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少年の共同危険行為
少年の共同危険行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
福岡県北九州市八幡西区の交差点で信号待ちをしていたVさんは、信号が青に変わったため、交差点を左折しようとしました。
すると、右側から原動機付自転車が走行してきたため、Vさんは慌ててブレーキを踏みましたが、Vさんの車後方に原動機付自転車がぶつかりました。
幸い、この事故による負傷者は出ませんでした。
原動機付自転車を運転していた少年Aくんは、赤信号を見落としたものとして福岡県八幡西警察署から話を聞かれていましたが、Vさんの車の搭載されていたドライブレコーダーの映像から、Aくんは一人ではなく複数人で連なって原動機付自転車を走行させており、信号が赤信号に変わってから間もなく交差点に集団で侵入したことが判明しました。
福岡県八幡西警察署は、Aくんを共同危険行為の疑いで逮捕し、逃げた他の共犯者を追っています。
(フィクションです。)
共同危険行為
共同危険行為とは、「道路において2台以上の自動車または原動機付自転車を連ねて通行させ、または並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、または著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為」のことをいい、道路交通法68条で禁止されています。
◇主体◇
共同危険行為罪の主体は、「2人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者」です。
自動車または原動機付自転車のいずれかの台数が2台以上の場合や、自動車または原動機付自転車を合わせた台数が2台以上の場合の運転者を指し、現実に自動車または原動機付自転車を運転している者のことです。
◇形態◇
2人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者が、道路において2台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させる場合、又は並進させる場合において、という要件が設けられています。
「連ね」とは、自動車・原動機付自転車が前の自動車・原動機付自転車に追従して縦列に同方向に走行している状態を指します。
また、「並進」とは、2台以上の自動車・原動機付自転車が同一の速度で並んで進行する横の状態を示します。
◇行為者の連携◇
共同危険行為罪には、行為者の連携がなければなりません。
条文の「共同して」とは、2人以上の自動車・原動機付自転車の運転者が、道路において交通の危険または迷惑行為を行うという共同の意思をもって、2台以上の自動車・原動機付自転車を連ねて通行させまたは並進させ、お互いの行為を利用し合いながら、全体として暴走行為を実行することをいいます。
◇行為◇
禁止される行為は、「交通の危険を生じさせることとなる行為、著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為」であり、具体的な危険、迷惑が生じる必要はなく、抽象的な危険、抽象的な迷惑の発生でも構いません。
現実に他の車両や歩行者の通行を故意に妨げ、その通行の事由を奪うなどの行為が発生していなくとも、現場に車両等があれば、当然、交通の危険を生じさせ、あるいは他人に迷惑を及ぼすこととなる集団暴走行為については、集団暴走行為が行われたことを現認したり、ビデオやカメラ等から立証すれば、その現場に危険に遭った者や迷惑を被った者がいなかったとしても、道路交通法68条の禁止行為違反となります。
違反となる走行形態としては、次のようなものがあります。
・広がり通行:道路いっぱいに広がって通行するもの。
・巻込み通行:暴走族集団の車両以外を中に巻込んで事実上その車両の走行の自由を拘束して走行するもの。
・蛇行通行:集団が一体となって蛇行しながら走行するもの。
・交互追越し:暴走族の集団がいくつかのグループに分かれ、それらが交互に追越しを行いながら走行するもの。
・信号無視:暴走族集団のグループ員の車両で交差道路の交通をふさぎ、集団で赤信号を無視して走行するもの。
・一定区間内の周回:一定区間の道路上において、周回、急発進、急停止等を行い、他の車両の通行を遮断するもの。
共同危険行為罪の法定刑は、2年以下の懲役または50万円以下の罰金ですが、少年の場合は、少年法に基づいた手続を踏んで処理されることになります。
少年事件では、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所による調査・審判を経て最終的な処分が言い渡されることになります。
家庭裁判所に送致されるまでの間は、成人の刑事事件とほぼ同様の手続がとられることになるため、少年であっても、逮捕・勾留による身体拘束が伴うことがあります。
共同危険行為罪で逮捕された場合は、共犯との接触・口裏合わせを防ぐために逮捕の後に勾留となる可能性は高いでしょう。
共同危険行為罪の法定刑は、2年以下の懲役または50万円以下の罰金と、他の犯罪と比べるとそこまで重いものではありません。
しかし、家庭裁判所の審判では、非行事実のみならず要保護性が審理の対象となるため、必ずしも非行の軽重が処分に直接影響するとは限りません。
要保護性というのは、簡単に言えば、少年による再犯の危険性があり、保護処分により再犯の防止ができること、です。
要保護性が高いと判断されれば、少年院送致という重い処分となることも少なくありません。
そのため、少年事件では、要保護性を解消することが最終的な処分に大きく影響することになり、非常に重要です。
このように、少年の場合は、成人の刑事事件とは異なる手続がとられますので、少年事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
お子様が共同危険行為で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
危険運転:技能未熟運転
