Archive for the ‘交通事故・交通違反の刑事手続’ Category

無免許で電動キックボード運転

2021-07-03

無免許電動キックボード運転した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
埼玉県浦和警察署は、電動キックボードを歩道上で無免許運転したとして、自営業のAさんを道路交通法違反の容疑で、さいたま地方検察庁に送致しました。
浦和警察署は、以前にも無免許電動キックボード運転したとして、Aさんに対して警告を出していました。
Aさんは、今後どのような流れになるのか不安になり、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

小型で電動走行する電動キックボードは、街中での移動が容易になる移動手段として今後ますます普及していくことが見込まれます。
しかしながら、道路上を走行する以上、事故などの危険を防止するための措置や法律の整備も必要とされています。
今後、電動キックボードが移動手段として普及していく中で、様々な対応策がとられることになりますが、現在は、電動キックボードは法律上、原動機付自転車に区分されており、走行は車道のみで免許も必要となっています。

電動キックボードは、道路交通法および道路運送車両法上の原動機付自転車に該当します。

道路交通法上の原動機付自転車とは、「内閣政令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であって、軽車両、身体障害者用の車椅子及び歩行補助車等以外のものをいう。」をいいます。(道路交通法第2条1項10号)
原動機が内燃機関ではなく電動機であったとしても、定格出力が0.60キロワット以下であれば原動機付自転車となります。
そのため、電動キックボード運転には、運転免許が必要となります。

道路交通法第64条1項は、
「何人も、第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第90条第5項、第103条第1項若しくは第4項、第103条の2第1項、第104条の2の3第1項若しくは第3項又は同条第5項において準用する第103条第4項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。」
と規定されており、運転免許を受けずして原動機付自転車を運転することも無免許運転として禁止しています。
この規定に違反して無免許運転をした場合には、起訴され、有罪となれば、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

単純な無免許運転事件であれば、逮捕・勾留されるおそれはそれほど高くはないでしょう。
身柄が拘束されていないため、あたかも事件が終了したかのように勘違いされる方もいらっしゃいますが、身体拘束をせずに捜査は続けられています。
警察で何度か取調べを受けた後、事件は検察に送られます。
その後、被疑者は、検察官からの呼び出しを受けて、検察庁での取調べを受けることになります。
捜査が終了すると、検察官は事件について起訴するかどうかを判断します。

無免許運転をしたことに争いがない場合には、弁護士は、起訴猶予による不起訴処分又は略式裁判による罰金処分になるよう弁護活動を行います。

最近にも、無免許電動キックボード運転したとして、道路交通法違反(無免許運転)で検挙された事件がありました。
無免許運転で被疑者となり、対応にお困りであれば、一度交通事件に精通する弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にお問い合わせください。

交通事件で逮捕:弁護士との接見

2021-06-19

交通事件逮捕された場合の弁護士との接見について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都八王子市の交差点で、車を右折した際に、直進してきたバイクと接触する事故をおこしたAさん。
事故後、すぐに救急車を呼び、バイクの運転手は病院に運ばれましたが、幸いにも怪我の程度は軽く済みました。
現場に駆け付けた警視庁南大沢警察署の警察官は、Aさんに事故当時について詳しく話を聞いていましたが、Aさんの飲酒運転を疑い、呼気検査をしました。
すると、基準値以上のアルコールが検出されたため、警察官は、道路交通法違反(酒気帯び運転)と過失運転致傷の疑いでAさんを逮捕しました。
Aさんは、警察から弁護人を選任でき、弁護士接見できるとの説明を受け、交通事件にも対応する弁護士との接見を希望しています。
(フィクションです。)

弁護士との接見

Aさんは、刑事事件の被疑者として警察に逮捕されました。
犯罪を犯した疑いがあり、捜査の対象とされている人を「被疑者」と呼びます。
すべての交通事件が犯罪に該当するわけではありませんが、無免許運転や飲酒運転、人身事故を起こした場合などは、犯罪が成立する可能性があり、刑事事件の手続に基づいて、犯罪が成立するのか否か、成立するのであればどのような刑罰を科すべきか、という点について検討されることになります。

