Archive for the ‘自動車運転死傷行為処罰法’ Category

【解決事例】飲酒運転によるひき逃げで執行猶予付き判決

2022-05-19

【解決事例】飲酒運転によるひき逃げで執行猶予付き判決

事件

Aさんは、飲酒した後にバイクを飲酒運転して帰路に着いていました。
しかし、Aさんの自宅がある埼玉県さいたま市浦和区に差し掛かったころ、Vさんの運転する原付自動車と接触する交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは、交通事故を起こしてしまったことに驚き、さらに、飲酒運転をしていたこともあり、とっさに現場から立ち去ってしまいました。
通行人が通報し、Aさんは、道路交通法違反(飲酒運転ひき逃げ)と過失運転致傷罪の容疑で埼玉県浦和警察署に逮捕されましたが、すぐに釈放されました。
釈放後、Aさんは今後の刑事手続きに不安を感じ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用し、弁護活動を依頼することにしました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

事件解決の流れ

Aさんは、飲酒運転ひき逃げ行為による道路交通法違反と、過失運転致傷罪の容疑で起訴されました。
相談を受けた弁護士は、執行猶予付きの判決を獲得するための弁護活動を行いました。

Aさんが飲酒運転によって起こしたひき逃げ事故により、Vさんは脚を骨折し、病院で治療を受けていました。
そこで、弊所の弁護士は、Vさんに代理人としてついていた弁護士と交渉し、Vさんへの謝罪や賠償の交渉を行いました。
Vさんへの誠意を見せられるよう、弁護士と相談の上、AさんはVさんへの賠償のために用意したお金を保管するための口座を作り、その口座から一切お金を引き出さずにVさんの賠償のためにとっておくなどして、Vさんへ被害弁償するための準備を行いました。
加えて、AさんはVさんに対する謝罪文を作成し、弁護士を通じてVさんへ謝罪文をお渡しし、Aさんの反省とお詫びの気持ちを受け取っていただくことができました。

そして、弁護士は、Aさんに、飲酒運転によって事故を起こしたことにより向き合ってもらうために、飲酒運転による交通事故に遭った被害者やその遺族が書いた手記を読むことを勧めました。
手記を読んだAさんは飲酒運転をしてしまったことを深く反省し、刑事裁判の場でも反省の言葉を述べました。
また、Aさんは今後飲酒を控え、バイクや鍵を母親に管理してもらうなどのことで、再犯防止に努めました。

弁護士は公判で、Aさんが飲酒運転による事故やひき逃げ行為を深く反省していること、被害弁償用のお金を用意し謝罪文をVさんに渡していることからVさんに対する誠意が伺えること、再犯防止に努めていること、事故当時の状況でAさんに有利な事情もあったことなどを訴え、執行猶予付きの判決を求めました。

その結果、Aさんは執行猶予付きの判決が言い渡されました。
執行猶予判決が下されたため、Aさんが直ちに刑務所に入ることはなくなり、Aさんは社会内ですぐに社会復帰に向けて活動を開始することができました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、数々の執行猶予付き判決を獲得してきました。
飲酒運転ひき逃げなど、交通事件の執行猶予についてお悩みのある場合には、一度お気軽にご相談ください。
0120―631―881では初回接見サービス、無料法律相談のご予約を受け付けております。

【解決事例】大阪府の人身事故事件で不起訴獲得

2022-04-28

【解決事例】大阪府の人身事故事件で不起訴獲得

~事例~

Aさんは、大阪府高槻市内の道路で自動車を運転中、不注視によってVさんの運転するバイクと衝突する人身事故を起こしてしまいました。
Vさんは2週間の入院を要する怪我を負ってしまい、Aさんは大阪府高槻警察署過失運転致傷罪の被疑者として捜査されることとなりました。
Aさんは、被害者の方に謝罪するための被害者対応をどのようにすればよいのかというお悩みと、Aさん自身がみなし公務員として働いていたため前科がつくことを避けたいというお悩みがあり、ご相談のために弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にいらっしゃいました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

~弁護活動と結果~

Aさんは任意保険に加入していたため、金銭面での被害弁償は保険を通じて行われました。
それに加えて、弁護士が被害者であるVさんとお会いしてお話しし、Aさんの反省や謝罪をお伝えすることで、Vさんから刑罰を求めない旨の嘆願書をいただくことができました。
嘆願書の中には、Aさんの反省・謝罪と真摯な対応を受けたことからAさんを許し、Aさんに対する刑事処罰を望んでいないということ、Aさんが失職することも望んでいないので報道なども避けてほしいということ、Aさんに対して寛大な処分を求めるということを書いていただきました。

