Archive for the ‘自動車運転死傷行為処罰法’ Category

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例①

2023-07-19

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例①

睡眠障害をもつバスの運転手追突事故を起こし、危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

睡眠障害を自覚しながら路線バスを運転して事故を起こし、乗客7人に重軽傷を負わせたとして、警視庁は29日、バス会社(中略)社員の男(60)(東京都町田市)を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検した。(中略)
捜査関係者によると、男は(中略)睡眠障害で正常な運転ができない恐れがあると認識しながら、東京都町田市内で路線バスを運転。居眠りして住宅の外壁に衝突し、10~60歳代の乗客の男女7人に顔の骨を折るなどの重軽傷を負わせた疑い。
男は事故直後、「貧血を起こしたような感じで記憶がなくなった」と説明した。警視庁が持病を捜査したところ、医師から睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、呼吸を楽にする装置を就寝時に着けるよう指導されていたのに、着けていなかったことなどが判明したという。
(中略)は取材に「産業医からは(SASの)治療を受けながらの通常勤務が可能との診断を受けていた」としている。
(6月30日 読売新聞オンライン 「「睡眠障害」自覚しながら路線バス運転、7人重軽傷事故…「危険運転」適用し書類送検」より引用)

持病と危険運転致傷罪

危険運転致傷罪は、刑法ではなく、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」といいます。)の第2条、3条に規定されています。

自動車運転死傷行為処罰法第3条
1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

自動車運転行為処罰法第3条2項が規定しているように、車の運転に支障をきたすような持病があり、その持病により事故を起こしてけがをさせた場合は、危険運転致傷罪が適用される可能性があります。

今回の事例では、容疑者に睡眠障害があり、居眠り運転により衝突事故を起こしたとされています。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令第3条6号では、運転に支障を及ぼすおそれがある病気として、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害を挙げていますので、容疑者が罹患している睡眠時無呼吸症候群が車の運転に支障をきたす持病にあたる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群睡眠障害のひとつであり、症状として日中の眠気が挙げられます。
容疑者が睡眠障害を自覚しながら、睡眠時無呼吸症候群の症状による日中の眠気が原因で事故を起こしたのであれば、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決の獲得や罪の減軽など、あなたにとって良い結果を得られる可能性があります。
危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までお電話くださいませ。

次回のコラムでは、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた際の弁護活動についてご紹介します。

【事例紹介】事故の後続車に急ブレーキを踏ませ過失運転致傷罪

2023-01-05

【事例紹介】事故の後続車に急ブレーキを踏ませ過失運転致傷罪

事故を起こした車の後続車に急ブレーキを踏ませ逮捕された事件を基に、過失運転致傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務が解説します。

事例

京都府警下京署は6日、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、滋賀県湖南市の派遣社員の男(47)を逮捕した。
逮捕容疑は(中略)軽乗用車を運転中に、対向車線にはみ出してタクシーと衝突。タクシーの後ろを走っていた乗用車に急ブレーキをかけさせ、助手席の会社員男性(33)=北区=に頭部打撲のけがを負わせた疑い。
下京署によると、(中略)道交法違反(無免許運転)の疑いでも捜査している。(中略)男の呼気から基準値未満のアルコールが検出されたという。
(12月6日 京都新聞 「京都・四条通で対向車線にはみ出しタクシーに衝突、後続車の男性にけが負わせる 容疑の男逮捕」より引用)

過失運転致傷罪

車の運転中に注意を怠って人にけがを負わせた場合は、過失運転致傷罪が成立し、有罪になると7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)

今回の事例では、容疑者の運転する車が対向車線にはみ出してタクシーと衝突し、その影響で、タクシーの後ろを走行していた車が急ブレーキをかけたことにより助手席の男性が頭部に打撲を負ったと報道されています。
報道が事実であれば、容疑者がタクシーに追突したことによってタクシーの後続車が急ブレーキをかけることになり、搭乗していた男性が打撲を負ったという流れになり、打撲の原因は容疑者が事故を起こしたことによるものであると考えられ、容疑者の運転により男性がけがを負ったといえるでしょう。
今回の事例の内容からすると、容疑者の車が直接的に被害者の男性に打撲を負わせたわけではありませんが、容疑者の運転によって起こった事故が原因で後続車の男性が怪我を負っているという経緯により、容疑者に過失運転致傷罪の容疑がかけられたものと考えられます。

加えて、今回の事例の事故は、対向車線にはみ出したことが原因だと報道されています。
実際に対向車線をはみ出して走行していたのであれば、運転をするのに必要な注意を怠っていたのだと考えられるでしょう。
ですので、報道内容が事実であった場合には、容疑者は過失運転致傷罪に問われることになります。

無免許運転と過失運転致傷罪

報道によれば、容疑者は無免許運転の疑いでも捜査されています。

無免許運転は道交法第64条第1項で禁止されています。
これに違反し、有罪になった場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。(道交法第117条の2の2第1項第1号)
ですので、容疑者が実際に無免許運転を行っており、有罪になった場合には上記の刑罰が科されることになります。