捜査段階では、警察をはじめとする捜査機関が、犯罪があると考えるときに、被疑者を特定・発見し、必要な場合には被疑者の身柄を確保するとともに、証拠を収集・保全します。
捜査機関は、逮捕・勾留、捜索・差押えなどの強制処分を行うことができ、それに比べると、被疑者は、刑事事件の一当事者としては弱い立場にあると言えます。
そのため、法律は、充分な防御ができるよう被疑者に様々な権利を保障しています。
今回は、被疑者の権利の一つである「接見交通権」について説明します。

被疑者には、弁護人の援助を受ける権利(「弁護人選任権」といいます。)が保障されています。
憲法は、被告人について、常に弁護人選任権があるとしており、被疑者についても、身柄の拘束を受けたときの弁護人選任権を認めています。
さらに、刑事訴訟法は、身体拘束の有無にかかわらず、被疑者にも弁護人選任権があることを規定しています。
そのため、被疑者となった場合には、いつでも弁護人を選任し、不当な捜査活動から自身の権利・利益を保護し、公判に向けた準備を十分に行うことができます。

被疑者が逮捕・勾留により身体拘束を受けている場合には、外界とのコンタクトが制限された環境に身を置くことになり、身体的にも精神的にもかなりの苦痛を強いられてしまいます。
身体拘束を受けているときには、家族や恋人、そして弁護人からの支援が特に必要不可欠となります。
身体拘束を受けている被疑者は、外部の者との面会や書類・物のやりとりを行うことができます。
これを「接見交通権」といいます。
接見交通は、家族らとの接見交通と弁護士との接見交通とで保障される内容が少し異なります。
被疑者の逃亡や罪証隠滅を防ぐために、家族らとの接見交通は制限されています。
面会には、必ず立会人がおり、時間もだいたい20分に限られています。
逃亡や罪証隠滅のおそれがあると疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官が家族らとの面会を禁止する「接見禁止」決定を行うこともあります。
一方、弁護人(弁護人になろうとする弁護士も含めて)との面会には立会人はいませんし、時間的制限もありません。
書類や物のやりとりをすることもできます。
裁判官が接見禁止とした場合であっても、弁護人は被疑者と面会することができます。
弁護人との面会では、取調べ対応についてのアドバイスといった法的支援のほかにも、家族らからの伝言を伝えたりすることもできますので、特に接見禁止に付されている場合には、弁護士との面会は、被疑者の精神的な支えともなります。

突然の逮捕で身柄が拘束された被疑者は、今後の流れや見込まれる処分、取調べの対応方法など、様々な点において分からず、とてつもない不安を抱えています。
その不安を少しでも早く和らげるためにも、弁護士との接見は重要です。

弊所では、逮捕・勾留された方のもとに赴き接見を行う「初回接見サービス」を提供しています。
逮捕直後は、ご家族の方であっても被疑者と面会することはできませんし、捜査機関から事件について詳しいことを教えてもらえないことも多いため、被疑者だけではなく、その家族もまた不安に苛まれています。
そのような場合には、弊所にご相談ください。
最短、ご依頼いただいた日に刑事事件専門の弁護士が留置先に赴き、逮捕・勾留されている方との接見を行い、事件について伺った上で、今後の流れや見通し、取調べ対応についてのアドバイス、ご家族からの伝言やご家族への伝言を承ります。
接見後には、事件についてや今後の対応方法など、ご家族に向けた接見の報告を行います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族の突然の逮捕でお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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自転車によるあおり運転

2021-05-29

自転車によるあおり運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
京都府下鴨警察署は、自転車を運転中に対向車線を走行している車の前に飛び出すなど危険な運転をしたとして、道路交通法違反の疑いで、京都府京都市左京区に住むAさんを逮捕しました。
Aさんには、過去にも同様のあおり運転行為で検挙された前歴があり、今回はより厳しい処分となるのではないかと心配したAさんの家族は、交通事件に対応する弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです。)

あおり運転に対する処罰

自動車のあおり運転に起因した悲惨な交通事故が後を絶たず、あおり運転は社会問題となりました。
悲惨な交通事故を誘発しかねない危険なあおり運転を厳しく処罰するため、2020年6月に改正道路交通法が施行され、あおり運転に当たる「妨害運転」が厳しい取り締まりの対象となりました。

1.あおり運転(妨害運転)をした場合

他の車両等の通行を妨害する目的で、一定の違反行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。(道路交通法第117条の2の2第11項)

■通行を妨害する目的■

妨害運転は目的犯であり、運転者において特定の相手方に対する通行を妨害する目的が必要となります。
通行を妨害する目的とは、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することです。

