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非接触事故でひき逃げ

2021-04-10

非接触事故ひき逃げとなる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都日野市を車で走行していた会社員のAさんは、交差点を左折する際に、左側から横断歩道を渡ろうとしていた自転車の高校生にぶつかりそうになりました。
実際にはAさんの車と女子高生は接触していませんでしたが、驚いた女子高生は自転車ごと転倒しました。
Aさんは、「ぶつかったわけではないから自分のせいではないだろう。」と思い、その場を後にしました。
後日、警視庁日野警察署から連絡があり、過失運転致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で取調べのため出頭するよう言われました。
Aさんは、出頭前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

非接触事故でも過失運転致傷に?

交通事故というと、車と車、バイク、自転車、歩行者と接触した結果、相手方に怪我をさせたり、最悪の場合には死なせてしまう場合を想定される方がほとんどだと思います。
これに対して、相手方との物理的な接触を伴わない交通事故を「非接触事故」と呼びます。

接触事故を起こし、その結果、相手方に怪我を負わせてしまったり、死亡させてしまった場合には、通常、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)の「過失運転致死傷罪」が適用されることになります。

過失運転致死傷罪

自動車運転処罰法5条は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」と規定しています。

つまり、過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠った結果、人を死傷させる」罪です。
「自動車の運転上必要な注意」というのは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務のことです。
ちょっとした前方不注意やわき見運転、巻き込み確認を怠ったなども「自動車の運転上必要な注意を怠った」ことになります。
この点、Aさんは、交差点を左折する際には、横断者の動静に注意を払い横断者の安全を確認する注意義務があり、それを怠っていた場合には、「自動車の運転上必要な注意を怠」ったことになります。

そして、過失運転致死傷罪の成立には、注意を怠った「ことにより」人を死傷させたという注意義務違反と人の死傷との間に因果関係がなければなりません。
接触事故の場合には、車が相手方に衝突(=接触)したことが人の死傷という結果を惹起したと、比較的容易に判断できるでしょう。
しかし、非接触事故の場合には、注意義務違反と人の死傷との間の因果関係が不明確であることもあり、過失運転致死傷罪の立証が困難な場合もあります。

以上のように、非接触事故であっても過失運転致死傷罪が成立する可能性はあります。

そして、交通事故を起こし、人を負傷させたにもかかわらず、救護することなく現場から逃走する行為は、いわゆる「ひき逃げ」となり、道路交通法上の救護義務違反及び報告義務違反に当たります。

ひき逃げ事件では、一度現場から逃走しているため、警察に逮捕される可能性があります。
また、ひき逃げ事件は、悪質性が高いとして、公判請求される場合も多いため、捜査段階から弁護士に相談し、きちんと弁護をしてもらうことが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
交通事故を起こし対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

運転殺人・傷害と危険運転致死傷

2021-04-03

運転殺人傷害危険運転致死傷について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都大田区内の道路を車で走行していたAさんは、信号待ちの間に自車の前に割り込んできたバイクに腹を立て、信号が変わると急激にスピードを上げバイクとの車間距離を極端に詰めるなどの行為を繰り返しました。
しつこいあおり運転に驚いたバイクの運転手は、Aさんの車に追い越してもらおうと速度を落とし左側に寄ったところ、Aさんの車と衝突し転倒してしまいました。
バイクの運転手は、病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。
Aさんは、現場に駆け付けた警視庁池上警察署の警察官に事情を聞かれています。
(フィクションです。)

通常の交通事故は運転者の過失に起因するものであると考えられているため、自動車運転処罰法は、たとえ被害者を死なせてしまった場合であっても、過失責任として同法5条により、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金という範囲内で刑罰が処断されることになります。

しかし、実は相手を殺すつもりで(若しくは、相手が死んでしまってもかまわないと思い)事故を起こしたという場合も全くないわけではありません。
外見上は、通常の交通事故のようでありながらも、実は殺人傷害の罪に当たり得るケースもあるということです。

1.殺人罪

刑法199条は、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定しています。
この殺人罪の成立には、「人を殺す」ことだけではなく、主観的要件として故意、つまり、殺意が必要となります。
ここでいう「故意」とは、行為の客体が人であることを認識し、かつ、自己の行為によって、その人の死という結果を生じさせることを意図し、あるいは、死の結果が生じることの認識(予見)・認容することです。
交通事故においては、自動車を人に衝突させる際に、それが人であることを認識し、かつ、当該衝突行為によって、その人の死亡を意図又は予見し、そして、その結果が生じることを認容することで殺意が認められることになり、単なる交通事故で処理されず、運転殺人となります。

