~危険運転致死事件の弁護活動~
このような危険運転致死事件を起こすと、新聞やテレビでも大きく報道されることになります。
また、刑事裁判にかけられる(起訴される)可能性もかなり高いでしょう。
実刑判決を受ける可能性も十分見込まれます。
なるべく軽い判決を獲得するためには、
・誠心誠意、遺族に謝罪し、生じさせた損害を賠償すること
・自動車を処分し、二度と運転しないことを固く誓うこと
・Aさんが再度運転をしないよう監督できる人物を用意し、法廷でその旨を証言してもらうこと
などの対応が考えられます。
まずは、接見にやってきた弁護士からアドバイスを受け、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が危険運転致死事件を起こしてしまいお困りの方は、ぜひご相談ください。
高速道路でのスピード違反で人身事故
高速道路でのスピード違反で人身事故
今回は、スピード違反で危険運転致死傷罪に問われた事件の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは大阪府和泉市内の、制限速度が時速80キロメートルの高速道路において、自動車を時速200キロメートルで走行させていたところ、左カーブを曲がり切れず、対向車線に飛び出してしまいました。
さらに、対向車線を走っていた車の右横部分に衝突してしまい、衝突した車に乗っていたVさんら5名のうち3名が死亡、2名が重傷を負いました。
Aさんも重傷を負い、病院に搬送されました。
大阪府和泉警察署は、Aさんの回復を待って、危険運転致死傷罪の疑いで逮捕する方針です。(フィクションです)
~Aさんに成立する「危険運転致死傷罪」とは?~
制限速度を120キロもオーバーするスピード違反をして事故を起こしたAさん。
危険運転致死傷罪に問われる可能性が高いです。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条2号は、「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」を行い、「人を負傷させた者」を15年以下の懲役に処し、「人を死亡させた者」を1年以上の有期懲役(上限は余罪がなければ20年)に処するとしています。
上記の運転を行うことによって、被害者に傷害を負わせた場合が危険運転致傷罪、被害者を死亡させた場合が危険運転致死罪、両方を合わせて危険運転致死傷罪といいます。
時速80キロメートル制限の高速道路において、時速200キロメートルで走行すると、正しくハンドルを操作してカーブを曲がることが著しく困難になることは明らかです。
これにより対向車線に飛び出してVらの乗車する車に衝突し、同人らを死傷させてしまったAさんに危険運転致死傷罪が成立する可能性は極めて高いと思われます。
~Aさんが逮捕されていないのはなぜか~
犯罪をしたと疑われている人(被疑者)を逮捕するためには、「逮捕の必要性(罪証隠滅、逃亡のおそれ)」が必要です。
明らかに逮捕の必要性がないのに、被疑者を逮捕することは違法です。
Aさんはケースの事故で重傷を負っているため、逃亡したり、証拠を隠したりするなどのおそれがないと判断されたものと思われます。
また、逮捕・勾留する場合においては、被疑者を拘束できる時間に限りがあります(捜査段階で最長23日間)。
Aさんが取調べに応じられない状態であるのに逮捕したところで、必要な事情を聞きだすことができまないまま、タイムリミットが来てしまう可能性があります。
治療の必要性から、退院させて留置場に入れることができないといった事情も考えられますので、Aさんを事故直後の段階で逮捕しなかったのは、妥当であると考えられます。
~逮捕後はどうなるか?~
Aさんが取調べや留置場での生活に耐えられる状態まで回復した後、逮捕される可能性があるでしょう。
逮捕・勾留されると、先述の通り、捜査段階で最長23日間、身体拘束をされます。
このうち、最初の3日間を逮捕期間、その後の20日間を勾留期間と呼びます。
ケースの事件は、捜査上のミスや、事実認定に用いる証拠に問題がない限り、実刑判決となる可能性が高いでしょう。
さらに、危険運転致死罪は裁判員裁判の対象事件となります。
さらに、裁判員がいることによる心理的な負担もあります。
このような手続に対応するには、弁護士のサポートを受けることが大切です。
~裁判に向けた対応~
今回のケースでは、被害者が多く、120キロもオーバーしていたという悪質性もあるので、かなり長期間の懲役刑を言い渡されることも想定されます。
まずは、事件を起こしてしまったことを真摯に反省しなければなりません。
また、Vさんらの遺族に謝罪し、生じさせた損害を賠償する必要もあります。
Aさんがきちんと任意保険にも入っていれば、保険により上記の損害を賠償できる場合があります。
Aさんが「真摯な反省」をしているかどうかを判断するために、捜査時の供述が考慮される場合もあります。
捜査段階で被害者を侮辱したり、自身の行為を正当化するような供述をしていると、裁判で反省の弁を述べても、信用されなくなるかもしれません。
自ら反省文を作成しておくといった対応も重要となるかもしれません。
捜査段階でAさんが行わなければならないことはたくさんあります。
弁護士のサポートを受けながら、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
あなたやご家族が交通事故を起こしてしまった場合は、ぜひ無料法律相談・出張法律相談や初回接見サービスをご利用ください。