■一定の違反行為■

妨害運転の対象となるは、次の行為です。
①通行区分違反…対向車線からの接近
②急ブレーキ禁止違反…不要な急ブレーキ
③車間距離不保持…車間距離を詰めての接近
④進路変更禁止違反…急な進路変更や蛇行運転
⑤追越し違反…左車線からの追越し
⑥減光等義務違反…不必要な継続したハイビーム
⑦警音器使用制限違反…不必要な反復したクラクション
⑧安全運転義務違反…急な加減速や幅寄せ
⑨高速自動車国道での最低速度違反
⑩高速自動車国道等での停車違反

■道路上における交通の危険を生じさせるおそれのある方法■

必ずしも現実に道路における交通の危険が発生したことを必要とせず、道路における交通の危険を生じさせるおそれがある方法で一定の違反行為を行えば足ります。

2.あおり運転(妨害運転)によって危険が生じた場合

1の罪を犯し、よって高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合には、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

■その他道路における著しい交通の危険を生じさせる■

妨害運転をし、その結果、高速自動車国道及び自動車専用道路において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合には、より厳しい処罰の対象となります。

以上のように、おあり運転と言われる運転行為は道路交通法違反にあたり、処罰の対象となります。
注意すべきは、自動車によるあおり運転だけが処罰の対象となるのではなく、自転車によるあおり運転も処罰の対象となることです。
妨害運転の対象となる行為のうち、⑥⑨⑩を除く7類型の違反については自転車による行為でも該当する可能性があります。

妨害運転の法定刑は、交通の危険を生じさせるおそれのある場合については3年以下の懲役又は50万円以下の罰金で、著しい交通の危険を生じさせた場合が5年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。
これらの罰則は、対象者が起訴され、有罪となった場合に、その範囲内で科されることになります。
懲役刑は、受刑者から身体の自由を奪う自由刑と呼ばれる刑罰の一種です。
受刑者を刑事施設内に拘置し、工場などで所定の作業を行わせるものです。
罰金刑は、一定の金額の剥奪を内容とする財産刑の一つです。

あおり運転を行い、道路交通法違反(妨害運転)で起訴された有罪となれば、法定刑の範囲内で刑罰が科されることになります。
懲役刑が選択されたとしても、執行猶予となれば、直ちに刑務所に入ることはありませんので、起訴が免れそうにない場合であっても、できる限り寛大な処分となるよう捜査段階から動くことが重要でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件をはじめ、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
交通事件を起こし対応にお困りであれば、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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交通事件:略式起訴と公判請求

2021-05-22

略式起訴公判請求について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
飲食店で酒を飲んだ後、「少しぐらい大丈夫だろう。」と思い、Aさんは会社の駐車場に停めていた車に乗って帰宅することにしました。
ところが、兵庫県尼崎市の交差点で左折した際に、右側から横断していた自転車に気付くのが遅れ、自転車と接触してしまいました。
幸い、自転車の運転者はかすり傷で済みましたが、兵庫県尼崎南警察署の警察官には飲酒運転が発覚し、過失運転死傷と道路交通法違反で在宅で捜査されることになりました。
警察からは、「検察に事件を送ったが、起訴されるかもしれない。」と言われており、不安になったAさんは交通事件にも対応する弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

交通事件の流れ

交通事故を起こした場合や、飲酒運転、無免許運転といった一定の交通ルールに違反した場合には、運転者は刑事上の責任を問われることがあります。
この場合、運転者は事件の被疑者として警察や検察の取調べを受けます。
捜査段階での事件を最終的に処理するのは、検察官です。
検察官は、捜査を遂げた結果、被疑者を起訴するかどうかを決めます。

交通事件では、例えば、過失運転致傷罪に問われるようなケースで、被害者の怪我の程度が軽く、被害者への対応も適切に行われており、被害者の処罰感情もないような場合には、検察官が起訴しないとする決定をすることがあります。

しかしながら、被害の程度が軽いとは言えない場合や、人身事故を起こしていない場合でも重大な事故に繋がりかねない飲酒運転や無免許運転については、起訴される可能性が高いでしょう。

