Archive for the ‘交通事故(人身事故)’ Category

店舗に車で突っ込んで逮捕されてしまった事例

2022-04-14

店舗に車で突っ込んで逮捕されてしまった事例

店舗に車で突っ込んで逮捕されてしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

4月7日午後、大阪市中央区の金券ショップに軽自動車を突入させてしまい、3人に重軽傷を負わせた過失運転致傷の疑いで、30代男性が逮捕されました。
男性は急なめまいを感じ、意識がなくなったなどと述べています。
また、男性の母親は男性に低血糖の症状があると説明しています。
(カンテレ 「大阪・ミナミで金券ショップに車に突っ込み3人重軽傷 運転手の男を逮捕」(令和4年4月8日16:14配信)より引用)

こうしたケースでは、今後、どのような弁護活動が考えられるのでしょうか。

~過失運転致死傷罪について解説~

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっています。

ケースの被害者らは重軽傷を負いましたが、死者はおらず、飲酒運転や信号無視等の重大な違反行為が明らかでないため、ひとまず、過失運転致傷罪の疑いで逮捕したものと考えられます。
なお、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死亡させてしまった場合においては、過失運転致死罪が成立します。

~危険運転致死傷罪について解説~

アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、人を死傷させた場合は過失運転致死傷罪よりも重い危険運転致死傷罪が成立するのはよく知られていると思います。
法定刑は危険運転致傷罪の場合は15年以下の懲役危険運転致死罪の場合は、1年以上20年以下の懲役となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条)。

一方で、正常な運転が困難な状態とまではいえずとも、これに準ずる状態で自動車を運転し人を死傷させた場合も、重く処罰されます。
自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた」場合も、危険運転致死傷罪となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項)。
ただし、こちらの場合の法定刑は、先ほど触れた第2条の危険運転致死傷罪の場合よりは軽く、致傷の場合は12年以下の懲役、死亡させた場合は、15年以下の懲役となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項・1項)。
この政令で定める病気として、「自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する低血糖症」があります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令第3条4号)。

~今後の弁護活動~

ケースの運転手は逮捕されています。
逮捕中は、当然、会社へ出勤することも学校へ登校することもできなくなるため、無断欠勤・無断欠席が続いた場合、会社や学校から不利益な処分を受けることが懸念されます。
そのため、早期に弁護士を依頼し、身柄解放活動を行ってもらうことが必要となるでしょう。

また、起訴され、有罪判決を受けた場合には前科がつくことになってしまいます。
自動車保険などを活用して被害者に生じさせた損害を賠償し、示談を成立させることができれば、不起訴処分あるいは略式罰金などの軽微な処分を獲得できる可能性が高まります。

起訴されてしまった場合においても、実刑判決を回避するため、誠心誠意謝罪をし、被害者と示談を成立させることが重要です。

そして、低血糖の影響により運転中に正常な運転が困難な状態に陥り負傷させたと判断されれば、危険運転致死傷罪で起訴され、より重い処罰が下されることも考えられます。

低血糖といっても自動車の運転の能力を欠けさせるような症状はないこと、被疑者もそのような症状を認識していなかったことなどの事情があれば、弁護士からそういった事情を主張し、危険運転致傷罪で起訴しないよう働きかけることも考えられるでしょう。
こういった事情があるにも関わらず危険運転致傷罪で起訴された場合、過失運転致傷罪に留まることを公判で主張することも予想されます。

いずれの場合にしろ、逮捕・勾留による身体拘束への対応や、被害者への謝罪・弁償といった被害者対応、刑事裁判を見据えた対応など、すぐに取りかかるべき活動は多く存在します。
だからこそ、早期に弁護士に相談・依頼するメリットは大きいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を中心に取り扱う法律事務所です。
ご家族が過失運転致傷罪の疑いで逮捕されてしまった場合には、遠慮なく、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

過失運転致傷罪と道路交通法違反(報告義務違反)

2022-03-31

過失運転致傷罪と道路交通法違反(報告義務違反)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

AさんがVさんを同乗させて埼玉県上尾市の国道を車で走行中、ハンドル操作を誤り中央分離帯に衝突してVさんは怪我をして気を失いました。
Aさんは人身事故で警察署で取調べを受けるのが面倒だと思い、友人のBさんに車で迎えに来てもらい、VさんはBさんの車で病院に運ばれました。
Aさんはその後すぐ110番通報し、駆け付けた埼玉県上尾警察署の警察官に「同乗者はいません。私は怪我をしていません。」と伝えました。
後日VさんがAさんの起こした交通事故で怪我をしたことを埼玉県上尾警察署の警察官に伝えたため、Aさんは過失運転致傷罪と道路交通法違反(報告義務違反)で話を聴かれることになりました。
(フィクションです)

交通事故を起こし同乗者に怪我をさせたら?

