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無免許運転の成立要件と罰則

2023-09-27

日本の道路交通法において、無免許運転は厳しく取り締まられています。
この記事では、無免許運転の成立要件とそれに伴う罰則について、具体的な事例を交えて詳しく解説します。

1. 無免許運転の定義

無免許運転とは、道路交通法に基づいて、運転免許を持っていない状態で自動車を運転する行為を指します。
この定義は非常に広く、いくつかのケースが含まれます。

免許未取得: 全く運転免許を取得していない状態での運転
免許の不適用: 免許を取得しているが、その免許が適用されない車種(例:二輪車免許しかないのに四輪車を運転する)
有効期限切れ: 免許の有効期限が切れている状態での運転

例えば、普通自動車の免許しか持っていないのに大型トラックを運転する場合、この「免許の不適用」に該当します。
また、免許の有無を確認することは運転者自身の責任であり、無知や過失は免責要件にはなりません。

以上が無免許運転の基本的な定義です。
次のセクションでは、この無免許運転が法的にどのように成立するのかについて詳しく見ていきます。

2. 成立要件について

無免許運転の成立要件は、基本的に以下の三点に集約されます。

運転行為: 被告が自動車を運転していたこと
免許の不所持または不適用: 被告が適切な運転免許を持っていない、または持っているがその免許が適用されない車種での運転であること
公道での運転: 運転が公道(一般道、高速道路など)で行われたこと
これらが揃った場合、無免許運転として罰せられる可能性が高くなります。
特に、「公道での運転」は重要なポイントで、人の往来のない私有地での運転は一般的には罰せられません(ただし、事故を起こした場合などは別)。

成立要件の確認は、一般的には警察が行い、証拠が揃った場合に検察官へ送検されます。
成立要件が確認できない場合、例えば、公道での運転でなかった、運転していたのは他の人物であった等、無免許運転の疑いが晴れるケースもあります。

以上が無免許運転の成立要件です。
次のセクションでは、これに対する具体的な罰則について詳しく解説します。

3. 罰則の内容

無免許運転に対する罰則は、道路交通法に基づき厳格に定められています。

無免許運転により道路交通法違反で有罪になった場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(道路交通法第117条の2の2)。
一度罰せられた後に再度無免許運転を行うと、罰則はさらに重くなる場合が多いです。
また、無免許運転により交通事故を起こした場合、刑罰だけでなく、民事責任も問われる可能性があります。
これにより、多額の賠償責任を負うことになる可能性も考慮しなければなりません。

さらに、無免許運転は自分だけでなく、他の道路利用者にも大きなリスクをもたらす行為です。
したがって、このような行為は、社会全体で非常に厳しく取り締まられています。

4. 無免許運転と人身事故

人身事故により、人にけがを負わせてしまった場合の多くで、過失運転致傷罪が成立します。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第5条で、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています。

また、過失運転致傷罪は、無免許運転の場合には加重規定が定められており、10年以下の懲役に処されることになります(自動車運転処罰法第6条4項)。
つまり、無免許運転により人身事故を起こし、人にけがを負わせた場合には罰金規定がないことから、有罪になってしまうと懲役刑が科されることになります。

5. 無免許運転の影響:保険と賠償責任

無免許運転がもたらす罰則は刑事面だけでなく、保険や賠償責任にも大きな影響を与えます。

自動車保険の無効化
無免許で運転して事故を起こした場合、多くの自動車保険は適用されなくなります。
この場合、全ての賠償責任が運転者の個人負担となる可能性が高いです。

第三者への賠償責任
無免許運転によって他人に損害を与えた場合、賠償責任が発生します。
事故によっては、数百万~数千万円の賠償責任が生じることもあります。

保険料の高騰
事故を起こした後、何らかの方法で免許を取得しても、過去の無免許運転が原因で保険料が高騰する場合があります。

前科の将来への影響
無免許運転で有罪になった場合には、罰金刑や懲役刑が科されることになります。
罰金刑であっても、有罪になってしまえば前科が付くことになります。
前科が付くことで、就職や転職の際に不利な状況になる可能性があります。

無免許運転の影響は、一時的なものではなく、長期にわたって多方面でリスクが続く可能性があります。
このようなリスクを十分に理解した上で、運転を行うことが重要です。

6. 無免許運転を防ぐための対策

無免許運転は多くのリスクを伴うため、違法行為を未然に防ぐ対策が求められます。
以下は、いくつかの主要な対策です。

免許の種類の把握
1つでも免許を取ればすべての車両を運転できるわけではありません。
原動機付自動車の免許では自動車は運転できませんし、普通車の免許では大型車の運転はできません。
ですので、運転をする前に、自分が取得した免許で運転が可能な車両を把握しておくことが重要になります。

