少年の交通事故
少年が交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
千葉県君津市に住むAさんは,18歳の大学生ですが,大学生になり自動車の免許を取得して,家の車を運転していました。
ある日,Aさんが運転していたところ,友達から電話がかかってきたので,運転中にもかかわらずそのまま電話に出てしまい,Aさんは前方から目を離してしまいました。
前方の道路には信号機のない横断歩道があり,そこをたまたまBさんが横断していたのですが,Aさんはそれに気づかず,ブレーキをかけることなく横断歩道に侵入しました。
結果,AさんはBさんを轢いてしまい,この事故によってBさんは亡くなってしまいました。
Aさんは今後どのようになるのか不安になり,事務所に相談に来ました。
(フィクションです)
交通死亡事故の流れ
Aさんは,前方不注意でBさんを轢いてしまいましたので,Aさんには過失運転致死罪が成立することになります。
過失運転致死罪が成立するような場合では,現場で警察官によって現行犯逮捕になる場合もありますが,逮捕されない場合もあります。
また,仮に逮捕されたような場合でも,飲酒や薬物などの使用が疑われなかったり,過失の内容が単純であるような場合には,翌日に釈放されることもあります。
しかし,逮捕されるかどうかは,捜査をどのように進めるかという方法の問題ですから,仮に逮捕されなかったり,釈放された場合でも,その後警察に何度か呼び出しを受けることとなります。
家庭裁判所送致
警察が捜査を終えると,事件は検察庁に送られます。
検察庁は,被疑者が成人である場合には,自ら起訴するかどうかについて判断をしますが,被疑者が少年(20歳未満の者。男女問いません)である場合には,事件を家庭裁判所に送致します。
これは,交通事故の場合でも変わりませんので,Aさんの事件は,家庭裁判所に送致されることになります。
なお,捜査をする警察署や,検察庁,成人の場合裁判を開く裁判所は,通常事件が起きた場所(つまり,事故現場)を管轄する機関となります。
しかし,少年事件の場合は,一旦は事件が起きた場所を管轄する家庭裁判所に事件が送致されますが,その後少年の住所を管轄する家庭裁判所に移送されることとなっています。
そのため,たとえばたまたま旅行先で事故を起こしてしまったような場合には,捜査などは旅行先の警察署で行われますが,家庭裁判所の手続き自体は,自宅を管轄する家庭裁判所で行われることになります。
調査
家庭裁判所に事件が送られると,家庭裁判所から自宅に呼び出し状が届き,少年と親権者揃って家庭裁判所に出頭することになります。
そこで,家庭裁判所調査官と呼ばれる人から,事故の原因等を尋ねられることとなります。この手続きのことを,調査と呼んでいます。
少年審判
調査が終了すると,家庭裁判所で少年審判が開かれます。
少年審判は,成人の裁判とは異なり,非公開で行われますし,審判の結果それ自体も前科になるようなものではありません。
少年審判は,裁判官が少年に対して何らかの判断を言い渡して終了しますが,その判断として
①少年院送致②保護観察処分③不処分④試験観察⑤検察官送致といった種類のものがあります。
それぞれの細かい内容は別の記事に譲りますが,これらの言渡しが終われば,少年審判の手続きは終了します。
少年の交通事故
少年が交通事故を起こした場合には,上記の検察官送致の決定がなされることが多くなっています。
検察官送致決定とは,家庭裁判所に送られてきた事件を,もう一度検察官のところに戻すという決定です。
そして,戻された検察官は,基本的には事件を起訴することになります(少年法45条5号)。起訴するということは,つまり成人と同様の裁判を受けることになります(細かい点は異なりますが,少なくとも法廷には立たなければなりません)。
つまり,検察官送致決定を受けると,家庭裁判所の手続きで事件が終了せず,その後再度裁判を受けなければならないということを意味します。
そして,少年審判と異なり,裁判は基本的には弁護士が付かなければ開かられないことになっていますから(交通事故の場合には,弁護士がいなければなりません),少年や家族は,弁護士を選任する必要があります。
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