Archive for the ‘交通事故(人身事故)’ Category

【事例紹介】滋賀県長浜市 過失運転致傷罪・ひき逃げ容疑で逮捕

2022-09-22

【事例紹介】滋賀県長浜市 過失運転致傷罪・ひき逃げ容疑で逮捕

滋賀県長浜市で起きた交通事故を基に、過失運転致傷罪ひき逃げについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警木之本署は8日、中型トラックを運転中に自転車の男性に衝突してけがを負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、岐阜県輪之内町のトラック運転手の男(69)を逮捕した。 

逮捕容疑は、8日午前2時10分ごろ、滋賀県長浜市西浅井町塩津浜の国道8号で中型トラックを運転中、自転車の湖南市の男性(27)に後方から衝突し、尻に打撲を負わせて、そのまま逃げた疑い。(中略)容疑を否認している。
(9月9日 京都新聞 「トラックで自転車に衝突、ひき逃げ疑い男を逮捕 滋賀・長浜、けが負わす」 より引用)

過失運転致傷

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車の運転上必要な注意を怠った過失により人を死傷させてしまった場合は、自動車運転処罰法第5条の過失運転致死傷罪が適用されます。
過失による交通事故で人を死なせてしまった場合も怪我をさせてしまった場合も同じ条文が適用されますので、どちらの場合で有罪になったとしても、7年以下の懲役か禁錮もしくは100万円以下の罰金が科されます。
しかし、但し書きで相手の怪我の度合いが軽かった場合には刑が免除されることもあるとされています。

ひき逃げ

道路交通法第72条第1項は、交通事故を起こした際に講じなければならない措置について規定しています。
道路交通法第72条第1項が規定しているその義務として代表的なものは、救護義務と報告義務が挙げられます。
すなわち、人身事故を起こした際に、負傷者の救護(救護義務)、警察官への事故の報告(報告義務)を行わなかった場合は道路交通法第72条第1項に違反することになります。

ひき逃げは、救護義務違反や報告義務違反をした場合の総称ですので、人身事故を起こしたにも関わらず救護や報告を行わなかった場合に、ひき逃げを疑われることになります。

救護義務違反で有罪になった場合は1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条の5第1項第1号)
また、報告義務違反で有罪になった場合は3月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されることになります。(道路交通法第119条第1項第10号)

ひき逃げを疑われ、無罪に

ひき逃げの自覚がないのに、ひき逃げだと疑われた場合は有罪になるのでしょうか。

これからご紹介するのは千葉県で起きたひき逃げ事件の裁判例です。
この裁判では、被告側がひき逃げについて無罪を主張しており、事故当時の被告人の行為がひき逃げにあたるのかについて争われました。

千葉県長生村職員の男性は、29歳の男性をひき逃げし、死亡させてしまいました。
職員の男性は「人をひいたという認識はなかった」として、ひき逃げについて否認しており、無罪を主張していました。
ひき逃げについて争われた裁判では、職員の男性が、ごみなどをひいたと認識し、人をひいたと認識していなかったと考えられることや、深夜の車道に人が横たわっていると想定することは困難であることなどから、裁判官は職員の男性にひき逃げの容疑について無罪を言い渡しました。
なお、過失運転致死罪の裁判では、職員の男性は有罪になり、50万円の罰金が科されています。
(2017年9月16日 千葉日報 「村職員に無罪判決 「人の認識ない」と千葉地裁 長生ひき逃げ事件」より)

ひき逃げ事件については、「ひき逃げをしてしまった」という認識のないまま容疑をかけられているケースも存在します。
ご紹介した無罪判決のようなケースもありますので、ひき逃げの容疑を否認しているという場合には、早期に弁護士に相談することで、見通しや可能な弁護活動、適切な取調べ対応等を把握して刑事手続きに臨むことが期待できます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
ひき逃げを疑われている方や、かけられた容疑を否認していて悩んでいる方は、刑事事件でお困りの方はぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)死亡事故誘発で実刑判決に 過失運転致死傷罪の事例