こうしたVさんからの嘆願書や、Aさんの反省の程度、今後の再犯防止策などを弁護士から検察官に訴えたところ、Aさんの人身事故事件不起訴処分で終了することとなりました。

不起訴処分で事件が終了したため、Aさんには前科がつくこともありませんでした。
不起訴処分となったため、Aさんは失職することもなく、仕事を継続することができました。

人身事故事件では、被害者の怪我の程度なども処分を決める重要な事情ですが、被害者への謝罪や弁償ができているのかどうか、被害者感情がどのようなものかといった事情も起訴・不起訴や起訴された場合の刑罰の重さに影響する重要な事情です。
迅速かつ適切に被害者対応を行うことや、それらの経緯・結果を適切なタイミングで適切に示していくことが、より有利な処分の獲得に求められることでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、人身事故事件を含む刑事事件少年事件のご相談・ご依頼を承っております。
人身事故事件に悩まれている方は、お気軽にご相談ください(予約受付:0120-631-881)。

店舗に車で突っ込んで逮捕されてしまった事例

2022-04-14

店舗に車で突っ込んで逮捕されてしまった事例

店舗に車で突っ込んで逮捕されてしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

4月7日午後、大阪市中央区の金券ショップに軽自動車を突入させてしまい、3人に重軽傷を負わせた過失運転致傷の疑いで、30代男性が逮捕されました。
男性は急なめまいを感じ、意識がなくなったなどと述べています。
また、男性の母親は男性に低血糖の症状があると説明しています。
(カンテレ 「大阪・ミナミで金券ショップに車に突っ込み3人重軽傷 運転手の男を逮捕」(令和4年4月8日16:14配信)より引用)

こうしたケースでは、今後、どのような弁護活動が考えられるのでしょうか。

~過失運転致死傷罪について解説~

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっています。

ケースの被害者らは重軽傷を負いましたが、死者はおらず、飲酒運転や信号無視等の重大な違反行為が明らかでないため、ひとまず、過失運転致傷罪の疑いで逮捕したものと考えられます。
なお、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死亡させてしまった場合においては、過失運転致死罪が成立します。

~危険運転致死傷罪について解説~

アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、人を死傷させた場合は過失運転致死傷罪よりも重い危険運転致死傷罪が成立するのはよく知られていると思います。
法定刑は危険運転致傷罪の場合は15年以下の懲役危険運転致死罪の場合は、1年以上20年以下の懲役となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条)。

一方で、正常な運転が困難な状態とまではいえずとも、これに準ずる状態で自動車を運転し人を死傷させた場合も、重く処罰されます。
自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた」場合も、危険運転致死傷罪となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項)。
ただし、こちらの場合の法定刑は、先ほど触れた第2条の危険運転致死傷罪の場合よりは軽く、致傷の場合は12年以下の懲役、死亡させた場合は、15年以下の懲役となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項・1項)。
この政令で定める病気として、「自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する低血糖症」があります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令第3条4号)。

~今後の弁護活動~

ケースの運転手は逮捕されています。
逮捕中は、当然、会社へ出勤することも学校へ登校することもできなくなるため、無断欠勤・無断欠席が続いた場合、会社や学校から不利益な処分を受けることが懸念されます。
そのため、早期に弁護士を依頼し、身柄解放活動を行ってもらうことが必要となるでしょう。

また、起訴され、有罪判決を受けた場合には前科がつくことになってしまいます。
自動車保険などを活用して被害者に生じさせた損害を賠償し、示談を成立させることができれば、不起訴処分あるいは略式罰金などの軽微な処分を獲得できる可能性が高まります。

起訴されてしまった場合においても、実刑判決を回避するため、誠心誠意謝罪をし、被害者と示談を成立させることが重要です。

そして、低血糖の影響により運転中に正常な運転が困難な状態に陥り負傷させたと判断されれば、危険運転致死傷罪で起訴され、より重い処罰が下されることも考えられます。

低血糖といっても自動車の運転の能力を欠けさせるような症状はないこと、被疑者もそのような症状を認識していなかったことなどの事情があれば、弁護士からそういった事情を主張し、危険運転致傷罪で起訴しないよう働きかけることも考えられるでしょう。
こういった事情があるにも関わらず危険運転致傷罪で起訴された場合、過失運転致傷罪に留まることを公判で主張することも予想されます。

いずれの場合にしろ、逮捕・勾留による身体拘束への対応や、被害者への謝罪・弁償といった被害者対応、刑事裁判を見据えた対応など、すぐに取りかかるべき活動は多く存在します。
だからこそ、早期に弁護士に相談・依頼するメリットは大きいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を中心に取り扱う法律事務所です。
ご家族が過失運転致傷罪の疑いで逮捕されてしまった場合には、遠慮なく、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

