(事例紹介)飲酒運転の末の危険運転致傷罪 執行猶予判決
(事例紹介)飲酒運転の末の危険運転致傷罪 執行猶予判決
~事例~
(略)被告(55)は、ことし4月、酒を飲んで、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で乗用車を運転し、神戸市須磨区の市道の交差点で、信号待ちをしていたバイクにぶつかり、乗っていた男性に大けがをさせたとして、危険運転傷害の罪に問われました。
これまでの裁判で、検察は懲役1年8か月を求刑し、弁護側は反省しているとして執行猶予の付いた判決を求めていました。
7日の判決で、神戸地方裁判所の西森英司裁判官は「(略)帰りも運転することが分かっていながら大瓶のビール5本以上を飲み、相当酔っ払った状態で運転して事故を起こした。(略)」と指摘しました。
一方で、「自業自得ながら議員を辞職して反省している」などと述べて、懲役1年8か月執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。
(※2022年7月7日17:35NHK NEWS WEB配信記事より引用)
~飲酒運転と危険運転致傷罪~
自動車運転処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)では、危険運転致死傷罪を規定しています。
自動車運転処罰法第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
第1号 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
自動車運転処罰法第3条
第1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
第2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
一般に危険運転致死傷罪と呼ばれるのは、自動車運転処罰法第2条のものを指すことが多く、自動車運転処罰法第3条のものは、準危険運転致死傷罪と呼ばれることもあります。
これらは、飲酒運転をして人身事故を起こしたという全ての場合に適用されるわけではなく、「アルコール…の影響により正常な運転が困難な状態」や「アルコール…の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で車を運転し、人身事故を起こした場合に成立する犯罪です。
大まかに言えば、飲酒による影響が著しく大きい状態で車を運転し、それによって人身事故を起こした場合に、こうした危険運転致死傷罪となるというイメージです。
危険運転致死傷罪は、危険運転行為という故意的な行為によって事故を起こしていることから、悪質性が高いと考えられやすいです。
設定されている刑罰も、「人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役」「人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役」と重いものとなっています。
被害者が亡くなっているのかどうか、被害者が怪我をしているとしてどの程度の怪我なのか、被害者や遺族への謝罪や弁償を行っているのかなど、様々な事情によって、執行猶予の有無や刑罰の重さが判断されます。
今回の事例でも、危険運転致傷罪という罪名ではありますが、最終的に執行猶予判決となっています。
危険運転に関わる犯罪であるからといって、必ずしも実刑判決となるわけではありません。
しかし、先ほど触れた通り、危険運転致死傷罪は悪質であると判断されやすい犯罪であり、決して軽い犯罪ではないため、執行猶予を獲得できるかどうかは非常にシビアな犯罪であることは間違いありません。
ですから、事件の見通しがどのようなものかということも含めて、早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、飲酒運転に関わる危険運転致死傷事件についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
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