Archive for the ‘危険運転致死傷罪’ Category
時速150kmを上回る高速度で事故を起こし、けがを負わせた事例②
時速150kmを上回る高速度で事故を起こし、けがを負わせた事例②
前回のコラムに引き続き、時速150kmを超える速度で走行し、人身事故を起こした事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
東京都新宿区に住むAさんは、スポーツカーを購入し、自分の車がどれだけのスピードを出せるか気になっていました。
深夜であれば近所の道路も往来がないだろうと考え、未明に近所の道路を法定速度をはるかに上回る時速150kmの高速度で走行しました。
以降、高速度での走行が病みつきになったAさんは、時速150kmを超える速度での走行を繰り返していたのですが、ある日、初めて事故を起こしてしまい、この事故によってVさんにけがを負わせてしまいました。
(事例はフィクションです。)
危険運転致傷罪と過失運転致傷罪
前回のコラムで解説したように、今回の事例では、Aさんに危険運転致傷罪や過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
制御困難な高速度による危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の懲役(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」)第2条)、過失運転致傷罪の法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金(自動車運転処罰法第5条)です。
過失運転致傷罪には罰金刑の規定があるのに対し、危険運転致傷罪には懲役刑の規定しかありません。
また、危険運転致傷罪の懲役刑の上限が15年であるのに対し、過失運転致傷罪では7年となっており、過失運転致傷罪と比べて危険運転致傷罪の方がはるかに重い刑罰が規定されていることがうかがえます。
取調べ対策
繰り返しになりますが、危険運転致傷罪と過失運転致傷罪では、危険運転致傷罪の方が科される刑罰が重く、場合によっては過失運転致傷罪の成立に向けた弁護活動が必要になってくる可能性があります。
過失運転致傷罪成立に向けた弁護活動の一つとして、取調べ対策が挙げられます。
取調べでは、供述調書が作成されます。
これは供述内容を基に作成される書面で、裁判などで証拠として使用されます。
供述内容を基に作成されるわけですから、供述を誘導されたことによって不利な内容を供述してしまった結果、意に反した供述調書を作成されてしまうこともあるでしょう。
一度作成された供述調書を訂正することは容易ではありませんから、意に反した供述調書を作成されたことで、裁判が不利に進んでしまうことも考えられます。
今回の事例では、Aさんが出していたスピードが制御困難な高速度にあたるのかが争点になると思われます。
ですので、おそらく取調べでは、事故当時Aさんが車を制御できていたのかなどを聞かれるでしょう。
もちろんAさんの供述だけで制御困難な高速度にあたるかどうか判断されるわけではありませんが、判断材料の一つにはなるでしょうから、不利な供述調書を作成されることで、成立する罪名が変わってしまうおそれも考えられます。
弁護士と事前に取調べ対策を行うことで、不利な内容の供述調書の作成を防げる可能性がありますから、取調べを受ける際は、弁護士に相談をしてから臨むことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談を行っています。
危険運転致傷罪や過失運転致傷罪でお困りの方、取調べがご不安な方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
時速150kmを上回る高速度で事故を起こし、けがを負わせた事例①
時速150kmを上回る高速度で事故を起こし、けがを負わせた事例①
時速150kmを超える速度で走行し、人身事故を起こした事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
東京都新宿区に住むAさんは、スポーツカーを購入し、自分の車がどれだけのスピードを出せるか気になっていました。
深夜であれば近所の道路も往来がないだろうと考え、未明に近所の道路を法定速度をはるかに上回る時速150kmの高速度で走行しました。
以降、高速度での走行が病みつきになったAさんは、時速150kmを超える速度での走行を繰り返していたのですが、ある日、初めて事故を起こしてしまい、この事故によってVさんにけがを負わせてしまいました。
(事例はフィクションです。)
交通事故によるけがと犯罪
交通事故を起こして人にけがを負わせてしまった場合には、危険運転致傷罪や過失運転致傷罪などが成立する可能性があります。
危険運転致傷罪と過失運転致傷罪はどちらも、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動運転処罰法」)で規定されています。
危険運転致傷罪は、大まかに説明すると、事故を起こすような危険な運転を行った結果、事故を起こして人にけがを負わせた場合に成立します。
例えば、アルコールの影響で正常な運転が困難な状態で運転する行為や制御することが困難な高速度で運転する行為、赤信号を殊更に無視して走行する行為などが危険運転にあたります。(自動車運転処罰法第2条)
一方で、過失運転致傷罪は、簡単に説明すると、過失によって事故を起こして人にけがを負わせた場合に成立します。