起訴には、通常の起訴と簡易な手続による起訴とがあります。

通常の起訴とは、「公判請求」と呼ばれるもので、検察官が、裁判所に対して特定の犯罪事実について特定の被告人に対する実体的審理及び有罪の判決を求める意思表示のことをいいます。
公判が請求されると、被告人は、公開の法廷において、検察官と弁護人が提出した証拠に基づいて、罪を犯したことが合理的な疑いを超えて証明されたかどうか、有罪であるとすればどのような刑罰を科すべきかについて審理されることになります。

一方、簡易な手続による起訴には、「略式起訴」と呼ばれるものがあります。
検察官が簡易裁判所に対して略式手続を行い略式命令を出すよう求めるものです。
略式手続というのは、簡易裁判所が、原則として、検察官の提出した資料のみに基づいて、公判を開かずに、略式命令により罰金又は科料を科す手続のことです。
略式手続は、事件が比較的軽微であり、被告人にとって公判出頭の必要がなく、また迅速な裁判が期待できるといった被告人の利益となることや、簡易手続が訴訟経済にも益することなどがその趣旨であると言われています。
略式手続の特徴としては、
・略式命令の請求(略式起訴)は、公訴の提起と同時に書面でしなければならない。
・被疑者が略式手続によることについて異議がないことを書面で明らかにしなければならない。
・検察官による略式命令の請求と同時に、必要な書類や証拠物も裁判所に提出しなければならない。
・略式命令では、100万円以下の罰金又は科料を科すことができる。
といった点があります。
簡略化された手続で事件が処理されるため、被疑者の公判請求の負担を回避できるといったメリットがあります。
交通事件においては、悪質かつ重大ではない場合、例えば、被害が比較的軽い、初犯である、人身事故を起こしていない単純な酒気帯び運転や無免許運転といった罰金・科料に相当する事件では、略式起訴されることが多くなっています。

しかしながら、罰金・科料が相当でない事件、危険運転致死傷罪やひき逃げ事件、飲酒運転や無免許運転での人身事故などは、略式起訴ではなく公判請求される可能性が高いでしょう。

交通事件でも、その内容によっては不起訴となる場合もあれば、起訴されることもあります。
また、起訴される場合でも、略式起訴で略式手続に付されるか、公判請求され公開の法廷で審理されるのかによっても、その後の流れが違ってきます。
どのような対応をすべきかについては、弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
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危険運転(殊更赤無視)で裁判員裁判②

2021-05-15

危険運転殊更赤無視)で裁判員裁判となった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府河内長野市の信号機で交通整理されている交差点に、目の前の信号が赤であるにもかかわらず同交差点を直進し、歩行者用の信号機が青に変わったことを確認して横断道路を横断中の歩行者をはねて死亡させたとして、大阪府河内長野警察署は車を運転していたAさんを危険運転致死の容疑で逮捕しました。
(フィクションです。)

裁判員裁判とは

危険運転致死罪は、裁判員裁判の対象事件となります。
裁判員裁判とは、国民の中から選ばれた裁判員6名と裁判官3名が、被告人が有罪であるか無罪であるか、有罪である場合にはいかなる刑を科すかを判断する制度です。

裁判員裁判の対象となる事件は、
①死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる事件、
②故意の犯罪により人を死亡させた事件(①に当たるものを除く)
です。
危険運転致死罪は、故意犯(故意に一定の危険な運転行為をし、その結果、人を死亡させる罪)であるため、②に該当します。
これに対し、過失運転致死罪は、故意の犯罪ではありませんから、①②のいずれにも当てはまらず、裁判員裁判対象事件ではありません。

裁判員裁判の流れ

裁判員裁判は、通常の裁判とは異なる流れとなります。
通常の裁判では、法廷に裁判官・検察官・弁護人・被告人が出席したうえで、公開の法廷で議論が進められます。
これに対し、裁判員裁判では、実際の裁判が開かれる前に、公判前整理手続という手続きが行われます。
公判前整理手続とは、裁判員に実際に審理をしてもらう前に、裁判官・検察官・弁護人の三者により、本件事件の争点や、実際に裁判に提出する証拠を整理する手続きです。
このような手続の中で、事件の争点や、重要な事実が整理され、裁判員には、最初から争点や判断の対象が提示されるようになっています。
公判前整理手続を経た事件の場合、この手続きが終結した後には、特別の事情がない限り新たな証拠の提出が許されなくなります。

