Archive for the ‘自動車運転死傷行為処罰法’ Category
【事例紹介】物だと思ったと容疑を否認しているひき逃げ事件②
【事例紹介】物だと思ったと容疑を否認しているひき逃げ事件②
前回に引き続き、高齢女性が車でひかれ死亡したひき逃げ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
今月24日、東京の池袋駅近くの路上で、高齢の女性が頭から血を流して倒れているのが見つかりその後死亡した事件で、警視庁はひき逃げなどの疑いで62歳の男を逮捕しました。
警視庁によりますと、(中略)容疑者は今月24日、豊島区東池袋の路上で(中略)さんを車でひき、そのまま逃走した疑いがもたれています。(中略)さんは搬送先の病院で死亡が確認されました。
(中略)
調べに対し、(中略)容疑者は「何かにぶつかった衝撃はあったが物だと思った。車を見たが壊れてなかったし、何にぶつかったか見えなかったので家に帰った」と容疑を否認しているということです。
(3月27日 日テレNEWS 「高齢女性ひき逃げか 男を逮捕 東京・池袋駅近くの路上」より引用)
過失運転致死罪
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます)では、車の運転中に事故を起こし、相手を死傷させた場合などについて規定しています。
自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
自動車運転処罰法第5条では、過失運転致死罪、過失運転致傷罪が規定されています。
過失運転致死罪と過失運転致傷罪の法定刑はどちらも7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金です。
法定刑が同じであることから過失運転致死罪、過失運転致傷罪ではたいした差がないように思えるかもしれませんが、過失運転致傷罪と比べると人が亡くなっている過失運転致死罪の方がより重い刑罰を科される傾向にあります。
過失運転致死罪とは簡単に説明すると、周囲の歩行者の確認など運転上払うべき注意を怠って事故を起こし、人を死亡させた場合に成立する犯罪です。
今回の事例では、容疑者が運転する車が被害者にぶつかり、その後被害者は死亡したようです。
容疑者が注意をしていれば防げたのにもかかわらずに事故を起こし、その結果被害者が亡くなってしまったのであれば、容疑者に過失運転致死罪が成立する可能性があります。
交通事件では、しっかりと謝罪と賠償をすることで執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
過失運転致死罪では人がお亡くなりになっているため、残された遺族が激しい処罰感情を抱いている場合も少なくありません。
そのような状態で加害者が直接遺族とやり取りを行ってしまうことで、遺族の処罰感情を逆なでしてしまう可能性や思わぬトラブルに発展してしまうおそれがあります。
そういった事態を避けるためにも、謝罪や賠償を考えている場合には、一度、弁護士に相談をしてみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
弁護士に相談をすることで執行猶予付き判決を得られる可能性がありますので、過失運転致死罪などの交通事件でお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
【事例紹介】てんかんの発作で事故を起こし危険運転致傷罪で逮捕された事例
【事例紹介】てんかんの発作で事故を起こし危険運転致傷罪で逮捕された事例
てんかんの発作が起こる可能性を知りながら車を運転し、発作で事故を起こしたとして危険運転致傷罪の容疑で再逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
福岡県宇美町の県道で(中略)、登校中の高校生らの列に軽乗用車が突っ込み、歩行者9人が重軽傷を負った事故で、県警は4日、車を運転していた同県須恵町上須恵、(中略)容疑者(66)を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)容疑で再逮捕した。(中略)容疑者は運転中にてんかんの発作を発症し、意識喪失状態となったとみられ、県警はそうした危険性を知りながら運転したとして危険運転致傷容疑を適用した。容疑を認めているという。
再逮捕容疑は(中略)、持病の影響で正常な運転ができない恐れがあると知りながら軽乗用車を運転し、(中略)宇美町宇美5の県道で対向車線の路側帯に進入して歩いていた当時16~28歳の男女9人をはねて顔の骨折など重軽傷を負わせたとしている。(中略)
県警によると、(中略)容疑者は22年3月に医療機関でてんかんと初めて診断され、薬を処方された。その際、医師からは発作が出る恐れがあるとして、運転を禁止されたという。(後略)
(3月4日 毎日新聞デジタル 「危険運転致傷容疑で66歳を再逮捕 発作の恐れ知りながら運転か」より引用)
危険運転致傷罪