例えば、周囲の確認がおろそかになって事故を起こしてしまった場合や赤信号を見落としたことで事故を起こした場合など、運転上必要な注意を怠った結果、事故を起こしてしまった場合が該当します。
Aさんに成立するのは
結論から言うと、Aさんには、危険運転致傷罪、過失運転致傷罪のどちらかが成立する可能性が高いといえるのですが、どちらが成立するかは明確に判断することができません。
というのは、事例のAさんの運転が危険運転にあたるかどうかが明確に判断できないからです。
事例の時速150kmはとてつもない高速度だといえますし、事故を起こす危険性の高い速度だといえるでしょう。
ですが、Aさんは今までにも時速150kmを超える速度での運転を繰り返しており、事故を起こしたことはありませんでした。
事故以前はAさんは時速150kmで問題なく走行できていたと考えられ、Aさんが時速150kmを超える速度で運転していた行為が、危険運転に該当するような、進行を制御することが困難な高速度での運転にあたるかどうかを明確に判断することは難しいとえいます。
Aさんの運転が危険運転にあたると判断されれば危険運転致傷罪が成立する可能性が、危険運転にあたらないと判断されれば過失運転致傷罪が成立する可能性が高いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談を行っています。
危険運転致傷罪や過失運転致傷罪でお困りの方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
遅刻を免れるため赤信号を無視して交差点に進入し事故を起こした事例
遅刻を免れるため赤信号を無視して交差点に進入し事故を起こした事例
赤信号を無視して事故を起こした事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
車で通勤しているAさんは、仕事に遅れそうだったため、赤信号を無視しながら走行していました。
Aさんが大きい交差点に差し掛かった際もAさん側の信号は赤だったのですが、目視で確認したところ、車は来ていなかったため交差点に進入してしまいました。
実はAさんが走行している交差点の横断歩道ではVさんが横断中であり、Vさんに気づかなかったAさんはVさんを車ではねてしまい、全治3か月のけがを負わせてしまいました。
Aさんは、危険運転致傷罪の容疑で、神奈川県鶴見警察署の警察官に逮捕されました。
(事例はフィクションです。)
危険運転致傷罪
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第1項(一部省略)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
7号 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
赤信号を殊更に無視し、交通の危険を生じるような速度で運転して事故を起こし、人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。
今回の事例では、Aさんは仕事に遅れないようにするために赤信号を無視しながら職場へ向かっていたようです。
ですので、赤信号を殊更に無視したと判断される可能性がありそうです。
また、AさんはVさんを車ではねて、けがを負わせているわけですから、重大な交通の危険を生じさせる速度だったと判断されるおそれがあります。
ですので、今回の事例のAさんは危険運転致傷罪の罪に問われる可能性があります。
危険運転致傷罪と執行猶予
赤信号無視による危険運転致傷罪は有罪になると15年以下の懲役が科されます。
危険運転致傷罪に罰金刑の規定はありませんので、有罪になると必ず懲役刑が科されることになります。
ですが、有罪になってしまうと必ず刑務所に行かなければならないわけではありません。
執行猶予付き判決を得ることができれば、刑務所に行かなくて済む場合があります。
例えば被害者に誠心誠意謝罪と賠償を行うことで、執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
加害者本人が被害者と連絡を取ることは不可能ではありませんが、連絡先を教えてもらえない可能性や思わぬトラブルに発展してしまうおそれがあります。
弁護士であれば連絡先を教えてもらえたり、トラブルを回避できる可能性がありますので、被害者との示談を考えている方は、弁護士に相談をしてみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
危険運転致傷罪などの交通事件でお困りの方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
【事例紹介】横断歩道を横断中の小学生をひき、過失運転致傷罪で逮捕された事例②
【事例紹介】横断歩道を横断中の小学生をひき、過失運転致傷罪で逮捕された事例②
横断歩道を渡っていた小学生を車でひいてけがを負わせたとして、過失運転致傷罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
名古屋市中村区の路上を車で走行していたAさんは、青信号の横断歩道を横断中の小学性をひいて全治2か月のけがを負わせてしまいました。
その後、Aさんは、過失運転致傷罪の容疑で愛知県中村警察署の警察官に逮捕されました。
(事例はフィクションです。)
危険運転致傷罪