事故により人が死亡した場合で、殺意までは認められない場合には、傷害致死罪あるいは妨害行為による危険運転致死傷罪の成立が検討されることになります。

2.傷害致死罪

傷害罪について、刑法204条は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50年以下の罰金に処する。」と規定しています。
ここでいう「傷害」というのは、「人の生理的機能に障害を加えること」です。
殴る蹴るといった典型的な有形力の行使により、相手方に怪我を負わせる以外にも、精神的苦痛も傷害に当たる場合があるのです。
また、傷害罪の成立には、故意がなければなりません。
傷害の故意については、傷害罪が暴行罪の結果的加重犯であることから、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りるとするのが判例です。(最高裁判決、昭和25年11月9日)
つまり、自動車に人を衝突させることによって相手に怪我を負わせてやろうという意図で、そのような行為に及んだ結果、相手に怪我を負わせた場合には、傷害の故意に基づく傷害罪が成立することになります。
そして、その結果、相手が死亡した場合には、傷害致死罪が成立します。
傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役です。

3.妨害行為による危険運転致死傷罪

自動車運転処罰法2条4号は、「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を処罰の対象としており、その行為により、「人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。」としています。

「人又は車の通行を妨害する目的」というのは、相手に対して自分の車と衝突することを回避するために急な回避措置をとらせるなど、人や車の自由で安全な通行の妨害を積極的に意図することをいいます。
相手に嫌がらせをしてやろうと思い、相手の車に対して幅寄せをした結果、相手のハンドル操作を誤らせ、ガードレールに衝突させるなどといった場合などが妨害行為による危険運転致死傷罪の類型です。

運転殺人が疑われるような場合には、殺意の有無が問題となります。
どの罪が成立するかにより、有罪となった場合に言い渡される刑の軽重も異なりますので、早い段階からしっかりと対応する必要があるでしょう。

交通事故を起こし被疑者・被告人となりお困りであれば、交通事件にも対応する刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

少年の共同危険行為

2021-03-27

少年共同危険行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
福岡県北九州市八幡西区の交差点で信号待ちをしていたVさんは、信号が青に変わったため、交差点を左折しようとしました。
すると、右側から原動機付自転車が走行してきたため、Vさんは慌ててブレーキを踏みましたが、Vさんの車後方に原動機付自転車がぶつかりました。
幸い、この事故による負傷者は出ませんでした。
原動機付自転車を運転していた少年Aくんは、赤信号を見落としたものとして福岡県八幡西警察署から話を聞かれていましたが、Vさんの車の搭載されていたドライブレコーダーの映像から、Aくんは一人ではなく複数人で連なって原動機付自転車を走行させており、信号が赤信号に変わってから間もなく交差点に集団で侵入したことが判明しました。
福岡県八幡西警察署は、Aくんを共同危険行為の疑いで逮捕し、逃げた他の共犯者を追っています。
(フィクションです。)

共同危険行為

共同危険行為とは、「道路において2台以上の自動車または原動機付自転車を連ねて通行させ、または並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、または著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為」のことをいい、道路交通法68条で禁止されています。

◇主体◇

共同危険行為罪の主体は、「2人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者」です。
自動車または原動機付自転車のいずれかの台数が2台以上の場合や、自動車または原動機付自転車を合わせた台数が2台以上の場合の運転者を指し、現実に自動車または原動機付自転車を運転している者のことです。

◇形態◇

2人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者が、道路において2台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させる場合、又は並進させる場合において、という要件が設けられています。
「連ね」とは、自動車・原動機付自転車が前の自動車・原動機付自転車に追従して縦列に同方向に走行している状態を指します。
また、「並進」とは、2台以上の自動車・原動機付自転車が同一の速度で並んで進行する横の状態を示します。

◇行為者の連携◇

共同危険行為罪には、行為者の連携がなければなりません。
条文の「共同して」とは、2人以上の自動車・原動機付自転車の運転者が、道路において交通の危険または迷惑行為を行うという共同の意思をもって、2台以上の自動車・原動機付自転車を連ねて通行させまたは並進させ、お互いの行為を利用し合いながら、全体として暴走行為を実行することをいいます。