交通事故を起こし人に怪我をさせた場合、どのような罪になるのでしょうか。
過失運転致傷罪が成立し、条文には
「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」
(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)
とあります。

同乗者に怪我をさせたことを申告しなかったら?

さらに同乗者に怪我をさせたことを申告しなかった場合、どのような罪になるのでしょうか。
道路交通法違反(報告義務違反)が成立し、条文には

当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。(道路交通法第72条第1項後段)
とあり、罰則は3月以下の懲役または5万円以下の罰金
とあります。

基本的には「最寄りの」警察署に、「直ちに」報告することになります。
「直ちに」とは時間的にすぐにと理解されており、「最寄りの」警察署等への報告というのは例えば朝に人身事故を起こし、その後1日仕事をして自宅へ帰る途中にある警察署に報告したのでは遅く、
事故現場ですぐ110番通報をして、事故現場の最寄りの警察署の警察官にきてもらい報告するのが適切と思われます。
そしてその報告事項の中には「当該交通事故における負傷者の負傷の程度」がありますので、同乗者の怪我について申告をしなかった場合でも道路交通法違反(報告義務違反)が成立します。

事案例について

VさんはAさんの依頼で来た、Cさんの車で病院に搬送されたため救護義務違反(道路交通法第72条第1項前段)は成立しない可能性が有りますが、
しかし、Aさんはその場ですぐ110番通報したものの、その申告した内容が「負傷者の負傷の程度」について正しく報告していないため、報告義務違反が成立すると思われます。
また、Vさんにけがを負わせたため、過失運転致傷罪が成立します。

弁護活動について

過失運転致傷罪については、その成立に争いのない場合、被害者への被害弁償と示談交渉を行うことが大切です。
人身事故については被害が大きくなく運転が悪質でなければ、示談の成立により起訴猶予による不起訴処分を目指すことも可能ですし、起訴猶予による不起訴処分となれば前科にはなりません。
また、過失運転致傷罪や道路交通法違反で逮捕された場合でも、加害者に証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを主張し釈放や保釈による身柄を解放するための弁護活動を行っていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の過失運転致傷罪や道路交通法違反事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が過失運転致傷罪や道路交通法違反事件で話を聞かれることになった方、ご家族が逮捕されてしまいお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

酒気帯び運転と保釈

2022-02-26

酒気帯び運転と保釈について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさんは、飲み会でお酒を飲んだ後、終電がないことに気づき車で帰ることにしました。
京都市下京区内の一般道を車で走っていたAさんは、前方を歩いていたVさんに気付かずはねてしまいました。
Aさんは119番通報し、Vさんは病院に搬送され、Vさんは全治2ヵ月の怪我を負いました。
京都府下京警察署の捜査により、Aさんの体内からアルコールが検出されたため、捜査員は飲酒運転で人身事故を起こしたとしてAさんを逮捕しました。
Aさんに国選弁護人が付いていましたが、道路交通法違反(酒気帯び運転)、過失運転致傷で起訴された後、中々保釈が許可されず、不満に思ったAさんの両親は弁護士事務所に相談することにしました。

(フィクションです)

~酒気帯び運転について~

・酒気帯び運転について

酒気帯び運転は、道路交通法及び同法施行令に規定されています。

第六十五条一項
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

第百十七条の二の二
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第三号 
第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの

同法施行令四十四条の三
法第百十七条の二の二第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとする。

以上の通り、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムを身体に保有している状態で車を運転した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に科される恐れがあるということです。

・人身事故について

酒気帯び運転の際の人身事故については、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」と言います。)の5条で処罰されることになります。

第五条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車の運転上必要な注意を怠った結果、人に負傷を負わせたり、死亡させた場合、7年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

