運転殺人・傷害と危険運転致死傷

2021-04-03

運転殺人傷害危険運転致死傷について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都大田区内の道路を車で走行していたAさんは、信号待ちの間に自車の前に割り込んできたバイクに腹を立て、信号が変わると急激にスピードを上げバイクとの車間距離を極端に詰めるなどの行為を繰り返しました。
しつこいあおり運転に驚いたバイクの運転手は、Aさんの車に追い越してもらおうと速度を落とし左側に寄ったところ、Aさんの車と衝突し転倒してしまいました。
バイクの運転手は、病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。
Aさんは、現場に駆け付けた警視庁池上警察署の警察官に事情を聞かれています。
(フィクションです。)

通常の交通事故は運転者の過失に起因するものであると考えられているため、自動車運転処罰法は、たとえ被害者を死なせてしまった場合であっても、過失責任として同法5条により、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金という範囲内で刑罰が処断されることになります。

しかし、実は相手を殺すつもりで(若しくは、相手が死んでしまってもかまわないと思い)事故を起こしたという場合も全くないわけではありません。
外見上は、通常の交通事故のようでありながらも、実は殺人傷害の罪に当たり得るケースもあるということです。

1.殺人罪

刑法199条は、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定しています。
この殺人罪の成立には、「人を殺す」ことだけではなく、主観的要件として故意、つまり、殺意が必要となります。
ここでいう「故意」とは、行為の客体が人であることを認識し、かつ、自己の行為によって、その人の死という結果を生じさせることを意図し、あるいは、死の結果が生じることの認識(予見)・認容することです。
交通事故においては、自動車を人に衝突させる際に、それが人であることを認識し、かつ、当該衝突行為によって、その人の死亡を意図又は予見し、そして、その結果が生じることを認容することで殺意が認められることになり、単なる交通事故で処理されず、運転殺人となります。

事故により人が死亡した場合で、殺意までは認められない場合には、傷害致死罪あるいは妨害行為による危険運転致死傷罪の成立が検討されることになります。

2.傷害致死罪

傷害罪について、刑法204条は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50年以下の罰金に処する。」と規定しています。
ここでいう「傷害」というのは、「人の生理的機能に障害を加えること」です。
殴る蹴るといった典型的な有形力の行使により、相手方に怪我を負わせる以外にも、精神的苦痛も傷害に当たる場合があるのです。
また、傷害罪の成立には、故意がなければなりません。
傷害の故意については、傷害罪が暴行罪の結果的加重犯であることから、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りるとするのが判例です。(最高裁判決、昭和25年11月9日)
つまり、自動車に人を衝突させることによって相手に怪我を負わせてやろうという意図で、そのような行為に及んだ結果、相手に怪我を負わせた場合には、傷害の故意に基づく傷害罪が成立することになります。
そして、その結果、相手が死亡した場合には、傷害致死罪が成立します。
傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役です。

3.妨害行為による危険運転致死傷罪

自動車運転処罰法2条4号は、「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を処罰の対象としており、その行為により、「人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。」としています。

「人又は車の通行を妨害する目的」というのは、相手に対して自分の車と衝突することを回避するために急な回避措置をとらせるなど、人や車の自由で安全な通行の妨害を積極的に意図することをいいます。
相手に嫌がらせをしてやろうと思い、相手の車に対して幅寄せをした結果、相手のハンドル操作を誤らせ、ガードレールに衝突させるなどといった場合などが妨害行為による危険運転致死傷罪の類型です。

運転殺人が疑われるような場合には、殺意の有無が問題となります。
どの罪が成立するかにより、有罪となった場合に言い渡される刑の軽重も異なりますので、早い段階からしっかりと対応する必要があるでしょう。

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