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
(1号から6号省略)
7号 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
(以降省略)
赤信号を殊更に無視して重大な交通の危険を生じさせる速度で車を運転し、人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。
事例のAさんは赤信号であるにもかかわらず横断歩道に侵入し、横断中の小学生をひいてしまっています。
もしもAさんが赤信号を見落としたのではなく、急いでいたなどの理由から赤信号を意図的に無視したのであれば、赤信号を殊更に無視したと判断されるかもしれません。
また、赤信号無視による危険運転致傷罪の成立には、重大な交通の危険を生じさせる速度で走行していたことが必要になりますが、Aさんは小学生をひいて全治2か月のけがを負わせており、事故を回避できない速度で走行していたわけですから、重大な交通の危険を生じさせる速度であったと判断される可能性があります。
ですので、事例のAさんは、逮捕罪名である過失運転致傷罪ではなく、危険運転致傷罪が成立してしまう可能性があります。
過失運転致傷罪と危険運転致傷罪では、危険運転致傷罪の方が科される刑罰が重くなる可能性が高いです。
ですので、過失によって赤信号を見落としてしまった場合と、故意に赤信号を無視した場合とでは、科される刑罰が異なる可能性があります。
故意に赤信号を無視したわけではないのに、危険運転致傷罪の容疑で起訴されてしまう場合もあるかもしれません。
弁護士に相談をすることで、危険運転致傷罪での起訴を避けられる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
過失運転致傷罪や危険運転致傷罪でお困りの方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
【事例紹介】高速度で車を運転し同乗者を死傷させた事例
【事例紹介】高速度で車を運転し同乗者を死傷させた事例
制御困難な高速度で車を運転し死傷事故を起こしたとして危険運転致死傷罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
去年11月、福岡県篠栗町の峠道で4人が乗った車が横転し、乗っていた16歳の高校生が死亡した事故で、運転していた21歳の男が危険運転致死傷の疑いで22日、逮捕されました。
(中略)
警察によりますと、(中略)福岡県篠栗町若杉の若杉山の峠道で、制御困難なスピードで軽乗用車を運転し、助手席に乗っていた小郡市の16歳の高校生を死亡させ、後部座席の那珂川市のアルバイトの16歳の少女にケガをさせた疑いです。
警察の調べに対し「速い速度で車を運転して右カーブを曲がりきれず、横転したことは間違いありません」と話し、と容疑を認めているということです。
(後略)
(5月22日 FBS NEWS NNN 「峠道を制御困難なスピードで走行して横転 同乗の高校生を死亡させた疑い 21歳の男を「危険運転致死傷」で逮捕 福岡」より引用)
危険運転致死傷罪
危険運転致死傷罪は刑法ではなく、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます)第2条、3条で規定されています。
自動車運転処罰法第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
1号 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2号 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
(以下省略)
進行を制御することが困難な高速度で車を運転し、事故を起こして人を死傷させると危険運転致死傷罪が成立します。
高速度での危険運転により、人にけがをさせ危険運転致傷罪で有罪になった場合には15年以下の懲役、人を死亡させ危険運転致死罪で有罪になった場合には1年以上の有期懲役が科されます。
今回の事例では、容疑者が制御困難なスピードで軽乗用車を運転し、同乗していた少女2人を死傷させたと報道されています。
危険運転致死傷罪は同乗していた人を死傷させた場合にも成立しますので、実際に容疑者が制御困難なスピードで運転をし、事故を起こして同乗者を死傷させたのであれば、容疑者に危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。
危険運転致死傷罪には罰金刑の規定がなく、有罪になると懲役刑を科されることになります。
懲役刑を科されてしまうと、刑務所にいかなければならないわけですから、何としてでも避けたいと思われる方も多いのではないでしょうか。
刑事事件や交通事件では、執行猶予付き判決を獲得することができれば、刑務所に行かなくても済む場合があります。
執行猶予付き判決を獲得するためには、取調べ対策や裁判に向けた準備など、裁判が始まる前から執行猶予付き判決の獲得に向けた活動が重要になってきます。
ですので、執行猶予付き判決の獲得を目指す場合には、できる限り早い段階で弁護士に相談をすることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
交通事件に精通した弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決を獲得できる場合があります。