~保釈について~

保釈とは保釈金を裁判所に納めることにより、被告人に対する勾留の執行を停止し、身柄拘束を解く判断をする裁判をする制度になります。
保釈は起訴後にしか請求することができず、勾留段階では行うことはできません。

保釈は、3種類に分けられます。
・権利保釈
刑事訴訟法89条各号に掲げる事由に被告人が該当しなければ、保釈の請求があった時には、原則保釈を許さなければならない
・裁量保釈
権利保釈が出来ない場合でも、適当と認められる場合には、職権で保釈を許すことができる。
・義務的保釈
勾留による身柄拘束が不当に長くなった場合、請求又は職権で保釈を許さなければならない
以上の3つがあります。

今回のような事案では権利保釈を目指して、保釈を請求していくことになります。
保釈が請求しても通らないという場合には、刑事訴訟法89条各号に該当している可能性があります。
刑事訴訟法89条各号にある、
・被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
・被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
の2点がクリアできていない可能性があるのではないかと考えます。
そのために弁護士は、親族の協力を得たり、請求の内容で罪証隠滅の可能性や被害者等に危険性が及ばないことを説明していくことになります。
しかし、事案によって異なってくるものであるため、国選弁護人の対応について疑問があるようでしたら、他の弁護士に相談するのも1つの手段です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、酒気帯び運転などの交通違反をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
あなたやご家族が交通事故などを起こしてお困りの方は、まずは
0120-631-881までお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

 

過失運転致傷罪と緊急避難

2022-02-15

過失運転致傷罪と緊急避難について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは横浜市金沢区の国道で信号待ちをしていました。
その際車が割り込んできたためクラクションを鳴らしたところ、車からBさんが降りてきてAさんの車の窓ガラスを殴りつけてきました。
Aさんが恐怖を感じ逃げようとして急発進をしたところ、後方からバイクに乗ったVさんと衝突し、Vさんは足の骨を折る怪我をしました。
Aさんは神奈川県金沢警察署で過失運転致傷罪の疑いで話を聞かれることになったのですが、Aさんは「交通事故を起こしたのはBから逃げようとしたからだ。だから自分が交通事故を起こしたのはしょうがないことだ。」と考えているため、刑事事件や交通事件に強い弁護士を探しています。
(フィクションです)

~交通事故はどのような罪になりますか~

交通事故を起こし人に怪我をさせた場合、どのような罪になるのか見ていきましょう。
条文には
「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」
(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)
とあります。

~Aさんが車を急発進させたことについて~

Aさんは自分が交通事故を起こしたのはしょうがないと考えています。
これは「緊急避難」という考え方に基づいたものと思われます。

~緊急避難とはなんですか?~

緊急避難とは条文で
「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。」(刑法第37条)
とあります。
つまり、緊急避難が完全に認められれば、罰せられないということです。

それでは緊急避難についてもう少し詳しく見ていきましょう。

~緊急避難が成立する要件~

緊急避難が成立するためには

1現在の危険があること
現在正に危険が迫っている必要があります。
未来に起こるかもしれない危険、過去に起こった危険については認められません。
2避難の意思があること
1の危険を避ける目的があることが必要です。
3危険から避難するための必要最低限の行為であること
例えば人を押して道を空ければ逃げれる状態で、必要もないのに人を殴って道を空けようとする行為は認められません。
4発生した害が避けようとした害の程度を超えないこと
5その行為が唯一の手段であり、真にやむをえない行為であったこと

等が必要になります。

~事案例について~

Aさんは、自分が車を急発進させたのはBさんから逃げるためだったからしょうがないと思っています。
しかしAさんの場合は、110番通報をする、他の車に注意しながら避難できた可能性が有ることから、車を急発進させた行為は「その行為が唯一の手段であり、真にやむをえない行為」とは認められにくいと考えられます。
よってAさんには、過失運転致傷罪が成立すると思われます。

~弁護活動について~

先に述べたとおり、緊急避難が成立するためには厳しい要件が必要です。
ですので、自分の行為が緊急避難にあたるのではないか等と疑問に思うことがあれば、刑事事件・交通事件に強い弁護士に早急に相談するのが良いでしょう。
また、過失運転致傷罪に問われた時は、事故の相手方の方と早急に示談交渉を行い、示談が成立すれば起訴猶予による不起訴処分を目指すこともできます。
起訴猶予による不起訴処分となれば、前科にはなりません。
また、過失運転致傷罪で逮捕・勾留されることになっても、早期に釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行うことも可能です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の過失運転致傷罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が過失運転致傷罪で話を聞かれることになった方、ご家族が逮捕されてしまいお困りの方、緊急避難が成立するか相談したい方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