先述の通り、今回の事例の容疑者は過失運転致傷罪の容疑で逮捕されています。
過失運転致傷罪は無免許運転だった場合に罪が過重されます。
ですので、実際に容疑者が報道のとおりに事故を犯し、なおかつ無免許運転だった場合には、有罪になると、10年以下の懲役刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第6条第4項)

事故を起こして人にけがを負わせてしまうと、多くの場合は過失運転致傷罪に問われることになります。
しかし、過失運転致傷罪は相手のけがの程度が軽かった場合には、刑が免除されることがあります。
ですので、事故を起こして人にけがを負わせたからといって、必ずしも刑罰が科されるわけではありません。
さらに、けがの程度が軽くない場合でも、示談など被害弁償や謝罪を行っている場合には、不起訴処分になることがあります。

また、示談交渉を行う際に、事故を起こした本人や家族からの連絡を嫌がられる被害者もいます。
そういった場合でも、弁護士を介してであれば話を聞いてもらえることがありますので、示談交渉を行う際には、弁護士を介して行うことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
過失運転致傷罪、道交法違反、刑事事件の示談交渉でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談くださいませ。

(事例紹介)年末年始の飲酒運転に注意~道路交通法違反で逮捕された事例

2022-12-29

(事例紹介)年末年始の飲酒運転に注意~道路交通法違反で逮捕された事例

年末年始は、忘年会や新年会、親戚同士の集まりなどにより、飲酒する機会が多くなるという方もいらっしゃるでしょう。
特に、ここしばらくはコロナ禍の影響で行動制限のある年末年始となっていましたが、今回は特に行動制限のかかっていない年末年始期間ということもあり、久しぶりの忘年会・新年会をしたという方や、数年ぶりに親戚一同で集まったという方も多いのではないでしょうか。

こうした中で、飲酒運転による道路交通法違反事件や、飲酒運転をしての交通事故が増加してしまう懸念があります。
実際に、年末の時点で飲酒運転飲酒運転をしての交通事故で逮捕されたという事例が全国各地で、複数報道されています。

~事例1~

福岡県で25日、酒を飲んで車を運転したとして、自称会社員の男2人が逮捕されました。
(略)
また、25日午前7時ごろには、福岡市博多区で酒を飲んで車を運転し、対向車線の車に衝突したとして、福岡県筑紫野市の自称会社員(略)が酒気帯び運転の疑いで逮捕されました。
(略)容疑者は「アルコールは抜けていると思った」と話し、容疑を否認しているということです。
(※2022年12月26日8:50YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)

~事例2~

三重県警名張署は12月27日、道路交通法違反(飲酒運転)の疑いで、伊賀市の会社員の男(52)を現行犯逮捕したと発表した。容疑を認めているという。
発表によると、同日午前1時15分ごろ、伊賀市桐ケ丘2の市道で、飲酒して普通乗用車を運転した疑い。
同署によると、道沿いに停まっていたトラックに男が運転する車が前から衝突する事故が発生。警察官が駆け付けたところ、男から酒の臭いがしたため飲酒検知し、呼気から基準値以上のアルコールが検出された。事故により、トラックのそばで作業をしていた男性が右足を負傷したという。
(略)
(※2022年12月27日伊賀タウン情報ユー配信記事より)

~事例3~

埼玉県警川口署は23日、道交法違反(酒気帯び)の疑いで、川口市西青木2丁目、無職の男(74)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は同日午前10時ごろ、同市青木5丁目の市道で、酒気を帯びた状態で軽自動車を運転し、前方の自動車計2台を巻き込む交通事故を起こした疑い。
同署によると、男は蕨方面から都内に進行中、前方で減速中の普通自動車(40代男性運転)に追突。同車は、前方で停止中の大型貨物自動車(50代男性運転)に衝突した。40代男性が軽傷を負った。50代男性からの110番で署員が駆け付けたところ、男の呼気からは1リットル当たり0・2ミリグラムのアルコールが検出された。その後の調べで、男は無免許で、事故直後に一度逃げていたことなどが分かり、同署は無免許、危険運転致傷、ひき逃げ、事故不申告の罪で送致する予定。男は飲酒運転の容疑は認めているという。
(※2022年12月25日13:41YAHOO!JAPANニュース配信記事より)

ご存知の方も多いように、飲酒運転はそれだけで道路交通法違反となる犯罪行為です。
「忘年会から帰宅するだけ」「新年会の途中で買出しに行くだけ」と軽く考えてはいけません。
飲酒運転自体も刑事事件となる犯罪行為ですし、飲酒運転をして交通事故を起こせば、単に不注意で交通事故を起こした際よりも重く処罰されることになります。
また、交通事故後に飲酒運転の発覚を免れようとすれば、それもまた別の犯罪(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)が成立することになります。