Aさんの事件で、弁護側が主張すると考えられる点として、自動車側の対面信号が赤であったと明確に認識していなかったため、危険運転致死罪ではなく過失運転致死罪が成立する、というようなものが考えられます。
弁護人は、検察官が提示する証拠を精査した上で、被告人が赤信号を見落としていたという可能性が否定できないことを立証していきます。
危険運転致死罪と過失運転致死罪は、その法定刑が大きく異なるため、成立する罪によってその後の生活にも大きな影響を及ぼしかねません。

裁判員裁判は、通常の裁判と異なる流れとなるため、裁判員裁判が見込まれる事件では、刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱っており、裁判員裁判を経験した弁護士も多数所属しております。
ご家族が裁判員裁判対象の事件を起こしてしまいお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

危険運転(殊更赤無視)で裁判員裁判①

2021-05-08

危険運転殊更赤無視)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府吹田市の信号機で交通整理されている交差点に、目の前の信号が赤であるにもかかわらず同交差点を直進し、歩行者用の信号機が青に変わったことを確認して横断道路を横断中の歩行者をはねて死亡させたとして、大阪府吹田警察署は車を運転していたAさんを危険運転致死の容疑で逮捕しました。
(フィクションです。)

危険運転の罪

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)第2条は、危険運転致死傷罪について規定しています。

危険運転致死傷罪は、自動車の危険な運転によって人を死傷させた場合に適用される犯罪です。
危険運転の対象となる行為には、
①アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止し、その他これを著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為。
⑥高速自動車国道において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為。
⑦赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
があります。

上記事例で問題となっているのは、⑦です。

⑦は、赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって、人を死傷させた場合に適用されます。

(1)赤信号又はこれに相当する信号
「赤色信号」は、道路交通法施行令第2条1項の「赤色の灯火」と同じ意味であり、「これに相当する信号」というのは、道路交通法に定める警察官又は交通巡視員による手信号又は灯火による信号のことです。
赤色の灯火の点滅を含めてこれら以外の信号は、「赤色信号又はこれに相当する信号」には含まれません。

(2)殊更に無視し
法制審議会において、「赤色信号を殊更に無視」(以下、「殊更赤無視」といいます。)した場合と言えるのは、赤色信号に従わない行為のうち、赤色信号におよそ従う意思のないものをいうのであって、赤色信号であることを認識していること、止まろうと思えば止まれること、そしてあえて進行することの要件を備えている場合であると説明されました。
つまり、(a)赤色信号であることの認識、(b)止まろうと思えば止まれること、(c)それでもあえて進行したこと、の3つの要件を満たす場合には「殊更赤無視」したと言えるとするのが、立法者の意思であったのです。
立法当初から「殊更赤無視」に該当する典型例としては、
①赤色信号であることについての確定的な認識があり、交差点手前の停止線で停止することが十分可能であるのに、これを無視して交差点内に進入する行為、
②信号の規制を全く無視して、およそ赤色信号であろうとなかろうと最初から信号表示を一切意に介することなく、赤色信号の規制に違反して交差点に進入する行為、
が挙げられていました。

(a)赤色信号であることの認識
殊更赤無視」に当たると言えるためには、「赤色信号を無視すること」、つまり、赤信号であることを確定的に認識していなければなりません。
赤色信号を看過した場合や、信号の変わり際の未必的な認識が認められるに過ぎない場合は「殊更赤無視」には当たりません。
また、およそ赤色信号に従う意思のないものが「殊更に無視」であって、赤色信号であることの確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色心が呉であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も「殊更に無視」する行為に含まれます。
例えば、パトカーの追跡から逃れるために信号機で交通整理されている交差点を信号を確認することなく直進する行為がこれに当たります。

(b)停止線での停止可能性
赤信号は、車両等が停止線を越えて進行してはならないという意味がありますが、これは停止線を越えてしまった車両等については何ら規制していないと解すべきではなく、停止線を越えて進行した場合にもなお進行を禁じ、停止する義務を課していると理解すべきであるため、「殊更無視」の該当するか否かを判断する際には停止線で停止可能か否かという点が決定的な意味を持つわけではなく、停止線を越えたとしても横断歩道などの手前で停止することが可能であり、交差点での衝突事故を回避できる状況であったか否かがポイントとなります。