2022-09-15

(事例紹介)死亡事故誘発で実刑判決に 過失運転致死傷罪の事例

~事例~

群馬県の北関東自動車道でおととし、乗用車がガードレールに衝突し2人が死亡した事故で、タブレット端末の操作に気をとられて乗用車に接近し事故を誘発した罪に問われた元会社役員に対し、前橋地方裁判所は「注意散漫な運転をしたのは見過ごしがたく刑事責任は重い」として禁錮2年の判決を言い渡しました。

群馬県の北関東自動車道でおととし12月、乗用車がガードレールに衝突し女性2人が死亡、2人が重軽傷を負った事故では、(中略)被告(55)が時速100キロほどで走行中、タブレット端末の操作に気をとられて、後ろから走ってきた乗用車に気づかないまま接近し事故を誘発したとして過失運転致死傷の罪に問われていました。
これまでの裁判で被告は起訴内容を認め、検察は禁錮4年を求刑していました。
18日の判決で、前橋地方裁判所の柴田裕美裁判長は「とりわけ注意深い運転が要求される高速道路で基本的な注意義務を怠り録画番組を見ていたタブレットを操作したのは全く不必要な行動で過失の程度は大きい」などと指摘しました。
また、被告の車が乗用車が走行していた車線に全部、または大部分入っていたという検察側の主張について「証拠に疑義が残る」と指摘する一方で、被告について「それまで交通違反で複数回検挙されていたのに、注意散漫な運転をしたのは見過ごしがたく刑事責任は重い」などと述べ、禁錮2年の判決を言い渡しました。
(後略)
(※2022年8月18日17:14NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~事故を誘発して過失運転致死傷罪~

今回取り上げた事例では、男性が死亡事故を誘発したとして過失運転致死傷罪で起訴され、禁錮2年の実刑判決が下されたと報道されています。
この事例では、当初は死亡事故の被害者の方の単独事故として捜査されていたところ、同乗の被害者の方の証言などから単なる単独事故ではないと捜査の方針が転換されたという経緯があります(参考記事)。
報道によると、被告の男性は、タブレット端末を操作しながら車線変更を行ったことで、被害者の方の運転する自動車に接近する形となり、それを避けようとした被害者の方の運転する自動車がガードレールに衝突する事故となってしまったという内容のようです。

過失、すなわち不注意による人身事故・死亡事故は、いわゆる自動車運転処罰法の中で定められている、過失運転致死傷罪が成立することが多いです。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

例えば、よそ見運転で自動車と衝突する事故を起こしてしまったり、周囲の確認不足で通行人と接触する事故を起こしてしまったりした場合には、この過失運転致死傷罪が成立することが考えられます(相手が怪我をしてしまったのか亡くなってしまったのかという結果の違いで成立する犯罪も異なります。)。
一般にイメージされる過失運転致死傷事件は、自分自身が人身事故や死亡事故の当事者として車や歩行者に衝突したり接触したりしているものでしょう。

しかし、今回取り上げた事例では、被告の男性が運転する車が被害者の方の運転する自動車に接触・衝突したわけではなく、被告の男性が運転する車の挙動によって被害者の方の運転する自動車が事故を起こしてしまったという内容です。
「自身の運転する車が接触・衝突しているわけではない」という部分に違和感を感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで過失運転致死傷罪の条文を確認してみましょう。
条文には、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」ことで過失運転致死傷罪が成立することが定められています。
過失運転致死傷罪の成立する条件としては、あくまで「自動車の運転上必要な注意を怠」ることによって人を死傷させることが定められています。
ですから、今回の事例のように、自動車の運転中によそ見をしていた=「自動車の運転上必要な注意を怠」ったことにより死亡事故を誘発させ、被害者の方を死亡させ、同乗者の方に怪我を負わせたということであっても過失運転致死傷罪が成立し得るということになります。

人身事故・死亡事故も、自身が直接接触をしたものだけに限らず、様々なケースが想定されます。
ご自身・ご家族が人身事故・死亡事故を起こしてしまったというときに、それがどういった犯罪に当たり得るのか、どういった見通し・手続となるのかを迅速に把握することで、次に取るべき適切な活動も見えてきます。
まずは弁護士に相談してみましょう。