◇行為◇

禁止される行為は、「交通の危険を生じさせることとなる行為、著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為」であり、具体的な危険、迷惑が生じる必要はなく、抽象的な危険、抽象的な迷惑の発生でも構いません。
現実に他の車両や歩行者の通行を故意に妨げ、その通行の事由を奪うなどの行為が発生していなくとも、現場に車両等があれば、当然、交通の危険を生じさせ、あるいは他人に迷惑を及ぼすこととなる集団暴走行為については、集団暴走行為が行われたことを現認したり、ビデオやカメラ等から立証すれば、その現場に危険に遭った者や迷惑を被った者がいなかったとしても、道路交通法68条の禁止行為違反となります。

違反となる走行形態としては、次のようなものがあります。
・広がり通行:道路いっぱいに広がって通行するもの。
・巻込み通行:暴走族集団の車両以外を中に巻込んで事実上その車両の走行の自由を拘束して走行するもの。
・蛇行通行:集団が一体となって蛇行しながら走行するもの。
・交互追越し:暴走族の集団がいくつかのグループに分かれ、それらが交互に追越しを行いながら走行するもの。
・信号無視:暴走族集団のグループ員の車両で交差道路の交通をふさぎ、集団で赤信号を無視して走行するもの。
・一定区間内の周回:一定区間の道路上において、周回、急発進、急停止等を行い、他の車両の通行を遮断するもの。

共同危険行為罪の法定刑は、2年以下の懲役または50万円以下の罰金ですが、少年の場合は、少年法に基づいた手続を踏んで処理されることになります。

少年事件では、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所による調査・審判を経て最終的な処分が言い渡されることになります。

家庭裁判所に送致されるまでの間は、成人の刑事事件とほぼ同様の手続がとられることになるため、少年であっても、逮捕・勾留による身体拘束が伴うことがあります。
共同危険行為罪で逮捕された場合は、共犯との接触・口裏合わせを防ぐために逮捕の後に勾留となる可能性は高いでしょう。

共同危険行為罪の法定刑は、2年以下の懲役または50万円以下の罰金と、他の犯罪と比べるとそこまで重いものではありません。
しかし、家庭裁判所の審判では、非行事実のみならず要保護性が審理の対象となるため、必ずしも非行の軽重が処分に直接影響するとは限りません。
要保護性というのは、簡単に言えば、少年による再犯の危険性があり、保護処分により再犯の防止ができること、です。
要保護性が高いと判断されれば、少年院送致という重い処分となることも少なくありません。
そのため、少年事件では、要保護性を解消することが最終的な処分に大きく影響することになり、非常に重要です。

このように、少年の場合は、成人の刑事事件とは異なる手続がとられますので、少年事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が共同危険行為で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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危険運転:技能未熟運転

2021-03-20

危険運転致死傷罪における技能未熟運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
京都府綾部市の市道において、ワンボックス車を運転していたAさんは、交差点を左折する際に、歩行者をはねる事故を起こしました。
Aさんは、無免許で車を運転していたことが発覚し、京都府綾部警察署は、無免許の過失運転致傷の疑いでAさんを逮捕しました。
その後、Aさんは、危険運転致傷罪(技能未熟運転)で京都地方検察庁福知山支部に起訴されました。
(フィクションです。)

危険運転致死傷罪とは

人身事故を起こした場合、通常は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)で規定される「過失運転致死傷罪」が適用されることになります。
しかし、事故の内容によっては、より法定刑が重い危険運転致傷罪が適用されることがあります。

危険運転致傷罪は、危険な運転で人を死傷させた場合に適用される犯罪です。
自動車運転処罰法の2条と3条に規定されています。

アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難で状態で自動車を運転する、運転をコントロールすることが困難なスピードで運転する、いわゆる「あおり運転」や赤信号無視などを行った結果、人に怪我を負わせてしまった場合には15年以下の懲役に、死亡させてしまった場合には1年以上の有期懲役が科される可能性があります。
自動車運転処罰法2条の危険運転には、技能未熟運転が含まれています。

技能未熟運転とは

「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」が、技能未熟運転です。
この「進行を制御する技能を有しない」とは、どの程度のことを指すのでしょうか。

「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能ですら有しないような運転の技量が極めて未熟なことを意味すると考えられています。
典型的な例としては、これまで一度も運転免許を取得したことがなく、自動車の運転経験もないような者であって、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能がないにもかかわらず、自動車を走行させるような場合です。
「進行を制御する技能を有しない」かどうかの判断は、事故態様、運転状況、運転経験の有無やその程度などを総合的に考慮して判断されるでしょう。
そのため、「進行を制御する技能を有しない」=無免許とはなりません。

技能未熟運転での危険運転致死傷罪が成立するか否かは、さまざまな要素についてしっかりと検討する必要があります。
交通事故を起こし危険運転致死傷に問われてお困りの方は、法律の専門家である弁護士に相談してください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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交通事件で身代わり