危険運転致死傷罪の容疑で逮捕、捜査されている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
【事例紹介】てんかんの発作で事故を起こし危険運転致傷罪で逮捕された事例
【事例紹介】てんかんの発作で事故を起こし危険運転致傷罪で逮捕された事例
てんかんの発作が起こる可能性を知りながら車を運転し、発作で事故を起こしたとして危険運転致傷罪の容疑で再逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
福岡県宇美町の県道で(中略)、登校中の高校生らの列に軽乗用車が突っ込み、歩行者9人が重軽傷を負った事故で、県警は4日、車を運転していた同県須恵町上須恵、(中略)容疑者(66)を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)容疑で再逮捕した。(中略)容疑者は運転中にてんかんの発作を発症し、意識喪失状態となったとみられ、県警はそうした危険性を知りながら運転したとして危険運転致傷容疑を適用した。容疑を認めているという。
再逮捕容疑は(中略)、持病の影響で正常な運転ができない恐れがあると知りながら軽乗用車を運転し、(中略)宇美町宇美5の県道で対向車線の路側帯に進入して歩いていた当時16~28歳の男女9人をはねて顔の骨折など重軽傷を負わせたとしている。(中略)
県警によると、(中略)容疑者は22年3月に医療機関でてんかんと初めて診断され、薬を処方された。その際、医師からは発作が出る恐れがあるとして、運転を禁止されたという。(後略)
(3月4日 毎日新聞デジタル 「危険運転致傷容疑で66歳を再逮捕 発作の恐れ知りながら運転か」より引用)
危険運転致傷罪
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条
1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
大まかに説明すると、事故を起こす危険性があると知りながら運転に支障を及ぼすおそれがあるとして政令で定められている病気の影響で事故を起こし人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。
今回の事例では、容疑者がてんかんの発作で事故を起こす危険性を知りながら車の運転をし、てんかんの発作によって事故を起こして9人に重軽傷を負わせたと報道されています。
てんかんは自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項が規定する病気にあたるのでしょうか。
道路交通法第90条1項では、幻覚症状を伴う精神病や発作により意識障害や運動障害をもたらす病気にかかっている者については運転免許試験に合格していたとしても免許を与えなくてもいいと規定しています。
また、道路交通方施行令第33条の2の3第2項では、幻覚症状を伴う精神病として統合失調症、意識障害や運動障害をもたらす病気としててんかんなどを規定しています。
ですので、統合失調症やてんかんなどの病気がある場合には、免許を取得できない可能性があります。
幻覚症状や意識障害、運動障害が発生すれば重大な事故につながるおそれがあるため、統合失調症やてんかんなどの病気を患っている方は免許の取得が認められない場合があるのでしょう。
道路交通法施行令は政令にあたりますので、統合失調症やてんかんなどが、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項が規定する、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気にあたる可能性が高いといえます。
今回の事例では容疑者はてんかんだと診断され、医者から運転を禁止されていたようですから、実際に容疑者がてんかんの発作で事故を起こしたのであれば、危険運転致傷罪が成立するおそれがあります。
事故を起こす危険性を知りながら病気の影響で事故を起こした場合に危険運転致傷罪で有罪になると、12年以下の懲役が科されることになります。
今回の事例では医者から運転を禁止されていたようですので、悪質性が高いと判断される可能性が高いですし、事故により9人が重軽傷を負っているようなので被害も軽いとはいえないでしょうから、重い判決が下される可能性があります。
危険運転致傷罪では、初犯であっても実刑判決を下される可能性があります。
弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決を獲得できる場合がありますので、危険運転致傷罪でお困りの方は、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検②
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検②
前回に引き続き、モペットを無免許で運転し、赤信号無視で事故を起こしたとして、無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
原付き運転免許が必要なペダル付き原動機付き自転車(モペット)を無免許で運転し、赤信号を無視して自転車の女性にけがをさせたとして、警視庁は(中略)男(24)=東京都新宿区=を自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)などの疑いで書類送検し、発表した。
(中略)