0120-631-881では、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の初回接見サービスや初回無料法律相談のお問い合わせ・お申し込みを受け付けています。
交通事件についても取扱っていますので、まずはお気軽にお電話ください。

【事例紹介】飲酒運転によるひき逃げ 過失運転致傷罪で再逮捕

2022-09-01

【事例紹介】飲酒運転によるひき逃げ 過失運転致傷罪で再逮捕

滋賀県で起きた飲酒運転によるひき逃げ事件を基に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が酒気帯び運転、ひき逃げ、過失運転致傷罪について解説します。

事例

滋賀県警大津署は22日、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の疑いで、京都市山科区の無職の男(72)を再逮捕した。

再逮捕容疑は21日午前11時40分ごろ、大津市皇子が丘1丁目の国道161号西大津バイパスで酒気帯び状態で乗用車を運転し、同じ方向を走っていた乗用車2台と衝突して運転手と同乗者の男女計3人の首などに軽傷を負わせ、そのまま逃げた疑い。

(後略)
(8月22日 京都新聞 「酒気帯び運転、車2台と衝突の男を再逮捕 飲酒検査拒否後、ひき逃げ容疑認める」より引用 )

酒気帯び運転

酒気帯び運転は道路交通法第65条第1項で禁止されています。

道路交通法では酒気帯び運転をした場合の罰則が設けられていますが、お酒に酔った状態かそうでないかで科される刑罰の重さが変わります。
お酒に酔い、正常な運転ができない状態で運転した場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条の2第1項)
これはいわゆる「酒酔い運転」と呼ばれる種類の飲酒運転です。
対して、「酒酔い運転」ほど激しく酔いの症状が出ていないものの、政令で定める程度以上のアルコールを保有する状態で運転した場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条の2の2第3項)
一般にはこちらを指して「酒気帯び運転」と呼ばれることもあります。

今回の事例の男性が酒気帯び運転で有罪になれば、正常な運転ができない程にお酒に酔っていた場合は道路交通法第117条の2第1項、政令で定める程度以上のアルコールを保有していたが酔っていなかった場合は道路交通法第117条の2の2第3項によって刑罰を科されることになります。

ひき逃げ

ひき逃げについても、酒気帯び運転と同様に道路交通法で処罰されます。

道路交通法第72条第1項
交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

負傷者の救護や警察署への事故の報告などを行わずに事故現場から逃げた場合、ひき逃げになります。

ひき逃げによる道路交通法違反で科される刑罰は、負傷者の救護を行わなかった場合(救護義務違反)と警察署に報告をしなかった場合(報告義務違反)で、差があります。
負傷者の救護を行わなかった場合は5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条第1項)
一方で、警察署に報告をしなかった場合は3月以上の懲役または5万円以下の罰金が科されることになります。(道路交通法第119条第1項第10号)

今回の事例では救護義務違反、報告義務違反のどちらが適用されるのでしょうか。
今回の事例では男性は事故後そのまま逃げ去っていると書かれています。
おそらく救護や警察署への報告はしていないのでしょう。
ですので、救護義務違反、報告義務違反の両方の罪に問われることになります。
有罪となってしまった場合は、ひき逃げにより、救護義務違反と報告義務違反の2つの罪に問われていますので、救護義務違反と報告義務違反のうち、より重い方の刑罰が科されることになります。(刑法第54条)
救護義務違反の方が科される刑罰が重くなっていますので、今回の事例の男性は5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。

過失運転致傷罪

過失運転致傷罪は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)で規定されており、過失により人を負傷させた場合に適用されます。

過失運転致傷罪で有罪となった場合は、7年以下の懲役か禁錮または100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)

過失運転致死傷罪、ひき逃げ、酒気帯び運転は、有罪になれば懲役刑を科される可能性があります。
弁護士に相談することにより懲役刑を避けることができる場合があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では逮捕された方に初回接見サービスを行っています。
初回接見サービスのご予約は0120―631―881までご連絡ください。
初回接見サービスについての詳細はこちらをご覧ください。