さらに、場合によっては危険運転致死傷罪に問われる可能性も出てきます。
実際に、ご紹介した事例の3つ目では、飲酒運転をして事故を起こした男性が危険運転致傷罪の容疑で送致予定とされています。
報道だけではこの男性が危険運転致傷罪のどの要件に当たっていると考えられているのかは不明ですが、飲酒運転によって危険運転致死傷罪の容疑がかけられ得るということは間違いありません。

飲酒運転は、やろうとすれば簡単にできてしまう行為かもしれませんが、飲酒運転自体に定められている刑罰も「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」もしくは「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」(道路交通法第117条の2、同法第117条の2の2)と重いものとなっています。
加えて、先ほども触れた通り、飲酒運転をして交通事故を起こしたということになれば、さらに成立する犯罪が加わり、重い刑罰が下されることが想定されます。
飲酒の機会が増える年末年始だからこそ、飲酒運転をしない・させないということをより強く意識することはもちろんですが、それでも当事者となってしまったら、早い段階から弁護士に相談し、刑事手続に備えることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、飲酒運転に関わる刑事事件のご相談・ご依頼も承っています。
年末年始弁護士のスケジュール次第では即日対応も可能となっていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

【事例紹介】ひき逃げ・飲酒運転・犯人隠避罪で逮捕された事例

2022-12-08

【事例紹介】ひき逃げ・飲酒運転・犯人隠避罪で逮捕された事例

滋賀県で起きた交通事故により、飲酒運転や犯人隠避を疑われ逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警東近江署は1日、自動車運転処罰法違反(過失致傷)と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の疑いで東近江市の足場設置業の男(26)を、犯人隠避容疑で男の妻(26)を逮捕した。
男の逮捕容疑は(中略)酒気帯び状態でトラックを運転し、同市能登川町の交差点で乗用車と衝突し、運転していた女性(55)に肋骨骨折などの重傷を負わせ逃げた疑い。妻は自分が運転していたとうその申告をした疑い。2人は容疑を否認しているという。
(12月1日 京都新聞 「男が酒気帯び運転でひき逃げ疑い 「自分が運転していた」虚偽申告疑い妻も逮捕」より引用)

過失運転致傷罪

過失運転致傷罪は、自動車運転処罰法第5条で規定されています。
過失運転致傷罪は、運転中に必要な注意を怠り、人にけがを負わせた場合に問われる罪で、有罪になった場合には7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)

なお、後述のように、今回の事例の容疑者は、過失運転致傷罪だけでなく酒気帯び運転の容疑もかけられています。
過失運転致傷罪は、先ほど紹介したように、注意を怠った=過失により交通事故を起こし、人を負傷させた際に成立する犯罪ですが、飲酒運転の影響が著しく大きいことにより交通事故を起こしたという場合には、別の犯罪が成立することもあります。
アルコールにより正常な運転が困難であったと判断された場合には、過失運転致傷罪ではなく危険運転致傷罪の容疑をかけられる可能性があります。
その場合に有罪になれば、危険運転致死傷罪15年以下の懲役ですので、過失運転致傷罪よりも重い量刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第2条第1号)
過失運転致傷罪飲酒運転(道路交通法違反)という犯罪に問われるのか、危険運転致傷罪という犯罪に問われるのかは、事故当時どれほど酔っていたのか、それによって運転にどれほど影響があったのかなどの事情によって判断されることになります。

ひき逃げ

人身事故を起こした際に、被害者の救護や事故の報告を行わなかった場合は、ひき逃げにあたります。

事故により人にけがを負わせ、救護しなかった場合には5年以下の懲役または50万円以下の罰金が、その事故が救護を行わなかった運転者に起因する場合は10年以下の罰金または100万円の罰金が有罪になった際にそれぞれ科されることになります。(道交法第117条)
ですので、実際に容疑者男性の運転が原因で事故を起こし、被害者の救護を行っていなかった場合には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、事故不申告で有罪になった場合には、3月以下の懲役か5万円以下の罰金が科されることになります。(道交法第119条第1項第17号)

酒気帯び運転

先ほども触れましたが、飲酒運転酒気帯び運転についてもひき逃げと同様に道交法で規定されています。

容疑者の男性が報道のとおりに酒気帯び運転を行っていた場合には、有罪になると、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されます。(道交法第117条2の2第1項第3号)
また、千鳥足であったりろれつが回っていなかったりといった酔いの程度がひどい状態であった場合には、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されることになります。(道交法第117条の2第1項第1号)

犯人隠避罪

犯人隠避罪は、簡単に説明すると、罰金刑以上の重さの刑罰が科される罪を犯した者を、匿まったり、証拠を隠滅する以外の方法で警察官に逮捕や犯人だと発覚しないように手助けをした場合に成立します。