男の送検容疑は、(中略)新宿区大久保2丁目の都道で無免許でモペットを運転し、赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入。自転車に乗った70代女性に衝突し、頭部打撲など8週間のけがをさせた疑いがある。
モペットは、見た目は自転車に似ているが、法律上は原付きバイクと同じ扱いだ。原付き免許、ナンバープレート、自賠責保険への加入、ヘルメットが必要だが、男はいずれもなかったという。(後略)
(2024年1月18日 「無免許でモペット乗り、赤信号無視 女性をけがさせた疑いで書類送検」より引用)
赤信号無視と見落とし
赤信号で交差点に進入して起こしてけがを負わせた事故でも、赤信号を故意に無視したのか、それとも赤信号を見落としてしまったのかで成立する罪が大きく変わる可能性があります。
例えば、赤信号を故意に無視した場合には、前回のコラムで解説した危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
一方で、赤信号を故意に無視したのではなく、見落としてしまった、つまり過失があった場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
過失運転致傷罪は自動車運転処罰法第5条に規定されており、大まかに説明すると、運転中に周囲の確認を怠ったなどの過失によって人にけがをさせてしまった場合に成立します。
不注意によって赤信号を見落としてしまった場合などには、この過失運転致傷罪が成立する可能性が高く、法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、危険運転致傷罪よりも科される刑罰が軽く規定されています。
また、過失運転致傷罪では、けがの程度が軽い場合には刑を免除される場合があります。
このように危険運転致傷罪と過失運転致傷罪では、刑罰の重さがかなり異なります。
ですので、故意に赤信号を無視したのでない場合には、そのことを主張していく必要があります。
交通事件では、刑事事件と同様に取調べを受けることになります。
上記のような主張は取調べですることになるのですが、警察官や検察官はあなたの味方になってくれるわけではありませんので、話しを聞いてもらえないどころか、赤信号を無視したととれる内容の供述をするように誘導してくる可能性があります。
自分の言い分を聞いてもらえない状態が続くとかなりのストレスになりますし、不安にもなるでしょう。
自分に限って供述の誘導に乗ることはないと思っていても、ストレスや疲れで判断能力が鈍り、誘導に乗ってしまうことがあります。
取調べで作成される供述調書は裁判で重要な証拠として扱われますので、赤信号を故意に無視した内容の供述調書が作成されてしまった場合は、たとえ事実に反していたとしても、内容を覆すことは容易ではありませんので、裁判の際に窮地に立たされる可能性がかなり高くなってしまいます。
そういった事態を避けるためにも、取調べ前に準備を行っておくことが重要です。
取調べの準備といっても何をどうすればいいのかわからない方がほとんどでしょう。
ですので、取調べ前に弁護士に相談をすることをおすすめします。
刑事事件や交通事件の経験豊富な弁護士であれば、取調べの際にどういった内容のことが聞かれるのかをある程度予測することができます。
その予測を基に、供述する内容をあらかじめ考えておくことで、取調べに落ち着いて挑むことができる可能性があります。
また、事案によっては、供述した方がいい内容や黙秘した方がいい内容があります。
供述すべき内容なのか、そうでない内容なのかは事案によって異なりますので、警察の捜査を受けている場合には、弁護士に一度、相談をすることが望ましいでしょう。
取調べでどういった対応を取るかによって、危険運転致傷罪と過失運転致傷罪のどちらが成立するのかが変わってくる可能性があります。
ですので、赤信号無視による危険運転致傷罪の容疑をかけられている際は、できる限り早い段階で弁護士に相談をすることを強くおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件、交通事件に精通した法律事務所です。
経験豊富な弁護士と取調べ対策を行うことで、不利な状況に陥ることを防いだり、執行猶予付き判決などの良い結果を得られる可能性があります。
交通事件でも、取調べの対策を練っておくことはかなり重要ですので、取調べでご不安な方、危険運転致傷罪などの容疑をかけられている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検①
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検①
モペットを無免許で運転し、赤信号無視で事故を起こしたとして、無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
原付き運転免許が必要なペダル付き原動機付き自転車(モペット)を無免許で運転し、赤信号を無視して自転車の女性にけがをさせたとして、警視庁は(中略)男(24)=東京都新宿区=を自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)などの疑いで書類送検し、発表した。
(中略)
男の送検容疑は、(中略)新宿区大久保2丁目の都道で無免許でモペットを運転し、赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入。自転車に乗った70代女性に衝突し、頭部打撲など8週間のけがをさせた疑いがある。