危険運転致死傷罪における技能未熟運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
京都府綾部市の市道において、ワンボックス車を運転していたAさんは、交差点を左折する際に、歩行者をはねる事故を起こしました。
Aさんは、無免許で車を運転していたことが発覚し、京都府綾部警察署は、無免許の過失運転致傷の疑いでAさんを逮捕しました。
その後、Aさんは、危険運転致傷罪(技能未熟運転)で京都地方検察庁福知山支部に起訴されました。
(フィクションです。)
危険運転致死傷罪とは
人身事故を起こした場合、通常は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)で規定される「過失運転致死傷罪」が適用されることになります。
しかし、事故の内容によっては、より法定刑が重い危険運転致傷罪が適用されることがあります。
危険運転致傷罪は、危険な運転で人を死傷させた場合に適用される犯罪です。
自動車運転処罰法の2条と3条に規定されています。
アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難で状態で自動車を運転する、運転をコントロールすることが困難なスピードで運転する、いわゆる「あおり運転」や赤信号無視などを行った結果、人に怪我を負わせてしまった場合には15年以下の懲役に、死亡させてしまった場合には1年以上の有期懲役が科される可能性があります。
自動車運転処罰法2条の危険運転には、技能未熟運転が含まれています。
技能未熟運転とは
「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」が、技能未熟運転です。
この「進行を制御する技能を有しない」とは、どの程度のことを指すのでしょうか。
「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能ですら有しないような運転の技量が極めて未熟なことを意味すると考えられています。
典型的な例としては、これまで一度も運転免許を取得したことがなく、自動車の運転経験もないような者であって、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能がないにもかかわらず、自動車を走行させるような場合です。
「進行を制御する技能を有しない」かどうかの判断は、事故態様、運転状況、運転経験の有無やその程度などを総合的に考慮して判断されるでしょう。
そのため、「進行を制御する技能を有しない」=無免許とはなりません。
技能未熟運転での危険運転致死傷罪が成立するか否かは、さまざまな要素についてしっかりと検討する必要があります。
交通事故を起こし危険運転致死傷に問われてお困りの方は、法律の専門家である弁護士に相談してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
交通事件で身代わり
交通事件で犯人の身代わりをした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
運送会社に勤めるAは、自家用車を運転し、妻Bと兵庫県神戸市北区に旅行に来ていました。
Aは、宿泊先近くの飲食店で夕飯を食べた際にお酒を飲んでいましたが、Aが車を運転して宿泊先に向かいました。
その道中、交差点で横断歩道を横断中の自転車と接触する事故を起こしてしまいました。
仕事に影響することを恐れたAとBは、Bが車を運転していたことにし、現場に来た兵庫県有馬警察署の警察官にもそう供述しました。
(フィクションです。)
交通事件では、犯人の身代わりとなるケースが他の事件と比べて多いと言われています。
特に、飲酒運転や無免許運転に該当するような場合には、その発覚を免れるために同乗者が犯人の身代わりとなることがあります。
上の事例のように、犯人の身代わりとなったBについて、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。
飲酒運転による人身事故を起こした犯人として身代わりとなったBに対しては、刑法上の犯人隠避の罪に問われる可能性があります。
刑法103条は、犯人蔵匿の罪について次のように規定しています。
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
犯人蔵匿の罪は、
①罰金以上の刑にあたる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を
②蔵匿し又は隠避させた
場合に成立します。
①「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃亡した者」
前者の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」における「罰金以上の刑に当たる罪」というのは、法定刑に罰金以上の刑を含む罪を指します。
「罪を犯した者」とあるので、訴追・処罰の可能性がある者でなければなりません。
過去の判例は、「罪を犯した者」の意義について、犯罪の嫌疑を受けて捜査・訴追されている者と解しています。
告訴権の消滅や、時効の完成などにより訴追・処罰の可能性がなくなった者については、本罪の客体とはなりません。
一方で、保釈中の者であっても、その行方をくらませば公判手続・刑の執行に支障が生じるので、保釈中の者は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当します。
また、後者の「拘禁中に逃走した者」についてですが、法令により拘禁されている間に逃走した者のことです。
Bさんは、飲酒運転による人身事故を起こしたのであり、道路交通法違反と過失運転致死傷罪の2つの罪に問われる可能性が高いと考えられます。
そのため、Bさんは「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当すると言えるでしょう。
②蔵匿・隠避
「蔵匿」は、官憲による発見・逮捕を免れるべき隠匿場所を提供することです。