危険運転致死罪で逮捕
危険運転致死罪で逮捕
今回は、飲酒運転と危険運転致死事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
千葉県習志野市在住のAさんは、居酒屋でお酒を飲んだあと、乗って来た自家用車で帰路につきましたが、乗車した時点において、お酒の影響で正常な運転が困難な状態になっていました。
アクセルをどのくらい踏んでいるのか、ブレーキはどこか、周りはどういう状況なのかをほとんど判断できないまま自動車を運転したところ、見通しの良い道路上で、ノーブレーキでVさんに衝突し、即死させてしまいました。
駆け付けた千葉県習志野警察署の警察官は、Aさんに呼気検査を行い、Aさんを危険運転致死の疑いで現行犯逮捕しました。(フィクションです)
~危険運転致死罪について解説~
危険運転致死傷罪には、いくつかの類型がありますが、今回の場合は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条1項1号の危険運転致死罪が成立する可能性が高いと思われます。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条1項1号
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
この危険運転致死傷罪の成立には、アルコールや薬物の影響により、「正常な運転が困難な状態で」自動車を運転したことが必要です。
飲酒運転だったとしても、被疑者の歩行の様子や受け答えの様子、呼気検査の結果などを見て、「正常な運転が困難な状態」には至らないと判断された場合は、危険運転致死傷罪ではなく、過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)や、道路交通法に定められた酒気帯び運転や酒酔い運転の罪に問われることになると思います。
危険運転致死傷罪という名称は、被害者を傷害するに留まった「危険運転致傷罪」と、被害者を死亡させてしまった「危険運転致死罪」の両方を含むものです。
ケースのVは、Aさんの運転により即死していますので、Aさんは、危険運転致死罪の嫌疑をかけられることになるでしょう。
危険運転致死罪につき、有罪判決を受ける場合は、1年以上(20年以下)の懲役に処せられます。
~捜査段階における弁護活動~
危険運転致死罪の嫌疑をかけられた場合であっても、捜査の展開によっては、嫌疑が過失運転致死罪や酒気帯び・酒酔い運転の罪などに切り替えられる場合があります。
今回の場合は難しいかもしれませんが、「正常な運転が困難な状態」ではなかったと主張できる場合は、上記の弁護活動を行うことが考えられます。
~裁判員裁判への対策~
危険運転致死罪は、裁判員裁判対象事件であり(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条1項2号)、起訴された場合、複雑かつ重い手続に服さなければなりません。
裁判員裁判対象事件につき起訴されると、まず、公判前整理手続に付されます。
公判前整理手続では、争点や証拠の整理が行われ、検察官が持っているの証拠などが開示されます。
検察側にどのような証拠があるかを知っておくことは、防御の観点から重要であるということができますが、その対応には高度な法的知識を必要とします。
Aさんの負担を軽減させるため、また、Aさんの防御のために、信頼できる弁護士を選任しておくことをおすすめします。
~起訴される可能性について~
近年は、飲酒運転中の事故、無謀な運転の末の事故に対し、極めて厳しい目が向けられており、とりわけ危険運転致死事件となると、起訴される可能性が高いと言わざるを得ません。
起訴されてしまうと、無罪判決を勝ち取るのは困難です。
危険運転致死罪の事実について争わない場合は、Vの遺族と示談交渉を行い(捜査段階から着手するのがよいでしょう)、より軽い判決の獲得に向けて努めるべきです。
また、危険運転致死事件を起こしてしまった場合であっても、自賠責の他に任意保険にも入っていれば、被害者救済の観点から、保険で損害を賠償できる場合があります。
弁護士のサポートを受けながら、より軽い処分の獲得に向けて行動していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、危険運転致死事件についてもご相談いただけます。
あなたやご家族が危険運転致死事件を起こしてしまいお困りの方は、初回接見サービスや無料法律相談をぜひご相談ください。
赤色信号看過と過失運転致傷罪・危険運転致傷罪
赤色信号看過と過失運転致傷罪・危険運転致傷罪
赤色信号看過と過失運転致傷罪・危険運転致傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
神奈川県平塚市に住むAさんは、深夜午前1時頃、普通乗用自動車を運転して帰宅途中、前方の対面信号の赤色表示を看過し、時速約60キロメートルで交差点に進入しました。
そうしたところ、右方から交差点に進入してきたVさん運転の軽自動車に自車を衝突させ、Vさん運転の軽自動車を電柱に衝突させてVさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせました。
Aさんは、通報を受けて駆け付けた神奈川県平塚警察署に過失運転致傷罪で現行犯逮捕され、その後起訴されました。
(フィクションです)
~ 過失運転致傷罪 ~
過失運転致傷罪とは、どんな罪なのでしょうか?