モペットは、見た目は自転車に似ているが、法律上は原付きバイクと同じ扱いだ。原付き免許、ナンバープレート、自賠責保険への加入、ヘルメットが必要だが、男はいずれもなかったという。(後略)
(2024年1月18日 「無免許でモペット乗り、赤信号無視 女性をけがさせた疑いで書類送検」より引用)
モペットと原動機付自転車
モペットは自転車と違い、モーターなどでペダルをこがずに自走することが可能なようです。
ですので、モペットは道路交通法上の原動機付自転車に分類されており、自転車のような見た目をしていますが原付バイクと同様の扱いになります。
ですので、自転車の運転には免許は不要ですが、原動機付自転車にあたるモペットの場合は運転をする際に免許が必要になります。
モペットと事故
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」と言います。)では、自動車による事故で人にけがを負わせたり、人を亡くならせた場合に成立する犯罪などを規定しています。
今回の事例では、容疑者がモペットを無免許で運転し、赤信号を無視して女性にけがを負わせたとして無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検されたようです。
無免許危険運転致傷罪は、自動車運転処罰法で規定されており、危険運転致傷罪にあたる行為を無免許で行った場合に成立します。
危険運転致傷罪は、自動車運転処罰法第2条、第3条で規定されています。
アルコールや薬物の影響で正常な運転ができない場合や制御できないほどのスピードで運転する行為などが危険運転致傷罪の対象となっています。
今回の事例では赤信号無視が問題になっているようですが、赤信号無視についても上記の場合と同様に危険運転致傷罪の対象です。
自動車運転処罰法第2条7号
赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
自動車運転処罰法第2条では危険運転致傷罪を規定していますので、上記の自動車運転処罰法第2条7号の行為をして人にけがを負わせると、危険運転致傷罪が成立することになります。
自動車運転処罰法第2条7号を簡単に説明すると、赤信号を無視して事故が起こるような危険性のあるスピードで運転する行為を規定しています。
今回の事例は、この自動車運転処罰法第2条7号の行為にあたるのでしょうか。
報道によると、容疑者は赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入したようです。
時速25キロで歩行者や自転車にぶつかれば人にけがを負わせたり死亡させてしまう危険性があるといえます。
ですので、時速25キロは重大な交通の危険を生じさせる速度だと判断される可能性があります。
今回の事例で容疑者が赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入し、自転車に乗っていた女性にけがを負わせたのであれば、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
無免許危険運転致傷罪
自動車運転処罰法第6条では無免許危険運転による加重処罰を規定しています。
赤信号無視による危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の懲役(自動車運転処罰法第2条)なのですが、無免許運転だった場合には6月以上の有期懲役(自動車運転処罰法第6条1項)になります。
赤信号無視の場合の無免許危険運転致傷罪には刑の上限が規定されておらず、通常の危険運転致傷罪に比べてより刑罰が重く規定されていることになります。
ですので、無免許運転の場合に有罪になると、無免許運転ではない同種事案に比べて、より重い刑罰が科されることになります。
また、無免許過失運転致傷罪の法定刑は10年以下の懲役です。(自動車運転処罰法第6条4項)
懲役刑しか規定されていない時点で、無免許過失運転致傷罪もかなり刑罰の重い罪だといえるのですが、赤信号無視の場合の無免許危険運転致傷罪よりも科される刑罰は軽く規定されています。
書類送検
書類送検とは、事件が検察庁に送られたことを指します。
ですので、書類送検で事件が終わることはなく、これから検察官によって起訴、不起訴の判断がされます。
起訴された場合には裁判が行われることになりますので、書類送検後も気を抜かずに取調べなどを受ける必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
交通事件に精通した弁護士に相談をすることで、より良い結果を得られるかもしれません。
モペットなどの運転で捜査を受けている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
次回のコラムでは、危険運転致傷罪と取調べについて解説します。
昨年の交通事故死者数発表 一番多いのはどの都道府県?
昨年の交通事故死者数発表 一番多いのはどの都道府県?
1月4日に昨年の交通事故死者数が発表されたようです。
交通事故者数はどの都道府県が一番多いのでしょうか。
交通事故の死者数
1月4日、警察庁より、昨年度の事故の統計が発表されました。
昨年の交通事故死者数は大阪府が一番多く、その後に愛知県、東京都が続きます。
また、昨年の全国の交通事故死者数は2678人だったようです。
死亡事故を起こしたら犯罪になるの?