免許更新の重要性
有効期限が切れた免許証では運転ができません。
更新時期になったら速やかに手続きを行い、常に有効な免許証を所持することが必要です。

7. まとめと今後の注意点

無免許運転は、刑事罰だけでなく、事故を起こした場合には民事面でのリスクも多く、無免許運転にならないための対策が非常に重要です。

罰則の厳格性
無免許運転を行った場合には、罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。

賠償責任と保険
無免許運転での事故では、相手の怪我の程度によっては高額な賠償責任が伴う可能性が高く、保険も適用されない場合が多いです。

社会的リスク
無免許運転であっても有罪になると前科が付きます。
前科があることで就職や転職に支障をきたす可能性があるなど、長期的に見ても多くのリスクがあります。

防止策の重要性
免許の有効期限の確認、運転できる車両の確認などの対策が必要です。

無免許運転に関わるリスクをしっかりと認識し、法律を守って安全な運転を心がけることが、自分自身と他者を守る最良の方法になります。

(事例紹介)電動キックボードでひき逃げした事例②~過失致傷罪~

2023-09-20

(事例紹介)電動キックボードでひき逃げした事例②~過失致傷罪~

前回のコラムに引き続き、電動キックボードで歩行者をひき逃げしたとして、道路交通法違反の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

電動キックボードで歩行者をひき逃げしたとして、警視庁池袋署は、道交法違反(ひき逃げ)などの疑いで、埼玉県吉川市、(中略)容疑者(23)を再逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。調べに対し「当たってはいないが、女性が転倒したのは私が原因だと思う」と容疑を一部否認している。
再逮捕容疑は、(中略)電動キックボードを運転中、東京都豊島区東池袋の歩道で、商業施設から出てきた60代の女性と衝突し、肋骨(ろっこつ)骨折などの重傷を負わせたが、立ち去ったとしている。
(中略)容疑者が乗っていた電動キックボードはレンタルしたもので、歩道を走行できない機種だった。(後略)
(9月11日 産経新聞 THE SANKEI NEWS  「電動キックボードでひき逃げ 女を再逮捕 警視庁」より引用)

電動キックボードと過失致傷罪

今回の事例では、容疑者が運転する電動キックボードが被害者に衝突し、被害者が肋骨を骨折したと報道されています。
電動キックボードで人にけがを負わせた場合には、罪に問われるのでしょうか。

車で事故を起こし、人にけがを負わせると過失運転致傷罪が成立する場合があります。

過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます)第5条で、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています。

原動機付自転車は、車と同様に自動車運転処罰法が規定する「自動車」に該当します。(自動車運転処罰法第1条1項)
前回のコラムで解説したように、電動キックボード原動機付自転車にあたりますので、電動キックボードであっても、運転上必要な注意を怠って人にけがを負わせた場合には、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

では今回の事例では過失運転致傷罪は成立するのでしょうか。

今回の事例では、容疑者が歩道を電動キックボードで走行し、被害者と衝突したと報道されています。
一部の電動キックボード歩道の走行を許可されていますが、容疑者が運転していた電動キックボード歩道の走行を禁止されていました。
歩道の走行を禁止されている以上、容疑者が運転していた電動キックボード歩道を走行すると事故の危険性があったのだと考えられますので、容疑者が歩道の走行を認められていない電動キックボード歩道を走行する行為は、歩道は走行しないといった運転上必要な注意を怠っていたと判断される可能性があります。
今回の事例では、被害者は肋骨を骨折するけがを負っていますので、容疑者の運転によりけがを負ったのであれば、過失運転致傷罪が成立するかもしれません。

過失運転致傷罪と示談

今回の事例では、被害者が肋骨を骨折するという大けがを負っています。
被害者が重症であり、禁止されている歩道を走行していることから、悪質であると判断されるおそれがあり、裁判になってしまう可能性が考えられます。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、裁判になってしまうと懲役刑が科される可能性があり、刑務所に行かなければならなくなってしまうおそれがあります。

刑事事件では示談を締結すると科される罪が軽くなると聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
これは交通事故の場合も例外ではなく、事故被害者と示談を締結することで、科される罪が軽くなる場合があります。

示談交渉をするには、相手の連絡先を知る必要があります。
交通事故の場合、被害者の連絡先を知らないことがほとんどでしょうから、警察官などを通じて連絡先を手に入れることになります。
しかし、連絡先を教えてもらえるように警察官に頼んでも、被害者保護や証拠隠滅の観点から、加害者には連絡先を教えてもらえないことがあります。
警察官に連絡先の入手を断られてしまっても、再度弁護士が依頼することで教えてもらえる場合がありますので、示談交渉を考えている方は、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

また、連絡先を教えてもらえた場合であっても、加害者本人が被害者に直接示談交渉をすることで、被害者の処罰感情が激化し、トラブルを生んでしまうおそれがあります。
弁護士が代わりに示談交渉を行うことで、そういったトラブルを回避できる可能性がありますので、示談交渉を行う際は、事前に弁護士に相談をした方がいいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
示談を締結することで、執行猶予付き判決の獲得や不起訴処分を獲得できる場合があります。
弁護士が代理人となって示談交渉をすることで、円滑に示談を締結できる場合がありますので、示談を考えている方、示談交渉でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)トラックの荷台に人を乗せ、過失運転致死罪①