まずは、過失運転致傷罪が規定されている法律、条文から確認することにします。
過失運転致傷罪は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、法律)」の5条に規定されています。
法律5条
自動車の運転上必要な注意義務を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
つまり、過失運転致傷罪が成立した場合、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。
「自動車の運転上必要な注意義務を怠り」とは、「過失」があることをいいます。
では、「過失」とは何かというと、難しく言えば、犯罪事実の認識又は認容がないまま、不注意によって一定の作為・不作為を行うことをいいます。
そして、「不注意」とは注意義務をいいますから、「過失」とは、要は、注意義務を怠ること(注意義務違反=~すべき(注意義務)だったにもかかわらず、それを怠った、しなかったということ)をいうのです。
~ 本件の場合の「注意義務」とは? ~
では、本事例における「注意義務」とは何かといえば、それはもちろん、信号表示に従って交差点内に進入する義務でしょう。
道路交通法7条では、「道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号・・・・に従わなければならない」と規定されています。
なお、道路交通法施行令2条では、「赤色の灯火」の意味について「車両等は、停止位置を超えて進行してはならないこと」などと規定しています。
このことから、本事例では、「赤色信号に従わなければならない」「停止位置を超えてはならない」とことが「注意義務」、それに違反することが「注意義務違反」=「過失」ということになります。
~ 故意ある場合は危険運転にも ~
なお、これまでは過失を前提としたお話でしたが、対面信号が赤色表示につき故意がある場合、すなわち、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転した場合」は「危険運転」とされるおそれがあることに注意を要します。
危険運転の場合、人を負傷させた場合は「15年以下の懲役」、人を死亡させた場合は「1年以上の有期懲役」です。
なお、「殊更に無視」の意義について、判例(平成20年10月16日)では、「およそ赤色の投下信号に従う意思のないものをいい、対面信号機が赤色の灯火信号を表示しているのを認識し、交差点入口の停止線手前で停止することが十分であるのに、これを無視して交差点に進入する行為はもちろん、赤色の灯火信号であることについて確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色の灯火信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も含まれる」としています。
また、「重大な交通の危険を生じさせる速度」については、「時速約20キロ」がこれに当たると判示した裁判例(札幌高裁平成17年9月8日)があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。
割り込みによる危険運転致死事件
割り込みによる危険運転致死事件
割り込みによる危険運転致死事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
Aさんは兵庫県川西市を通る高速道路を走行中,前を走るVさんの車が気に入らないと腹を立て,いきなりVさんの車の直前に無理矢理割り込んだ上で急に減速しました。
驚いたVさんはAさんの車に追突しないよう合わせて減速しましたが,後続車に追突され死亡しました。
Aさんは兵庫県川西警察署に危険運転致死罪の容疑で逮捕され,事情を聞かれることになりました。
(フィクションです)
【危険運転致死傷罪】
危険運転致死傷罪は,自動車運転死傷処罰法第2条に定めがあります。
自動車運転死傷処罰法第2条
次に掲げる行為を行い,よって,人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し,人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
1 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4 人又は車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の直前に侵入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって,これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
対象となる「自動車」とは,原動機によりレールまたは架線を用いないで走行する車両のことをいい,自動二輪車や原動機付自転車もこれに含まれます。
上の1号から6号に掲げられた危険運転行為が故意をもって行われなければ,危険運転致死傷罪によって処罰することはできません。
Aさんは意図的にVさんの車の直前に割り込み減速することでVさんが死に至る事故の原因をつくっています。
これは第4号の規定に違反する可能性がある割り込みで,Vさんの通行を妨害する目的があったと判断された場合には危険運転致死罪の適用が考えられます。
【殺人罪】
割り込みや幅寄せなどで死亡事故が発生した時,被害者が事故によって死亡することに対して故意または未必の故意が認定されるようなケースでは,殺人罪(刑法第199条)に問われる可能性もあります。
殺人罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役です。
客観的に見て,割り込みや幅寄せなどが死亡事故を引き起こす可能性の非常に高い態様であったり,または死亡事故に至る可能性が極めて高い状況でこれらの危険運転を敢えて行った場合,被害者を死亡させる故意があったと認定されることもあり得ます。
