【事例紹介】タクシーでハトをひいて逮捕された事例

2023-12-20

【事例紹介】タクシーでハトをひいて逮捕された事例

無保険状態で事故を起こし、途方に暮れる男性

東京都新宿区の路上でタクシー運転手がタクシーでハトをひいたとして逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

東京都新宿区の路上で、運転するタクシーでハト1羽をひいて殺したとして、警視庁新宿署は、鳥獣保護法違反の疑いで、(中略)タクシー運転手(中略)を逮捕した。署によると、「道路は人間のもので避けるのはハトの方だ」と供述している。
逮捕容疑は11月13日、新宿区西新宿の路上で、カワラバト1羽をひいて殺したとしている。
(12月5日 産経新聞 「「道路は人のもの」…ハトひき殺した疑い、タクシー運転手を逮捕」より引用)

鳥獣保護法とハト

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律第8条
鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 次条第一項の許可を受けてその許可に係る捕獲等又は採取等をするとき。
二 第十一条第一項の規定により狩猟鳥獣の捕獲等をするとき。
三 第十三条第一項の規定により同項に規定する鳥獣又は鳥類の卵の捕獲等又は採取等をするとき。

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(以下、「鳥獣保護法」といいます。)第8条では、都道府県知事の許可がある場合などの一部の場合を除いて、鳥類などを殺したり、けがをさせることを禁止しています。

また、鳥獣保護法第8条に違反して狩猟鳥獣以外の保護鳥獣の捕獲等をした場合や都道府県知事の登録を受けずに狩猟した場合には、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます。(鳥獣保護法第83条1項1号、5号)

今回の事例では、容疑者がタクシーでハトをひき殺したとして鳥獣保護法違反の容疑で逮捕されたようです。
鳥獣保護法では許可のない者が鳥類を殺したり、狩猟鳥獣ではない鳥類を殺すことを禁止しています。
今回の事例でひき殺したとされているカワラバトは狩猟鳥獣ではないため、狩猟の許可を受けているかどうかに関係なく、故意にカワラバトをひき殺したのであれば、鳥獣保護法違反が成立するおそれがあります。

土鳩と運転

カワラバトは土鳩とも呼ばれています。
普段よく目にするハトはこの土鳩と呼ばれるハトです。

土鳩はいたるところにいるわけですから、今回の事例のように路上にいることも多いでしょう。
もしも土鳩に気づかずに車でひき殺してしまった場合には、鳥獣保護法違反が成立してしまうのでしょうか。

結論から言うと、鳥獣保護法違反が成立しない可能性の方が高いと思われます。

鳥獣保護法では、故意に鳥類を殺した場合などに成立します。
ですので、気づかずにひき殺してしまったなどの過失による場合には、鳥獣保護法違反は成立しません。

ただ、過失により鳥類を傷つけてしまった場合でも、故意によるものだと判断されてしまい、鳥獣保護法違反が成立してしまう可能性があります。
そういった事態を避けるためにも、鳥類を害する気持ちはなかったことを取調べでしっかりと伝え、故意を否認することが重要になります。
弁護士に相談をし、取調べ対策をすることで、鳥獣保護法違反で有罪になることを防げる可能性がありますので、鳥獣保護法違反で捜査を受けている方は、弁護士に相談をしてみることをおすすめします。

土鳩の殺害と逮捕

路上のハトをひき殺しただけで逮捕されるの⁈とびっくりした人も多いのではないでしょうか。

刑事訴訟法第199条1項では、通常逮捕の場合、犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときは裁判官が発する逮捕状により逮捕できると定められています。
また、裁判官は容疑者が犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときに逮捕状を発することができますが、明らかに逮捕の必要がないと認めるときには逮捕状を発することができません。(刑事訴訟法第199条2項)
ですので、犯人だと疑うに相当な理由があり、逮捕の必要性がある場合にのみ、逮捕されることになります。

今回の事例では、逮捕は認められるのでしょうか。

今回の事例では、実際に容疑者がハトをひき殺したのであれば、路上の防犯カメラやタクシーに搭載されているドライブレコーダーなどに録画されている可能性が高いように思われます。
防犯カメラやドライブレコーダーなどの映像を確認し、容疑者がハトをひき殺していると判断できる場合には、犯人だと疑うに足りる相当な理由があると判断できるでしょう。

では、逮捕の必要性があるといえるのでしょうか。

刑事訴訟規則第143条の3では、「逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。」と規定しています。
ですので、逮捕の必要性とは、逃亡のおそれ証拠隠滅のおそれがあるかどうかだと考えられます。

今回の事例で容疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかについては、報道からでは明らかではありません。
ですので、裁判官が逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断するような事情があるのであれば、逮捕が認められることになります。

ただ、今回の事例では、事例内容から考えると逃亡のおそれが高い事件だとは思えませんし、ドライブレコーダーや運転していたタクシーなどを押収されれば物的証拠の隠滅は不可能でしょうし、仮に目撃者がいたとしても容疑者には連絡の取りようがありませんので証拠隠滅は容易ではないでしょうから、一見すると逮捕されるような事件ではないように思われます。
このように事件内容を見ただけでは逮捕されないと思うような事件であっても、要件を満たしていれば逮捕されてしまう可能性があります。
逮捕前に弁護士に相談をすることで逮捕を回避できる可能性がありますので、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

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