(事例紹介)死亡事故誘発で実刑判決に 過失運転致死傷罪の事例

2022-09-15

(事例紹介)死亡事故誘発で実刑判決に 過失運転致死傷罪の事例

~事例~

群馬県の北関東自動車道でおととし、乗用車がガードレールに衝突し2人が死亡した事故で、タブレット端末の操作に気をとられて乗用車に接近し事故を誘発した罪に問われた元会社役員に対し、前橋地方裁判所は「注意散漫な運転をしたのは見過ごしがたく刑事責任は重い」として禁錮2年の判決を言い渡しました。

群馬県の北関東自動車道でおととし12月、乗用車がガードレールに衝突し女性2人が死亡、2人が重軽傷を負った事故では、(中略)被告(55)が時速100キロほどで走行中、タブレット端末の操作に気をとられて、後ろから走ってきた乗用車に気づかないまま接近し事故を誘発したとして過失運転致死傷の罪に問われていました。
これまでの裁判で被告は起訴内容を認め、検察は禁錮4年を求刑していました。
18日の判決で、前橋地方裁判所の柴田裕美裁判長は「とりわけ注意深い運転が要求される高速道路で基本的な注意義務を怠り録画番組を見ていたタブレットを操作したのは全く不必要な行動で過失の程度は大きい」などと指摘しました。
また、被告の車が乗用車が走行していた車線に全部、または大部分入っていたという検察側の主張について「証拠に疑義が残る」と指摘する一方で、被告について「それまで交通違反で複数回検挙されていたのに、注意散漫な運転をしたのは見過ごしがたく刑事責任は重い」などと述べ、禁錮2年の判決を言い渡しました。
(後略)
(※2022年8月18日17:14NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~事故を誘発して過失運転致死傷罪~

今回取り上げた事例では、男性が死亡事故を誘発したとして過失運転致死傷罪で起訴され、禁錮2年の実刑判決が下されたと報道されています。
この事例では、当初は死亡事故の被害者の方の単独事故として捜査されていたところ、同乗の被害者の方の証言などから単なる単独事故ではないと捜査の方針が転換されたという経緯があります(参考記事)。
報道によると、被告の男性は、タブレット端末を操作しながら車線変更を行ったことで、被害者の方の運転する自動車に接近する形となり、それを避けようとした被害者の方の運転する自動車がガードレールに衝突する事故となってしまったという内容のようです。

過失、すなわち不注意による人身事故・死亡事故は、いわゆる自動車運転処罰法の中で定められている、過失運転致死傷罪が成立することが多いです。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

例えば、よそ見運転で自動車と衝突する事故を起こしてしまったり、周囲の確認不足で通行人と接触する事故を起こしてしまったりした場合には、この過失運転致死傷罪が成立することが考えられます(相手が怪我をしてしまったのか亡くなってしまったのかという結果の違いで成立する犯罪も異なります。)。
一般にイメージされる過失運転致死傷事件は、自分自身が人身事故や死亡事故の当事者として車や歩行者に衝突したり接触したりしているものでしょう。

しかし、今回取り上げた事例では、被告の男性が運転する車が被害者の方の運転する自動車に接触・衝突したわけではなく、被告の男性が運転する車の挙動によって被害者の方の運転する自動車が事故を起こしてしまったという内容です。
「自身の運転する車が接触・衝突しているわけではない」という部分に違和感を感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで過失運転致死傷罪の条文を確認してみましょう。
条文には、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」ことで過失運転致死傷罪が成立することが定められています。
過失運転致死傷罪の成立する条件としては、あくまで「自動車の運転上必要な注意を怠」ることによって人を死傷させることが定められています。
ですから、今回の事例のように、自動車の運転中によそ見をしていた=「自動車の運転上必要な注意を怠」ったことにより死亡事故を誘発させ、被害者の方を死亡させ、同乗者の方に怪我を負わせたということであっても過失運転致死傷罪が成立し得るということになります。

人身事故・死亡事故も、自身が直接接触をしたものだけに限らず、様々なケースが想定されます。
ご自身・ご家族が人身事故・死亡事故を起こしてしまったというときに、それがどういった犯罪に当たり得るのか、どういった見通し・手続となるのかを迅速に把握することで、次に取るべき適切な活動も見えてきます。
まずは弁護士に相談してみましょう。

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