2021-03-13

交通事件で犯人の身代わりをした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
運送会社に勤めるAは、自家用車を運転し、妻Bと兵庫県神戸市北区に旅行に来ていました。
Aは、宿泊先近くの飲食店で夕飯を食べた際にお酒を飲んでいましたが、Aが車を運転して宿泊先に向かいました。
その道中、交差点で横断歩道を横断中の自転車と接触する事故を起こしてしまいました。
仕事に影響することを恐れたAとBは、Bが車を運転していたことにし、現場に来た兵庫県有馬警察署の警察官にもそう供述しました。
(フィクションです。)

交通事件では、犯人の身代わりとなるケースが他の事件と比べて多いと言われています。
特に、飲酒運転や無免許運転に該当するような場合には、その発覚を免れるために同乗者が犯人の身代わりとなることがあります。
上の事例のように、犯人の身代わりとなったBについて、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。

飲酒運転による人身事故を起こした犯人として身代わりとなったBに対しては、刑法上の犯人隠避の罪に問われる可能性があります。

刑法103条は、犯人蔵匿の罪について次のように規定しています。

罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

犯人蔵匿の罪は、
①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を
②蔵匿し又は隠避させた
場合に成立します。

①「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃亡した者」
前者の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」における「罰金以上の刑に当たる罪」というのは、法定刑に罰金以上の刑を含む罪を指します。
「罪を犯した者」とあるので、訴追・処罰の可能性がある者でなければなりません。
過去の判例は、「罪を犯した者」の意義について、犯罪の嫌疑を受けて捜査・訴追されている者と解しています。
告訴権の消滅や、時効の完成などにより訴追・処罰の可能性がなくなった者については、本罪の客体とはなりません。
一方で、保釈中の者であっても、その行方をくらませば公判手続・刑の執行に支障が生じるので、保釈中の者は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当します。
また、後者の「拘禁中に逃走した者」についてですが、法令により拘禁されている間に逃走した者のことです。

Bさんは、飲酒運転による人身事故を起こしたのであり、道路交通法違反と過失運転致死傷罪の2つの罪に問われる可能性が高いと考えられます。
そのため、Bさんは「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当すると言えるでしょう。

②蔵匿・隠避
「蔵匿」は、官憲による発見・逮捕を免れるべき隠匿場所を提供することです。
そして、「隠避」とは、「蔵匿」以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れしめるべき一切の行為をいいます。
逃走のために資金を調達することや、身代わり犯人を立てるなどの他にも、逃走者に捜査の形勢を知らせて逃避の便宜を与えるなどの場合も「隠避」に含まれます。

加えて、本罪の成立には、客体である被隠避者が罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であること、または拘禁中逃走した者であることを認識し、かつ、これを隠避することを認識すること(故意)が必要となります。
「罰金以上の刑にあたることの認識」について、過去の裁判例は、罪を犯した者または拘禁中に逃走した者であることの認識で足り、その法定刑が罰金以上であることまで認識している必要はないと解しています。(最決昭29・9・30)

以上のように、犯人の身代わりになった場合には、犯人隠避罪に問われる可能性があるのです。

しかし、犯人蔵匿の罪については、親族間の犯罪に関する特例があり、刑法105条は、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができるとしています。
そのため、犯人であるAの配偶者であるBについては、刑が免除される可能性があるでしょう。
ただ、この親族間特例は、「刑を免除することができる」と規定されているため、必ず免除されるとは限りません。

そのため、犯人隠避の罪に問われ、親族間特例が適用され得る場合には、弁護士に相談し、不起訴処分獲得に向けてしっかりと捜査機関に働きかけることが重要でしょう。

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自転車の交通事故

2021-03-06

自転車交通事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大学生のAさん(20歳)は、右手でスマートフォンを操作しながら、大阪府松原市自転車で走行していました。
スマートフォンを注視していたところ、前方の歩行者に気付かず、衝突してしまいました。
歩行者は転倒し、頭を打ったようでした。
Aさんは、すぐに救急車を呼び、歩行者は近くの病院へ救急搬送されました。
大阪府松原警察署から駆け付けた警察官が、Aさんに事情を聞いています。
(フィクションです。)