そして、「隠避」とは、「蔵匿」以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れしめるべき一切の行為をいいます。
逃走のために資金を調達することや、身代わり犯人を立てるなどの他にも、逃走者に捜査の形勢を知らせて逃避の便宜を与えるなどの場合も「隠避」に含まれます。
加えて、本罪の成立には、客体である被隠避者が罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であること、または拘禁中逃走した者であることを認識し、かつ、これを隠避することを認識すること(故意)が必要となります。
「罰金以上の刑にあたることの認識」について、過去の裁判例は、罪を犯した者または拘禁中に逃走した者であることの認識で足り、その法定刑が罰金以上であることまで認識している必要はないと解しています。(最決昭29・9・30)
以上のように、犯人の身代わりになった場合には、犯人隠避罪に問われる可能性があるのです。
しかし、犯人蔵匿の罪については、親族間の犯罪に関する特例があり、刑法105条は、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができるとしています。
そのため、犯人であるAの配偶者であるBについては、刑が免除される可能性があるでしょう。
ただ、この親族間特例は、「刑を免除することができる」と規定されているため、必ず免除されるとは限りません。
そのため、犯人隠避の罪に問われ、親族間特例が適用され得る場合には、弁護士に相談し、不起訴処分獲得に向けてしっかりと捜査機関に働きかけることが重要でしょう。
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自転車の交通事故
自転車の交通事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大学生のAさん(20歳)は、右手でスマートフォンを操作しながら、大阪府松原市を自転車で走行していました。
スマートフォンを注視していたところ、前方の歩行者に気付かず、衝突してしまいました。
歩行者は転倒し、頭を打ったようでした。
Aさんは、すぐに救急車を呼び、歩行者は近くの病院へ救急搬送されました。
大阪府松原警察署から駆け付けた警察官が、Aさんに事情を聞いています。
(フィクションです。)
交通事故と言えば、自動車による自動車・バイク・自転車・歩行者に対して起こすものを想像される方が多くいらっしゃるように、自転車は交通事故の被害者となるケースが多く見受けられます。
このように、車の運転者などが交通事故を起こし、加害者となる場合には、過失運転致死傷罪(場合によっては危険運転致死傷罪)が成立し、処罰されることになります。
通常は、交通弱者として被害者として交通事故に登場することが多い自転車ですが、自転車と自転車の事故や、自転車と歩行者の事故においては、加害者となることがあります。
そのような場合には、車が加害者となる場合に成立し得るとして先に述べた過失運転致死傷罪等が適用されることはありません。
また、刑法上の業務上過失致死傷罪についても、「業務上」という概念は、「人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、かつ、その行為は他人の生命身体等に危害を加えるおそれのあるものであることを必要」(最高裁判決昭和33年4月18日)とすると解されているため、自転車が人力で動くものであり、比較的軽量であることから、自転車を運転する行為が他人の生命身体等に危害を加えるおそれのある行為であるとは考えられず、自転車により交通事故を起こし、他人に怪我を負わせたり、死亡させてしまった場合には、業務上過失致死傷罪は成立しないものと考えられます。
そのため、自転車による交通事故が生じた場合には、重過失致死傷罪又は過失傷害罪・過失致死罪の成立が検討されることになります。
(過失傷害)
刑法第209条
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(過失致死)
刑法第210条
過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等)
刑法第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
1.過失傷害罪
過失傷害罪は、「過失」により人を傷害した場合に成立する罪です。
暴行や傷害の故意がなく、不注意によって人に傷を負わせてしまうものです。
自転車による交通事故の原因が、ちょっとしたよそ見などの場合は、過失傷害罪となるでしょう。
過失傷害罪は、被害者等の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。
2.過失致死罪
過失致死罪は、過失によって人を死亡させた場合に成立する罪です。
上の過失傷害のように、不注意によって人を死亡させてしまうものです。
3.重過失致死傷罪
重過失致死傷罪は、刑法211条後段に規定されている罪で、「重大な過失」により人を死傷させることで成立するものです。
裁判例によれば、「重大な過失」は、「注意義務違反の著しい場合、すなわち、わずかな注意を用いることによって危険性を察知することができ、結果発生を回避できたであろう場合」(福岡高裁判決昭和55年6月12日)をいうとされていたり、「わずかな注意を払うことにより結果発生を容易に回避しえたのに、これを怠って結果を発生させた場合」(東京高裁判決昭和57年8月10日)をいうとされています。
これまでの自転車による交通事故に関する裁判例では、自転車が無灯火で走行した場合、信号看過や無視をした場合、一時停止の標識を無視して進行した場合、前方不注意が著しい場合、無謀な横断行為がなされた場合などについて、重過失が認められており、片手で携帯電話を操作しながら前方をよく見ずに走行した場合にも、重過失が認められるものと考えられるでしょう。
このように、自転車による交通事故であっても、刑事責任が問われる可能性がありますので、自転車で交通事故を起こした場合には、刑事事件に精通する弁護士にご相談ください。