【事例紹介】滋賀県大津市の酒気帯び運転事故

2022-08-25

【事例紹介】滋賀県大津市の酒気帯び運転事故

滋賀県大津市で起こった酒気帯び運転による事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警大津北署は13日、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで、滋賀県守山市、無職の男(63)を逮捕したと発表した。

逮捕容疑は12日午後9時35分ごろ、大津市今堅田2丁目で酒気帯び状態で軽乗用車を運転した疑い。

同署によると、男は信号待ちをしていた男性(27)=大津市=の軽乗用車に追突した。男性は首などに軽傷を負ったという。
(8月13日 京都新聞 「酒気帯び運転で信号待ち軽乗用車に追突、男性にけが負わせる 容疑で男逮捕」より引用)

酒気帯び運転

酒気帯び運転は道路交通法第65条第1項で禁止されています。

酒気帯び運転が発覚した場合は、その程度によって、
5年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法第117条の2第1項)
3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第3項)
のどちらかが科されるおそれがあります。

この2つの条文の違いをおおまかに説明しますと、正常な運転ができないほどに酔っている場合は第117条の2第1項が適用され(いわゆる酒酔い運転)、それ以外で一定程度のアルコールの数値が出た場合では第117条の2の2第3項が適用されるといったイメージです。
ですので、物理的に同じ量のアルコールを摂取していても正常な運転ができないほど酔っていると判断された場合には、より罪が重くなる可能性があります。

では、今回取り上げた事例について考えていきましょう。
先ほど挙げた通り、飲酒運転をしてアルコール数値が一定程度出るような状態で運転した場合には酒気帯び運転となり、酔いの程度が強く正常な判断ができないような場合には酒酔い運転としてより重く処罰されるという決まりになっています。
今回の事例では、報道によると男性は酒気帯び運転で摘発されているようですから、少なくともアルコールの数値が一定程度検出されたと考えられます。
もしも男性が千鳥足でしか歩けなかったりろれつが回っていなかったりといった事情があったのであれば、正常な判断ができないほど酔っていると判断され、酒酔い運転としてより重く処罰される可能性も出てきます。

今回の事例では、報道の段階では酒気帯び運転による道路交通法違反のみが適用されていましたが、酒気帯び運転により人を死傷させてしまった場合には、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪が適用される場合もあります。
報道では、信号待ちをしていた男性に怪我をさせたという内容もありましたから、逮捕された男性がこれから過失運転致傷罪などに問われる可能性もあるといえます。
飲酒運転の末の人身事故となれば、悪質性が高いと判断されてより厳しい処罰が下されることも予想されますから、早い段階から弁護活動を開始してもらうことをおすすめします。
道路交通法違反に限らず、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの交通事件でお困りの際には、刑事事件を中心に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)積み荷の落下から過失運転致傷事件に問われた事例

2022-08-18

(事例紹介)積み荷の落下から過失運転致傷事件に問われた事例

~事例~

トラックに積載していたポリタンクを落下させ、後続のオートバイの運転手らにけがを負わせて逃走したとして、大阪府警南堺署は13日、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、(中略)容疑者(65)を逮捕した。
(中略)
逮捕容疑は8日午後0時55分ごろ、堺市南区槇塚台の市道で2トントラックを運転中、積み荷のポリタンク(縦横ともに約80センチ、高さ約100センチ、重さ約10キロ)を落下させ、ポリタンクが直撃した後続のバイクの運転手らにけがをさせるなどしたのに逃走したとしている。
(後略)
(※2022年8月13日12:32産経新聞配信記事より引用)

・積み荷の落下で人身事故に

今回取り上げた事例では、トラックに積載していた積み荷が落下し、それによって人に怪我をさせてしまったという経緯で、容疑者が過失運転致傷罪ひき逃げによる道路交通法違反の容疑で逮捕されています。
逮捕容疑の1つである過失運転致傷罪は、いわゆる自動車運転処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)に定められている犯罪で、人身事故事件で成立することの多い犯罪です。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