睡眠導入剤の影響による危険運転致死傷罪

2021-08-14

睡眠導入剤影響による危険運転致死傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは、運転中に意識障害に陥り、福岡県うきは市の道路の左端を歩いていた歩行者に衝突し、全治1か月の怪我を負わせる事故を起こしてしまいました。
Aさんは、前夜に睡眠導入剤を服用しており、その影響があったのではないかと、福岡県うきは警察署危険運転致死傷の適用も視野に入れて捜査をしています。
(フィクションです。)

危険運転致死傷罪とは

人身事故を起こした場合、通常は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)に規定されている「過失運転致死傷罪」が適用されます。
これは、自動車を運転する上で必要な注意を怠り、人を死傷させる罪です。
しかし、過失の程度がひどく、故意や故意に近いような重大な過失によって交通事故を起こした場合には、自動車運転処罰法に規定されている「危険運転致死傷罪」に問われることになります。

自動車運転処罰法2条1号は、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」を行い、よって、人を負傷させた場合は15年以下の懲役に、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役に処することを定めています。

■薬物の影響により正常な運転が困難な状態■

「薬物」とは、覚せい剤や麻薬といった規制薬物や、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」(以下、「医薬品医療機器等法」といいます。)で指定された指定薬物に限らず、中枢神経系の興奮もしくは抑制または幻覚の作用などを有する物質であって、自動車を運転する際の判断能力や運転操作能力に影響を及ぼす性質を持つ物質であればよいとされています。

「薬物の影響」とは、薬物の摂取により正常な身体又は精神の状態に変化を生じ、運転に際して注意力の集中、距離感の確保等ができないため、運転者に課せられた周囲義務を果たすことができないおそれのある状態をいいます。
「薬物の影響により」とあるように、運転操作に対する障害は、薬物の「影響により」もたらされなければなりません。
そのため、薬物を摂取した場合であっても、睡眠不足や過労の影響で注意力が散漫になり、その結果、事故を起こしたのであれば、それは薬物の影響により惹起されたものではなく、本罪は成立しません。

「正常な運転が困難な状態」については、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることをいいます。

そして、「よって」という文言があるように、本罪が成立するためには、薬物の影響により正常な運転が困難な状態であったということと、当該事故との間に因果関係があることが必要です。
つまり、当該事故が、的確な運転行為を行っていたとしても回避不能であると認められる場合には、因果関係が否定されることになります。

■故意■

危険運転致死傷罪は故意犯であるため、罪を犯す意思がなければなりません。
つまり、被疑者が当該車両を運転している際に、自己が「薬物の影響により正常な運転が困難な状態」にあることを認識している必要があるのです。
この点、被疑者に求められる認識は、法的評価の伴う「薬物の影響により正常な運転が困難な状態」ではなく、それを基礎付ける事実についての認識です。
薬物を摂取して頭がふらふらするとか、幻覚がちらついているとか、正常な運転が困難な状態に陥るための事実関係を認識していれば足りるとされています。
単に、被疑者自身が「正常に運転できる」と思っていたとしても、過去に薬物を摂取して運転して意識障害を何度も起こしている、薬物の効能を知っている、といった事実があれば薬物の影響により正常な運転が困難である状態であることを認識していたものと認められます。

また、同法3条1号は、「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り」、人を負傷させた場合は12年以下の懲役に、人を死亡させた場合は15年以下の懲役に処する、と規定しています。

■その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で■

「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、先の「正常な運転が困難な状態」であるとまではいえないものの、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力または操作能力が、そうではないときの状態と比べると相当程度減退して危険性のある状態、そして、そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態をいうとされています。

■故意■

運転開始前、または運転中に薬物を摂取し、それによって「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」となっていることを認識しながら運転したのであれば、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」を認識していたと言えます。
先に述べたように、薬物の薬理作用を知っていながら摂取した場合は、「正常な運転が困難な状態」の認識があったことになるものと考えられます。
しかし、初めて当該薬物を用いる場合、その薬理作用について正確な知識がない場合でも、少なくとも精神・神経に何らかの影響を与えることは十分承知しているはずであるから、その未必的な危険性については認識しており、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」についての認識があったと認められるでしょう。