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運転者以外に問われる飲酒運転関連罪
運転者以外に問われる飲酒運転関連罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府豊中市に住むAさんは、友人BさんとAさん宅から車で10分ほどのところにある寿司屋に向かうことにしました。
Aさんは、「車で行こう。」と言い、Bさんの運転で寿司屋に行きました。
寿司屋で酒を飲んだものの、Bさんが運転する形で乗ってきた車でAさん宅まで帰ることにしました。
帰宅途中、検問中の大阪府豊中警察署の警察官に停車を求められ、Bさんの飲酒運転が発覚しました。
Aさんは、警察から車両提供罪及び同乗罪の疑いで取調べを受けています。
(フィクションです。)
飲酒運転は、酒などを飲んだ後、そのアルコールの影響がある状態で自動車などの車両を運転することです。
飲酒運転は、道路交通法によって禁止されており、ある一定以上のアルコール濃度を身体に保有した状態で車両等を運転させた場合には、刑事罰が科されてしまう可能性があります。
飲酒運転が犯罪となり得ることは周知のところですが、車両等の運転者以外の者もまた、飲酒運転を助長したとして刑事罰の対象となる可能性があることを知らない方も少なくありません。
平成19年9月19日に施行された改正道路交通法は、飲酒運転等に対する罰則を強化した他、これまで規制されていなかった飲酒運転者の周囲の者に対する罰則を設け、車両提供罪、酒類提供罪、同乗罪が新たに設けられました。
1.車両提供罪
道路交通法65条2項は、
何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
と規定しています。
車両等を提供した結果、当該車両運転者が、酒酔い運転の犯行に及んだ場合には、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に、酒気帯び運転の犯行に及んだ場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることになります。
①主観的構成要件
提供者は、運転者が酒気を帯びているとの認識、そして、当該運転者が同車両を運転することとなるおそれがあるという認識を有していることが必要です。
まず、運転者が酒気を帯びているという認識についてですが、警察に検挙されるような酒気帯び運転に該当する程度であったかどうかではなく、当該運転者が飲酒していたという程度の認識で足りるとされます。
そして、運転者が車両を運転することとなるおそれがあるという認識については、確実にその車両を運転するとまで思っている必要はなく、運転するかもしれないが、それでもかまわない(=未必の故意)と思っていれば、その認識があったもののと判断されます。
②客観的構成要件
①主観的構成要件に加えて、当該車両を実際に提供したこと、及び実際にその車両が運転されたこと、そして運転者に酒気帯び運転等の要件が満たされることが必要となります。
2.酒類提供罪
道路交通法65条3項は、
何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
と規定しています。
そのような行為の結果、当該車両運転者が、酒酔い運転の犯行に及んだ場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に、酒気帯び運転の犯行に及んだ場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処することと定められています。
車両提供罪と同じく、本罪の提供者もまた、酒類の提供を受ける者等が車両を運転することとなるおそれがあるという認識を有していなければなりません。
客観的要件は、酒類を実際に提供したこと、実際にその車両が運転されたこと、運転者に酒気帯び運転等の要件が満たされることとなります。
3.同乗罪
道路交通法65条4項は、
何人も、車両(中略)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
と規定しています。
結果として、当該車両運転者が、酒酔い運転の犯行に及んだ場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に、酒気帯び運転の犯行に及んだ場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられることとされています。
本罪の成立には、車両提供罪や酒類提供罪のように、当該運転者が酒気を帯びているという認識が必要となります。
また、客観的要件として、当該車両を運転して自己を運送するように要求又は依頼したこと、実際にその車両が運転されたこと、そして、運転者に酒気帯び運転等の要件が満たされることが求められます。
「要求」とは、同乗者が運転者に自分を運送するよう求めたり指示したりすることで、「依頼」とは、運転者に自分を運送してほしい旨頼むことをいいます。
そのため、要求・依頼することなく、単に飲酒運転を了解して同乗していただけの場合には同乗罪は成立しないことになります。
ただ、事案によっては、明示的な要求・依頼がなくとも、黙示的要求・依頼があったもの認定されるケースもあります。
飲酒運転関連罪で検挙され、対応にお困りの方は、一度交通事件にも対応する弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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無免許運転と飲酒運転
無免許運転と飲酒運転で検挙された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、道路交通法違反(無免許運転、酒酔い運転)の疑いで千葉県松戸警察署に現行犯逮捕されました。
Aさんの運転免許は、以前取消しとなっていたにもかかわらず、Aさんはそれ以降も車を運転しており、事件当日は、自宅を飲んだ後に車を運転していたところ、警察官に検挙されました。
(フィクションです。)
無免許運転
車両等の運転には、運転の許可を得なければなりません。