交通事故と言えば、自動車による自動車・バイク・自転車・歩行者に対して起こすものを想像される方が多くいらっしゃるように、自転車交通事故の被害者となるケースが多く見受けられます。
このように、車の運転者などが交通事故を起こし、加害者となる場合には、過失運転致死傷罪(場合によっては危険運転致死傷罪)が成立し、処罰されることになります。
通常は、交通弱者として被害者として交通事故に登場することが多い自転車ですが、自転車と自転車の事故や、自転車と歩行者の事故においては、加害者となることがあります。
そのような場合には、車が加害者となる場合に成立し得るとして先に述べた過失運転致死傷罪等が適用されることはありません。
また、刑法上の業務上過失致死傷罪についても、「業務上」という概念は、「人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、かつ、その行為は他人の生命身体等に危害を加えるおそれのあるものであることを必要」(最高裁判決昭和33年4月18日)とすると解されているため、自転車が人力で動くものであり、比較的軽量であることから、自転車を運転する行為が他人の生命身体等に危害を加えるおそれのある行為であるとは考えられず、自転車により交通事故を起こし、他人に怪我を負わせたり、死亡させてしまった場合には、業務上過失致死傷罪は成立しないものと考えられます。
そのため、自転車による交通事故が生じた場合には、重過失致死傷罪又は過失傷害罪・過失致死罪の成立が検討されることになります。

(過失傷害)
刑法第209条 
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(過失致死)
刑法第210条 
過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

(業務上過失致死傷等)
刑法第211条 
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

1.過失傷害罪

過失傷害罪は、「過失」により人を傷害した場合に成立する罪です。
暴行や傷害の故意がなく、不注意によって人に傷を負わせてしまうものです。
自転車による交通事故の原因が、ちょっとしたよそ見などの場合は、過失傷害罪となるでしょう。
過失傷害罪は、被害者等の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。

2.過失致死罪

過失致死罪は、過失によって人を死亡させた場合に成立する罪です。
上の過失傷害のように、不注意によって人を死亡させてしまうものです。

3.重過失致死傷罪

重過失致死傷罪は、刑法211条後段に規定されている罪で、「重大な過失」により人を死傷させることで成立するものです。
裁判例によれば、「重大な過失」は、「注意義務違反の著しい場合、すなわち、わずかな注意を用いることによって危険性を察知することができ、結果発生を回避できたであろう場合」(福岡高裁判決昭和55年6月12日)をいうとされていたり、「わずかな注意を払うことにより結果発生を容易に回避しえたのに、これを怠って結果を発生させた場合」(東京高裁判決昭和57年8月10日)をいうとされています。
これまでの自転車による交通事故に関する裁判例では、自転車が無灯火で走行した場合、信号看過や無視をした場合、一時停止の標識を無視して進行した場合、前方不注意が著しい場合、無謀な横断行為がなされた場合などについて、重過失が認められており、片手で携帯電話を操作しながら前方をよく見ずに走行した場合にも、重過失が認められるものと考えられるでしょう。

このように、自転車による交通事故であっても、刑事責任が問われる可能性がありますので、自転車交通事故を起こした場合には、刑事事件に精通する弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
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運転者以外に問われる飲酒運転関連罪

2021-02-27

運転者以外に問われる飲酒運転関連罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府豊中市に住むAさんは、友人BさんとAさん宅から車で10分ほどのところにある寿司屋に向かうことにしました。
Aさんは、「車で行こう。」と言い、Bさんの運転で寿司屋に行きました。
寿司屋で酒を飲んだものの、Bさんが運転する形で乗ってきた車でAさん宅まで帰ることにしました。
帰宅途中、検問中の大阪府豊中警察署の警察官に停車を求められ、Bさんの飲酒運転が発覚しました。
Aさんは、警察から車両提供罪及び同乗罪の疑いで取調べを受けています。
(フィクションです。)

飲酒運転は、酒などを飲んだ後、そのアルコールの影響がある状態で自動車などの車両を運転することです。
飲酒運転は、道路交通法によって禁止されており、ある一定以上のアルコール濃度を身体に保有した状態で車両等を運転させた場合には、刑事罰が科されてしまう可能性があります。
飲酒運転が犯罪となり得ることは周知のところですが、車両等の運転者以外の者もまた、飲酒運転を助長したとして刑事罰の対象となる可能性があることを知らない方も少なくありません。

平成19年9月19日に施行された改正道路交通法は、飲酒運転等に対する罰則を強化した他、これまで規制されていなかった飲酒運転者の周囲の者に対する罰則を設け、車両提供罪、酒類提供罪、同乗罪が新たに設けられました。

1.車両提供罪

道路交通法65条2項は、
何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
と規定しています。

車両等を提供した結果、当該車両運転者が、酒酔い運転の犯行に及んだ場合には、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に、酒気帯び運転の犯行に及んだ場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることになります。