死亡事故を起こしてしまったら罪に問われるのでしょうか。
死亡事故を起こしてしまった場合に成立する可能性が高い犯罪として、過失運転致死罪が挙げられます。
過失運転致死罪は、刑法や道路交通法ではなく、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)という法律で規定されています。
自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
簡単に説明すると、周囲の確認など運転するのに必要な注意をしないで事故を起こし、人を死亡させてしまった場合に、過失運転致死罪が成立します。
過失運転致傷罪の法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。
ですので、有罪になれば刑務所に行かなければならない可能性があります。
また、自動車運転処罰法第5条には「傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる」と規定されていますが、死亡事故の場合は傷害が軽いとは言えませんので、死亡事故の場合にこの規定が適用されることはないでしょう。
無免許運転の場合は?
無免許運転だった場合にも過失運転致死罪と同様の刑罰が科されるのでしょうか。
結論から言うと無免許運転であった場合には、より重い刑罰が科されます。
自動車運転処罰法第6条4項
前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。
運転上必要な注意を払わずに事故を起こして人を死亡させ、なおかつ無免許運転だった場合には、無免許過失運転致死罪が成立する可能性があります。
無免許過失運転致死罪の法定刑は10年以下の懲役です。
通常の過失運転致死罪では7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、禁固刑や罰金刑の規定のない無免許過失運転致死罪はより重い刑罰を科されていることがわかります。
また、無免許過失運転致死罪では罰金刑がありませんので、有罪になってしまった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り刑務所に行くことになってしまいます。
危険運転致死罪
自動車運転処罰法では、過失運転致死罪だけでなく危険運転致死罪も規定しています。
運転していた時の状態や運転の仕方によっては、死亡事故を起こした場合に過失運転致死罪ではなく、危険運転致死罪が成立してしまう可能性があります。
危険運転致死罪は簡単に説明すると、アルコールで正常な運転ができない状態での運転や制御できない高速度での運転、あおり運転などの悪質で危険性の高い運転により人を死亡させてしまった場合に成立します。
アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態での運転や制御が困難な高速度での運転などで危険運転致死罪で有罪になった場合には、1年以上の有期懲役が科されます。(自動車運転処罰法第2条)
また、アルコールや薬物の影響により運転に支障が生じるおそれがある状態で運転をし、その後正常な運転が困難な状態に陥った場合などに危険運転致死罪で有罪になれば、15年以下の懲役が科されます。(自動車運転処罰法第3条1項)
上記のように危険運転致死罪では、懲役刑しか規定されていませんので、無免許過失運転致死罪と同様に、有罪になれば執行猶予付き判決を得ない限り刑務所に行くことになります。
また、過失運転致死罪と同じように、危険運転致死罪を犯した人が無免許運転だった場合には、より重い刑罰が科されることになります。
死亡事故と執行猶予
過失運転致死罪の容疑をかけらると、人が死亡していることから刑務所にいくことになると思われる方もいるかもしれません。
しかし、人が死亡している場合であっても、執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
弁護士が、被害者への謝罪や賠償が行われていることや、今後事故を起こさないように防止策を講じていることなどを裁判官に訴えることで執行猶予付き判決を得られる場合があります。
ですので、過失運転致死罪でお困りの方は、一度、弁護士に相談をしてみることをおすすめします。
また、危険運転致死罪では有罪になると、執行猶予が付かず実刑判決を受けてしまう可能性が高いです。
ですので、危険運転致死罪ではなく、過失運転致死罪の適用を目指す弁護活動が必要になってくる場合があります。
危険運転致死罪で捜査を受けている場合にも、弁護士による弁護活動で、過失運転致死罪の適用を目指せる場合がありますから、危険運転致死罪の容疑をかけられている場合には、速やかに弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故や刑事事件に精通した法律事務所です。
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【事例紹介】赤信号無視による事故 危険運転致傷罪で起訴された事例
【事例紹介】赤信号無視による事故 危険運転致傷罪で逮捕された事例
赤信号を故意に無視して事故を起こしたとして、危険運転致傷罪、道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で起訴された事例について、弁護士法人あいち刑事総合法律事務所が解説します。
事例
札幌地検は29日、危険運転致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪で石狩市の(中略)を起訴しました。