 

パトカーから逃走中に人身事故を起こし逮捕

2021-12-14

今回は、パトカーから逃走中に人身事故を起こし、逮捕されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~
Aさんは、●県の県道を自動車にて走行中、後続のパトカーから職務質問のため停止するように求められましたが、車内に覚醒剤を所持していることを思い出したため、自動車を急加速させて逃走を図りました。
逃走中、時速百数十キロメートルで赤信号の交差点に進入するなどを繰り返していたところ、自動車同士で事故を起こし、Aさんの自動車は停止しました。
これによりAさんと事故の被害者は大怪我を負ったため、両者は病院に搬送され、現在、治療を受けています。
警察はAさんの回復を待ってから、危険運転致傷及び覚醒剤所持の疑いでAさんを逮捕する方針です。(フィクションです)

~Aさんは今後どうなる?~

自動車を運転中に職務質問を受けた際、何らかの犯罪(違法薬物の所持や飲酒運転など)が発覚することを恐れ、無謀な逃走を行い、自動車事故を起こしてしまうケースがあります。
Aさんはまだ逮捕されていませんが、回復を待ってから「危険運転致傷罪」及び「覚醒剤所持罪」の疑いで逮捕されることになるでしょう。
これらの犯罪について解説いたします。

(危険運転致傷罪)
危険運転致傷罪の類型は複数存在しますが、ケースの場合は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」第2条2号または7号の危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

※自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 省略
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三~六 省略
七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
八 省略

上記の危険運転致傷罪について有罪判決が確定すると、「十五年以下の懲役」に処せられます。

(覚醒剤所持罪)
パトカーから停止を求められた際にAさんが逃亡を図った理由ですが、当然ながら覚醒剤の所持行為についても罪に問われる可能性が高いでしょう。

※覚醒剤取締法
第四十一条の二 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、一年以上の有期懲役に処し、又は情状により一年以上の有期懲役及び五百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

~今後の弁護活動~

(逮捕後の身柄解放活動)
Aさんに対しては、かなり重い犯罪である危険運転致傷罪に加え、身体拘束が長引きがちな覚醒剤所持行為の嫌疑もかけられています。
さらに、覚醒剤の使用行為についても疑いをもたれることになるでしょう。
これによれば、捜査段階での身柄解放の実現はかなりハードルが高いと思われます。

(起訴される可能性)
危険運転致傷罪も、覚醒剤所持(又は使用)罪も、起訴される可能性が非常に高いです。
ケースの事件につき起訴された場合は、実刑判決を受ける可能性も見込まれます。
執行猶予付き判決の獲得、または、実刑判決であっても、より有利な量刑による判決の獲得を目指さなければなりません。

そのためには、被害者に対して誠心誠意の謝罪を行い、生じさせた損害を賠償して示談を成立させる必要があるでしょう。
また、自動車を処分し、二度と自動車を運転しないことを法廷で誓うことも必要となるかもしれません。

危険運転致傷事件、覚醒剤所持事件を起こし、逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士の接見を受け、事件解決に向けたアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が危険運転致傷事件、覚醒剤所持事件を起こして逮捕されてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

過失運転致傷の疑いで逮捕された場合にとるべき行動

2021-11-30

今回は、人身事故を起こし、過失運転致傷の疑いで逮捕されてしまった被疑者や親族がとるべき行動について、弁護士法人あいち刑総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~
Aさんは、自動車をバックさせて駐車しようとしていた際、後方確認が十分にできておらず、Aさんの自動車の後ろにいた小学1年生のVを轢過し、死亡させてしまいました。
駆け付けた警察官により、Aさんは過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕され、近く被疑事実を過失運転致死に切り替えて捜査が行われる方針です。
Aさんの家族は逮捕を知って大変驚き、どうするべきか途方に暮れています。(フィクションです)

~過失運転致死傷罪について解説~

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。
法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっております。

過失運転致死罪は、上記のうち、被害者が死亡してしまった場合に成立します。
傷害するに留まった場合は、過失運転致傷罪が成立します。
両者を合わせて、過失運転致死傷罪と呼称されます。

