自転車のひき逃げで刑事事件に

2020-05-09

自転車のひき逃げで刑事事件になる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

埼玉県川口市で深夜に自転車を運転していたAさんは、前方不注意で前を歩いていた歩行者に気づかずぶつかってしまいました。
歩行者は転倒しましたが、Aさんは声をかけることなくその場を立ち去りました。
翌日、現場付近を通ったところ、自転車と歩行者の事故についての目撃情報を募る立て看板が設置されていることに気がつきました。
Aさんは、埼玉県川口警察署に出頭することを考えていますが、その前に交通事故を含む刑事事件に精通する弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

自転車を運転し人身事故を起こした場合

あなたが自転車を運転し人身事故を起こした場合には、刑事事件として処理され、過失傷害罪過失致死罪もしくは重過失致死傷罪に問われる可能性があります。

(過失傷害)
刑法第209条 
過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(過失致死)
刑法第210条 
過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。

(業務上過失致死傷等)
刑法第211条 
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

(1)過失傷害罪

過失傷害罪は、「過失」により人を傷害した場合に成立する罪です。
暴行や傷害の故意がなく、不注意によって人に傷を負わせてしまうものです。
自転車事故の原因が、ちょっとしたよそ見などの場合は、過失傷害罪となるでしょう。
一方、暴行や傷害の故意がある場合には、傷害罪が成立することになります。
過失傷害罪は、被害者等の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。

(2)過失致死罪

過失致死罪は、過失によって人を死亡させた場合に成立する罪です。
上の過失傷害のように、不注意によって人を死亡させてしまうものです。

(3)重過失致死傷罪

刑法第211条の後段に規定されているもので、「重大な過失」により人に怪我を負わせたり死なせてしまった場合に成立する罪です。
こちらも、暴行や傷害の故意はなく、「重大な過失」の結果、人に傷を負わせたり死亡させて
しまう犯罪です。
「重大な過失」とは、過失の程度が重いこと、つまり、注意義務違反の程度が著しい場合をいいます。
発生した結果の重大性、結果発生の可能性が大であったことは必ずしも必要ではありません。
自転車事故では、
・携帯電話で通話しながらの運転
・スマートフォンを操作しながらの運転
・イヤフォンをつけて音楽を聴きながらの運転
・ものすごいスピードで歩道を走っていた場合
・夜間に無点灯で走っていた場合
などが、重過失致死傷罪に問われる可能性が高いと言えます。

Aさんのようにちょっとした前方不注意で自転車が歩行者にぶつかり、怪我を負わせてしまった場合でも、自転車の時速や運転していた道路の状況なども鑑みて、過失の程度が重いと判断され、重過失死傷罪が成立することもあります。

自転車を運転し人身事故を起こし、その場から立ち去った場合

さて、自転車で人身事故を起こしたにもかかわらず、その場を立ち去った場合にも、自動車の場合と同様に、犯罪が成立するのでしょうか。

実は、道路交通法上の救護義務は、自動車の場合だけでなく、自転車を運転し人身事故を起こした場合にも、その運転手等に課されるものです。

道路交通法第72条 
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

条文は、救護義務を当該交通事故に係る車両等の運転手その他の乗務員に課していますが、「車両等」には自転車などの軽車両も含まれます。

ですので、自転車であっても救護義務に違反した場合には、道路交通法違反となり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金となる可能性があります。

人身事故については、過失傷害罪、過失致死罪、もしくは重過失致死傷罪が成立し、ひき逃げをした場合には、それに加えて、道路交通法違反の2つの罪が成立することになります。

このように自転車のひき逃げは刑事事件に発展する可能性は大いにありますので、早期に弁護士に相談・依頼し、事件を穏便に解決できるよう動くことが重要です。

自転車事故やひき逃げ事件で対応にお困りの方は、交通事件も取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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