今回の報道によると、容疑者の女性は、男性が運転していたにもかかわらず、自分が運転していたと申告したとされています。
報道内容が事実であった場合には、女性が事故を起こした男性の身代わりになることで、男性が逮捕されたり嫌疑がかけられないように手助けしてることになるため、犯人隠避罪の容疑をかけられたということなのでしょう。
犯人隠避罪で有罪になった場合には、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。(刑法第103条)

なお、犯人隠避罪は、犯人の親族が隠避を行った際には刑が免除される場合があります。(刑法第105条)
ですので、もしも今回の事例の容疑者が隠避行為を行っていたとしても、刑罰を科されない可能性があります。

今回の事例では、報道によると容疑者らは容疑を否認しているとのことです。
容疑を否認している場合、容疑を認めている場合に比べて警察官の取調べが厳しくなる可能性があります。
厳しい取調べが行われる中で、親身に相談に乗る弁護士の存在はあなたや家族にとって支えになるかもしれません。
冤罪や過失運転致傷罪、犯人隠避罪などの刑事事件でお困りの方は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】無免許運転によるひき逃げ事故で逮捕(京都市伏見区)

2022-10-27

【事例紹介】無免許運転によるひき逃げ事故で逮捕(京都市伏見区)

無免許運転交通事故を起こしそのまま逃亡(ひき逃げ)した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

京都府警伏見署は17日、自動車運転処罰法違反(無免許過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、京都市伏見区、解体業の男(29)を逮捕した。
逮捕容疑は、(中略)無免許でオートバイを運転中、前方を走行していた会社員女性(36)の軽乗用車に追突し、首に捻挫を負わせ、そのまま逃げた疑い。
(後略)
(10月18日 京都新聞 「無免許で軽乗用車に追突、運転女性にけが負わせ逃走 ひき逃げ疑いで男逮捕」より引用)

無免許運転による過失運転致傷罪

おおまかに説明すると、運転中の過失により人にけがを負わせた場合は、過失運転致傷罪が適用されます。

今回の事例の報道によると、おそらく容疑者の男性は被害者が運転する車に追突しようと思って追突したのではないでしょうから、運転中に何かしらの過失があり追突してしまったのだと考えられます。
そして、追突された被害者は首に捻挫(けが)を負っているので、容疑者の男性には過失運転致傷罪の容疑がかけられています。
なお、もしも今回の事例の容疑者が、過失ではなく、被害者にけがを負わせるつもりで追突した場合は傷害罪などの別の罪が適用されることになります。

今回の事例のように、無免許運転により過失運転致傷罪に問われるような事故を起こした場合は、免許を所持した状態での過失運転致傷罪に比べて罪が重くなります。
過失運転致傷罪の量刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(自動車運転処罰法第5条)ですが、無免許運転だった場合には10年以下の懲役(自動車運転処罰法第6条第4項)になります。

報道によると、容疑者の男性は無免許運転をしていたとされており、この報道が事実であれば、容疑者の男性が過失運転致傷罪で有罪になった場合、執行猶予が付かない限り懲役刑が科されることになります。

ひき逃げ

道路交通法第72条第1項では、事故を起こした場合について、以下のことをしなければならないと定めています。

①負傷者の救護
②事故現場等の安全の確保
③警察官への事故の報告

以上の3つは事故を起こした際に必ずしなければならないことですので、今回の事例のように事故を起こしてそのまま事故現場から逃げた場合は道路交通法違反(ひき逃げ)になります。

また、①負傷者の救護や②事故現場の安全の確保を行わずに道路交通法違反で有罪になった場合は、以下のような量刑が科されます。
(ア)被害者がけがをしていた場合
5年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条第1項)

(イ)被害者のけがが加害者の運転に起因するものであった場合
10年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法第117条第2項)

(ウ)被害者がけがをしていなかった場合
1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法第117条の5第1号)

今回の事例で考えてみると、被害者は捻挫(けが)を負っていますので、(ア)か(イ)のどちらかのパターンが考えられます。
今回の事例の場合、容疑者の過失がなければ追突しなかった場合には、(イ)の容疑者本人の運転が原因でけがをした場合が適当だと考えられます。
しかし、もしも被害者側にも事故の原因の一端があった場合(例えば急ブレーキをかけたなど)には、(ア)が適用されるかもしれません。

ですので、報道内容が事実であった場合に、①負傷者の救護、②安全確保を行わずに道路交通法違反で有罪になれば、容疑者の男性は(ア)~(イ)の中で一番重い10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、③事故を申告せずに道路交通法違反で有罪になった場合には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第119条第1項第10号)が科されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強い法律事務所です。
刑事事件に強い弁護士を付けアドバイスや示談交渉のサポートを受けることによって、手続をスムーズかつ有利に進められることが期待できます。
また、今回の事例のように逮捕されてしまっている場合には、できるだけ早く釈放に向けた弁護活動を行う必要があります。
交通事故により、捜査・逮捕された方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