(3)重大な交通の危険を生じさせる速度
衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度、あるいは、そのような大きな事故になるような衝突を回避することが困難であると一般的に認められる速度であって、運転者がこれらの速度であると認識していることが必要です。
赤色信号を殊更無視した場合であっても、大きな事故を避けることができる速度に減速しているのであれば、「重大な交通の危険を生じさせる速度」には当たりません。

(4)よって人を負傷・死亡させた
危険運転致死傷罪(殊更赤無視)の成立には、赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転したことと、事故との間に因果関係が必要となります。

以上の要件を満たした場合に、危険運転致死傷罪(殊更赤無視)が成立することになります。
危険運転致死傷罪(殊更赤無視)の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役です。
人を死亡させた場合(危険運転致死罪)は、裁判員裁判対象事件となるため、通常の刑事事件とは異なる手続に付されます。

危険運転致死傷事件で被疑者・被告人となってしまった場合には、早期に刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

道路交通法違反:あおり運転

2021-05-01

道路交通法違反あおり運転)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
千葉県香取市の県道を走行中、Vさんの運転する車に対し妨害する目的で、約3キロにわたって、急ブレーキをかけたり、幅寄せをして衝突したりしたとして、千葉県香取警察署はAさんを道路交通法違反の疑いで逮捕しました。
逮捕の翌日にAさんは釈放されましたが、今後どのような処分となるのか心配になり、交通事件に精通する弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

道路交通法違反:あおり運転

みなさんご存知のように、「あおり運転」は、嫌がらせなどの目的で、走行している車やバイクなどに対して、急ブレーキ、極端な幅寄せや車間距離を詰めるなどといった相手の運転を妨害する行為のことです。

あおり運転による悲痛な交通事故が多発し、あおり運転が社会問題となったことを受け、令和2年6月10日に公布された道路交通法の一部を改正する法律により、あおり運転に当たるような運転(妨害運転)に対する罰則が創設されました。

道路交通法第117条の2の2第11号は、

 他の車両等の交通を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者

について、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することを規定しています。

上で「次のいずれかに掲げる行為」とされるものは、

①通行区分違反
車両は、道路の中央から左の部分を通行しなければなりません。
対向車線からの接近や逆送は、これに違反することになります。

②急ブレーキの禁止
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除いて、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはいけません。
走行している車両の直前に歩行者が飛び出してきた、左側端を通行していた自転車が走行している車両の直前に急に右折をはじめて入ってきた、といった場合には、急ブレーキの使用はやむを得ないと認められます。

③車間距離保持違反
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直線の車両等が急に停止したときにおいても、これに追突するのを避けることができるため必要な距離を保たなければなりません。

④進路変更の禁止
現実に他の車両等に危険を生じさせるような進路の変更は禁止されています。

⑤追越しの方法
車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両の右側を通行しなければなりません。

⑥車両等の灯火
車両等が夜間他の車両等と行違う場合、又は他の車両等の直後を進行する場合、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければなりません。
不必要な継続したハイビームは、これに違反します。

⑦警音器の使用等
車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除いて、警音器を鳴らしてはいけません。
ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りではありません。
不必要な反復したクラクションは、この違反にあたります。

⑧安全運転義務
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければなりません。
急な加減速や極端な幅寄せは、安全運転義務違反となります。

⑨最低速度
自動車は、法令の規定によりその速度を減ずる場合及び危険を防止するためにやむを得ない場合を除いて、高速道路の本線車道においては、道路標識等により自動車の最低速度が指定されている区間にあってはその最低速度に、その他の区間にあっては政令で定める最低速度に達しない速度で進行してはいけません。

⑩停車・駐車違反
高速自動車道において、自動車は、法令の規定や警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停止し、又は駐車してはなりません。

また、道路交通法第117条の2第6号は、

 次条第11号の罪を犯し、よって高速道路国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者

については、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処すと規定しています。

道路交通法違反(妨害運転)を起こした場合に見込まれる処分としては、初犯であれば、略式起訴され略式命令(罰金)となる可能性があります。
略式手続に付されると、書面のみの審査となり、法廷で審理されることはありません。
しかし、あおり運転により被害を受けた車の数が多いなど、交通の危険が大きい場合には、検察官が公判請求をし、被告人として法廷で審理されることになるでしょう。
あおり運転に起因して悲痛な事故を生じさせるおそれもあるため、事故を起こしていないとしても厳しく処罰されることがあります。
あおり運転で検挙されてしまった場合には、弁護士に相談し、取調べ対応についてのアドバイスや、できるだけ寛大な処分となるよう動くことが重要でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご連絡ください。