被害者の傷害が軽いときは、情状により、刑が免除されることがありますが、死亡させてしまった場合には、この規定により免除されることはありません。

Aさんは自動車を後退させる際、後方の歩行者の有無に注意し、適切に自動車を操作すべきであったにもかかわらず、後方確認が不十分であったため、後ろにいたVを轢過してしまい、死亡させています。
上記の事実関係によれば、Aさんに過失運転致死罪が成立する可能性は高いと考えられます。

~AさんやAさんの家族は何をするべきか?~

Aさんは現行犯逮捕されてしまったので、釈放されなければ1~3日間外に出ることができません。
また、検察に送致された後、検察官によって勾留請求がなされ、裁判官によって勾留決定がなされると、10日間勾留されることになります。
さらに、やむを得ない事由があると認められると、最長10日間、勾留が延長されてしまいます。

身体拘束を受けた状態では、自身に有利な活動をみずから行うことはほぼ不可能です。
また、身体拘束が長期化すると、会社や学校を無断欠勤、無断欠席することになってしまいます。
さらに、身体拘束自体がもたらす心身への悪影響も無視できません。

逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士を呼び、接見を受けて今後の善後策(早期の身柄解放を目指す活動、不起訴処分の獲得を目指す活動、有利な判決の獲得を目指す活動など)を立てる必要があります。
AさんやAさんの家族に心当たりのある弁護士がいれば、その弁護士に接見を依頼することが考えられます。

Aさんに弁護士の知り合いがいなくても、警察官や検察官、裁判官に当番弁護士を要請すれば、1回だけ無料で接見を受けることができます。
当番弁護士は、Aさんの家族も要請することができるので、Aさん以外の方であっても、Aさんのために活動することができます。
当番弁護士としての接見は1回だけですが、当番弁護士を私選弁護人として選任すれば、今後もサポートを受けることができます。
いずれにしても、逮捕されてしまった場合には早期に弁護士の接見を受けることが重要です。

国選弁護人という制度もありますが、ケースの段階では逮捕された段階(勾留決定がなされていない)なので、利用することはできません。
逮捕直後からすぐに弁護活動を開始するためには、当番弁護士、私選弁護人を利用することになります。

人身事故を起こし、過失運転致傷の疑いで逮捕されてしまった場合には、速やかに弁護士の接見を受け、有利な事件解決を目指すためのアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が過失運転致傷の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

地方公務員を目指す大学生が人身事故を起こし取調べ

2021-11-09

今回は、地方公務員を目指している大学生が人身事故を起こしてしまった場合の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~
Aさんは、県道を自動車にて走行中、道路を横断している歩行者Vに気付かず、慌ててブレーキをかけましたが、Vと衝突してしまいました。
Vは衝突した際の衝撃で転倒し、怪我を負った模様です。
Aさんはすぐに警察、救急車を呼び、Vを救護しましたが、Vの容態は不明です。
後程、Aさんは警察に連れて行かれ、取調べを受けましたが、両親が身元引受人となって自宅に帰ることができました。
Aさんは今後どうなるのでしょうか。(フィクションです)

~Aさんに成立しうる犯罪は?~

ケースの場合、過失運転致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)の成否が問題となるでしょう。

※自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車を運転中、運転操作を誤ったり、よそ見をしていたなどの理由で、被害者に怪我を負わせてしまう場合が典型例といえます。
Aさんは道路を横断するVの存在に注意し、事故を起こして怪我をさせることのないように自動車を操作すべきであったにもかかわらず、Vの存在に気付かず、これと衝突して怪我を負わせてしまっています。
上記の事実関係によれば、Aさんに過失運転致傷罪が成立する可能性は十分ありえるということができるでしょう。

~今後の捜査~

Aさんは逮捕されず、自宅に帰ることができたので、在宅で捜査を受けることになるでしょう。
この場合は、警察へ何度か出頭し、取調べを受けたり、実況見分に協力する、という期間が続くと思われます。

警察での捜査が節目を迎えると、事件が検察へ送致されることになります。
検察では、検察官の取調べを受けることになります。
そして、最終的に検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴とするかを決定します。

在宅捜査の場合であっても、呼出しを正当な理由なく拒否すると、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕されてしまうことがあります。
逮捕、勾留されると、捜査段階において最長23日間もの身体拘束を受けるので、Aさんの社会生活に及ぼす悪影響は計り知れません。
逮捕されるリスクを考えると、呼出しには応じた方がよいでしょう。
呼び出された日程に差し支えがあれば、かならず捜査機関にその旨を話し、出頭する日程を調整しましょう。

~Aさんが注意すべきこと~

Aさんは大学で地方公務員を目指して勉強しているとのことですが、地方公務員法第16条は、地方公務員の任用にあたり、欠格条項を設けています。
同法同条第1号によれば、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」は、「条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない」とされています。

ところで、過失運転致傷罪の法定刑には「禁錮以上の刑」が含まれています(前記参照)。
もし起訴され、禁錮刑を言い渡されてしまうと、当分の間、地方公務員になることができなくなってしまいます。
Aさんは大学で地方公務員を目指し勉学に励んできたのですから、ケースの事件によって進路の実現を諦めざるを得ない事態が生じることは回避したいところです。

もし、①不起訴処分を獲得できた場合や、②起訴された場合であっても、罰金刑に留まった場合には、前記の欠格条項に該当しないので、引き続き進路の実現に向けて注力することができます。
Vの怪我の状況にもよりますが、もし比較的軽傷であれば、Vと示談をするなどの弁護活動を尽くすことにより、不起訴処分や罰金刑に留まる判決を獲得できる可能性もあります。

ケースのような事件を起こしてしまった場合は、まず刑事事件に詳しい弁護士と相談し、今後の弁護活動についてアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
過失運転致傷事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

飲酒運転で人身事故

2021-09-14

飲酒運転と人身事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは,飲酒酩酊状態で車を運転し,道路を横断していたVさんをはねて怪我をさせました。Aさんは通報で駆け付けた警察官に道路交通法違反(酒気帯び運転)及び過失運転致傷罪の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。逮捕の知らせを受けたAさんの家族は早期釈放のため、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。にもかかわらずそのまま逃走したひき逃げ事故を起こしました。

~酒気帯び運転の罪~

Aさんは酒気帯び運転の罪で逮捕されました。
酒気帯び運転の罪に関する規定は,道路交通法および同法施行令に規定されています。

第65条1項
何人も,酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
第117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第3号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く)を運転した者で,その運転した場合いおいて身体に政令で定める程度以上に  アルコールを保有する状態にあったもの
同法施行令44条の3
 法第117条の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は,血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとする。

つまり,酒気帯び運転とは,血液1ミリリットルにつき0.3mg又は呼気1リットルにつき0.15mg以上アルコールを保有する状態で車両等(自転車等の軽車両を除く)を運転することをいいます。
そして,酒気帯び運転の罪では,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科されるおそれがあります。

なお、酒気帯び運転に似ている運転として酒酔い運転というのも道路交通法に規定されています。

第117条の2 次の各号のいずれかに該当する者は,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第1項 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で,その運転した場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの

酒気帯び運転の罪は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対し,酒酔い運転の罪は、より重い「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
酒酔い運転は,酒気帯び運転よりも一般的に強く酔った状態なので、重い刑罰が定められているのです。

ただし、酒気帯び運転と違い,酒酔い運転の罪の場合,「酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)」とだけ記載されており、具体的なアルコールの数値までは定められていません。

平均的な酒の強さの人であれば酒気帯び運転にしかならない,あるいは酒気帯び運転にすらならないアルコールの数値であっても,酒に弱い人であれば,刑罰の重い酒酔い運転に該当してしまう可能性もあるので注意が必要です。

~過失運転致傷罪と本件の量刑~

また、Aさんは過失運転致傷罪でも逮捕されています。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」と言います。)5条に規定されています。

自動車運転致死傷行為処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

人を死傷させた場合には、酒気帯び運転や酒酔い運転の罪とは別途、過失運転致傷罪にも問われることになるわけです。
また、さらにひどく酔って運転し人身事故を起こしたケースでは、危険運転致死傷罪に問われる可能性もあります。

近年は飲酒運転やそれに関する交通事故では量刑(判決で下される刑罰の重さ)が非常に厳しくなる傾向にあります。
今後どうのような展開になってしまうのか、ご不安が大きいと思いますので、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,酒気帯び運転などの交通違反をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
あなたやご家族が交通事故などを起こしてお困りの方は,まずは
0120-631-881までお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