①主観的構成要件
提供者は、運転者が酒気を帯びているとの認識、そして、当該運転者が同車両を運転することとなるおそれがあるという認識を有していることが必要です。
まず、運転者が酒気を帯びているという認識についてですが、警察に検挙されるような酒気帯び運転に該当する程度であったかどうかではなく、当該運転者が飲酒していたという程度の認識で足りるとされます。
そして、運転者が車両を運転することとなるおそれがあるという認識については、確実にその車両を運転するとまで思っている必要はなく、運転するかもしれないが、それでもかまわない(=未必の故意)と思っていれば、その認識があったもののと判断されます。

②客観的構成要件
①主観的構成要件に加えて、当該車両を実際に提供したこと、及び実際にその車両が運転されたこと、そして運転者に酒気帯び運転等の要件が満たされることが必要となります。

2.酒類提供罪

道路交通法65条3項は、
何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
と規定しています。

そのような行為の結果、当該車両運転者が、酒酔い運転の犯行に及んだ場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に、酒気帯び運転の犯行に及んだ場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処することと定められています。

車両提供罪と同じく、本罪の提供者もまた、酒類の提供を受ける者等が車両を運転することとなるおそれがあるという認識を有していなければなりません。
客観的要件は、酒類を実際に提供したこと、実際にその車両が運転されたこと、運転者に酒気帯び運転等の要件が満たされることとなります。

3.同乗罪

道路交通法65条4項は、
何人も、車両(中略)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
と規定しています。

結果として、当該車両運転者が、酒酔い運転の犯行に及んだ場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に、酒気帯び運転の犯行に及んだ場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられることとされています。

本罪の成立には、車両提供罪や酒類提供罪のように、当該運転者が酒気を帯びているという認識が必要となります。
また、客観的要件として、当該車両を運転して自己を運送するように要求又は依頼したこと、実際にその車両が運転されたこと、そして、運転者に酒気帯び運転等の要件が満たされることが求められます。
「要求」とは、同乗者が運転者に自分を運送するよう求めたり指示したりすることで、「依頼」とは、運転者に自分を運送してほしい旨頼むことをいいます。
そのため、要求・依頼することなく、単に飲酒運転を了解して同乗していただけの場合には同乗罪は成立しないことになります。
ただ、事案によっては、明示的な要求・依頼がなくとも、黙示的要求・依頼があったもの認定されるケースもあります。

飲酒運転関連罪で検挙され、対応にお困りの方は、一度交通事件にも対応する弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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無免許運転と飲酒運転

2021-02-20

無免許運転飲酒運転で検挙された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは、道路交通法違反(無免許運転、酒酔い運転)の疑いで千葉県松戸警察署に現行犯逮捕されました。
Aさんの運転免許は、以前取消しとなっていたにもかかわらず、Aさんはそれ以降も車を運転しており、事件当日は、自宅を飲んだ後に車を運転していたところ、警察官に検挙されました。
(フィクションです。)

無免許運転

車両等の運転には、運転の許可を得なければなりません。
道路交通法は、運転免許を受けないで自動車や原動機付自転車を運転することを禁止しています。
運転免許を受けないで自動車等を運転することを「無免許運転」といいます。
無免許運転には、今まで一度も運転免許証を交付されたことがない場合だけでなく、免許が取り消された後に運転する場合や、免許の停止中に運転する場合、そして、運転しようとする自動車等の種類に応じた免許証がないにもかかわらず運転する場合があります。
また、うっかり免許証の更新を忘れており、免許証の有効期限が切れていることを認識していながら運転する場合も無免許運転として扱われます。
無免許運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっており、決して軽い罪ではないことがわかりますね。

飲酒運転

道路交通法は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」として、一切の酒気帯び運転を禁止しており、その中で一定の要件をとらえて罰則規定を定めています。
罰則の対象となる飲酒運転には、「政令酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。

①政令酒気帯び運転
政令で定める一定基準を超えたアルコールを身体に保有して運転する場合が該当します。
つまり、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出された状態がこれに当たります。
この酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

②酒酔い運転
先の酒気帯び運転とは異なり、酒酔い運転は身体内に保有するアルコール濃度の数値ではなく運転者の客観的状態から判断されます。
アルコールが原因で正常な運転ができないおそれがある状態(=酒に酔った状態)で車両等を運転した場合には、酒酔い運転となります。
酒酔いの認定は、アルコール保有量の科学的検査、飲酒量、身体の状況(言語、歩行、直立能力など)、自動車の運転状況、その他の諸般の事情を総合的に考慮して行われます。
酒酔い運転の法定刑は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金と、酒気帯び運転よりも重くなっています。

無免許運転と酒酔い運転の関係は?