無免許の速度違反

2021-04-17

無免許速度違反を犯した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは、免許停止中であるにもかかわらず車を運転していました。
神奈川県小田原市の最高速度が時速50キロの道路を90キロ近いスピードで運転していたAさんは、神奈川県小田原警察署の警察官に車を停止するよう求められました。
Aさんは不拘束のまま無免許運転と速度違反について捜査されています。
Aさんは今後どのような処分となるのか分からず不安でたまりません。
そこでAさんは、今後の流れや対応方法などについて弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

無免許運転

無免許運転」は、公安委員会の運転免許を受けないで自動車または原動機付自転車を運転することです。
自動車等を運転しようとする場合には、必ず公安委員会の運転免許を受けなければなりません。
これを受けずに自動車等を運転した場合に「無免許運転」となります。
無免許運転には、純粋にこれまで一度も免許を受けていない場合だけでなく、何かしらの交通違反を犯してしまい違反点数が加算され免許が停止となった期間中の運転や免許が取消された後の運転、運転しようとする自動車等の種類に応じた免許を受けていないのに運転する場合も含まれます。
Aさんは、免許停止期間中に運転したため、Aさんの運転行為は無免許運転に当たります。

無免許運転は、道路交通法で禁止されており、違反した場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

速度違反

道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路については政令で定める最高速度を超える速度で運転することを「速度違反(速度超過違反)」といいます。
政令で定める最高速度は、一般道では自動車は60キロ、原動機付自転車は30キロ、高速道路は100キロです。
速度違反の法定刑は、6月以下の懲役または10万円以下の罰金です。

無免許運転と速度違反の関係

Aさんは無免許でありながら車を運転し、速度違反を犯しました。
この場合、速度違反に当たる行為は無免許運転を継続する中での一時的局所的な行為であって、別個のものと判断されます。
つまり、無免許運転については、道路交通法違反(無免許運転)が、速度違反については同じく道路交通法違反(速度超過)という2つの罪が成立します。
この2つの罪の関係ですが、併合罪の関係にあります。
併合罪というのは、確定裁判を経ない数罪のことです。

刑は、成立する罪の法定刑に法律上または裁判上の加重・減軽をする必要がある場合に、法定刑に規定されている刑の重さを足したり引いたりして裁定されます。
併合罪の場合、いずれかの罪の法定刑が死刑、無期懲役・禁錮である場合には、最も重い罪の刑によって刑の重さを足りたり引いたりします。
つまり、併合罪のうち1個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科すことはできませんし、併合罪のうち1個の罪について無期懲役・禁錮に処するときも他の刑を科すことはできません。(ただし、死刑においては没収が、無期懲役・禁錮については罰金、科料、没収が併科されます。)
併合罪中に2個以上の有期懲役・禁錮に処すべき罪がある場合は、各罪中最も重い犯罪に対する刑罰に一定の加重を施して、これを併合罪の罪とします。

無免許運転と速度超過の2罪については、前者の法定刑が3年以下の懲役または50万円以下の罰金、後者が6月以下の懲役または10万円以下の罰金となっているので、前者が最も重い罪となります。
懲役刑については、その最も重い罪について定めた刑の懲役にその2分の1を加えたものを長期とすることになっているので、上限は3年から4年半に加重されます。
また、罰金については、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下の範囲内で刑が決められます。
そのため、無免許運転と速度違反の2罪について罰金に処するときは、50万円に10万円を足した60万円以下の範囲で決められることになります。

バレなければいいだろうと軽い気持ちで犯してしまったとしても、厳しい処分を受けることになりかねません。
交通違反で刑事事件として立件された場合には、弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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非接触事故でひき逃げ

2021-04-10

非接触事故ひき逃げとなる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都日野市を車で走行していた会社員のAさんは、交差点を左折する際に、左側から横断歩道を渡ろうとしていた自転車の高校生にぶつかりそうになりました。
実際にはAさんの車と女子高生は接触していませんでしたが、驚いた女子高生は自転車ごと転倒しました。
Aさんは、「ぶつかったわけではないから自分のせいではないだろう。」と思い、その場を後にしました。
後日、警視庁日野警察署から連絡があり、過失運転致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で取調べのため出頭するよう言われました。
Aさんは、出頭前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

非接触事故でも過失運転致傷に?