交通事件での身体拘束

2021-08-21

交通事件での身体拘束の可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
ある朝、警視庁西新井警察署の警察官が東京都足立区にあるAさん宅を訪れました。
Aさんは、先日の交通事故の件で話が聞きたいと警察官から言われ、西新井警察署に連れて行かれました。
お昼ごろ、Aさんの妻に連絡があり、「ご主人をひき逃げ事件の件で逮捕しました。」と言われ、妻はまさか逮捕されるとは思っておらず大変驚いています。
このままAさんの身体拘束が続くのかどうか心配になったAさんの妻は、すぐに対応してくれる弁護士をネットで探すことにしました。
(フィクションです。)

刑事事件での身体拘束

あなたが罪を犯したと疑われた場合、捜査機関によってあなたの身柄が拘束されることがあります。
すべての事件において、被疑者・被告人が身体拘束を強いられるわけではありません。
人の身体の自由を一定期間奪うわけですから、法律に定められている要件を満たす場合にのみ、被疑者・被告人の身柄を拘束することが許されるのです。

捜査段階では、まず、「逮捕」という身体拘束を伴う強制処分があります。
これは、被疑者の取調べを目的として、被疑者の意思に反して、身体・行動の自由という重要な権利利益を侵害する処分です。
ですので、この処分を実施するためには、法律、ここでは刑事訴訟法と呼ばれるものですが、それに定められている要件を満たしていることが前提となります。
逮捕には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3種類があります。
ここでは、①通常逮捕の要件について説明します。

通常逮捕とは、事前に裁判官が発行する逮捕令状に基づいて、被疑者を逮捕するもので、これが逮捕の原則的な形態です。
逮捕の要件は、①逮捕の理由、および、②逮捕の必要性です。
①逮捕の理由とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることです。
そして、②逮捕の必要性というのは、被疑者が逃亡するおそれや罪証隠滅するおそれがある場合をいいます。
検察官または司法警察員が逮捕状の請求を行い、その請求を受けて、裁判官が逮捕の理由と逮捕の必要性を審査し、逮捕状を発布するか、請求を却下するかを判断します。

逮捕に引き続いて行われ得る身体拘束を伴う強制処分として、「勾留」というものがあります。
勾留は、比較的長期間の身体拘束を伴うものです。
勾留は、起訴前の勾留(「被疑者勾留」ともいいます。)と起訴後の勾留(「被告人勾留」ともいいます。)とに分けられます。

被疑者勾留の要件は、①犯罪の嫌疑、②勾留の理由、③勾留の必要性、の3つです。
①犯罪の嫌疑の要件とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることをいいます。
②勾留の理由については、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ、のいずれかに該当する場合にあるものと判断されます。
そして、②勾留の理由がある場合であっても、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これによって生じる不利益を比較してつり合いがとれないようなときは、被疑者を勾留することは許されません。
これを③勾留の必要性(もしくは相当性)といいます。
検察官が勾留を請求し、裁判官が勾留の要件を満たしているかどうかを判断します。
被疑者勾留の期間は、原則、検察官が勾留請求をした日から10日間です。
ただし、検察官が勾留延長の請求をし、それを裁判官が認めた場合には、最大で更に10日間となります。

被疑者が起訴されると、勾留も被疑者勾留から被告人勾留へと切り替わります。
勾留されている被疑者が起訴された場合、当然に被告人勾留が開始されます。
被告人勾留の要件は、被疑者勾留のそれと同じです。
ただし、勾留期間は起訴の日から2か月で、裁判所は、特に継続の必要があるときは、勾留期間を1か月ごとに更新することができます。