無免許運転でありながら酒酔い運転にも当たる一連の行為については、どのように処理されるのでしょうか。

これについては、判例は、無免許運転の所為と酒酔い運転の所為は刑法54条1項後段の観念的競合の関係にあるとしています。(最高裁昭和49.5.29)
「観念的競合」というのは、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合のことを意味します。
この場合、そのうち最も重い刑で処断されることになります。
同一の日時場所において、無免許でかつ酒に酔った状態で自動車を運転する行為は、どちらも車両運転者の属性にすぎないため、無免許でかつ酒に酔った状態で運転していたことは、自然的観察のもとにおける社会的見解上明らかに1個の運転行為であると考えられているので、無免許運転と酒酔い運転は観念的競合の関係にあり、裁判官が被告人を有罪とすると、当該被告人に科すべき刑は、2つの罪の重い刑、つまり、酒酔い運転の法定刑である5年以下の懲役又は100万円以下の罰金の範囲内で決められることになります。

ちょっとそこまでと気を緩めて無免許飲酒運転をすると、決して軽いとは言えない刑事処分が科されてしまうことになります。
無免許運転飲酒運転で逮捕された、検挙されて対応にお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所は、交通事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
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ドア開扉事故と過失運転致死傷罪

2021-02-13

ドア開扉事故過失運転致死傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
埼玉県和光市を自家用車で走行していたAさんは、喉が渇いたため、近くのコンビニで飲み物を買うことにしました。
駐車場に車を止めるのが煩わしいと思ったAさんは、コンビニの前の路上で車を止め、シフトレバーをPに入れ、サイドブレーキをひき、エンジンをかけたまま、運転席のドアを開け外に出ようとしました。
すると、後方から走ってきた原付バイクがドアに接触し、原付バイクの運転手がバイクとともに転倒しました。
Aさんは、通報を受けて駆け付けた埼玉県朝霞警察署の警察官から話を聞かれています。
(フィクションです。)

車の運転を終了した直後に運転席のドアを開けたことで交通事故(人身事故)を起こしてしまった場合には、どのような罪責に問われることになるのでしょうか。

平成19年の刑法改正により、業務上過失致死傷罪のうち自動車運転に係るものに関しては、刑法211条2項に自動車運転過失致死傷罪が新設されました。
そして、その法定刑は7年以下の懲役又は禁固と業務上過失致死傷罪の法定刑よりも重くなりました。
その後、平成25年には、自動車運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷処罰法」といいます。)が制定され、刑法の自動車運転過失致死傷罪は、過失運転致死傷罪と名称が変更されました。
ただ、この過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」ことが構成要件であるため、この罪が成立するためには「自動車の運転」をしている場合に限られます。
そのため、事故当時の状況が「自動車の運転」をしている場合であるかどうかが問題となり、「自動車の運転」をしている際に起こした事故であれば過失運転致死傷罪が適用され、そうでなければ業務上過失致死傷罪にとどまることになり、適用される罪によって科され得る刑罰にも大きな差が出てくることになるのです。

「自動車の運転」とは?

それでは、問題となっている「自動車の運転」という文言について説明してみたいと思います。

そもそも、道路交通法上、「運転」は、「道路において、車両又は路面電車をその本来の用い方に従って用いることをいう。」と定義されています。(道路交通法2条1項17号)
つまり、「本来の用い方に従って用いる」のを終えた段階で運転が終了するものと理解することができます。
すると、問題となるのは、どの段階で「用いるのを終えた」と言えるのか、ということになります。
車の動きを止めたときなのか、シフトレバーをPに入れたときなのか、サイドブレーキをかけたときなのか、エンジンを切ったときなのか、それとも、車両外に運転者が出たときなのか。
これについては、自動車の本来の用途を考えてみた場合に、単に車両を停止させただけの段階(ブレーキを踏んだだけの状態)や、その後の停止を確実にするための補助的動作をした段階(シフトレバーをPに入れただけの状態)では、未だ「用いる」ことを終了させたというには早過ぎるものとされ、自動車の動力を停止させた状態、つまり、エンジンを停止させた段階で、「用いる」のを終了させたと理解するのが一般的となっています。
ただ、宅配業者のように、宅配先に荷物を届けるため、宅配先に到着するたびにエンジンを停止して降車し、荷物を届けるといったことを繰り返す場合には、エンジンを停止させても、配達が完了すればすぐに車を発車して走行を続ける意思があるため、「運転」が終了したとは言えません。
「運転」が終了したと言うためには、エンジンの停止と運転者が主観的にも運転を終了させる意図があることが必要となるのです。

