交通事件:略式起訴と公判請求

2021-05-22

略式起訴公判請求について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
飲食店で酒を飲んだ後、「少しぐらい大丈夫だろう。」と思い、Aさんは会社の駐車場に停めていた車に乗って帰宅することにしました。
ところが、兵庫県尼崎市の交差点で左折した際に、右側から横断していた自転車に気付くのが遅れ、自転車と接触してしまいました。
幸い、自転車の運転者はかすり傷で済みましたが、兵庫県尼崎南警察署の警察官には飲酒運転が発覚し、過失運転死傷と道路交通法違反で在宅で捜査されることになりました。
警察からは、「検察に事件を送ったが、起訴されるかもしれない。」と言われており、不安になったAさんは交通事件にも対応する弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

交通事件の流れ

交通事故を起こした場合や、飲酒運転、無免許運転といった一定の交通ルールに違反した場合には、運転者は刑事上の責任を問われることがあります。
この場合、運転者は事件の被疑者として警察や検察の取調べを受けます。
捜査段階での事件を最終的に処理するのは、検察官です。
検察官は、捜査を遂げた結果、被疑者を起訴するかどうかを決めます。

交通事件では、例えば、過失運転致傷罪に問われるようなケースで、被害者の怪我の程度が軽く、被害者への対応も適切に行われており、被害者の処罰感情もないような場合には、検察官が起訴しないとする決定をすることがあります。

しかしながら、被害の程度が軽いとは言えない場合や、人身事故を起こしていない場合でも重大な事故に繋がりかねない飲酒運転や無免許運転については、起訴される可能性が高いでしょう。

起訴には、通常の起訴と簡易な手続による起訴とがあります。

通常の起訴とは、「公判請求」と呼ばれるもので、検察官が、裁判所に対して特定の犯罪事実について特定の被告人に対する実体的審理及び有罪の判決を求める意思表示のことをいいます。
公判が請求されると、被告人は、公開の法廷において、検察官と弁護人が提出した証拠に基づいて、罪を犯したことが合理的な疑いを超えて証明されたかどうか、有罪であるとすればどのような刑罰を科すべきかについて審理されることになります。

一方、簡易な手続による起訴には、「略式起訴」と呼ばれるものがあります。
検察官が簡易裁判所に対して略式手続を行い略式命令を出すよう求めるものです。
略式手続というのは、簡易裁判所が、原則として、検察官の提出した資料のみに基づいて、公判を開かずに、略式命令により罰金又は科料を科す手続のことです。
略式手続は、事件が比較的軽微であり、被告人にとって公判出頭の必要がなく、また迅速な裁判が期待できるといった被告人の利益となることや、簡易手続が訴訟経済にも益することなどがその趣旨であると言われています。
略式手続の特徴としては、
・略式命令の請求(略式起訴)は、公訴の提起と同時に書面でしなければならない。
・被疑者が略式手続によることについて異議がないことを書面で明らかにしなければならない。
・検察官による略式命令の請求と同時に、必要な書類や証拠物も裁判所に提出しなければならない。
・略式命令では、100万円以下の罰金又は科料を科すことができる。
といった点があります。
簡略化された手続で事件が処理されるため、被疑者の公判請求の負担を回避できるといったメリットがあります。
交通事件においては、悪質かつ重大ではない場合、例えば、被害が比較的軽い、初犯である、人身事故を起こしていない単純な酒気帯び運転や無免許運転といった罰金・科料に相当する事件では、略式起訴されることが多くなっています。

しかしながら、罰金・科料が相当でない事件、危険運転致死傷罪やひき逃げ事件、飲酒運転や無免許運転での人身事故などは、略式起訴ではなく公判請求される可能性が高いでしょう。

交通事件でも、その内容によっては不起訴となる場合もあれば、起訴されることもあります。
また、起訴される場合でも、略式起訴で略式手続に付されるか、公判請求され公開の法廷で審理されるのかによっても、その後の流れが違ってきます。
どのような対応をすべきかについては、弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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