睡眠導入剤の影響による危険運転致死傷罪

睡眠導入剤には、脳の機能を低下させ、大脳辺縁系や脳幹網様体と呼ばれる部分の神経作用を抑えることで睡眠作用をもたらす薬理作用があります。
睡眠導入剤影響による危険運転致死傷罪の成立が争われる場合、
①運転操作に睡眠導入剤影響を与えたか否かが不明であるから、薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転してはいない、薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥ってもいない。
②薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転することについての認識がない。
といった主張がなされるケースが想定されます。
睡眠導入剤影響のよる危険運転致死傷罪が成立し得るのか、事案によって異なりますので、交通事件に対応する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が危険運転致死傷事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

無免許飲酒運転でひき逃げ

2021-07-17

無免許飲酒運転ひき逃げした事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府大阪市都島区の交差点で、横断中の歩行者をひいて逃走したとして、大阪府都島警察署は、車を運転していたAさんを逮捕しました。
事件後、現場から少し離れた駐車場で車を止め、車内で寝ていたAさんを発見し、呼気検査をしたところ、基準値を超えるアルコールが検出されました。
また、Aさんは免停中であることが発覚し、警察は、Aさんが、無免許のうえ、酒を飲んで車を運転し、横断していた被害者をひき逃げした疑いで、捜査を進めています。
(フィクションです。)

無免許飲酒運転でひき逃げした場合

無免許運転かつ飲酒運転ひき逃げをした、という上の事例のようなケースでは、どのような罪が成立するのでしょうか。

1.飲酒運転

道路交通法第65条第1項は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定しており、身体にアルコールを保有したまま車両等を運転することは禁止されています。
そして、一定程度以上のアルコールを身体に保有したまま車両等を運転する行為は、刑事罰の対象となります。

■酒気帯び運転■
血中アルコール濃度が一定量に達しているかどうか、という形式的な基準で判断されます。
その基準とは、「呼気1リットルあたりのアルコール濃度が0.15ミリグラム以上」です。
酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

■酒酔い運転■
酒酔い運転は、アルコール濃度の検知値には関係なく、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」で車両等を運転した場合に成立します。
具体的には、直線を真っすぐ歩けるか、呂律が回っているか等といった点から判断されます。酒酔い運転の法定刑は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金と、酒気帯び運転の法定刑よりも重くなっています。

2.人身事故

■過失運転致死傷■
通常、人身事故を起こした場合、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)で規定される「過失運転致死傷罪」が適用されます。
この罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立します。
前方不注意や巻き込み確認を怠ったこと等の不注意によって相手を死亡させた場合には、過失運転致死傷罪が適用されます。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。

■危険運転致死傷■
ところが、飲酒運転で人身事故を起こした場合、より重い罪が成立する可能性があります。
それは、「危険運転致死傷罪」です。
危険運転致死傷罪は、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ」、「よって、人を負傷させた」場合に成立します。
この場合の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役と、かなり重くなります。
また、「アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させ」た場合は12年以下の懲役、人を死亡させた場合は15年以下の懲役が科される可能性があります。
危険運転致死傷罪が適用される場合、道路交通法違反(酒気帯び運転、酒酔い運転)は危険運転致死傷罪に吸収されるため、別個には成立しません。

3.無免許運転

■無免許運転■
道路交通法第64条第1項で、「何人も、第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。」と規定し、無免許運転を禁止しています。
無免許運転の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

■無免許運転による加重■
自動車運転処罰法第6条は、「第2条(危険運転致死傷)の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、6月以上の有期懲役に処する。」と規定しています。
また、第3条(準危険運転致死傷罪)の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をした者であるときは、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は6月以上の有期懲役と加重されます。
更に、第5条(過失運転致死傷)を犯した者が、無免許運転をしたときは、10年以下の懲役と刑が加重されます。

4.ひき逃げ

■救護義務違反■
道路交通法第72条第1項前段は、「交通事故があったといは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と規定しています。
これを「救護義務」といい、これに反して現場から逃走する行為を「ひき逃げ」と呼びます。
救護義務違反の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金ですが、人身事故が、「人の死傷が当該運転者の運転に起因する」ものである場合に救護義務に違反した場合は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

■過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱■
自動車処罰法第4条は、アルコールの影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時にアルコールの影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコールを摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコールの濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処すると規定しています。
この罪を犯した者が、無免許運転であった場合には、刑は15年以下の懲役に加重されます。

無免許運転かつ飲酒運転ひき逃げをした場合で、成立し得る罪としては、次の4つのケースが考えられます。
①道路交通法違反(酒気帯び運転、または酒酔い運転)、無免許過失運転致死傷、道路交通法違反(救護義務違反)の3罪。
②無免許危険運転致死傷、道路交通法違反(救護義務違反)の2罪。
③無免許準危険運転致死傷、道路交通法違反(救護義務違反)の2罪。
④無免許過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱、道路交通法違反(救護義務違反)の2罪。
いずれの場合も、実刑の可能性が高く、弁護人は、被害者との示談成立、被告人の反省の態度や再発防止措置が講じられている等の被告人に有利な事情を示し、できる限り刑が軽くなるように弁護することになるでしょう。
また、危険運転致死が成立する場合には、裁判員裁判の対象となりますので、裁判員裁判に向けた公判準備を行う必要もあります。
交通事故を起こし対応にお困りの方は、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

