東京都台東区で過失運転致死事件

2019-08-04

東京都台東区で過失運転致死事件

【事件】
東京都台東区に住むAさんは,その日が休日だったため車で買い物に出ました。
見通しの良い信号付きの交差点を左折しようとしたところ,時速約40キロメートルの速度で後方から直進してきた自転車を巻き込んでしまい,自転車を運転していた男性は死亡しました。
Aさんは巻き込み確認を行ったつもりでしたが,確認時に約30メートル後方にいた自転車には気付いていませんでした。
Aさんは駆けつけた警視庁蔵前警察署の警察官によって過失運転致死罪の容疑で現行犯逮捕されました。
(フィクションです)

【過失運転致死傷罪】

過失運転致死傷罪自動車運転死傷処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)第5条に規定されている罪です。
条文は「自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」となっています。

過失運転致死傷罪における自動車とは,原動機によって走行する車で,レールや架線を用いないものを意味します。
よって,自動二輪車や原動機付自転車も処罰対象になります。

自動車の運転とは,発進に始まり停止に終わるものとされています。
ただし,普通乗用自動車を運転していた者が車を道路左端に停車後,降車しようとして後方を十分確認することなく運転席ドアを開けたため後方から進行してきた自転車にドアをぶつけ,自転車に乗っていた人に傷害を負わせたという事件で,自動車の運転自体はすでに終了しており自動車運転上の過失は認められないものの,自動車の運転に付随する行為であり自動車運転業務の一環としてなされたものから傷害結果が発生したものとして業務上過失傷害罪の成立が認められた判例(東京高判平成25・6・11高刑速平成25年73頁)があります。
また,停止させる場所が不適切だったために事故につながった場合にも過失運転致死傷罪の適用が考えられます。

そして,過失運転致死傷罪が成立するためには,自動車の運転に必要な注意を怠ったこと,すなわち過失が必要です。
ここでの過失は,前方不注意やわき見運転,巻き込み確認を怠ったこと,歩行者や自転車等の飛び出しに気付かなかったこと,方向指示器(ウインカー)を点滅させずに方向転換したことなど,ちょっとした不注意でもこれにあたるとされています。
さらには,自分では注意を払ったつもりでも,別の行為をとっていたりより注意深くしていれば事故を避けることができたと裁判所が判断し,過失が認定されてしまうケースもあります。

ここでAさんの事件についてみてみましょう。
事故が起こったのは交差点を左折しているときで,このときが自動車の運転中であることに疑いはないでしょう。
Aさんは巻き込み確認をしていますが,当時約30メートル後方にいた被害者の男性には気付いていません。
もし裁判になった際は,男性に気付かなかったことが過失にあたるかどうかが争点になると考えられます。
Aさんに後続車があまりなかった場合を除いて,運転席にいる状態でサイドミラーや目視で約30メートル後方の自転車を認識することは困難とも言えそうです。
また,自転車が時速約40キロメートルという速い速度で走行してきたことも考慮されるべきでしょう。
以上の点を主張することにより,Aさんの過失の認定を回避することができるかもしれません。

今回の事件は被害者が死亡しており,公判請求され刑事裁判となる可能性も十分考えられます。
しかし,事故直後から適切な対応をとることにより,公判請求を回避したり執行猶予を得られる場合もあります。
刑事裁判にならなくてよい事件なのに裁判になってしまったり,必要以上に刑が重くなってしまわないよう,早期から交通犯罪に強い弁護士に事件を依頼して適切な弁護活動を行うことが重要です。

過失運転致死罪の被疑者となってしまった方,ご家族やご友人が警視庁蔵前警察署に逮捕されてしまって困っている方は,お早めに交通事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談ください。

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