他にも,車を接近させる行為が人に対する有形力の行使と捉えられて暴行罪(刑法第208条)で立件されることもあります。
暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料となっていますので,危険運転致死罪や殺人罪に比べると軽微な犯罪といえますが,犯罪であることに変わりはなく,もし起訴されて有罪を言い渡されてしまうと前科がつくことになります。
【危険運転致死事件の弁護活動】
割り込みや幅寄せ,その他あおり運転等で生じた死亡事故で危険運転致死罪の被疑者となってしまった場合,危険運転と考えられる行為が故意をもって行われたものではないことを示すことで無罪を主張することが考えられます。
ただし,必ずしも無罪の主張ができるわけではなく,また事案の内容によっては過失運転致死罪など他の犯罪に問われる可能性も十分にあります。
無罪主張できるかどうかも含め,早期に刑事事件に強い弁護士に相談することで今後どのような手段を取ることが可能なのか,どのような結果となる可能性があるのかを知り,選択することができます。
逆に,早期から対応できないでいると手続きがどんどん進んで取り返しのつかない結果となってしまうこともあります。
被疑事実を認める場合でも,被害者や遺族と示談を行うことなどにより執行猶予などを得られる可能性を高めることも可能な場合があります。
これも早めに行わなければ示談交渉を行うことすらままならなかったり,示談がまとまるより先に起訴されてしまったり裁判に間に合わなかったりすることが考えられます。
とにかく,人身事故を起こしてしまった場合はお早めに弁護士に相談・依頼することが重要になります。
割り込みや幅寄せなどにより人身事故を起こしてしまった方,危険運転致死罪の被疑者となってしまった方,兵庫県川西警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
暴走運転による危険運転致死罪の疑いで逮捕
暴走運転による危険運転致死罪の疑いで逮捕
暴走運転による危険運転致死罪と逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、神奈川県秦野市内の県道で自動車を運転中、対面信号が赤色信号であることを認識しながら、まったくスピードを落とすことなく、時速130キロメートルで交差点に進入するなどの危険な運転を行っていました。
Aさんが上記の高速度で5分ほど暴走運転を行っていたところ、青色信号に従って交差点に進入してきたVの車の右側にノーブレーキで衝突し、右ハンドル車を運転していたVさんは即死してしまいました。
通報によって駆け付けた神奈川県秦野警察署の警察官は、Aさんの怪我の回復を待ち、危険運転致死罪の疑いで逮捕することを予定しています。
(フィクションです)
~危険運転致死傷罪とは?~
危険運転致死傷罪とはどのような犯罪でしょうか。
時速130キロメートルという明らかな制限速度違反で信号無視を繰り返す行為は、それ自体道路交通法に違反する行為ですし、ケースのような悲惨な結果を招きうる危険な行為であり、絶対に行うべきでないことは言うまでもありません。
しかし、このような危険な運転行為により実際に死傷事故が起きても、従来は自動車運転過失致死傷で罪に問われるだけでした。
こうした行為に対し厳罰を科すべきであるとの社会要請があり、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が成立し、その中に危険な運転行為による死傷事故を特に重く処罰する規定が盛り込まれました。
危険運転致死傷罪は、危険運転行為を行い、よって人を死傷させた場合に成立します。
~危険運転致死傷罪の類型~
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条1号~6号は、
・アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為(1号)
・その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(2号)
・その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(3号)
・人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(4号)
・赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(5号)
・通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(6号)
を行い、人を死傷させることを禁止しています。
被害者が傷害を負ったに留まる場合は、15年以下の懲役、死亡させてしまった場合は1年以上の懲役に処せられます。
また、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条1項~2項は、
・アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させ、または、死亡させること
・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させること
を禁止しています。
法定刑は、被害者が負傷した場合、12年以下の懲役、被害者が死亡した場合、15年以下の懲役となっています。
以上が、危険運転致死傷罪を定める規定です。
~Aさんに必要な弁護活動~
Aさんの場合、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条2号や5号といった条文に該当する危険運転致死罪が成立する可能性があります。
危険運転致死傷罪が疑われている事件でも、犯行態様によっては危険運転致死罪が成立しないことを主張することができるかもしれません。
そうした場合は弁護士に相談しながら取調べ対応等をすることになるでしょう。