道路交通法は、運転免許を受けないで自動車や原動機付自転車を運転することを禁止しています。
運転免許を受けないで自動車等を運転することを「無免許運転」といいます。
無免許運転には、今まで一度も運転免許証を交付されたことがない場合だけでなく、免許が取り消された後に運転する場合や、免許の停止中に運転する場合、そして、運転しようとする自動車等の種類に応じた免許証がないにもかかわらず運転する場合があります。
また、うっかり免許証の更新を忘れており、免許証の有効期限が切れていることを認識していながら運転する場合も無免許運転として扱われます。
無免許運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっており、決して軽い罪ではないことがわかりますね。
飲酒運転
道路交通法は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」として、一切の酒気帯び運転を禁止しており、その中で一定の要件をとらえて罰則規定を定めています。
罰則の対象となる飲酒運転には、「政令酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。
①政令酒気帯び運転
政令で定める一定基準を超えたアルコールを身体に保有して運転する場合が該当します。
つまり、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出された状態がこれに当たります。
この酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
②酒酔い運転
先の酒気帯び運転とは異なり、酒酔い運転は身体内に保有するアルコール濃度の数値ではなく運転者の客観的状態から判断されます。
アルコールが原因で正常な運転ができないおそれがある状態(=酒に酔った状態)で車両等を運転した場合には、酒酔い運転となります。
酒酔いの認定は、アルコール保有量の科学的検査、飲酒量、身体の状況(言語、歩行、直立能力など)、自動車の運転状況、その他の諸般の事情を総合的に考慮して行われます。
酒酔い運転の法定刑は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金と、酒気帯び運転よりも重くなっています。
無免許運転と酒酔い運転の関係は?
無免許運転でありながら酒酔い運転にも当たる一連の行為については、どのように処理されるのでしょうか。
これについては、判例は、無免許運転の所為と酒酔い運転の所為は刑法54条1項後段の観念的競合の関係にあるとしています。(最高裁昭和49.5.29)
「観念的競合」というのは、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合のことを意味します。
この場合、そのうち最も重い刑で処断されることになります。
同一の日時場所において、無免許でかつ酒に酔った状態で自動車を運転する行為は、どちらも車両運転者の属性にすぎないため、無免許でかつ酒に酔った状態で運転していたことは、自然的観察のもとにおける社会的見解上明らかに1個の運転行為であると考えられているので、無免許運転と酒酔い運転は観念的競合の関係にあり、裁判官が被告人を有罪とすると、当該被告人に科すべき刑は、2つの罪の重い刑、つまり、酒酔い運転の法定刑である5年以下の懲役又は100万円以下の罰金の範囲内で決められることになります。
ちょっとそこまでと気を緩めて無免許や飲酒運転をすると、決して軽いとは言えない刑事処分が科されてしまうことになります。
無免許運転、飲酒運転で逮捕された、検挙されて対応にお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所は、交通事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
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ドア開扉事故と過失運転致死傷罪
ドア開扉事故と過失運転致死傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
埼玉県和光市を自家用車で走行していたAさんは、喉が渇いたため、近くのコンビニで飲み物を買うことにしました。
駐車場に車を止めるのが煩わしいと思ったAさんは、コンビニの前の路上で車を止め、シフトレバーをPに入れ、サイドブレーキをひき、エンジンをかけたまま、運転席のドアを開け外に出ようとしました。
すると、後方から走ってきた原付バイクがドアに接触し、原付バイクの運転手がバイクとともに転倒しました。
Aさんは、通報を受けて駆け付けた埼玉県朝霞警察署の警察官から話を聞かれています。
(フィクションです。)
車の運転を終了した直後に運転席のドアを開けたことで交通事故(人身事故)を起こしてしまった場合には、どのような罪責に問われることになるのでしょうか。
平成19年の刑法改正により、業務上過失致死傷罪のうち自動車運転に係るものに関しては、刑法211条2項に自動車運転過失致死傷罪が新設されました。
そして、その法定刑は7年以下の懲役又は禁固と業務上過失致死傷罪の法定刑よりも重くなりました。
その後、平成25年には、自動車運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷処罰法」といいます。)が制定され、刑法の自動車運転過失致死傷罪は、過失運転致死傷罪と名称が変更されました。
ただ、この過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」ことが構成要件であるため、この罪が成立するためには「自動車の運転」をしている場合に限られます。
そのため、事故当時の状況が「自動車の運転」をしている場合であるかどうかが問題となり、「自動車の運転」をしている際に起こした事故であれば過失運転致死傷罪が適用され、そうでなければ業務上過失致死傷罪にとどまることになり、適用される罪によって科され得る刑罰にも大きな差が出てくることになるのです。
「自動車の運転」とは?