2023-08-23

(事例紹介)トラックの荷台に人を乗せ、過失運転致死罪①

トラックの荷台から人が転落死したとして、過失運転致死罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

群馬県片品村の国道401号で14日夜、走行中の軽トラックの荷台から転落した同県高崎市の男性(中略)が死亡した事故で、沼田署は16日、軽トラックを運転していた同県渋川市の消防士の男(23)を、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)容疑で逮捕した。
現場は片側1車線の右カーブ。同署によると、2人は親戚同士で、荷台にはほかにも複数人が乗っていたとみられる。
(後略)
(8月16日 読売新聞オンライン 「軽トラック荷台から17歳転落死、運転していた消防士逮捕…親戚同士でほかにも複数人同乗か」より引用)

過失運転致死罪

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

上記の条文が過失運転致死罪の条文です。
過失運転致死罪は大まかに説明すると、運転中に払うべき注意を怠った結果、事故により人を殺してしまった際に成立します。

今回の事例では、被害者が走行中の軽トラックの荷台から転落して亡くなったと報道されています。
走行中の車の荷台に人を乗せる行為は原則として、道路交通法第55条1項で禁止されています。
荷台に人を乗せて走行しなければ今回の事故を起きなかったでしょうから、荷台に人を乗せて走行した行為自体が運転上必要な注意を怠ったと判断されるおそれがあり、今回の事例では過失運転致死罪が成立してしまう可能性があります。

過失運転致死罪と執行猶予

過失運転致死罪の法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、有罪になると懲役刑が科されてしまう可能性があります。
懲役刑が科されてしまうと、刑務所に収容され刑務作業に従事しなければなりません。
刑務所に入るとなると、今まで通りの生活は送れないですし、当然仕事にも行けませんから、仕事を解雇されてしまう可能性があります。

執行猶予という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
執行猶予はその名の通り、刑の執行が猶予されることを指しますので、執行猶予付き判決を獲得できれば、刑務所に収容されずにすむ場合があります。

刑事事件では、示談を締結することで科される刑罰を軽くできる場合があります。
これは交通事故の場合も同様であり、被害者遺族と示談を締結することで、執行猶予付き判決の獲得などを目指せる可能性があります。

ただ、今回の事例のように被害者が亡くなっている場合は、遺族の処罰感情が苛烈であることが多く、連絡を拒まれたり、示談交渉が難航する可能性が高いです。
弁護士が代わりに示談交渉を行うことで、スムーズに示談交渉を行える場合がありますので、示談でお困りの方は弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
過失運転致死罪などの交通事故でお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881までお電話ください。

次回のコラムでは、今回の事例を用いて、人を荷台に乗せて走行した際に成立する犯罪について解説します。

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例②

2023-07-26

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例②

睡眠障害をもつバスの運転手追突事故を起こし、危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例を基に、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた際の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

睡眠障害を自覚しながら路線バスを運転して事故を起こし、乗客7人に重軽傷を負わせたとして、警視庁は29日、バス会社(中略)社員の男(60)(東京都町田市)を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検した。(中略)
捜査関係者によると、男は(中略)睡眠障害で正常な運転ができない恐れがあると認識しながら、東京都町田市内で路線バスを運転。居眠りして住宅の外壁に衝突し、10~60歳代の乗客の男女7人に顔の骨を折るなどの重軽傷を負わせた疑い。
男は事故直後、「貧血を起こしたような感じで記憶がなくなった」と説明した。警視庁が持病を捜査したところ、医師から睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、呼吸を楽にする装置を就寝時に着けるよう指導されていたのに、着けていなかったことなどが判明したという。
(中略)は取材に「産業医からは(SASの)治療を受けながらの通常勤務が可能との診断を受けていた」としている。
(6月30日 読売新聞オンライン 「「睡眠障害」自覚しながら路線バス運転、7人重軽傷事故…「危険運転」適用し書類送検」より引用)

危険運転致傷罪と刑事罰

危険運転致傷罪は有罪になった際に、12年以下の懲役が科されます。(自動車運転死傷行為処罰法第3条1項、2項)
危険運転致傷罪には罰金刑の規定がありませんので、有罪になってしまった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り、刑務所に行かなければなりません。

事故の報道で過失運転致傷罪という罪名を目にする方も多いと思います。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金(自動車運転死傷行為処罰法第5条)であり、危険運転致傷罪過失運転致傷罪と比べると、刑期も長く、罰金刑の定めがないなど、かなり重い刑罰が規定されていることが窺えます。

また、今回の事例では、バスによる事故ですし、容疑者はバスの運転を職業としています。
バスのような大型車での事故や、車の運転を業務としている場合は、事故の危険性や責任が重いと判断され、科される刑罰が重くなる可能性が高いです。

持病による危険運転致傷罪と弁護活動

刑事事件の重要な証拠のひとつに供述調書というものがあります。
供述調書取調べの際に作成される書類のひとつで、容疑者が供述した内容を基に作成されます。
供述調書は裁判などの証拠として扱われますので、万が一、供述内容とは異なる内容や貴方の不利になるような内容の供述調書が作成されてしまった場合は、後の裁判で窮地に陥ってしまう可能性があります。
そういう状況にならないためにも、事前に取調べの対応を行っておくことが大切です。