今回のAさんのように、時速130キロメートルで自動車を走行させ、信号を無視し、交差点に進入するなどしていた場合においては、上記のような主張は難しいかもしれませんが、不当に重い処罰を避けるためにも、取調べには弁護士のアドバイスを受けてから臨むなどの対応が望ましいでしょう。
また、危険運転致死傷事件は悪質で重大な事件であるとして起訴される可能性も高く、さらに、実刑判決を受ける可能性も十分あります。
裁判では、車を放棄し二度と自動車を運転しないことや、保険で損害を賠償できる場合はVさんの遺族の損害が賠償される見込みであることなど、Aさんの反省や被害の賠償の度合いなどを表せる事情を主張し、より寛大な量刑による判決の獲得を目指す必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、危険運転致死傷事件についてもご相談いただけます。
ご家族が危険運転致死傷事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
神戸市垂水区で人身事故
神戸市垂水区で人身事故
神戸市垂水区での人身事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
神戸市垂水区に住むAさんは,神戸市垂水区内の居酒屋で同僚と飲んだ後,帰宅するため車を走行させました。
この時Aさんはビールをジョッキで2杯,焼酎のお湯割りを3杯飲んでかなり酔っていましたが,車の運転に自信があったAさんはタクシーや運転代行を利用せずに自分で運転をしていました。
5分ほど車を走らせていたところで道を渡ろうとしていた歩行者を発見しましたが,アルコールの影響で認識が遅れ,その歩行者をはねて全治4カ月の重傷を負わせる人身事故を起こしてしまいました。
この人身事故の一部始終を見ていた通行人によって通報を受けた兵庫県垂水警察署の警察官によって,Aさんは道路交通法違反と危険運転致傷罪の疑いで取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
【危険運転致死傷罪】
危険運転致死傷罪は,自動車運転死傷処罰法第2条に定めがあります。
自動車運転死傷処罰法第2条
次に掲げる行為を行い,よって,人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し,人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
1 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4 人又は車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の直前に侵入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により,又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって,これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
上の1号から6号に掲げられた危険運転行為が故意をもって行われなければ危険運転致死傷罪によって処罰することはできません。
例えば,自動車を運転するに当たり,自分が酩酊していて正常な運転が困難な状態にあることの認識がなければなりません。
Aさんは自身の運転技術に自信をもっており,事故を起こすことなどないと考えています。
しかし他方ではかなり酔っている自覚もあり,現場のブレーキ痕や飲酒の度合いなどと併せて先述の1号違反として危険運転致傷罪に問われる可能性は十分にあります。
【自動車運転死傷処罰法違反におけるその他の罪】
飲酒をして自動車を運転し人身事故を起こした場合では,他にも以下のような罪に問われる可能性があります。
準酩酊運転致死傷罪,いわゆる準危険運転致死傷罪(第3条第1項)は,事故時に意識を失っていたなどして危険運転の故意が認められない場合であっても,アルコール等の影響により走行中に正常な運転ができない状態に陥る危険性を予め認識しており,運転中アルコール等の影響で正常な運転ができない状態に陥り事故を起こした場合に成立する罪です。
法定刑は負傷させた場合で12年以下の懲役,死亡させた場合は15年以下の懲役です。
アルコールや薬物の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し,運転上必要な注意を怠り人を死傷させた場合で,運転時のアルコールや薬物の影響の発覚を免れるなどの目的でそのまま現場から離れるなどした場合は,過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(第4条)として12年以下の懲役となります。
【危険運転致死傷事件の弁護活動】
ここまで見てきたように,アルコールを摂取して酔った状態で運転をして人身事故や死亡事故を起こした場合,重い法定刑が規定された罪に当たることがあります。
そのときは起訴されると正式裁判となり,長期に及ぶ身体拘束を受けたり,執行猶予の付かない懲役の実刑判決が言い渡される可能性もあります。
だからこそ,人身事故や死亡事故を起こして捜査が開始された場合は,早急に刑事事件に強い弁護士に事件を依頼することをお勧めします。
弁護士に依頼することで,事故に至った経緯や動機,状況などを調査し,早期の身体拘束からの解放,不起訴処分,執行猶予の獲得,情状酌量による刑の減軽など,依頼者の状況や事件に応じた適切な弁護活動を展開していきます。
人身事故・死亡事故を起こしてしまった方,危険運転致死傷罪の被疑者となってしまった方,兵庫県垂水警察署で取調べを受けることになってしまった方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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