2022-10-13

(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

~事例~

滋賀県警草津署は25日、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、滋賀県守山市に住むフィリピン国籍の飲食店経営の女(28)を逮捕した。
逮捕容疑は、同日午前1時41分ごろ、滋賀県栗東市で軽乗用車を運転し、左折するため減速した甲賀市の男性(48)のオートバイに追突、首にけがを負わせてそのまま逃げた疑い。
(※2022年5月26日20:30京都新聞配信記事より引用)

~ひき逃げをした際の刑罰は?~

今回取り上げた事例では、ひき逃げの容疑で女性が逮捕されています。
よく「ひき逃げ」と呼ばれる行為は、「事故を起こしてそのまま逃げた」というイメージだと思われます。
この「ひき逃げ」は、実は正式な犯罪名ではありません。

そもそもひき逃げとは、人身事故を起こした後、道路交通法に定められている義務を果たさずにそのまま事故現場から離れることを指します。
道路交通法では、人身事故を起こしてしまった場合、負傷者を救護する義務(いわゆる「救護義務」)や、警察署などに通報し事故を報告する義務(いわゆる「報告義務」)、道路上の危険を防止する措置をする義務(いわゆる「危険防止措置」)を定めています。
よくイメージされる「事故を起こして逃げた」ひき逃げは、義務を果たさずに事故現場から逃げていることになる=これらの義務に反するため、道路交通法違反という犯罪になるのです。

加えて、ひき逃げ事件の場合、そもそも人身事故を起こしているということにも注意が必要です。
この時成立する罪は、人身事故がどのように起きたか、例えば、わき見運転などの不注意による人身事故なのか、赤信号を殊更に無視するなどの危険運転行為による人身事故なのかといった事情によって異なります。
不注意=過失によって起こった人身事故であれば、今回取り上げた事例同様、自動車運転処罰法に定められている過失運転致傷罪となるでしょう。

なお、この際に無免許運転や飲酒運転といった事情があれば、当然その分も罪が成立することになります。

おさらいをすると、ひき逃げ事件では、人身事故を起こしたこと自体による過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪、義務を果たさなかったこと(ひき逃げ)による道路交通法違反という2つの犯罪が成立します。
さらに、無免許運転や飲酒運転の事情があれば、上記2つの犯罪に加えてその犯罪も成立します。
今回取り上げた事例でも、女性の逮捕容疑は過失運転致傷罪と道路交通法違反という2つの犯罪になっています。

ひき逃げ事件では、単なる不注意による人身事故よりも成立する犯罪の数が増えていることだけでなく、義務を果たさずにその場から離れるという悪質性の高い行為をしていることからも、起訴され正式な刑事裁判を受ける可能性や厳しい処分を受ける可能性が高いと考えられます。

例えば、過去には以下のような裁判例があります。
・普通貨物自動車の運転中、横断歩道上の歩行者に気が付かず衝突し、加療約11日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、被害者との示談が成立し懲役10月執行猶予3年となった事例(判決:平成26年5月)
・普通乗用車の運転中、一時停止標識を無視して一時停止をせず、普通乗用車と衝突し、同乗者に加療約22日間の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年執行猶予4年が言い渡された事例(判決:平成26年8月)
・普通乗用自動車の運転中、前方左右の安全確認を怠り、被害者と衝突し、加療約94日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年6月執行猶予3年が言い渡された事例(判決:平成25年4月)
(参照:第一東京弁護士会刑事弁護委員会・編(2018)『量刑調査報告集Ⅴ』第一東京弁護士会)

もちろん、刑罰の重さは人身事故の態様や原因、被害者が亡くなっているのか、けがの重さはどの程度か、被害弁償はできているのかといった様々な事情に左右されますので、詳細な見通しなどは弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げ事件に関連したご相談・ご依頼も承っています。
在宅捜査されている方向けの初回無料法律相談から、逮捕・勾留中の方向けの初回接見サービスまで、様々なご事情に合わせたサービスをご用意していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

(事例紹介)無免許運転などの身代わり出頭をさせて犯人隠避教唆罪

2022-10-06

(事例紹介)無免許運転などの身代わり出頭をさせて犯人隠避教唆罪

~事例~

無免許運転で事故を起こして逃げた内縁の夫の代わりに、親族の女性を出頭させたとして、大阪府警八尾署は26日、犯人隠避教唆の疑いで、(中略)容疑者(51)を逮捕した。容疑を認めているが、「逃げたのは(内縁の夫ではなく)運転していた知り合いの男だ」と供述している。
同署は、事故を起こした同居する内縁の夫(中略)も自動車運転処罰法違反(無免許過失致傷)容疑などで逮捕。「事故を起こした車は運転していない。後部座席に乗っていた」と容疑を否認している。