危険運転(殊更赤無視)で裁判員裁判②

2021-05-15

危険運転殊更赤無視)で裁判員裁判となった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府河内長野市の信号機で交通整理されている交差点に、目の前の信号が赤であるにもかかわらず同交差点を直進し、歩行者用の信号機が青に変わったことを確認して横断道路を横断中の歩行者をはねて死亡させたとして、大阪府河内長野警察署は車を運転していたAさんを危険運転致死の容疑で逮捕しました。
(フィクションです。)

裁判員裁判とは

危険運転致死罪は、裁判員裁判の対象事件となります。
裁判員裁判とは、国民の中から選ばれた裁判員6名と裁判官3名が、被告人が有罪であるか無罪であるか、有罪である場合にはいかなる刑を科すかを判断する制度です。

裁判員裁判の対象となる事件は、
①死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる事件、
②故意の犯罪により人を死亡させた事件(①に当たるものを除く)
です。
危険運転致死罪は、故意犯(故意に一定の危険な運転行為をし、その結果、人を死亡させる罪)であるため、②に該当します。
これに対し、過失運転致死罪は、故意の犯罪ではありませんから、①②のいずれにも当てはまらず、裁判員裁判対象事件ではありません。

裁判員裁判の流れ

裁判員裁判は、通常の裁判とは異なる流れとなります。
通常の裁判では、法廷に裁判官・検察官・弁護人・被告人が出席したうえで、公開の法廷で議論が進められます。
これに対し、裁判員裁判では、実際の裁判が開かれる前に、公判前整理手続という手続きが行われます。
公判前整理手続とは、裁判員に実際に審理をしてもらう前に、裁判官・検察官・弁護人の三者により、本件事件の争点や、実際に裁判に提出する証拠を整理する手続きです。
このような手続の中で、事件の争点や、重要な事実が整理され、裁判員には、最初から争点や判断の対象が提示されるようになっています。
公判前整理手続を経た事件の場合、この手続きが終結した後には、特別の事情がない限り新たな証拠の提出が許されなくなります。

Aさんの事件で、弁護側が主張すると考えられる点として、自動車側の対面信号が赤であったと明確に認識していなかったため、危険運転致死罪ではなく過失運転致死罪が成立する、というようなものが考えられます。
弁護人は、検察官が提示する証拠を精査した上で、被告人が赤信号を見落としていたという可能性が否定できないことを立証していきます。
危険運転致死罪と過失運転致死罪は、その法定刑が大きく異なるため、成立する罪によってその後の生活にも大きな影響を及ぼしかねません。

裁判員裁判は、通常の裁判と異なる流れとなるため、裁判員裁判が見込まれる事件では、刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱っており、裁判員裁判を経験した弁護士も多数所属しております。
ご家族が裁判員裁判対象の事件を起こしてしまいお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

危険運転(殊更赤無視)で裁判員裁判①

2021-05-08

危険運転殊更赤無視)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府吹田市の信号機で交通整理されている交差点に、目の前の信号が赤であるにもかかわらず同交差点を直進し、歩行者用の信号機が青に変わったことを確認して横断道路を横断中の歩行者をはねて死亡させたとして、大阪府吹田警察署は車を運転していたAさんを危険運転致死の容疑で逮捕しました。
(フィクションです。)

危険運転の罪

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)第2条は、危険運転致死傷罪について規定しています。

危険運転致死傷罪は、自動車の危険な運転によって人を死傷させた場合に適用される犯罪です。
危険運転の対象となる行為には、
①アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止し、その他これを著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為。
⑥高速自動車国道において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為。
⑦赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
があります。

上記事例で問題となっているのは、⑦です。

⑦は、赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって、人を死傷させた場合に適用されます。

(1)赤信号又はこれに相当する信号
「赤色信号」は、道路交通法施行令第2条1項の「赤色の灯火」と同じ意味であり、「これに相当する信号」というのは、道路交通法に定める警察官又は交通巡視員による手信号又は灯火による信号のことです。
赤色の灯火の点滅を含めてこれら以外の信号は、「赤色信号又はこれに相当する信号」には含まれません。