それでは、問題となっている「自動車の運転」という文言について説明してみたいと思います。
そもそも、道路交通法上、「運転」は、「道路において、車両又は路面電車をその本来の用い方に従って用いることをいう。」と定義されています。(道路交通法2条1項17号)
つまり、「本来の用い方に従って用いる」のを終えた段階で運転が終了するものと理解することができます。
すると、問題となるのは、どの段階で「用いるのを終えた」と言えるのか、ということになります。
車の動きを止めたときなのか、シフトレバーをPに入れたときなのか、サイドブレーキをかけたときなのか、エンジンを切ったときなのか、それとも、車両外に運転者が出たときなのか。
これについては、自動車の本来の用途を考えてみた場合に、単に車両を停止させただけの段階(ブレーキを踏んだだけの状態)や、その後の停止を確実にするための補助的動作をした段階(シフトレバーをPに入れただけの状態)では、未だ「用いる」ことを終了させたというには早過ぎるものとされ、自動車の動力を停止させた状態、つまり、エンジンを停止させた段階で、「用いる」のを終了させたと理解するのが一般的となっています。
ただ、宅配業者のように、宅配先に荷物を届けるため、宅配先に到着するたびにエンジンを停止して降車し、荷物を届けるといったことを繰り返す場合には、エンジンを停止させても、配達が完了すればすぐに車を発車して走行を続ける意思があるため、「運転」が終了したとは言えません。
「運転」が終了したと言うためには、エンジンの停止と運転者が主観的にも運転を終了させる意図があることが必要となるのです。
以上の考え方を前提にすると、運転を終了しようと思い、エンジンを停止した後、運転者が運転席のドアを開ける行為は、「運転」には当たらないものと言えるでしょう。
そのため、ドアを開ける際に後方等の安全確認を十分に行わなかったという過失により、ドアを通行者に衝突させて負傷させた場合には、業務上過失傷害罪が適用されることになるでしょう。
ただし、ドア開扉に起因した事故すべてが業務上過失致死傷罪で処理されるわけではありません。
交差点で一時停止してドアを開けた場合、宅配目的で宅配車を停止させてドアを開けた場合、タクシー運転手が客を乗せたり降ろしたりする際に停車して後部左側の自動ドアを開ける場合などは、運転行為が継続する中で起きたものと認められるため、過失運転致死傷罪が成立することがあります。
上記事例の場合、Aさんは過失運転致傷罪に問われる可能性もあります。
ドア開扉事故をはじめ交通事故を起こしてお困りの方は、交通事件に強い弁護士に相談してみてください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
持病発症で人身事故
持病を発症し人身事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
神奈川県大和市に住むAさんは、車で妻を駅まで迎えに行く途中、持病のてんかんの発作で意識を失い、運転していた車ごと車道に乗り上げました。
車は、車道を歩行中の高齢女性に接触し、女性は重傷を負いました。
Aさんは、後日、横浜地方検察庁に自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の罪で起訴されました。
Aさんは、裁判で弁護をしてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
持病を発症し人身事故を起こしたら
自動車を運転中に持病などが発症し、意識を失い、運転手や同乗者、対向車や歩行者が怪我をする、あるいは死亡する事故は少なくありません。
人身事故を起こした場合、多くは、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われることになります。
過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立する罪です。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務を怠ることをいいます。
前方不注意や脇見運転、アクセルとブレーキの踏み間違いなどが該当します。
しかしながら、上記事例のように持病がありながら車を運転し、運転中に持病が発症したことにより人身事故を起した場合には、過失運転致死傷罪ではなく危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。
危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法第3条2項)
自動車運転処罰法は、その3条2項において、
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。」
と規定しています。
①政令で定めるものの影響により
ここでいう「政令で定める病気」というのは、
(1)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する総合失調症
(2)意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
(3)再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であって、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
(4)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれのある症状を呈する低血糖症
(5)自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈するそう鬱病(そう秒及び鬱病を含む。)
(6)重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
です。
これらの病気の「影響により」とは、ただただ病気の影響によるものであることまで必要とされず、病気が他の要因と競合して正常な運転に支障が生じるおそれがある状態になった場合も含まれます。