(中略)容疑者(※注:「内縁の夫」とされる男性)の逮捕容疑は8月7日午前、同府八尾市末広町の府道で乗用車を無免許で運転し、別の乗用車に接触。運転していた50代男性らを負傷させ、そのまま逃走したとしている。(中略)容疑者(※注:犯人隠避教唆罪の容疑者)は同日、(中略)容疑者(※注:「内縁の夫」とされる男性)が事故を起こしたと知りながら、自身の親族の20代女性を身代わりとして同署に出頭させたとしている。
(後略)
(※2022年9月26日16:54産経新聞配信記事より引用。ただし注釈は追記したものです。)

~身代わり出頭と犯人隠避罪~

今回取り上げた事例では、無免許運転で事故を起こした身代わり出頭をさせた容疑者が犯人隠避教唆罪の容疑で逮捕されたと報道されています。
こうした身代わり出頭に関連するケースは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所でも度々相談に来られる方がいらっしゃいます。
身代わり出頭に関連したケースでは、今回の事例でも登場している犯人隠避罪という犯罪が問題となることが多いです。

刑法第103条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

刑法第103条では、今回取り上げる犯人隠避罪のほか、犯人蔵匿罪と呼ばれる犯罪も同時に定めています。
どちらも犯罪の嫌疑をかけられて捜査されている最中の者を対象に隠しだてしたり逃がしたりなどすることで成立する犯罪であり、した行為が隠避なのか蔵匿なのかによって犯人隠避罪が成立するのか犯人蔵匿罪が成立するのかが異なります。

ここでいう「蔵匿」とは、簡単にいえば場所を提供して匿う行為を指します。
例えば、刑事事件の被疑者を自宅で匿うような行為は犯人蔵匿罪に当たります。
一方、「隠避」とは、「蔵匿」以外の方法で犯人を逃がしたり逃亡の支援をしたりして、捜査や逮捕を免れさせる行為を指します。
例えば、逃亡資金を渡したり、車に乗せて遠方まで逃がしたりといった行為は「隠避」に当たると考えられます。
今回の事例のような、身代わり出頭をすることや、身代わりを立てることもこの「隠避」に当たります。

しかし、この犯人隠避罪犯人蔵匿罪には、特別な規定があります。
それが刑法第105条に定められている特例です。

刑法第105条
前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
(※注:「前二条の罪」とは、刑法第103条の犯人蔵匿罪・犯人隠避罪と、刑法第104条の証拠隠滅罪を指します。)

この特例は、犯人の親族が犯人を思って逃がそうとしてしまうのは、人間として自然な感情であると理解されていることによります。
しかし、この特例ではあくまで「その刑を免除する『ことができる』」という表現にとどまっているため、犯人蔵匿罪犯人隠避罪を犯したのが親族だからといって、必ずしも刑罰を受けないとは限らないということに注意が必要です。

今回の事例について当てはめてみましょう。
報道によると、そもそも身代わり出頭自体は、無免許運転や事故を起こしたとされている容疑者の内縁の妻の親族の女性がしているようです。
ですから、この女性には犯人隠避罪が成立するということになりそうです。
さらに、この女性からすると、無免許運転や事故を起こしたとされている容疑者は「親族の内縁の夫」という立ち位置であり、親族ではありませんから、刑法第105条の特例も適用されないでしょう。

そして、今回取り上げた事例で逮捕されている容疑者は、犯人隠避「教唆」の容疑がかけられているようです。
この「教唆」とは、大まかにいえば他人をそそのかして犯罪をさせることを指します。
今回の事例では、報道の内容によれば、身代わり出頭をした女性が自発的に身代わり出頭をしたのではなく、逮捕された容疑者が身代わり出頭をさせたという経緯のようです。

刑法第61条第1項
人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

「正犯」とは、簡単に言えば、実際にその犯罪をした人のことを指します。
つまり、犯人隠避罪の教唆をした場合、実際に犯人隠避罪をした人と同じ刑罰の範囲で刑罰を受けることになります。
すなわち、犯人隠避教唆罪で有罪となれば、犯人隠避罪同様「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」という範囲で処罰されます。

無免許運転などの交通違反に関連する犯罪などについては、「交通違反程度なら身代わりになってもよい」などと軽く考えてしまい、身代わり出頭をしてしまったり身代わり犯人を用意してしまったりということがおきやすいのかもしれません。
しかし、身代わり出頭によってさらなる犯罪が成立してしまい、より重い処罰が下る可能性もあるため、身代わり出頭は決しておすすめできません。

もしも身代わり出頭をしてしまった、身代わり出頭させてしまったということで刑事事件の当事者になってしまった場合には、その後の刑事手続に適切に対応するためにも、まずは弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした身代わり出頭事件のご相談・ご依頼も承っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

(事例紹介)神戸市 危険運転致傷及びひき逃げの疑いで逮捕された事例

2022-09-29

(事例紹介)神戸市 危険運転致傷及びひき逃げの疑いで逮捕された事例

今回は、神戸市危険運転致傷及びひき逃げの疑いで男性が逮捕された事件につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

