自動車で人身事故を起こし逮捕

2019-09-18

自動車で人身事故を起こし逮捕

Aさんは、深夜、東京都世田谷区内の公道において自動車を運転中、道路を横断しているVに気付かず、これに接触し、全治1か月の傷害を負わせてしまいました。
Aさんは救急車を呼びましたが、救急車と一緒に駆け付けた警視庁世田谷警察署の警察官により、過失運転致傷罪の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~自動車で人身事故を起こすとどうなるか?~

自動車を運転中に人身事故を起こすと、①民事上の責任(被害者や遺族への損害賠償)、②行政上の責任(免許停止、取消などの行政処分)に加え、③刑事上の責任を負うことになります。
今回は、ケースの交通事故に関し、刑事上の責任について解説したいと思います。

自動車で人身事故を起こした場合に成否が検討される犯罪類型として、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、無免許運転過失致死傷罪などが挙げられますが、今回は過失運転致傷罪の嫌疑がかけられています。
過失運転致傷罪とはどのような犯罪類型なのでしょうか。

(過失運転致死傷罪について解説)
過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させる犯罪です。
法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっています。
ただし、傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除されることがあります。
被害者が死亡した場合には「過失運転致死罪」、傷害を負ったに留まる場合は、「過失運転致傷罪」に問われることになります。

「自動車の運転上必要な注意」とは、自動車運転者が、自動車の各種装置を操作し、そのコントロール下において自動車を動かす上で必要な注意義務をいいます。
ケースのAさんには、自動車を進行させるに当たり、道路を横断する歩行者の有無に留意すべき注意義務があったと考えられます(道路交通法38条参照)。
上記の注意義務に違反し、道路を横断するVの存在に気付かず、自動車を進行させた過失があると判断された場合、「自動車の運転上必要な注意を怠った」と判断される可能性が極めて高いと思われます。
これによりVと接触し、傷害を負わせたということなので、Aさんに過失運転致傷罪が成立する可能性はかなり高いと思われます。

~人身事故を起こして逮捕…Aさんの今後は?~

現行犯逮捕された後は、警察署に引致され、犯罪事実の要旨、弁護人選任権があることを伝えられ、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。
留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めます。
勾留の請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日の間勾留されることになり、さらにやむを得ない事由があると認められるときは、最長10日間、勾留が延長されます。
Aさんが勾留されている場合は、勾留の満期日までに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。

~人身事故で早期の身柄解放を求める~

過失運転致傷事件の場合は、事故を起こしても適切に通報して実況見分などに応じていれば逮捕されずに済むことも多いです。
もし逮捕されてしまった場合であっても、勾留が付かずに釈放される可能性も十分考えられます。
身柄を拘束されたまま事件が進行するのと、在宅で事件が進行するのとでは、Aさんの負担が大きく違ってきます。
家族が身元引受人になるなどして、逮捕直後は、身体拘束が長期化しないように活動することが重要です。

~示談を行い人身事故事件を有利に解決する~

前述の通り、捜査の最終段階において、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めることになります。
不起訴処分を獲得できれば、前科が付かずに済みます。
不起訴処分を獲得できる可能性を高めるために、Vと示談をすることを強くおすすめします。

また、示談を成立させたことにより、上記の民事上の責任を果たしたことになるので、後日、民事紛争に巻き込まれるリスクを無くすことができます。
示談交渉は、Aさん本人でもできますが、法律的に有効な示談にならないリスクがあり、そもそも身体拘束中はVと接触することもできません。
法律の専門家である弁護士に、Vとの間に立ってもらって、交渉を進めることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースのような過失運転致傷事件の解決実績も豊富です。
ご家族が過失運転致傷事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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