身代わり出頭で犯人隠避罪

2020-01-21

身代わり出頭で犯人隠避罪

スピード違反をしたが他人に身代わり出頭してもらい、犯人隠避罪やその教唆犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】
Aさんは、東京都内の高速道路を走行していた際、自車がオービスに反応したことに気づきました。
それから1週間後、Aさんはスピード違反の疑い(道路交通法違反の疑い)で東京都調布警察署から呼び出しを受けたことから、知人のBさんに身代わり出頭をお願いしました。
Bさんは了承して出頭しましたが、身代わり出頭が発覚して犯人隠避罪の疑いで逮捕され、Aさんも犯人隠避罪の教唆犯として逮捕されました。
Aさんの家族が弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 身代わり出頭 ~

警察署から呼び出しを受けた際、自らの代わりに他者を警察に出頭させることを身代わり出頭といいます。
捜査機関に身柄を拘束されない在宅事件では、犯罪日時から出頭まで一定期間を要することから、その間、真犯人が別の者に身代わり出頭を依頼するというケースもあるようです。
特に交通違反でこうしたケースを見かけます。

~ 身代わり出頭した方が問われる罪 ~

身代わり出頭した方(本件であればBさん)は犯人隠避罪に問われる可能性がありますので、以下検討していきます。
犯人隠避罪は刑法103条に規定されています。

刑法103条
 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者(略)を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

「罰金以上の刑に当たる罪」とは、法定刑として罰金刑以上の刑が規定されている罪をいいます。
つまり、死刑・懲役・禁錮・罰金のいずれかが定められていればよく、これらより軽い拘留・科料という罰則が同時に定められている場合も該当します(拘留・科料のみが定められている場合には該当しません)。

Aさんが犯したスピード違反の法定刑は、

6月以下の懲役又は10万円以下の罰金(故意犯の場合)
3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金(過失犯の場合)

ですから(道路交通法118条1項1号、同条2項参照)、「罰金以上の刑に当たる罪」に当たります。

また、「蔵匿」とは、犯人に場所を提供してかくまってやることをいいます。
「隠避」とは、蔵匿以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れされる一切の行為をいいます。
身代わり出頭は「隠避」に当たるでしょう。
そのほか、犯人に代わって警察官に「自分が犯人だ」と言う行為、犯人に代わって自首する行為、犯人に変装用の衣服や旅費を与える行為なども「隠避」に当たります。

最後に、本罪に問われるには、相手方(Aさん)が「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」との認識(故意)が必要です。
しかし、スピード違反が「罰金以上の刑に当たる」ことまで知っている必要はないので、「Aさんがスピード違反を犯した人」という認識があれば、故意があるとされてしまうでしょう。

~ 身代わり出頭を依頼した方が問われる罪 ~

本来、罪を犯した人(本件であればAさん)が自ら逃げ隠れしても、そのこと自体をに問われることはありません。
罪を犯した人に対し、逃げ隠れしないことを強く期待することはできないとされているからです。

しかし、他人をそそのかしてまで逃げ隠れすることは許されない、とするのが現在の実務の立場です。裁判所は次のように述べています。

「犯人自身の隠匿行為が不可罰とされるのは、これらの行為を罰することが刑事訴訟法における被告人の防御の地位と相容れないからであるのに対して、他人を教唆してまでその目的を達成しようとすることは、もはや法の放任する防御の範囲を逸脱する」

なお、そそのかすことを法律上は「教唆」といいます。
もう少し詳しくご説明すると、「まだその犯罪に対する実行の決意を生じていない他人を唆して、犯罪実行の決意を生じさせること」をいいます。
本件では、身代わり出頭の依頼は「教唆」に当たると判断されるでしょう。

教唆犯の場合、正犯(Aさん)と同じ刑が科されます(刑法61条)。

法61条1項
 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

情状によってはBさんよりも判決で言い渡される刑罰の重さ(量刑)が重たくなることも考えられます。

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