とはいえ、取調べ対応と言われてもイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。
取調べでは、事故の状況や原因などを聴かれることになります。
今回の事例であれば、睡眠障害の程度や事故の前日に呼吸を楽にする装置を付けていたのかどうか、運転時に眠気があったか、睡眠障害により事故を起こす可能性を自覚していたのかなどを聴かれるのではないでしょうか。
取調べでは、事前に聴かれる内容を想定し、供述すべき内容を整理しておくことが重要になります。
弁護士であれば、聴かれる内容を事前に予測することで、供述内容をアドバイスすることが可能です。
ですので、取調べを受ける際には、事前に弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

また、今回の事例の事故の原因が、容疑者による睡眠障害ではない可能性もあります。
危険運転致傷罪は、簡単に説明すると、政令で定められている病気が運転に支障をきたすおそれがある状態で、その病気の影響により事故を起こし、人にけがを負わせた場合に成立します。
ですので、容疑者の持病である睡眠時無呼吸症候群が事故の原因でない場合には、危険運転致傷罪が成立しない可能性があります。

交通事故に精通した弁護士による弁護活動で、危険運転致傷罪ではなく、過失運転致傷罪での適用を目指せる可能性があります。
事故の状況持病の程度によって事件の見通しは異なりますので、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた場合は、一度、弁護士に相談をすることをお勧めします。

危険運転致傷罪でお困りの方は、ぜひ一度、交通事故に精通した弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例①

2023-07-19

(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例①

睡眠障害をもつバスの運転手追突事故を起こし、危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

睡眠障害を自覚しながら路線バスを運転して事故を起こし、乗客7人に重軽傷を負わせたとして、警視庁は29日、バス会社(中略)社員の男(60)(東京都町田市)を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検した。(中略)
捜査関係者によると、男は(中略)睡眠障害で正常な運転ができない恐れがあると認識しながら、東京都町田市内で路線バスを運転。居眠りして住宅の外壁に衝突し、10~60歳代の乗客の男女7人に顔の骨を折るなどの重軽傷を負わせた疑い。
男は事故直後、「貧血を起こしたような感じで記憶がなくなった」と説明した。警視庁が持病を捜査したところ、医師から睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、呼吸を楽にする装置を就寝時に着けるよう指導されていたのに、着けていなかったことなどが判明したという。
(中略)は取材に「産業医からは(SASの)治療を受けながらの通常勤務が可能との診断を受けていた」としている。
(6月30日 読売新聞オンライン 「「睡眠障害」自覚しながら路線バス運転、7人重軽傷事故…「危険運転」適用し書類送検」より引用)

持病と危険運転致傷罪

危険運転致傷罪は、刑法ではなく、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷行為処罰法」といいます。)の第2条、3条に規定されています。

自動車運転死傷行為処罰法第3条
1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

自動車運転行為処罰法第3条2項が規定しているように、車の運転に支障をきたすような持病があり、その持病により事故を起こしてけがをさせた場合は、危険運転致傷罪が適用される可能性があります。

今回の事例では、容疑者に睡眠障害があり、居眠り運転により衝突事故を起こしたとされています。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令第3条6号では、運転に支障を及ぼすおそれがある病気として、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害を挙げていますので、容疑者が罹患している睡眠時無呼吸症候群が車の運転に支障をきたす持病にあたる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群睡眠障害のひとつであり、症状として日中の眠気が挙げられます。
容疑者が睡眠障害を自覚しながら、睡眠時無呼吸症候群の症状による日中の眠気が原因で事故を起こしたのであれば、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決の獲得や罪の減軽など、あなたにとって良い結果を得られる可能性があります。
危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までお電話くださいませ。

次回のコラムでは、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた際の弁護活動についてご紹介します。

【事例紹介】事故の後続車に急ブレーキを踏ませ過失運転致傷罪

2023-01-05

【事例紹介】事故の後続車に急ブレーキを踏ませ過失運転致傷罪

事故を起こした車の後続車に急ブレーキを踏ませ逮捕された事件を基に、過失運転致傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務が解説します。

事例

京都府警下京署は6日、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、滋賀県湖南市の派遣社員の男(47)を逮捕した。
逮捕容疑は(中略)軽乗用車を運転中に、対向車線にはみ出してタクシーと衝突。タクシーの後ろを走っていた乗用車に急ブレーキをかけさせ、助手席の会社員男性(33)=北区=に頭部打撲のけがを負わせた疑い。
下京署によると、(中略)道交法違反(無免許運転)の疑いでも捜査している。(中略)男の呼気から基準値未満のアルコールが検出されたという。
(12月6日 京都新聞 「京都・四条通で対向車線にはみ出しタクシーに衝突、後続車の男性にけが負わせる 容疑の男逮捕」より引用)