交通事故というと、車と車、バイク、自転車、歩行者と接触した結果、相手方に怪我をさせたり、最悪の場合には死なせてしまう場合を想定される方がほとんどだと思います。
これに対して、相手方との物理的な接触を伴わない交通事故を「非接触事故」と呼びます。

接触事故を起こし、その結果、相手方に怪我を負わせてしまったり、死亡させてしまった場合には、通常、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)の「過失運転致死傷罪」が適用されることになります。

過失運転致死傷罪

自動車運転処罰法5条は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」と規定しています。

つまり、過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠った結果、人を死傷させる」罪です。
「自動車の運転上必要な注意」というのは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務のことです。
ちょっとした前方不注意やわき見運転、巻き込み確認を怠ったなども「自動車の運転上必要な注意を怠った」ことになります。
この点、Aさんは、交差点を左折する際には、横断者の動静に注意を払い横断者の安全を確認する注意義務があり、それを怠っていた場合には、「自動車の運転上必要な注意を怠」ったことになります。

そして、過失運転致死傷罪の成立には、注意を怠った「ことにより」人を死傷させたという注意義務違反と人の死傷との間に因果関係がなければなりません。
接触事故の場合には、車が相手方に衝突(=接触)したことが人の死傷という結果を惹起したと、比較的容易に判断できるでしょう。
しかし、非接触事故の場合には、注意義務違反と人の死傷との間の因果関係が不明確であることもあり、過失運転致死傷罪の立証が困難な場合もあります。

以上のように、非接触事故であっても過失運転致死傷罪が成立する可能性はあります。

そして、交通事故を起こし、人を負傷させたにもかかわらず、救護することなく現場から逃走する行為は、いわゆる「ひき逃げ」となり、道路交通法上の救護義務違反及び報告義務違反に当たります。

ひき逃げ事件では、一度現場から逃走しているため、警察に逮捕される可能性があります。
また、ひき逃げ事件は、悪質性が高いとして、公判請求される場合も多いため、捜査段階から弁護士に相談し、きちんと弁護をしてもらうことが重要です。

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交通事故を起こし対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
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危険運転:技能未熟運転

2021-03-20

危険運転致死傷罪における技能未熟運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
京都府綾部市の市道において、ワンボックス車を運転していたAさんは、交差点を左折する際に、歩行者をはねる事故を起こしました。
Aさんは、無免許で車を運転していたことが発覚し、京都府綾部警察署は、無免許の過失運転致傷の疑いでAさんを逮捕しました。
その後、Aさんは、危険運転致傷罪(技能未熟運転)で京都地方検察庁福知山支部に起訴されました。
(フィクションです。)

危険運転致死傷罪とは

人身事故を起こした場合、通常は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)で規定される「過失運転致死傷罪」が適用されることになります。
しかし、事故の内容によっては、より法定刑が重い危険運転致傷罪が適用されることがあります。

危険運転致傷罪は、危険な運転で人を死傷させた場合に適用される犯罪です。
自動車運転処罰法の2条と3条に規定されています。

アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難で状態で自動車を運転する、運転をコントロールすることが困難なスピードで運転する、いわゆる「あおり運転」や赤信号無視などを行った結果、人に怪我を負わせてしまった場合には15年以下の懲役に、死亡させてしまった場合には1年以上の有期懲役が科される可能性があります。
自動車運転処罰法2条の危険運転には、技能未熟運転が含まれています。

技能未熟運転とは

「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」が、技能未熟運転です。
この「進行を制御する技能を有しない」とは、どの程度のことを指すのでしょうか。

「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能ですら有しないような運転の技量が極めて未熟なことを意味すると考えられています。
典型的な例としては、これまで一度も運転免許を取得したことがなく、自動車の運転経験もないような者であって、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能がないにもかかわらず、自動車を走行させるような場合です。
「進行を制御する技能を有しない」かどうかの判断は、事故態様、運転状況、運転経験の有無やその程度などを総合的に考慮して判断されるでしょう。
そのため、「進行を制御する技能を有しない」=無免許とはなりません。

技能未熟運転での危険運転致死傷罪が成立するか否かは、さまざまな要素についてしっかりと検討する必要があります。
交通事故を起こし危険運転致死傷に問われてお困りの方は、法律の専門家である弁護士に相談してください。

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