人身事故というと、自動車同士の衝突事故や、通行人への衝突事故・接触事故が思い浮かびやすいですが、今回の事例では、トラックに積載していた積み荷が落下してしまい、その積み荷によって後続のオートバイを運転していた人などが怪我をしてしまったということのようです。
自動車運転処罰法の過失運転致傷罪を定めている条文を見ると、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」ことが過失運転致傷罪成立の要件となっています。
この「自動車の運転上必要な注意を怠」るという部分については、例えばよそ見運転やながら運転など、運転の仕方に関するものが代表的です。
しかし、「自動車の運転上必要な注意」とは、こうした運転すること自体に求められる注意だけでなく、運転する際の車や積み荷の状態への注意も含まれると考えられます。
道路交通法では、以下のようにして運転者の自動車の積み荷についての遵守事項を定めています。

道路交通法第71条第1項
車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
第4号 乗降口のドアを閉じ、貨物の積載を確実に行う等当該車両等に乗車している者の転落又は積載している物の転落若しくは飛散を防ぐため必要な措置を講ずること。
第4号の2 車両等に積載している物が道路に転落し、又は飛散したときは、速やかに転落し、又は飛散した物を除去する等道路における危険を防止するため必要な措置を講ずること。

道路交通法第120条第1項
次の各号のいずれかに該当する者は、5万円以下の罰金に処する。
第9号 第71条(運転者の遵守事項)第1号、第4号から第5号まで(中略)の規定に違反した者

つまり、道路交通法では、運転する際に、積み荷が落下しないように措置を講じる必要があり、もしも積み荷が落下してしまった場合には、落下した積み荷を道路から除去するなど、その積み荷が原因で道路上の危険が生じないようにしなければならず、それに反することは道路交通法違反となり犯罪になるということになります。

今回の事例で、積み荷がどのように積まれていたのかまでは定かではありませんが、固定などが不十分なまま積み荷を積んでいて落下させてしまったなどの事情があれば、道路交通法上の遵守事項を守らなかったことで積み荷を落下させて人を負傷させてしまった=「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」とされ、過失運転致傷罪に問われた可能性もあります。

道路交通法などの特別法には、細かく義務や遵守事項が定められており、一般の方だけでは、どういった罪に問われているのか、なぜその犯罪の容疑をかけられているのかといったことが分かりづらい場合もあります。
自身になぜその犯罪の容疑がかけられているのか、見通しはどういったものなのかということを正確に把握することは、その後の刑事手続きに適切に対応していく上で重要となります。
まずは専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、人身事故事件などの交通事件についてのご相談も受け付けています。
まずはお気軽にご相談下さい。

[事例紹介]京都市南区のひき逃げ事件で逮捕された事例

2022-07-14

[事例紹介]京都市南区のひき逃げ事件で逮捕された事例

京都市南区で起きたひき逃げ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

京都府警南署は4日、自動車運転処罰法(過失傷害)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、京都市南区のアルバイトの男(40)を逮捕した。 
逮捕容疑は、同日午前9時すぎ、自宅近くで乗用車を運転中、東山区の女性会社員(50)の自転車に衝突、腰を打撲する軽傷を負わせ、そのまま逃げた疑い。
(7月5日 京都新聞  「自転車の女性に衝突、ひき逃げ疑いで車の男逮捕 女性はけが」より引用)

過失運転致死傷罪とひき逃げ(救護義務違反)

過失運転致死傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律自動車運転処罰法)第5条で、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と定められています。
不注意で起こしてしまった人身事故の場合には、過失運転致死傷罪が成立するケースが多いため、多くの人身事故事件でこの過失運転致死傷罪が問われることになります。

そして、このような人身事故を起こしてしまった場合、救護義務が発生します。
救護義務は道路交通法第72条で規定されており、これに違反した場合は、ひき逃げ(救護義務違反)となります(他にも報告義務や危険防止措置義務などの義務も発生し、これらを果たさなかった場合にも犯罪となり、これらもひき逃げと呼ばれたりします。)。
ひき逃げ(救護義務違反)をした場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金、自分の運転により事故を引き起こしてしまったにもかかわらずひき逃げ(救護義務違反)をした場合は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。(道路交通法第117条)