(2)殊更に無視し
法制審議会において、「赤色信号を殊更に無視」(以下、「殊更赤無視」といいます。)した場合と言えるのは、赤色信号に従わない行為のうち、赤色信号におよそ従う意思のないものをいうのであって、赤色信号であることを認識していること、止まろうと思えば止まれること、そしてあえて進行することの要件を備えている場合であると説明されました。
つまり、(a)赤色信号であることの認識、(b)止まろうと思えば止まれること、(c)それでもあえて進行したこと、の3つの要件を満たす場合には「殊更赤無視」したと言えるとするのが、立法者の意思であったのです。
立法当初から「殊更赤無視」に該当する典型例としては、
①赤色信号であることについての確定的な認識があり、交差点手前の停止線で停止することが十分可能であるのに、これを無視して交差点内に進入する行為、
②信号の規制を全く無視して、およそ赤色信号であろうとなかろうと最初から信号表示を一切意に介することなく、赤色信号の規制に違反して交差点に進入する行為、
が挙げられていました。

(a)赤色信号であることの認識
殊更赤無視」に当たると言えるためには、「赤色信号を無視すること」、つまり、赤信号であることを確定的に認識していなければなりません。
赤色信号を看過した場合や、信号の変わり際の未必的な認識が認められるに過ぎない場合は「殊更赤無視」には当たりません。
また、およそ赤色信号に従う意思のないものが「殊更に無視」であって、赤色信号であることの確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色心が呉であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も「殊更に無視」する行為に含まれます。
例えば、パトカーの追跡から逃れるために信号機で交通整理されている交差点を信号を確認することなく直進する行為がこれに当たります。

(b)停止線での停止可能性
赤信号は、車両等が停止線を越えて進行してはならないという意味がありますが、これは停止線を越えてしまった車両等については何ら規制していないと解すべきではなく、停止線を越えて進行した場合にもなお進行を禁じ、停止する義務を課していると理解すべきであるため、「殊更無視」の該当するか否かを判断する際には停止線で停止可能か否かという点が決定的な意味を持つわけではなく、停止線を越えたとしても横断歩道などの手前で停止することが可能であり、交差点での衝突事故を回避できる状況であったか否かがポイントとなります。

(3)重大な交通の危険を生じさせる速度
衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度、あるいは、そのような大きな事故になるような衝突を回避することが困難であると一般的に認められる速度であって、運転者がこれらの速度であると認識していることが必要です。
赤色信号を殊更無視した場合であっても、大きな事故を避けることができる速度に減速しているのであれば、「重大な交通の危険を生じさせる速度」には当たりません。

(4)よって人を負傷・死亡させた
危険運転致死傷罪(殊更赤無視)の成立には、赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転したことと、事故との間に因果関係が必要となります。

以上の要件を満たした場合に、危険運転致死傷罪(殊更赤無視)が成立することになります。
危険運転致死傷罪(殊更赤無視)の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役です。
人を死亡させた場合(危険運転致死罪)は、裁判員裁判対象事件となるため、通常の刑事事件とは異なる手続に付されます。

危険運転致死傷事件で被疑者・被告人となってしまった場合には、早期に刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

過失運転致死傷罪と過失の有無

2021-04-24

過失運転致死傷罪過失の有無について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
埼玉県富士見市の中央分離帯のない片側一車線の道路を軽自動車で走行していたAさんは、信号のない交差点で右折しようと減速し、右折し始めたところ、後方を走行していたバイクが反対車線にはみ出し、法定速度を超える速さで、Aさんの車の右後方からAさんの車を追い越そうとしました。
バイクはAさんの車とぶつかり、バイクは激しく転倒しました。
Aさんとバイクの運転手は病院に運ばれましたが、バイクの運転手は間もなく死亡しました。
埼玉県東入間警察署は、過失運転事件として捜査を開始しました。
(フィクションです。)

過失運転致死傷罪

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(「自動車運転処罰法」といいます。)第5条は、

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

と規定しています。

「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務を怠ることをいいます。
過失運転致死傷罪は、過失による罪なので、故意がなくとも不注意によって相手に怪我を負わせたり、死亡させてしまった場合に成立する可能性があります。

過失」というのは、不注意に(=注意義務に反して)構成要件上保護された法益を侵害することを意味します。
つまり、注意すべき義務があったのにそれに違反することが「過失」です。
それでは、注意義務とはどのようなことを指すのか、という点ですが、過失犯の注意義務は、①結果を予見する義務、そして、②そのような予見に基づいて結果を回避する義務から成り立っていると考えられています。