以上の考え方を前提にすると、運転を終了しようと思い、エンジンを停止した後、運転者が運転席のドアを開ける行為は、「運転」には当たらないものと言えるでしょう。
そのため、ドアを開ける際に後方等の安全確認を十分に行わなかったという過失により、ドアを通行者に衝突させて負傷させた場合には、業務上過失傷害罪が適用されることになるでしょう。
ただし、ドア開扉に起因した事故すべてが業務上過失致死傷罪で処理されるわけではありません。
交差点で一時停止してドアを開けた場合、宅配目的で宅配車を停止させてドアを開けた場合、タクシー運転手が客を乗せたり降ろしたりする際に停車して後部左側の自動ドアを開ける場合などは、運転行為が継続する中で起きたものと認められるため、過失運転致死傷罪が成立することがあります。
上記事例の場合、Aさんは過失運転致傷罪に問われる可能性もあります。

ドア開扉事故をはじめ交通事故を起こしてお困りの方は、交通事件に強い弁護士に相談してみてください。

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持病発症で人身事故

2021-02-06

持病発症人身事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
神奈川県大和市に住むAさんは、車で妻を駅まで迎えに行く途中、持病のてんかんの発作で意識を失い、運転していた車ごと車道に乗り上げました。
車は、車道を歩行中の高齢女性に接触し、女性は重傷を負いました。
Aさんは、後日、横浜地方検察庁に自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の罪で起訴されました。
Aさんは、裁判で弁護をしてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

持病を発症し人身事故を起こしたら

自動車を運転中に持病などが発症し、意識を失い、運転手や同乗者、対向車や歩行者が怪我をする、あるいは死亡する事故は少なくありません。

人身事故を起こした場合、多くは、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われることになります。
過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立する罪です。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務を怠ることをいいます。
前方不注意や脇見運転、アクセルとブレーキの踏み間違いなどが該当します。

しかしながら、上記事例のように持病がありながら車を運転し、運転中に持病発症したことにより人身事故を起した場合には、過失運転致死傷罪ではなく危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。

危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法第3条2項)

自動車運転処罰法は、その3条2項において、
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。」
と規定しています。

①政令で定めるものの影響により

ここでいう「政令で定める病気」というのは、
(1)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する総合失調症
(2)意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
(3)再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であって、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
(4)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれのある症状を呈する低血糖症
(5)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈するそう鬱病(そう秒及び鬱病を含む。)
(6)重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
です。
これらの病気の「影響により」とは、ただただ病気の影響によるものであることまで必要とされず、病気が他の要因と競合して正常な運転に支障が生じるおそれがある状態になった場合も含まれます。

②その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態

「正常な運転に支障が生じるおそれのある状態」というのは、病気のために自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力が相当程度低下して危険性のある状態のことをいいます。
そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態も含まれ、意識を失うような発作の前兆症状が出ている状態であったり、処方された薬を服用しないために運転中に発作で意識を失ってしまうおそれがある状態などがこれに当たります。

また、本罪の成立には、運転行為終了までの間に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転したことの認識が必要となります。
そのため、病気が突然発症した場合、運転者は病気の症状について認識しておらず、病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあることの認識はないため、危険運転致死傷罪は成立しないことになります。

③よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた

本罪が成立するためには、病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その結果正常な運転が困難な状態となり、人を死傷したという因果関係が存在しなければなりません。

てんかん発作の影響に関連する判例は、医師からてんかんの診断を受けていた場合、つまり、被告人がてんかんについて十分な知識がある場合だけでなく、てんかんの診断を受けていなくとも、てんかんに見られるような意識喪失をもらたす発作が過去に生じていた場合も、運転中にてんかんの発作が発症し、正常な運転に支障が生じるおそれがあると認識していたことを認めたものがあります。
Aさんの場合、医師からてんかんの診断を受けており、てんかんの症状について十分理解していたのであれば、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し」たことを認識していたと故意が認められ、危険運転死傷罪が成立すると考えられます。

本罪の法定刑は、人を負傷させた場合は12年以下の懲役で、人を死亡させた場合は15年以下の懲役となっており、決して軽い罪とは言えません。

運転中に持病発症人身事故を起こし、危険運転致死傷罪に問われた場合には、できる限り寛大な処分となるよう交通事故に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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