過失運転致傷罪

車の運転中に注意を怠って人にけがを負わせた場合は、過失運転致傷罪が成立し、有罪になると7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)

今回の事例では、容疑者の運転する車が対向車線にはみ出してタクシーと衝突し、その影響で、タクシーの後ろを走行していた車が急ブレーキをかけたことにより助手席の男性が頭部に打撲を負ったと報道されています。
報道が事実であれば、容疑者がタクシーに追突したことによってタクシーの後続車が急ブレーキをかけることになり、搭乗していた男性が打撲を負ったという流れになり、打撲の原因は容疑者が事故を起こしたことによるものであると考えられ、容疑者の運転により男性がけがを負ったといえるでしょう。
今回の事例の内容からすると、容疑者の車が直接的に被害者の男性に打撲を負わせたわけではありませんが、容疑者の運転によって起こった事故が原因で後続車の男性が怪我を負っているという経緯により、容疑者に過失運転致傷罪の容疑がかけられたものと考えられます。

加えて、今回の事例の事故は、対向車線にはみ出したことが原因だと報道されています。
実際に対向車線をはみ出して走行していたのであれば、運転をするのに必要な注意を怠っていたのだと考えられるでしょう。
ですので、報道内容が事実であった場合には、容疑者は過失運転致傷罪に問われることになります。

無免許運転と過失運転致傷罪

報道によれば、容疑者は無免許運転の疑いでも捜査されています。

無免許運転は道交法第64条第1項で禁止されています。
これに違反し、有罪になった場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。(道交法第117条の2の2第1項第1号)
ですので、容疑者が実際に無免許運転を行っており、有罪になった場合には上記の刑罰が科されることになります。

先述の通り、今回の事例の容疑者は過失運転致傷罪の容疑で逮捕されています。
過失運転致傷罪は無免許運転だった場合に罪が過重されます。
ですので、実際に容疑者が報道のとおりに事故を犯し、なおかつ無免許運転だった場合には、有罪になると、10年以下の懲役刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第6条第4項)

事故を起こして人にけがを負わせてしまうと、多くの場合は過失運転致傷罪に問われることになります。
しかし、過失運転致傷罪は相手のけがの程度が軽かった場合には、刑が免除されることがあります。
ですので、事故を起こして人にけがを負わせたからといって、必ずしも刑罰が科されるわけではありません。
さらに、けがの程度が軽くない場合でも、示談など被害弁償や謝罪を行っている場合には、不起訴処分になることがあります。

また、示談交渉を行う際に、事故を起こした本人や家族からの連絡を嫌がられる被害者もいます。
そういった場合でも、弁護士を介してであれば話を聞いてもらえることがありますので、示談交渉を行う際には、弁護士を介して行うことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
過失運転致傷罪、道交法違反、刑事事件の示談交渉でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談くださいませ。

(事例紹介)年末年始の飲酒運転に注意~道路交通法違反で逮捕された事例

2022-12-29

(事例紹介)年末年始の飲酒運転に注意~道路交通法違反で逮捕された事例

年末年始は、忘年会や新年会、親戚同士の集まりなどにより、飲酒する機会が多くなるという方もいらっしゃるでしょう。
特に、ここしばらくはコロナ禍の影響で行動制限のある年末年始となっていましたが、今回は特に行動制限のかかっていない年末年始期間ということもあり、久しぶりの忘年会・新年会をしたという方や、数年ぶりに親戚一同で集まったという方も多いのではないでしょうか。

こうした中で、飲酒運転による道路交通法違反事件や、飲酒運転をしての交通事故が増加してしまう懸念があります。
実際に、年末の時点で飲酒運転飲酒運転をしての交通事故で逮捕されたという事例が全国各地で、複数報道されています。

~事例1~

福岡県で25日、酒を飲んで車を運転したとして、自称会社員の男2人が逮捕されました。
(略)
また、25日午前7時ごろには、福岡市博多区で酒を飲んで車を運転し、対向車線の車に衝突したとして、福岡県筑紫野市の自称会社員(略)が酒気帯び運転の疑いで逮捕されました。
(略)容疑者は「アルコールは抜けていると思った」と話し、容疑を否認しているということです。
(※2022年12月26日8:50YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)

~事例2~

三重県警名張署は12月27日、道路交通法違反(飲酒運転)の疑いで、伊賀市の会社員の男(52)を現行犯逮捕したと発表した。容疑を認めているという。
発表によると、同日午前1時15分ごろ、伊賀市桐ケ丘2の市道で、飲酒して普通乗用車を運転した疑い。
同署によると、道沿いに停まっていたトラックに男が運転する車が前から衝突する事故が発生。警察官が駆け付けたところ、男から酒の臭いがしたため飲酒検知し、呼気から基準値以上のアルコールが検出された。事故により、トラックのそばで作業をしていた男性が右足を負傷したという。
(略)
(※2022年12月27日伊賀タウン情報ユー配信記事より)