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条
1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
大まかに説明すると、事故を起こす危険性があると知りながら運転に支障を及ぼすおそれがあるとして政令で定められている病気の影響で事故を起こし人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。
今回の事例では、容疑者がてんかんの発作で事故を起こす危険性を知りながら車の運転をし、てんかんの発作によって事故を起こして9人に重軽傷を負わせたと報道されています。
てんかんは自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項が規定する病気にあたるのでしょうか。
道路交通法第90条1項では、幻覚症状を伴う精神病や発作により意識障害や運動障害をもたらす病気にかかっている者については運転免許試験に合格していたとしても免許を与えなくてもいいと規定しています。
また、道路交通方施行令第33条の2の3第2項では、幻覚症状を伴う精神病として統合失調症、意識障害や運動障害をもたらす病気としててんかんなどを規定しています。
ですので、統合失調症やてんかんなどの病気がある場合には、免許を取得できない可能性があります。
幻覚症状や意識障害、運動障害が発生すれば重大な事故につながるおそれがあるため、統合失調症やてんかんなどの病気を患っている方は免許の取得が認められない場合があるのでしょう。
道路交通法施行令は政令にあたりますので、統合失調症やてんかんなどが、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項が規定する、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気にあたる可能性が高いといえます。
今回の事例では容疑者はてんかんだと診断され、医者から運転を禁止されていたようですから、実際に容疑者がてんかんの発作で事故を起こしたのであれば、危険運転致傷罪が成立するおそれがあります。
事故を起こす危険性を知りながら病気の影響で事故を起こした場合に危険運転致傷罪で有罪になると、12年以下の懲役が科されることになります。
今回の事例では医者から運転を禁止されていたようですので、悪質性が高いと判断される可能性が高いですし、事故により9人が重軽傷を負っているようなので被害も軽いとはいえないでしょうから、重い判決が下される可能性があります。
危険運転致傷罪では、初犯であっても実刑判決を下される可能性があります。
弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決を獲得できる場合がありますので、危険運転致傷罪でお困りの方は、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検②
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検②
前回に引き続き、モペットを無免許で運転し、赤信号無視で事故を起こしたとして、無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
原付き運転免許が必要なペダル付き原動機付き自転車(モペット)を無免許で運転し、赤信号を無視して自転車の女性にけがをさせたとして、警視庁は(中略)男(24)=東京都新宿区=を自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)などの疑いで書類送検し、発表した。
(中略)
男の送検容疑は、(中略)新宿区大久保2丁目の都道で無免許でモペットを運転し、赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入。自転車に乗った70代女性に衝突し、頭部打撲など8週間のけがをさせた疑いがある。
モペットは、見た目は自転車に似ているが、法律上は原付きバイクと同じ扱いだ。原付き免許、ナンバープレート、自賠責保険への加入、ヘルメットが必要だが、男はいずれもなかったという。(後略)
(2024年1月18日 「無免許でモペット乗り、赤信号無視 女性をけがさせた疑いで書類送検」より引用)
赤信号無視と見落とし
赤信号で交差点に進入して起こしてけがを負わせた事故でも、赤信号を故意に無視したのか、それとも赤信号を見落としてしまったのかで成立する罪が大きく変わる可能性があります。
例えば、赤信号を故意に無視した場合には、前回のコラムで解説した危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
一方で、赤信号を故意に無視したのではなく、見落としてしまった、つまり過失があった場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