起訴状などによりますと、(中略)被告は11月8日、乗用車を運転し、パトカーからの追跡を免れるために、赤信号を故意に無視して時速約42キロから49キロで交差点に進入。
横断歩行中の韓国籍の観光客で27歳の女性と31歳の女性を乗用車のフロントガラスに衝突させ、それぞれ全治約3日と約1週間のけがをさせました。
さらに、乗用車を停止させて救護に必要な措置をせず、その場から立ち去り、警察官に報告しなかったとされています。
(後略)
(11月30日 STVニュース 「韓国人女性2人をひき逃げ 赤信号を故意に無視 23歳男を危険運転致傷などの罪で起訴」より引用)
赤信号無視と危険運転
アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での運転や進行を制御することが困難な高速度での走行、赤信号の殊更な無視かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転などで、人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第2条)
今回の事例では、容疑者は故意に赤信号を無視して時速約42キロから49キロで交差点に進入したと報道されています。
時速42キロから49キロで走行している車が歩行者などに追突すれば、何らかのけがを負わせる可能性がありますので、時速42キロから49キロでの交差点の侵入は、交通の危険を生じさせる速度での運転だと判断される可能性があります。
実際に容疑者が赤信号を故意に無視したのであれば、赤信号の無視かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転をして人にけがをさせたとして、容疑者に危険運転致傷罪が成立するおそれがあります。
赤信号無視による危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役ですので、危険運転致傷罪で有罪になった場合には必ず懲役刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第2条)
赤信号無視と過失運転
危険運転致傷罪を規定している自動車運転処罰法では、過失運転致傷罪についても規定しています。
過失運転致傷罪とは、簡単に説明すると、運転上払うべき注意を怠り、人にけがを負わせた場合に成立する犯罪です。
例えば、赤信号を青信号だと誤信して横断歩道を横断中の歩行者をはねてけがを負わせてしまった場合、運転手は信号を確認するといった運転上払うべき注意を怠ったことで、歩行者にけがを負わせたことになりますので、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。
赤信号だと認識しながら殊更に赤信号を無視して事故を起こしけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立するおそれがあり、過失により赤信号を見落とし事故を起こしてけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。
今回の事例では、赤信号を故意に無視して事故を起こしたとして、危険運転致傷罪の容疑で起訴されています。
もしも赤信号無視が故意ではなく、信号の見落としなどの過失であった場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金であり、相手のけがの程度が軽い場合には情状により刑が免除される場合があります。(自動車運転処罰法第5条)
赤信号無視による危険運転致傷罪は15年以下の懲役ですので、危険運転致傷罪は過失運転致傷罪よりも科される量刑が重くなります。
取調べと危険運転致傷罪
赤信号での事故の場合、故意による赤信号無視なのか、過失による赤信号の見落としなのかで、危険運転致傷罪と過失運転致傷罪のどちらの罪が成立するかが変わってきます。
先ほども述べたように、危険運転致傷罪は過失運転致傷罪に比べてはるかに科される刑罰が重い犯罪です。
過失運転致傷罪では罰金刑の規定がありますが、危険運転致傷罪にはないため、危険運転致傷罪で有罪になった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り刑務所で刑務作業に従事することになります。
逮捕されると、警察官や検察官から連日、取調べを受けることになります。
取調べでは、警察官や検察官が供述を誘導することがあります。
誘導された供述で作成された供述調書だったとしても、署名押印してしまった場合には内容の訂正をすることができません。
供述調書は裁判で証拠として使用されますので、意に反した供述調書を作成されてしまった場合には、裁判で不利な状況に陥ってしまう可能性が非常に高くなります。
例えば、過失により赤信号を見落とした事故の場合に、警察官などに「赤信号だとわかっていて突っ込んだよね」と言われ、赤信号の見落としと故意の赤信号無視どちらも一緒だろうと思い「はい」と答えたとします。
赤信号だとわかっていた場合には、過失によって赤信号を見落としたわけではありませんので、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
ですので、実際には過失により赤信号を見落とした事故であっても、故意に赤信号を無視したという内容の供述調書が作成されることで、危険運転致傷罪で実刑判決が下されてしまうおそれがあります。
こういった事態を避けるためにも、取調べ前に弁護士と取調べ対策を行い、成立する可能性のある犯罪やその犯罪の成立要件を理解したうえで供述すべき内容を整理することが非常に重要になります。
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