~事例3~

埼玉県警川口署は23日、道交法違反(酒気帯び)の疑いで、川口市西青木2丁目、無職の男(74)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は同日午前10時ごろ、同市青木5丁目の市道で、酒気を帯びた状態で軽自動車を運転し、前方の自動車計2台を巻き込む交通事故を起こした疑い。
同署によると、男は蕨方面から都内に進行中、前方で減速中の普通自動車(40代男性運転)に追突。同車は、前方で停止中の大型貨物自動車(50代男性運転)に衝突した。40代男性が軽傷を負った。50代男性からの110番で署員が駆け付けたところ、男の呼気からは1リットル当たり0・2ミリグラムのアルコールが検出された。その後の調べで、男は無免許で、事故直後に一度逃げていたことなどが分かり、同署は無免許、危険運転致傷、ひき逃げ、事故不申告の罪で送致する予定。男は飲酒運転の容疑は認めているという。
(※2022年12月25日13:41YAHOO!JAPANニュース配信記事より)

ご存知の方も多いように、飲酒運転はそれだけで道路交通法違反となる犯罪行為です。
「忘年会から帰宅するだけ」「新年会の途中で買出しに行くだけ」と軽く考えてはいけません。
飲酒運転自体も刑事事件となる犯罪行為ですし、飲酒運転をして交通事故を起こせば、単に不注意で交通事故を起こした際よりも重く処罰されることになります。
また、交通事故後に飲酒運転の発覚を免れようとすれば、それもまた別の犯罪(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)が成立することになります。

さらに、場合によっては危険運転致死傷罪に問われる可能性も出てきます。
実際に、ご紹介した事例の3つ目では、飲酒運転をして事故を起こした男性が危険運転致傷罪の容疑で送致予定とされています。
報道だけではこの男性が危険運転致傷罪のどの要件に当たっていると考えられているのかは不明ですが、飲酒運転によって危険運転致死傷罪の容疑がかけられ得るということは間違いありません。

飲酒運転は、やろうとすれば簡単にできてしまう行為かもしれませんが、飲酒運転自体に定められている刑罰も「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」もしくは「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」(道路交通法第117条の2、同法第117条の2の2)と重いものとなっています。
加えて、先ほども触れた通り、飲酒運転をして交通事故を起こしたということになれば、さらに成立する犯罪が加わり、重い刑罰が下されることが想定されます。
飲酒の機会が増える年末年始だからこそ、飲酒運転をしない・させないということをより強く意識することはもちろんですが、それでも当事者となってしまったら、早い段階から弁護士に相談し、刑事手続に備えることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、飲酒運転に関わる刑事事件のご相談・ご依頼も承っています。
年末年始弁護士のスケジュール次第では即日対応も可能となっていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

【事例紹介】ひき逃げ・飲酒運転・犯人隠避罪で逮捕された事例

2022-12-08

【事例紹介】ひき逃げ・飲酒運転・犯人隠避罪で逮捕された事例

滋賀県で起きた交通事故により、飲酒運転や犯人隠避を疑われ逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警東近江署は1日、自動車運転処罰法違反(過失致傷)と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の疑いで東近江市の足場設置業の男(26)を、犯人隠避容疑で男の妻(26)を逮捕した。
男の逮捕容疑は(中略)酒気帯び状態でトラックを運転し、同市能登川町の交差点で乗用車と衝突し、運転していた女性(55)に肋骨骨折などの重傷を負わせ逃げた疑い。妻は自分が運転していたとうその申告をした疑い。2人は容疑を否認しているという。
(12月1日 京都新聞 「男が酒気帯び運転でひき逃げ疑い 「自分が運転していた」虚偽申告疑い妻も逮捕」より引用)

過失運転致傷罪

過失運転致傷罪は、自動車運転処罰法第5条で規定されています。
過失運転致傷罪は、運転中に必要な注意を怠り、人にけがを負わせた場合に問われる罪で、有罪になった場合には7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)

なお、後述のように、今回の事例の容疑者は、過失運転致傷罪だけでなく酒気帯び運転の容疑もかけられています。
過失運転致傷罪は、先ほど紹介したように、注意を怠った=過失により交通事故を起こし、人を負傷させた際に成立する犯罪ですが、飲酒運転の影響が著しく大きいことにより交通事故を起こしたという場合には、別の犯罪が成立することもあります。
アルコールにより正常な運転が困難であったと判断された場合には、過失運転致傷罪ではなく危険運転致傷罪の容疑をかけられる可能性があります。
その場合に有罪になれば、危険運転致死傷罪15年以下の懲役ですので、過失運転致傷罪よりも重い量刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第2条第1号)
過失運転致傷罪飲酒運転(道路交通法違反)という犯罪に問われるのか、危険運転致傷罪という犯罪に問われるのかは、事故当時どれほど酔っていたのか、それによって運転にどれほど影響があったのかなどの事情によって判断されることになります。