今回取り上げた報道の事例では、逮捕された男性は自分で運転していた車で被害女性と衝突し怪我を負わせる人身事故を起こしています。
報道では事故の原因が何だったのかということには具体的に触れていませんが、男性が過失運転致傷罪の容疑をかけられていることから、男性側に不注意(過失)があり、それが事故の原因となってしまった可能性があります。
そして、先ほど見てきたように、こうした人身事故を起こした場合には、被害者(今回の事例であれば女性会社員)を救護するなどの義務が男性に発生するのですが、男性はその義務を果たさずに現場から立ち去ってしまっているようですから、この行為についてひき逃げという容疑がかけられているのでしょう。

こうした報道は度々流されていることから、過失運転致死傷罪ひき逃げといった罪名や行為についてなんとなくご存知であるという方も少なくないでしょう。
では、実際のひき逃げ(救護義務違反)過失運転致死傷罪の裁判では、どういった判断が下されているのでしょうか。
以下では、ひき逃げ(救護義務違反)過失運転致死傷罪の裁判例を紹介します。

ひき逃げ(救護義務違反)の裁判例

この裁判例では、被告人は自動車を運転中に進路前方で倒れていた被害者を轢き、救護や報告などを行わずに事故現場を去りました。
被告人は既に自動車運転過失致死罪(過失運転致死罪)で有罪となっており、さらにひき逃げ(救護義務違反・報告違反)で起訴され裁判となりました。
裁判の結果、被告人のひき逃げ(救護義務違反・報告違反)が認められ、懲役6月執行猶予2年が言い渡されました。
(平成30年1月19日 名古屋地方裁判所)

過失運転致死傷罪の裁判例

この裁判例では、被告人は車を運転中に注意義務を怠り、歩行者に衝突しました。
被告人は、過失運転致死傷罪で有罪となり、禁錮3年執行猶予4年になりました。
(令和2年3月19日 名古屋地方裁判所)

人身事故事件やひき逃げ事件も取り扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、初回無料法律相談を行なっております。
過失運転致死傷罪ひき逃げ(救護義務違反)でお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)過失運転致傷罪の疑いで現行犯逮捕された事例

2022-06-30

(事例紹介)過失運転致傷罪の疑いで現行犯逮捕された事例

今回は、報道を基に、過失運転致傷罪の疑いで現行犯逮捕されてしまった場合の刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

21日未明、愛知県春日井市の国道で横断歩道を歩いていた20歳の女性が車にはねられ、意識不明の重体です。
警察は車を運転していた25歳の男を現行犯逮捕しました。
(中略)
警察は乗用車を運転していた春日井市の自称会社員の25歳の男を、過失運転致傷の現行犯で逮捕しました。
調べに対し、男は容疑を認め「友人を家に送る途中で、自分は青信号だった」などと話していて、警察は事故の詳しい原因を調べています。
(6月21日6:33YAHOO!JAPAN配信記事より引用)

~過失運転致死傷罪~

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。

~過失運転致死傷事件の弁護活動~

過失運転致傷事件において重要となる弁護活動の1つに、被害者との示談交渉が挙げられます。
有効な示談が成立すれば、相手の怪我の程度にもよりますが、不起訴処分を獲得できる可能性もあり、起訴された場合においても、執行猶予付き判決など有利な判決を獲得できる可能性が高まります。

一方で、自分の運転に過失がなかったとして無実を訴えることも考えられます。
自身が全く無過失ではなかったとしても、相手方の想定外の行動により被害が重大なものになったのであれば、過失が相殺され、処分が軽くなる可能性もあります。

どういった主張をするにせよ、過失運転致死傷事件を起こしてしまった場合においては、まず刑事事件に詳しい弁護士と相談し、事件解決に向けたアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、過失運転致死傷事件などを含む刑事事件・少年事件を多数取り扱う法律事務所です。
過失運転致死傷事件についてお困りの方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【解決事例】飲酒運転によるひき逃げで執行猶予付き判決