9月13日、神戸市兵庫区で自転車に乗った男性が赤信号を無視した車にはねられたひき逃げ事件で、会社員の男が逮捕されました。
危険運転傷害とひき逃げの疑いで逮捕されたのは、(中略)容疑者(46)です。
警察によりますと、(中略)容疑者は13日午前6時前、神戸市兵庫区で車を運転中、赤信号を無視して交差点に進入し、自転車に乗って横断歩道を渡っていた男性(40代)をはねてそのまま逃げた疑いがもたれています。
(後略)
(9月15日 TBS NEWS DIG 「自転車の男性がはねられ重体のひき逃げ事件…46歳会社員の男を逮捕 神戸・兵庫区」より引用)

~ひき逃げ事件の検挙スピード~

引用したニュースによれば、今回取り上げた事例の容疑者が事故を起こしたのは9月13日午前6時前とありますが、その事故の同日、警察に出頭し、その後逮捕されています。
ひき逃げ事件においては、危険運転致死傷事件のような重大事件を伴っていると、事件から数日中に被疑者が逮捕されることが珍しくありません。
事故を起こしたあと、逃げきれるだろうと思い逃亡を図ること自体、無謀であり、罪を重ねることにもなります。

このような事故を起こしてしまった場合は、すぐに被害者の救護等を行い、弁護士と相談することがベストと考えられます。
逮捕されてしまった場合であっても、弁護士の接見は受けられます。
被害者に対する損害賠償、真摯な謝罪など、加害者においてするべきことは数多くあります。
まずは弁護士から事件解決に向けたアドバイスを受け、今後の対策を立てていく必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
危険運転致傷事件ひき逃げ事件でお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】滋賀県長浜市 過失運転致傷罪・ひき逃げ容疑で逮捕

2022-09-22

【事例紹介】滋賀県長浜市 過失運転致傷罪・ひき逃げ容疑で逮捕

滋賀県長浜市で起きた交通事故を基に、過失運転致傷罪ひき逃げについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警木之本署は8日、中型トラックを運転中に自転車の男性に衝突してけがを負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、岐阜県輪之内町のトラック運転手の男(69)を逮捕した。 

逮捕容疑は、8日午前2時10分ごろ、滋賀県長浜市西浅井町塩津浜の国道8号で中型トラックを運転中、自転車の湖南市の男性(27)に後方から衝突し、尻に打撲を負わせて、そのまま逃げた疑い。(中略)容疑を否認している。
(9月9日 京都新聞 「トラックで自転車に衝突、ひき逃げ疑い男を逮捕 滋賀・長浜、けが負わす」 より引用)

過失運転致傷

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車の運転上必要な注意を怠った過失により人を死傷させてしまった場合は、自動車運転処罰法第5条の過失運転致死傷罪が適用されます。
過失による交通事故で人を死なせてしまった場合も怪我をさせてしまった場合も同じ条文が適用されますので、どちらの場合で有罪になったとしても、7年以下の懲役か禁錮もしくは100万円以下の罰金が科されます。
しかし、但し書きで相手の怪我の度合いが軽かった場合には刑が免除されることもあるとされています。

ひき逃げ

道路交通法第72条第1項は、交通事故を起こした際に講じなければならない措置について規定しています。
道路交通法第72条第1項が規定しているその義務として代表的なものは、救護義務と報告義務が挙げられます。
すなわち、人身事故を起こした際に、負傷者の救護(救護義務)、警察官への事故の報告(報告義務)を行わなかった場合は道路交通法第72条第1項に違反することになります。

ひき逃げは、救護義務違反や報告義務違反をした場合の総称ですので、人身事故を起こしたにも関わらず救護や報告を行わなかった場合に、ひき逃げを疑われることになります。

救護義務違反で有罪になった場合は1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条の5第1項第1号)
また、報告義務違反で有罪になった場合は3月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されることになります。(道路交通法第119条第1項第10号)

ひき逃げを疑われ、無罪に

ひき逃げの自覚がないのに、ひき逃げだと疑われた場合は有罪になるのでしょうか。

これからご紹介するのは千葉県で起きたひき逃げ事件の裁判例です。
この裁判では、被告側がひき逃げについて無罪を主張しており、事故当時の被告人の行為がひき逃げにあたるのかについて争われました。

千葉県長生村職員の男性は、29歳の男性をひき逃げし、死亡させてしまいました。
職員の男性は「人をひいたという認識はなかった」として、ひき逃げについて否認しており、無罪を主張していました。
ひき逃げについて争われた裁判では、職員の男性が、ごみなどをひいたと認識し、人をひいたと認識していなかったと考えられることや、深夜の車道に人が横たわっていると想定することは困難であることなどから、裁判官は職員の男性にひき逃げの容疑について無罪を言い渡しました。
なお、過失運転致死罪の裁判では、職員の男性は有罪になり、50万円の罰金が科されています。
(2017年9月16日 千葉日報 「村職員に無罪判決 「人の認識ない」と千葉地裁 長生ひき逃げ事件」より)