ひき逃げ

人身事故を起こした際に、被害者の救護や事故の報告を行わなかった場合は、ひき逃げにあたります。

事故により人にけがを負わせ、救護しなかった場合には5年以下の懲役または50万円以下の罰金が、その事故が救護を行わなかった運転者に起因する場合は10年以下の罰金または100万円の罰金が有罪になった際にそれぞれ科されることになります。(道交法第117条)
ですので、実際に容疑者男性の運転が原因で事故を起こし、被害者の救護を行っていなかった場合には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、事故不申告で有罪になった場合には、3月以下の懲役か5万円以下の罰金が科されることになります。(道交法第119条第1項第17号)

酒気帯び運転

先ほども触れましたが、飲酒運転酒気帯び運転についてもひき逃げと同様に道交法で規定されています。

容疑者の男性が報道のとおりに酒気帯び運転を行っていた場合には、有罪になると、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されます。(道交法第117条2の2第1項第3号)
また、千鳥足であったりろれつが回っていなかったりといった酔いの程度がひどい状態であった場合には、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されることになります。(道交法第117条の2第1項第1号)

犯人隠避罪

犯人隠避罪は、簡単に説明すると、罰金刑以上の重さの刑罰が科される罪を犯した者を、匿まったり、証拠を隠滅する以外の方法で警察官に逮捕や犯人だと発覚しないように手助けをした場合に成立します。

今回の報道によると、容疑者の女性は、男性が運転していたにもかかわらず、自分が運転していたと申告したとされています。
報道内容が事実であった場合には、女性が事故を起こした男性の身代わりになることで、男性が逮捕されたり嫌疑がかけられないように手助けしてることになるため、犯人隠避罪の容疑をかけられたということなのでしょう。
犯人隠避罪で有罪になった場合には、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。(刑法第103条)

なお、犯人隠避罪は、犯人の親族が隠避を行った際には刑が免除される場合があります。(刑法第105条)
ですので、もしも今回の事例の容疑者が隠避行為を行っていたとしても、刑罰を科されない可能性があります。

今回の事例では、報道によると容疑者らは容疑を否認しているとのことです。
容疑を否認している場合、容疑を認めている場合に比べて警察官の取調べが厳しくなる可能性があります。
厳しい取調べが行われる中で、親身に相談に乗る弁護士の存在はあなたや家族にとって支えになるかもしれません。
冤罪や過失運転致傷罪、犯人隠避罪などの刑事事件でお困りの方は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】無免許運転によるひき逃げ事故で逮捕(京都市伏見区)

2022-10-27

【事例紹介】無免許運転によるひき逃げ事故で逮捕(京都市伏見区)

無免許運転交通事故を起こしそのまま逃亡(ひき逃げ)した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

京都府警伏見署は17日、自動車運転処罰法違反(無免許過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、京都市伏見区、解体業の男(29)を逮捕した。
逮捕容疑は、(中略)無免許でオートバイを運転中、前方を走行していた会社員女性(36)の軽乗用車に追突し、首に捻挫を負わせ、そのまま逃げた疑い。
(後略)
(10月18日 京都新聞 「無免許で軽乗用車に追突、運転女性にけが負わせ逃走 ひき逃げ疑いで男逮捕」より引用)

無免許運転による過失運転致傷罪

おおまかに説明すると、運転中の過失により人にけがを負わせた場合は、過失運転致傷罪が適用されます。

今回の事例の報道によると、おそらく容疑者の男性は被害者が運転する車に追突しようと思って追突したのではないでしょうから、運転中に何かしらの過失があり追突してしまったのだと考えられます。
そして、追突された被害者は首に捻挫(けが)を負っているので、容疑者の男性には過失運転致傷罪の容疑がかけられています。
なお、もしも今回の事例の容疑者が、過失ではなく、被害者にけがを負わせるつもりで追突した場合は傷害罪などの別の罪が適用されることになります。

今回の事例のように、無免許運転により過失運転致傷罪に問われるような事故を起こした場合は、免許を所持した状態での過失運転致傷罪に比べて罪が重くなります。
過失運転致傷罪の量刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(自動車運転処罰法第5条)ですが、無免許運転だった場合には10年以下の懲役(自動車運転処罰法第6条第4項)になります。

報道によると、容疑者の男性は無免許運転をしていたとされており、この報道が事実であれば、容疑者の男性が過失運転致傷罪で有罪になった場合、執行猶予が付かない限り懲役刑が科されることになります。

ひき逃げ

道路交通法第72条第1項では、事故を起こした場合について、以下のことをしなければならないと定めています。

①負傷者の救護
②事故現場等の安全の確保
③警察官への事故の報告

以上の3つは事故を起こした際に必ずしなければならないことですので、今回の事例のように事故を起こしてそのまま事故現場から逃げた場合は道路交通法違反(ひき逃げ)になります。

また、①負傷者の救護や②事故現場の安全の確保を行わずに道路交通法違反で有罪になった場合は、以下のような量刑が科されます。
(ア)被害者がけがをしていた場合
5年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条第1項)

(イ)被害者のけがが加害者の運転に起因するものであった場合
10年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法第117条第2項)

(ウ)被害者がけがをしていなかった場合
1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法第117条の5第1号)

