道路交通法違反(乗車積載方法違反)で現行犯逮捕

2020-06-06

道路交通法違反乗車積載方法違反)で現行犯逮捕されるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

会社員のAさんは、兵庫県西宮市の国道で、飼い犬のトイプードルを自分の膝の上に乗せて運転していました。
付近をパトロール中だった兵庫県甲子園警察署の署員が、運転席側の窓から顔を出している犬を発見し、Aさんの車に停車するよう呼び止めました。
Aさんは停車しましたが、「犬を運転席には乗せていない。」と容疑を否認して、免許証の提示を拒否しそのまま走り去ろうとしたため、署員はAさんを現行犯逮捕しました。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、Aさんのことや今後のことが心配になり、すぐに対応してくれる弁護士を探しています。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)

道路交通法違反(乗車積載方法違反)とは

道路交通法は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする法律です。(道路交通法第1条)
ざっくり言うと、道路交通法は、主に車両の運転者や歩行者が道路において守るべきルールを定めるものです。
そのルールのなかでも取り締まりの件数が多いのが、携帯電話使用等違反、座席ベルト装着義務違反等、駐停車違反、一時不停止、最高速度違反だと言われています。
上の事例では、乗車積載方法違反に問われているようですが、あまり耳にしない違反ですね。
どのような違反なのでしょうか。

道路交通法第55条2項は、乗車又は積載の方法について次のように規定しています。

車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。

積載装置以外の場所に荷物を積載したり、運転席や助手席の視野を妨げる行為を行う場合に、乗車積載方法違反となります。
犬などのペットを運転席に入れ、膝の上に乗せて運転する場合や、日よけカーテンの装着等が、運転者の視野やハンドル等の操作を妨げるような場合には、乗車積載方法違反となります。

乗車積載方法違反の罰則は、5万円以下の罰金です。
反則金は、普通車6,000円、中・大型車7,000円です。
乗車積載方法違反の場合、通常は反則金を支払うことで事件は終了します。

比較的軽微な道路交通法違反であっても、逮捕されることもあります。
事例において、Aさんは現行犯逮捕されていますが、現行犯逮捕される場合とはどのような場合なのでしょうか。

現行犯逮捕される場合とは

原則として、人を逮捕する場合には、事前に裁判官が発布した逮捕状がなければなりません。
しかし、逮捕状がなくとも逮捕することができる場合もあります。
そのひとつが「現行犯逮捕」です。

現行犯逮捕は、現行犯人に対して行う逮捕です。
現行犯逮捕については、刑事訴訟法第213条で次のように規定しています。

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

ここでいう「現行犯人」とは、どういった人のことを言うのでしょう。

それについては、刑事訴訟法第212条に次のように規定されています。

第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

つまり、「現行犯人」というのは、「現に罪を行」う者、そして、「現に罪を行い終わった」者のことです。
犯罪が行われた状況や犯罪が終わった状況を目撃し、その犯罪が行われる最中、あるいは、犯罪が行われた後時間を置かずに逮捕することが「現行犯逮捕」です。

また、一定の条件に当てはまる者が罪を行い終わってから間がないと明らかに認めるときは、現行犯人とみなされ、現行犯逮捕が認められます。
この場合を、現行犯人と区別して「準現行犯」と呼びます。
準現行犯とする要件は、
①犯人として追呼されているとき。
犯人として追われている、犯人として呼び掛けられている場合です。
②贓物(不法に領得された財物)や、明らかに犯罪に使われたと思われる兇器その他の物を身に着けて携帯しているような場合。
③返り血を浴びたような血痕が身体や服に付着しているといった、身体や服に犯罪の顕著な証跡が残っている場合。
④警察官から声をかけられて逃げ出そうとしている、呼び止められて逃げようとしている場合。

現行犯人や準現行犯人であっても、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる軽微な犯罪を行った者については、その者の住居や氏名が明らかでないとき、又は、逃亡のおそれがあるときのみ逮捕することができます。
Aさんは、5万円以下の罰金に当たる軽微な犯罪を行った者と疑われるところですが、その場から走り去ろうとしたため、逃亡の恐れがあると認められ、現行犯逮捕されたのでしょう。

現行犯逮捕された後の流れは、通常の逮捕の場合と同じです。
逮捕から48時間以内に、被疑者は釈放されるか、検察庁に送致されます。
検察庁に送致された場合、検察官は被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、若しくは勾留請求を行います。
勾留請求されると、検察官からの勾留請求を受けた裁判官が、勾留について判断することになります。
裁判官が勾留の決定をした場合には、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、被疑者は警察署の留置場での身体拘束を余儀なくされます。
延長が認められれば、最大で20日間身柄が拘束されることになります。

そのような長い期間身柄が拘束されると、学校や会社に行くことはできませんので、最悪の場合、退学や懲戒解雇となってしまうおそれもあります。
できる限り早い段階での釈放で、その後の生活への支障を最小限に抑えることが重要です。

ご家族が道路交通法違反事件で逮捕されてしまったのであれば、今すぐ刑事事件・少年事件に精通する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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