①結果を予見する義務
結果が生じることを予見するべきであったのに、それを怠ったために漫然と行為にでて結果を生じさせてしまった場合、結果予見義務に対する違反が問われます。
結果予見義務に違反したと判断するには、結果を予見することができたこと、つまり、結果の予見可能性がなければなりません。
結果を予見することが不可能である場合には、結果予見義務に違反したとは言えません。
結果の予見可能性があると言えるためには、具体的な(特定した)結果の発生とその結果発生に至る因果関係の基本的な部分が予見可能でなければなりません。

②結果を回避する義務
結果回避義務は、結果発生の危険性を減少させることを内容とするものです。
結果回避義務を尽くしても、結果が発生したといえる場合には、過失犯は成立しないことになります。

このように過失犯の成否を注意義務違反として結果予見義務違反及び結果回避義務違反という基準で判断する際に、問題となるのが、予見可能性をどの程度のものに限定するのか、いかなる注意義務を課すのか、といった点です。
この点について、判例や裁判例は「信頼の原則」を採用して判断しています。

「信頼の原則」というのは、被害者又は第三者が適切な行動をすることを信頼するのが相当である場合には、たとえその被害者又は第三者の不適切な行動によって結果が生じたとしても、それに対しては責任を負わないとする原則のことです。
この原則は、道路交通の場面を中心に判例によって承認されているものです。

交通整理の行われていない交差点を右折しようとした被告人が、車道中央付近でエンジンが停止したので、再び始動して発車しようとしたが、その際に左側方のみを注意して右側方に対する安全の確認を欠いたまま発車し、ゆっくり右折しようとしたとき、右側方からバイクが進行してくることに接近してはじめて気づき、慌てて被告人が急停止したものの間に合わず、バイクの運転手とぶつかり怪我を負わせた、という事案において、「自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、右側方からくる他の車両が交通法規を守り自車との衝突を回避するため適切な行動に出ることを信頼して運転すれば足りるのであって、本件Bの車両(=バイク)のように、あえて交通法規に違反し、自車の前面を突破しようとする車両のありうることまでも予想して右側方に対する安全を確認し、もって事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はない。」とした判例があります。(最判昭41・12・20)
信頼の原則は、信頼の対象となる被害者又は第三者の行為が適切になされれば、事故、ひいては結果の発生を回避し得ることを前提とするものです。
この原則は、自分が交通法規に違反していた場合でも、その適用が否定されるものでは必ずしもなく、被害者又は第三者が適切な行動にでることを信頼することが相当でない場合には、その適用が否定されます。

上記事例の場合にも、「信頼の原則」を適用し、過失の有無が判断される可能性があるでしょう。

交通事故を起こし、過失運転致死傷の罪に問われている、過失の有無が問題となっているなど、刑事事件化し対応にお困りの方は、交通事件にも対応する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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危険運転:技能未熟運転

2021-03-20

危険運転致死傷罪における技能未熟運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
京都府綾部市の市道において、ワンボックス車を運転していたAさんは、交差点を左折する際に、歩行者をはねる事故を起こしました。
Aさんは、無免許で車を運転していたことが発覚し、京都府綾部警察署は、無免許の過失運転致傷の疑いでAさんを逮捕しました。
その後、Aさんは、危険運転致傷罪(技能未熟運転)で京都地方検察庁福知山支部に起訴されました。
(フィクションです。)

危険運転致死傷罪とは

人身事故を起こした場合、通常は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)で規定される「過失運転致死傷罪」が適用されることになります。
しかし、事故の内容によっては、より法定刑が重い危険運転致傷罪が適用されることがあります。

危険運転致傷罪は、危険な運転で人を死傷させた場合に適用される犯罪です。
自動車運転処罰法の2条と3条に規定されています。

アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難で状態で自動車を運転する、運転をコントロールすることが困難なスピードで運転する、いわゆる「あおり運転」や赤信号無視などを行った結果、人に怪我を負わせてしまった場合には15年以下の懲役に、死亡させてしまった場合には1年以上の有期懲役が科される可能性があります。
自動車運転処罰法2条の危険運転には、技能未熟運転が含まれています。

技能未熟運転とは

「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」が、技能未熟運転です。
この「進行を制御する技能を有しない」とは、どの程度のことを指すのでしょうか。

「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能ですら有しないような運転の技量が極めて未熟なことを意味すると考えられています。
典型的な例としては、これまで一度も運転免許を取得したことがなく、自動車の運転経験もないような者であって、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能がないにもかかわらず、自動車を走行させるような場合です。
「進行を制御する技能を有しない」かどうかの判断は、事故態様、運転状況、運転経験の有無やその程度などを総合的に考慮して判断されるでしょう。
そのため、「進行を制御する技能を有しない」=無免許とはなりません。