②その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態
「正常な運転に支障が生じるおそれのある状態」というのは、病気のために自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力が相当程度低下して危険性のある状態のことをいいます。
そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態も含まれ、意識を失うような発作の前兆症状が出ている状態であったり、処方された薬を服用しないために運転中に発作で意識を失ってしまうおそれがある状態などがこれに当たります。
また、本罪の成立には、運転行為終了までの間に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転したことの認識が必要となります。
そのため、病気が突然発症した場合、運転者は病気の症状について認識しておらず、病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態にあることの認識はないため、危険運転致死傷罪は成立しないことになります。
③よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた
本罪が成立するためには、病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その結果正常な運転が困難な状態となり、人を死傷したという因果関係が存在しなければなりません。
てんかん発作の影響に関連する判例は、医師からてんかんの診断を受けていた場合、つまり、被告人がてんかんについて十分な知識がある場合だけでなく、てんかんの診断を受けていなくとも、てんかんに見られるような意識喪失をもらたす発作が過去に生じていた場合も、運転中にてんかんの発作が発症し、正常な運転に支障が生じるおそれがあると認識していたことを認めたものがあります。
Aさんの場合、医師からてんかんの診断を受けており、てんかんの症状について十分理解していたのであれば、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し」たことを認識していたと故意が認められ、危険運転死傷罪が成立すると考えられます。
本罪の法定刑は、人を負傷させた場合は12年以下の懲役で、人を死亡させた場合は15年以下の懲役となっており、決して軽い罪とは言えません。
運転中に持病を発症し人身事故を起こし、危険運転致死傷罪に問われた場合には、できる限り寛大な処分となるよう交通事故に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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ひき逃げ事故で逮捕
ひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都昭島市で、歩行者の男性がトラックにひかれて重傷を負うひき逃げ事故が起きました。
警視庁昭島警察署は、トラックを運転したAさんを過失運転致傷と道路交通法違反の疑いで逮捕しました。
Aさんは、調べに対し、「何かにぶつかったが、人ではないと思った。」と容疑を否認しています。
(フィクションです)
「ひき逃げ」は、人身事故を起こしたにもかかわらず、被害者の救助や警察への通報をせずに、現場から逃走することを指す言葉として一般的に理解されています。
このような行為は、「道路交通法」という法律で運転手に課されている義務に反するものとして、刑罰の対象となります。
救護措置義務
道路交通法第72条は、交通事故があった場合の措置について定めています。
まず、本条第1項は、交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない旨を規定しています。
「負傷者を救護し」とは、現場において応急処置をすることの他、救急通報や負傷者を病院へ運ぶことも含まれます。
「道路における危険を防止する等必要な措置を講じ」るというのは、例えば、その交通事故を起こした車両等をそのまま道路上に放置することは危険なので、これをすみやかに他の場所に移動させることや、負傷者を安全な場所に移動させるなどといった措置です。
そして、道路交通法第117条において、当該義務違反に対する罰則を定めています。
その1項において、当該車両の交通による人の死傷があった場合、つまり、人身事故があった場合に、車両等の運転者が救護措置義務に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨について規定しています。
また、本条第2項は、救護措置義務の規定に違反した運転者のうち、その運転に起因して交通事故を生じさせた者、つまり、当該交通事故の発生に責任のある運転者に対しては、第1項よりも重い罰則、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する旨を定めています。
事後報告義務
道路交通法第72条1項の後段は、救護措置義務が生じて必要な措置をとった場合に、当該車両等の運転者に警察官に対して事故について報告する義務について定めています。
この義務に違反した場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科される可能性があります。
交通事故の認識
交通事故が起きた場合の措置義務違反は、故意犯です。
「交通事故の発生」が当該「義務が生じる前提条件」である以上、当該義務を事故関与者である運転者に負わせるためには、運転者が、その車両等の交通により人の死傷(物の損壊)があったことについて認識していることが必要となります。
車両等の交通により人の死傷があったことについての認識の程度については、人に接触し、若しくはこれを転倒させしめたことのみについての認識で足りるとする見解と、人の死傷を生ぜしめたことの認識まで必要とする見解とがありますが、後者の見解が有力であるとされています。