ひき逃げ事件については、「ひき逃げをしてしまった」という認識のないまま容疑をかけられているケースも存在します。
ご紹介した無罪判決のようなケースもありますので、ひき逃げの容疑を否認しているという場合には、早期に弁護士に相談することで、見通しや可能な弁護活動、適切な取調べ対応等を把握して刑事手続きに臨むことが期待できます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
ひき逃げを疑われている方や、かけられた容疑を否認していて悩んでいる方は、刑事事件でお困りの方はぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)死亡事故誘発で実刑判決に 過失運転致死傷罪の事例

2022-09-15

(事例紹介)死亡事故誘発で実刑判決に 過失運転致死傷罪の事例

~事例~

群馬県の北関東自動車道でおととし、乗用車がガードレールに衝突し2人が死亡した事故で、タブレット端末の操作に気をとられて乗用車に接近し事故を誘発した罪に問われた元会社役員に対し、前橋地方裁判所は「注意散漫な運転をしたのは見過ごしがたく刑事責任は重い」として禁錮2年の判決を言い渡しました。

群馬県の北関東自動車道でおととし12月、乗用車がガードレールに衝突し女性2人が死亡、2人が重軽傷を負った事故では、(中略)被告(55)が時速100キロほどで走行中、タブレット端末の操作に気をとられて、後ろから走ってきた乗用車に気づかないまま接近し事故を誘発したとして過失運転致死傷の罪に問われていました。
これまでの裁判で被告は起訴内容を認め、検察は禁錮4年を求刑していました。
18日の判決で、前橋地方裁判所の柴田裕美裁判長は「とりわけ注意深い運転が要求される高速道路で基本的な注意義務を怠り録画番組を見ていたタブレットを操作したのは全く不必要な行動で過失の程度は大きい」などと指摘しました。
また、被告の車が乗用車が走行していた車線に全部、または大部分入っていたという検察側の主張について「証拠に疑義が残る」と指摘する一方で、被告について「それまで交通違反で複数回検挙されていたのに、注意散漫な運転をしたのは見過ごしがたく刑事責任は重い」などと述べ、禁錮2年の判決を言い渡しました。
(後略)
(※2022年8月18日17:14NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~事故を誘発して過失運転致死傷罪~

今回取り上げた事例では、男性が死亡事故を誘発したとして過失運転致死傷罪で起訴され、禁錮2年の実刑判決が下されたと報道されています。
この事例では、当初は死亡事故の被害者の方の単独事故として捜査されていたところ、同乗の被害者の方の証言などから単なる単独事故ではないと捜査の方針が転換されたという経緯があります(参考記事)。
報道によると、被告の男性は、タブレット端末を操作しながら車線変更を行ったことで、被害者の方の運転する自動車に接近する形となり、それを避けようとした被害者の方の運転する自動車がガードレールに衝突する事故となってしまったという内容のようです。

過失、すなわち不注意による人身事故・死亡事故は、いわゆる自動車運転処罰法の中で定められている、過失運転致死傷罪が成立することが多いです。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

例えば、よそ見運転で自動車と衝突する事故を起こしてしまったり、周囲の確認不足で通行人と接触する事故を起こしてしまったりした場合には、この過失運転致死傷罪が成立することが考えられます(相手が怪我をしてしまったのか亡くなってしまったのかという結果の違いで成立する犯罪も異なります。)。
一般にイメージされる過失運転致死傷事件は、自分自身が人身事故や死亡事故の当事者として車や歩行者に衝突したり接触したりしているものでしょう。

しかし、今回取り上げた事例では、被告の男性が運転する車が被害者の方の運転する自動車に接触・衝突したわけではなく、被告の男性が運転する車の挙動によって被害者の方の運転する自動車が事故を起こしてしまったという内容です。
「自身の運転する車が接触・衝突しているわけではない」という部分に違和感を感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで過失運転致死傷罪の条文を確認してみましょう。
条文には、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」ことで過失運転致死傷罪が成立することが定められています。
過失運転致死傷罪の成立する条件としては、あくまで「自動車の運転上必要な注意を怠」ることによって人を死傷させることが定められています。
ですから、今回の事例のように、自動車の運転中によそ見をしていた=「自動車の運転上必要な注意を怠」ったことにより死亡事故を誘発させ、被害者の方を死亡させ、同乗者の方に怪我を負わせたということであっても過失運転致死傷罪が成立し得るということになります。

人身事故・死亡事故も、自身が直接接触をしたものだけに限らず、様々なケースが想定されます。
ご自身・ご家族が人身事故・死亡事故を起こしてしまったというときに、それがどういった犯罪に当たり得るのか、どういった見通し・手続となるのかを迅速に把握することで、次に取るべき適切な活動も見えてきます。
まずは弁護士に相談してみましょう。

0120-631-881では、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の初回接見サービスや初回無料法律相談のお問い合わせ・お申し込みを受け付けています。
交通事件についても取扱っていますので、まずはお気軽にお電話ください。

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