技能未熟運転での危険運転致死傷罪が成立するか否かは、さまざまな要素についてしっかりと検討する必要があります。
交通事故を起こし危険運転致死傷に問われてお困りの方は、法律の専門家である弁護士に相談してください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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ドア開扉事故と過失運転致死傷罪

2021-02-13

ドア開扉事故過失運転致死傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
埼玉県和光市を自家用車で走行していたAさんは、喉が渇いたため、近くのコンビニで飲み物を買うことにしました。
駐車場に車を止めるのが煩わしいと思ったAさんは、コンビニの前の路上で車を止め、シフトレバーをPに入れ、サイドブレーキをひき、エンジンをかけたまま、運転席のドアを開け外に出ようとしました。
すると、後方から走ってきた原付バイクがドアに接触し、原付バイクの運転手がバイクとともに転倒しました。
Aさんは、通報を受けて駆け付けた埼玉県朝霞警察署の警察官から話を聞かれています。
(フィクションです。)

車の運転を終了した直後に運転席のドアを開けたことで交通事故(人身事故)を起こしてしまった場合には、どのような罪責に問われることになるのでしょうか。

平成19年の刑法改正により、業務上過失致死傷罪のうち自動車運転に係るものに関しては、刑法211条2項に自動車運転過失致死傷罪が新設されました。
そして、その法定刑は7年以下の懲役又は禁固と業務上過失致死傷罪の法定刑よりも重くなりました。
その後、平成25年には、自動車運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷処罰法」といいます。)が制定され、刑法の自動車運転過失致死傷罪は、過失運転致死傷罪と名称が変更されました。
ただ、この過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」ことが構成要件であるため、この罪が成立するためには「自動車の運転」をしている場合に限られます。
そのため、事故当時の状況が「自動車の運転」をしている場合であるかどうかが問題となり、「自動車の運転」をしている際に起こした事故であれば過失運転致死傷罪が適用され、そうでなければ業務上過失致死傷罪にとどまることになり、適用される罪によって科され得る刑罰にも大きな差が出てくることになるのです。

「自動車の運転」とは?

それでは、問題となっている「自動車の運転」という文言について説明してみたいと思います。

そもそも、道路交通法上、「運転」は、「道路において、車両又は路面電車をその本来の用い方に従って用いることをいう。」と定義されています。(道路交通法2条1項17号)
つまり、「本来の用い方に従って用いる」のを終えた段階で運転が終了するものと理解することができます。
すると、問題となるのは、どの段階で「用いるのを終えた」と言えるのか、ということになります。
車の動きを止めたときなのか、シフトレバーをPに入れたときなのか、サイドブレーキをかけたときなのか、エンジンを切ったときなのか、それとも、車両外に運転者が出たときなのか。
これについては、自動車の本来の用途を考えてみた場合に、単に車両を停止させただけの段階(ブレーキを踏んだだけの状態)や、その後の停止を確実にするための補助的動作をした段階(シフトレバーをPに入れただけの状態)では、未だ「用いる」ことを終了させたというには早過ぎるものとされ、自動車の動力を停止させた状態、つまり、エンジンを停止させた段階で、「用いる」のを終了させたと理解するのが一般的となっています。
ただ、宅配業者のように、宅配先に荷物を届けるため、宅配先に到着するたびにエンジンを停止して降車し、荷物を届けるといったことを繰り返す場合には、エンジンを停止させても、配達が完了すればすぐに車を発車して走行を続ける意思があるため、「運転」が終了したとは言えません。
「運転」が終了したと言うためには、エンジンの停止と運転者が主観的にも運転を終了させる意図があることが必要となるのです。

以上の考え方を前提にすると、運転を終了しようと思い、エンジンを停止した後、運転者が運転席のドアを開ける行為は、「運転」には当たらないものと言えるでしょう。
そのため、ドアを開ける際に後方等の安全確認を十分に行わなかったという過失により、ドアを通行者に衝突させて負傷させた場合には、業務上過失傷害罪が適用されることになるでしょう。
ただし、ドア開扉に起因した事故すべてが業務上過失致死傷罪で処理されるわけではありません。
交差点で一時停止してドアを開けた場合、宅配目的で宅配車を停止させてドアを開けた場合、タクシー運転手が客を乗せたり降ろしたりする際に停車して後部左側の自動ドアを開ける場合などは、運転行為が継続する中で起きたものと認められるため、過失運転致死傷罪が成立することがあります。
上記事例の場合、Aさんは過失運転致傷罪に問われる可能性もあります。

ドア開扉事故をはじめ交通事故を起こしてお困りの方は、交通事件に強い弁護士に相談してみてください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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