2022-05-19

【解決事例】飲酒運転によるひき逃げで執行猶予付き判決

事件

Aさんは、飲酒した後にバイクを飲酒運転して帰路に着いていました。
しかし、Aさんの自宅がある埼玉県さいたま市浦和区に差し掛かったころ、Vさんの運転する原付自動車と接触する交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは、交通事故を起こしてしまったことに驚き、さらに、飲酒運転をしていたこともあり、とっさに現場から立ち去ってしまいました。
通行人が通報し、Aさんは、道路交通法違反(飲酒運転ひき逃げ)と過失運転致傷罪の容疑で埼玉県浦和警察署に逮捕されましたが、すぐに釈放されました。
釈放後、Aさんは今後の刑事手続きに不安を感じ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用し、弁護活動を依頼することにしました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

事件解決の流れ

Aさんは、飲酒運転ひき逃げ行為による道路交通法違反と、過失運転致傷罪の容疑で起訴されました。
相談を受けた弁護士は、執行猶予付きの判決を獲得するための弁護活動を行いました。

Aさんが飲酒運転によって起こしたひき逃げ事故により、Vさんは脚を骨折し、病院で治療を受けていました。
そこで、弊所の弁護士は、Vさんに代理人としてついていた弁護士と交渉し、Vさんへの謝罪や賠償の交渉を行いました。
Vさんへの誠意を見せられるよう、弁護士と相談の上、AさんはVさんへの賠償のために用意したお金を保管するための口座を作り、その口座から一切お金を引き出さずにVさんの賠償のためにとっておくなどして、Vさんへ被害弁償するための準備を行いました。
加えて、AさんはVさんに対する謝罪文を作成し、弁護士を通じてVさんへ謝罪文をお渡しし、Aさんの反省とお詫びの気持ちを受け取っていただくことができました。

そして、弁護士は、Aさんに、飲酒運転によって事故を起こしたことにより向き合ってもらうために、飲酒運転による交通事故に遭った被害者やその遺族が書いた手記を読むことを勧めました。
手記を読んだAさんは飲酒運転をしてしまったことを深く反省し、刑事裁判の場でも反省の言葉を述べました。
また、Aさんは今後飲酒を控え、バイクや鍵を母親に管理してもらうなどのことで、再犯防止に努めました。

弁護士は公判で、Aさんが飲酒運転による事故やひき逃げ行為を深く反省していること、被害弁償用のお金を用意し謝罪文をVさんに渡していることからVさんに対する誠意が伺えること、再犯防止に努めていること、事故当時の状況でAさんに有利な事情もあったことなどを訴え、執行猶予付きの判決を求めました。

その結果、Aさんは執行猶予付きの判決が言い渡されました。
執行猶予判決が下されたため、Aさんが直ちに刑務所に入ることはなくなり、Aさんは社会内ですぐに社会復帰に向けて活動を開始することができました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、数々の執行猶予付き判決を獲得してきました。
飲酒運転ひき逃げなど、交通事件の執行猶予についてお悩みのある場合には、一度お気軽にご相談ください。
0120―631―881では初回接見サービス、無料法律相談のご予約を受け付けております。

(事例紹介)バイクで引きずり殺人未遂罪の疑いで逮捕された事例

2022-05-12

(事例紹介)バイクで引きずり殺人未遂罪の疑いで逮捕された事例

今回は、職務質問をしようとした警察官をバイクで引きずり、運転手が殺人未遂罪の疑いで逮捕されたケースにつき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

4月22日深夜、東大阪市の路上で、職務質問をしようとした警察官をバイクで引きずり殺害しようとした疑いで、同月24日、20代男性が逮捕されました。
男性は警察官から職務質問を受けた際、バイクを急発進させ、制止した警察官を引きずったまま、約1.5キロにわたり走行した疑いがもたれています。
男性は「無免許がばれるのが怖くてバイクを急発進させて逃げたが、引きずった認識はない」として被疑事実を否認しています。(4月24日 毎日新聞 「バイクで警察官引きずり 殺人未遂容疑で22歳を逮捕 東大阪」より引用)