過失運転致傷罪は自動車運転処罰法第5条に規定されており、大まかに説明すると、運転中に周囲の確認を怠ったなどの過失によって人にけがをさせてしまった場合に成立します。
不注意によって赤信号を見落としてしまった場合などには、この過失運転致傷罪が成立する可能性が高く、法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、危険運転致傷罪よりも科される刑罰が軽く規定されています。
また、過失運転致傷罪では、けがの程度が軽い場合には刑を免除される場合があります。
このように危険運転致傷罪と過失運転致傷罪では、刑罰の重さがかなり異なります。
ですので、故意に赤信号を無視したのでない場合には、そのことを主張していく必要があります。
交通事件では、刑事事件と同様に取調べを受けることになります。
上記のような主張は取調べですることになるのですが、警察官や検察官はあなたの味方になってくれるわけではありませんので、話しを聞いてもらえないどころか、赤信号を無視したととれる内容の供述をするように誘導してくる可能性があります。
自分の言い分を聞いてもらえない状態が続くとかなりのストレスになりますし、不安にもなるでしょう。
自分に限って供述の誘導に乗ることはないと思っていても、ストレスや疲れで判断能力が鈍り、誘導に乗ってしまうことがあります。
取調べで作成される供述調書は裁判で重要な証拠として扱われますので、赤信号を故意に無視した内容の供述調書が作成されてしまった場合は、たとえ事実に反していたとしても、内容を覆すことは容易ではありませんので、裁判の際に窮地に立たされる可能性がかなり高くなってしまいます。
そういった事態を避けるためにも、取調べ前に準備を行っておくことが重要です。
取調べの準備といっても何をどうすればいいのかわからない方がほとんどでしょう。
ですので、取調べ前に弁護士に相談をすることをおすすめします。
刑事事件や交通事件の経験豊富な弁護士であれば、取調べの際にどういった内容のことが聞かれるのかをある程度予測することができます。
その予測を基に、供述する内容をあらかじめ考えておくことで、取調べに落ち着いて挑むことができる可能性があります。
また、事案によっては、供述した方がいい内容や黙秘した方がいい内容があります。
供述すべき内容なのか、そうでない内容なのかは事案によって異なりますので、警察の捜査を受けている場合には、弁護士に一度、相談をすることが望ましいでしょう。
取調べでどういった対応を取るかによって、危険運転致傷罪と過失運転致傷罪のどちらが成立するのかが変わってくる可能性があります。
ですので、赤信号無視による危険運転致傷罪の容疑をかけられている際は、できる限り早い段階で弁護士に相談をすることを強くおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件、交通事件に精通した法律事務所です。
経験豊富な弁護士と取調べ対策を行うことで、不利な状況に陥ることを防いだり、執行猶予付き判決などの良い結果を得られる可能性があります。
交通事件でも、取調べの対策を練っておくことはかなり重要ですので、取調べでご不安な方、危険運転致傷罪などの容疑をかけられている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検①
【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検①
モペットを無免許で運転し、赤信号無視で事故を起こしたとして、無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
原付き運転免許が必要なペダル付き原動機付き自転車(モペット)を無免許で運転し、赤信号を無視して自転車の女性にけがをさせたとして、警視庁は(中略)男(24)=東京都新宿区=を自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)などの疑いで書類送検し、発表した。
(中略)
男の送検容疑は、(中略)新宿区大久保2丁目の都道で無免許でモペットを運転し、赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入。自転車に乗った70代女性に衝突し、頭部打撲など8週間のけがをさせた疑いがある。
モペットは、見た目は自転車に似ているが、法律上は原付きバイクと同じ扱いだ。原付き免許、ナンバープレート、自賠責保険への加入、ヘルメットが必要だが、男はいずれもなかったという。(後略)
(2024年1月18日 「無免許でモペット乗り、赤信号無視 女性をけがさせた疑いで書類送検」より引用)
モペットと原動機付自転車
モペットは自転車と違い、モーターなどでペダルをこがずに自走することが可能なようです。
ですので、モペットは道路交通法上の原動機付自転車に分類されており、自転車のような見た目をしていますが原付バイクと同様の扱いになります。
ですので、自転車の運転には免許は不要ですが、原動機付自転車にあたるモペットの場合は運転をする際に免許が必要になります。
モペットと事故