以上のように、刑事事件において身体拘束は絶対ではありませんが、要件を満たす場合には長期間の身体拘束を余儀なくされることがあります。

交通事件での身体拘束の可能性

交通に関する刑事事件、例えば、無免許運転や飲酒運転による道路交通法違反や、人身事故による過失運転致死傷や危険運転致死傷事件を起こした場合、通常の刑事事件と同様に、先に述べたように身柄が拘束される可能性があります。
単純な無免許運転や飲酒運転の場合、多くが現行犯逮捕となりますが、逃亡のおそれも罪証隠滅のおそれもないと判断され、その後釈放されるケースが多いでしょう。
人身事故を起こした場合については、過失運転致死傷に該当するケースであり被害がそこまで大きくないのであれば、勾留されずに釈放となる可能性が高いでしょう。
一方、危険運転致死傷に該当するような重大な事故の場合や、ひき逃げ事件では、被疑者の身柄を確保して捜査を継続する必要がある判断される傾向にあります。
特に、ひき逃げ事件については、いったん現場から逃走しているため、逃亡のおそれが高いと判断されるからです。
しかしながら、長期の身体拘束は、退学や懲戒解雇といった過度な不利益を被疑者・被告人に課すものであるため、不当不要な身体拘束は避けなければなりません。
そのため、逮捕された場合や、逮捕されそうな場合には、早期に弁護士に相談し、身柄解放に向けて動いてもらいましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件で逮捕されて対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

交通事犯で逮捕、保釈で釈放

2021-07-31

交通事犯逮捕され、保釈釈放を目指す場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
兵庫県神戸市垂水区で人身事故を起こしたAさんは、兵庫県垂水警察署逮捕されました。
Aさんは、飲酒運転により人身事故を起こしており、警察は危険運転致死傷の適用も視野に入れて捜査をしているようです。
Aさんは、接見に来た弁護士に釈放の可能性について聞いています。
(フィクションです。)

交通事犯で逮捕されたら

交通事犯については、全体として厳罰化の傾向にあります。
交通事犯というのは、一般に、自動車運転に係る犯罪のことを意味し、道路交通法違反、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの犯罪のことをいいます。
交通事犯は、単純な無免許運転や飲酒運転(酒気帯び運転、酒酔い運転)のような被害者のいないものから、過失運転致死傷罪や危険運転致傷罪などの被害者がいるものと、その態様は様々です。

そのため、交通事犯逮捕された場合、その後の身体拘束についても、その態様に軽重に比例する傾向にあります。
単純な無免許運転や飲酒運転、スピード違反、被害の程度が比較的軽微である人身事故であれば、逮捕後に勾留されずに釈放される可能性はあります。

勾留というのは、逮捕後に引き続き被疑者の身柄を比較的長期間拘束する裁判とその執行のことをいいます。
検察官からの勾留請求を受けて、裁判官が勾留の要件を充たしているかどうかを検討し、勾留の決定をするかどうかを判断します。
勾留の要件には、①勾留の理由、そして、②勾留の必要性、の2つがあります。
①勾留の理由とは、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること、そして、定まった住居を有しないこと、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること、あるいは、逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること、のいずれかに該当することです。
これらの理由がある場合であっても、被疑者を勾留することにより得られる利益が極めて弱い場合や、被疑者が勾留によって被る不利益が著しく大きい場合には、勾留の実質的な相当性(必要性)を欠くとして、勾留は認められません。

交通事犯においては、死亡事故等、被害が重大な場合を除いては、身体拘束がなされることが比較的少ないことが特徴です。
ただ、危険運転致死傷罪に当たるような事故を起こした場合には、逮捕後に勾留となる可能性は高まります。
捜査段階での釈放が困難な場合には、起訴後に保釈を利用して釈放されることを目指します。

保釈で釈放を目指す

一定額の保釈保証金を納付することを条件として、被告人に対する勾留の執行を停止し、その身柄拘束を解く裁判及びその執行を「保釈」といいます。
保釈は、起訴された段階から請求することが出来ますが、起訴前の被疑者勾留では請求することは出来ません。
保釈には、以下の3つの種類があります。

1.権利保釈(必要的保釈)
裁判所は、権利保釈の除外事由に該当しない場合には、保釈請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
除外事由は、以下の通りです。
①被告人が、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪を犯したものであるとき。
②被告人が、前に、死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由のあるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。

2.裁量保釈(任意的保釈)
裁判所は、上の権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することが出来ます。

3.義務的保釈
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により、又は職権により、保釈を許可しなければなりません。

危険運転致死傷罪という重い罪であっても、単独犯であり組織的な背景がないことが多いですから、罪証隠滅のおそれはそれほど高いものではなく、保釈が認められる可能性はあります。

交通事犯逮捕され、捜査段階での釈放が困難な場合には、起訴後すぐに保釈を請求し、保釈が認められるよう事前に準備しておくことが必要があります。

交通事犯逮捕され、早期釈放をお望みであれば、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事犯を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

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