~故意に人身事故を起こすと殺人未遂罪になる?~

殺人未遂罪が成立するためには、殺人罪の実行に着手される必要があります。
殺人罪の実行に着手したかどうかは、行為者が殺意をもって他人の生命に対する現実的危険性のある行為を開始したかどうかによって判断されます。
殺意の有無は、凶器の有無やその形状、行為の危険性などにより判断されます。
これにより、実際に被害者が死亡した場合には殺人罪の既遂となります。

自動車やバイクを故意に他人にぶつけるなどした場合、生命への危険が非常に大きいことから、殺人(未遂)罪が適用されるケースが多いようです。
例えば先日も、昨年8月に那覇市内の道路で被害者とトラブルになり、車を時速23~25キロメートルの速度で被害者に衝突させ殺害しようとしたとして殺人未遂罪に問われた30代男性被告人に対し、那覇地裁が懲役2年6月保護観察付き執行猶予4年の刑を言い渡したというケースが見られました(3月25日 沖縄タイムス 「後続車と交通トラブル、車を降りて近づいてきた被害者に… 殺人未遂で有罪判決」を参照)。

当然ですが、殺人未遂罪は大変な重罪であり、裁判員裁判対象事件でもあります(裁判員裁判法第2条1項1号)。
早期に弁護士を依頼し、捜査や裁判に向けた対策を講じる必要性が高いと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件の取り扱いを中心とする法律事務所です。
自身やご家族が、人身事故などに関わる刑事事件殺人未遂罪に問われ、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【解決事例】大阪府の人身事故事件で不起訴獲得

2022-04-28

【解決事例】大阪府の人身事故事件で不起訴獲得

~事例~

Aさんは、大阪府高槻市内の道路で自動車を運転中、不注視によってVさんの運転するバイクと衝突する人身事故を起こしてしまいました。
Vさんは2週間の入院を要する怪我を負ってしまい、Aさんは大阪府高槻警察署過失運転致傷罪の被疑者として捜査されることとなりました。
Aさんは、被害者の方に謝罪するための被害者対応をどのようにすればよいのかというお悩みと、Aさん自身がみなし公務員として働いていたため前科がつくことを避けたいというお悩みがあり、ご相談のために弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にいらっしゃいました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

~弁護活動と結果~

Aさんは任意保険に加入していたため、金銭面での被害弁償は保険を通じて行われました。
それに加えて、弁護士が被害者であるVさんとお会いしてお話しし、Aさんの反省や謝罪をお伝えすることで、Vさんから刑罰を求めない旨の嘆願書をいただくことができました。
嘆願書の中には、Aさんの反省・謝罪と真摯な対応を受けたことからAさんを許し、Aさんに対する刑事処罰を望んでいないということ、Aさんが失職することも望んでいないので報道なども避けてほしいということ、Aさんに対して寛大な処分を求めるということを書いていただきました。

こうしたVさんからの嘆願書や、Aさんの反省の程度、今後の再犯防止策などを弁護士から検察官に訴えたところ、Aさんの人身事故事件不起訴処分で終了することとなりました。

不起訴処分で事件が終了したため、Aさんには前科がつくこともありませんでした。
不起訴処分となったため、Aさんは失職することもなく、仕事を継続することができました。

人身事故事件では、被害者の怪我の程度なども処分を決める重要な事情ですが、被害者への謝罪や弁償ができているのかどうか、被害者感情がどのようなものかといった事情も起訴・不起訴や起訴された場合の刑罰の重さに影響する重要な事情です。
迅速かつ適切に被害者対応を行うことや、それらの経緯・結果を適切なタイミングで適切に示していくことが、より有利な処分の獲得に求められることでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、人身事故事件を含む刑事事件少年事件のご相談・ご依頼を承っております。
人身事故事件に悩まれている方は、お気軽にご相談ください(予約受付:0120-631-881)。

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