救護措置義務違反と報告義務違反は、どちらも故意犯であり、人の死傷についての認識が必要とされますが、その認識は、必ずしも確定的なものである必要はなく、未必的(~かもしれない)な認識で足りると理解されています。
認識の程度については、個々の交通事故について具体的情況に基づいて合理的に判断されますが、一般的には、交通事故当時の運転者等の身体、心身の状況、現場の状況(特に路面の状況)、事故発生時の衝撃、音響、叫声の有無、自動車の損傷、事故態様、その他事故発生時の周囲の客観的事情を総合して判断されます。
上の事例において、ひき逃げが成立する場合には、過失運転致死傷罪及び道路交通法違反の2罪が成立することになります。
2罪は、併合罪の関係にあり、併合罪のうち2個以上の罪について有期懲役・有期禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。
そのため、過失運転致傷罪と道路交通法違反(救護措置義務違反)の2罪で有罪となった場合には、15年以下の懲役の範囲内で刑が言い渡されることになります。
一方、過失運転致傷罪のみが成立する場合には、有罪となれば7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金の範囲内で刑が言い渡されます。
交通事故を起こしてしまい、ひき逃げが疑われている場合には、すぐに交通事件に詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。
法律の専門家である弁護士に相談し、取調べで誘導に乗り不利な供述がとられてしまわないよう取調べ対応についてのアドバイスを受けることをお勧めします。
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ながら運転で交通事故
ながら運転で交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
友人宅に向かうため、東京都板橋区を自家用車で走行していたAさんは、待ち合わせ時間に遅れることを友人に伝えるため、スマートフォンの通信アプリを使ってメッセージを送信することにしました。
Aさんは急いでメッセージを作成しようと思い、運転しながらスマートフォンを操作していたところ、信号待ちのため前方で停車していたバイクに気が付かず後方から衝突してしまいました。
Aさんは慌てて車を降りて、転倒したバイクに駆け寄り、救急車を呼びました。
Aさんは、現場に駆け付けた警視庁板橋警察署の警察官に事情を聴かれています。
(フィクションです)
ながら運転に対する罰則
運転中にもかかわらず、スマートフォンを操作したり電話をするといった危険な行為を行う運転手は少なくありません。
このような「ながら運転」に起因する痛ましい事故が多く発生したことを受け、令和元年12月に施行された改正道路交通法は、「ながら運転」に対する罰則を強化しました。
道路交通法第71条は、車両等を運転する者の遵守事項として、走行中の携帯電話等の使用等の禁止を定めています。
自動車等を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、無線通話装置を通話のために使用し、または画像表示用装置に表示された画像を注視することを禁止しています。
ここで問題となる違反行為は、
①携帯電話使用等(保持)違反
と
②携帯電話使用等(交通の危険)違反
の2つです。
①携帯電話使用等(保持)違反
無線通話装置(携帯電話や自動車電話、トランシーバーなど)でかつ、その全部または一部を手で保持しなければ送信・受信のいずれをも行うことができないものを手で持って通話のために使用する行為、または画像表示用装置(カーナビや自動車テレビ、携帯のディスプレイ部分など)を手で持って表示された画像を見続ける行為が禁止されています。
上の事例のように、文字メッセージを送る行為は、画像注視に当たります。
この違反については、6月以下の懲役または10万円以下の罰金が科される可能性があります。
②携帯電話使用等(交通の危険)違反
①の違反行為(画像注視については、保持・非保持を問いません。)を行い、その結果として交通事故を起こしたり、交通事故に至らなくとも、後続車や対向車に急ブレーキをかけさせたり、道路交通に具体的危険を生じさせた場合には、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
ながら運転で交通事故を起こした場合
ながら運転に起因した事故をおこした場合、相手方に怪我を負わせた、あるいは死亡させてしまったのであれば、多くの場合に過失運転致死傷罪が成立することになります。
過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立する罪です。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」というのは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務を怠ることです。
自動車を運転中にスマートフォンを操作しメッセージを作成・送信する行為は、前方不注意であり、「自動車の運転上必要な注意を怠」る行為と言え、当該行為に起因して人身事故を起こしたのであれば、過失運転致死傷罪が成立するものと言えるでしょう。
前方不注視というのは運転手に課せられた最も基本的な義務であり、ながら運転に起因した人身事故における運転者の過失は重いものと判断されるでしょう。
ただ、相手方の怪我の程度や保険による賠償がなされた(もしくはなされる予定である)か否かなどの点も考慮して、最終的な処分が決められますので、ながら運転で交通事故を起こしてしまった場合には、早期に弁護士に相談し、寛大な処分となるよう適切な活動を行うのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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