今回の事例で考えてみると、被害者は捻挫(けが)を負っていますので、(ア)か(イ)のどちらかのパターンが考えられます。
今回の事例の場合、容疑者の過失がなければ追突しなかった場合には、(イ)の容疑者本人の運転が原因でけがをした場合が適当だと考えられます。
しかし、もしも被害者側にも事故の原因の一端があった場合(例えば急ブレーキをかけたなど)には、(ア)が適用されるかもしれません。

ですので、報道内容が事実であった場合に、①負傷者の救護、②安全確保を行わずに道路交通法違反で有罪になれば、容疑者の男性は(ア)~(イ)の中で一番重い10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、③事故を申告せずに道路交通法違反で有罪になった場合には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第119条第1項第10号)が科されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強い法律事務所です。
刑事事件に強い弁護士を付けアドバイスや示談交渉のサポートを受けることによって、手続をスムーズかつ有利に進められることが期待できます。
また、今回の事例のように逮捕されてしまっている場合には、できるだけ早く釈放に向けた弁護活動を行う必要があります。
交通事故により、捜査・逮捕された方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

2022-10-13

(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

~事例~

滋賀県警草津署は25日、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、滋賀県守山市に住むフィリピン国籍の飲食店経営の女(28)を逮捕した。
逮捕容疑は、同日午前1時41分ごろ、滋賀県栗東市で軽乗用車を運転し、左折するため減速した甲賀市の男性(48)のオートバイに追突、首にけがを負わせてそのまま逃げた疑い。
(※2022年5月26日20:30京都新聞配信記事より引用)

~ひき逃げをした際の刑罰は?~

今回取り上げた事例では、ひき逃げの容疑で女性が逮捕されています。
よく「ひき逃げ」と呼ばれる行為は、「事故を起こしてそのまま逃げた」というイメージだと思われます。
この「ひき逃げ」は、実は正式な犯罪名ではありません。

そもそもひき逃げとは、人身事故を起こした後、道路交通法に定められている義務を果たさずにそのまま事故現場から離れることを指します。
道路交通法では、人身事故を起こしてしまった場合、負傷者を救護する義務(いわゆる「救護義務」)や、警察署などに通報し事故を報告する義務(いわゆる「報告義務」)、道路上の危険を防止する措置をする義務(いわゆる「危険防止措置」)を定めています。
よくイメージされる「事故を起こして逃げた」ひき逃げは、義務を果たさずに事故現場から逃げていることになる=これらの義務に反するため、道路交通法違反という犯罪になるのです。

加えて、ひき逃げ事件の場合、そもそも人身事故を起こしているということにも注意が必要です。
この時成立する罪は、人身事故がどのように起きたか、例えば、わき見運転などの不注意による人身事故なのか、赤信号を殊更に無視するなどの危険運転行為による人身事故なのかといった事情によって異なります。
不注意=過失によって起こった人身事故であれば、今回取り上げた事例同様、自動車運転処罰法に定められている過失運転致傷罪となるでしょう。

なお、この際に無免許運転や飲酒運転といった事情があれば、当然その分も罪が成立することになります。

おさらいをすると、ひき逃げ事件では、人身事故を起こしたこと自体による過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪、義務を果たさなかったこと(ひき逃げ)による道路交通法違反という2つの犯罪が成立します。
さらに、無免許運転や飲酒運転の事情があれば、上記2つの犯罪に加えてその犯罪も成立します。
今回取り上げた事例でも、女性の逮捕容疑は過失運転致傷罪と道路交通法違反という2つの犯罪になっています。

ひき逃げ事件では、単なる不注意による人身事故よりも成立する犯罪の数が増えていることだけでなく、義務を果たさずにその場から離れるという悪質性の高い行為をしていることからも、起訴され正式な刑事裁判を受ける可能性や厳しい処分を受ける可能性が高いと考えられます。

例えば、過去には以下のような裁判例があります。
・普通貨物自動車の運転中、横断歩道上の歩行者に気が付かず衝突し、加療約11日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、被害者との示談が成立し懲役10月執行猶予3年となった事例(判決:平成26年5月)
・普通乗用車の運転中、一時停止標識を無視して一時停止をせず、普通乗用車と衝突し、同乗者に加療約22日間の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年執行猶予4年が言い渡された事例(判決:平成26年8月)
・普通乗用自動車の運転中、前方左右の安全確認を怠り、被害者と衝突し、加療約94日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年6月執行猶予3年が言い渡された事例(判決:平成25年4月)
(参照:第一東京弁護士会刑事弁護委員会・編(2018)『量刑調査報告集Ⅴ』第一東京弁護士会)

もちろん、刑罰の重さは人身事故の態様や原因、被害者が亡くなっているのか、けがの重さはどの程度か、被害弁償はできているのかといった様々な事情に左右されますので、詳細な見通しなどは弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げ事件に関連したご相談・ご依頼も承っています。
在宅捜査されている方向けの初回無料法律相談から、逮捕・勾留中の方向けの初回接見サービスまで、様々なご事情に合わせたサービスをご用意していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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