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」と言います。)では、自動車による事故で人にけがを負わせたり、人を亡くならせた場合に成立する犯罪などを規定しています。
今回の事例では、容疑者がモペットを無免許で運転し、赤信号を無視して女性にけがを負わせたとして無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検されたようです。
無免許危険運転致傷罪は、自動車運転処罰法で規定されており、危険運転致傷罪にあたる行為を無免許で行った場合に成立します。
危険運転致傷罪は、自動車運転処罰法第2条、第3条で規定されています。
アルコールや薬物の影響で正常な運転ができない場合や制御できないほどのスピードで運転する行為などが危険運転致傷罪の対象となっています。
今回の事例では赤信号無視が問題になっているようですが、赤信号無視についても上記の場合と同様に危険運転致傷罪の対象です。
自動車運転処罰法第2条7号
赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
自動車運転処罰法第2条では危険運転致傷罪を規定していますので、上記の自動車運転処罰法第2条7号の行為をして人にけがを負わせると、危険運転致傷罪が成立することになります。
自動車運転処罰法第2条7号を簡単に説明すると、赤信号を無視して事故が起こるような危険性のあるスピードで運転する行為を規定しています。
今回の事例は、この自動車運転処罰法第2条7号の行為にあたるのでしょうか。
報道によると、容疑者は赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入したようです。
時速25キロで歩行者や自転車にぶつかれば人にけがを負わせたり死亡させてしまう危険性があるといえます。
ですので、時速25キロは重大な交通の危険を生じさせる速度だと判断される可能性があります。
今回の事例で容疑者が赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入し、自転車に乗っていた女性にけがを負わせたのであれば、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
無免許危険運転致傷罪
自動車運転処罰法第6条では無免許危険運転による加重処罰を規定しています。
赤信号無視による危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の懲役(自動車運転処罰法第2条)なのですが、無免許運転だった場合には6月以上の有期懲役(自動車運転処罰法第6条1項)になります。
赤信号無視の場合の無免許危険運転致傷罪には刑の上限が規定されておらず、通常の危険運転致傷罪に比べてより刑罰が重く規定されていることになります。
ですので、無免許運転の場合に有罪になると、無免許運転ではない同種事案に比べて、より重い刑罰が科されることになります。
また、無免許過失運転致傷罪の法定刑は10年以下の懲役です。(自動車運転処罰法第6条4項)
懲役刑しか規定されていない時点で、無免許過失運転致傷罪もかなり刑罰の重い罪だといえるのですが、赤信号無視の場合の無免許危険運転致傷罪よりも科される刑罰は軽く規定されています。
書類送検
書類送検とは、事件が検察庁に送られたことを指します。
ですので、書類送検で事件が終わることはなく、これから検察官によって起訴、不起訴の判断がされます。
起訴された場合には裁判が行われることになりますので、書類送検後も気を抜かずに取調べなどを受ける必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
交通事件に精通した弁護士に相談をすることで、より良い結果を得られるかもしれません。
モペットなどの運転で捜査を受けている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
次回のコラムでは、危険運転致傷罪と取調べについて解説します。
【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪②
【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪②
前回のコラムに引き続き、大阪府寝屋川市で起きた無免許運転によるひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
無免許運転でひき逃げ事故を起こしたとして、大阪府警寝屋川署は3日、自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)や道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、大阪府守口市(中略)容疑者(64)を逮捕したと発表した。逮捕は2日付。「無免許がばれて処罰されるのが怖くなった」などと容疑を認めているという。
逮捕容疑は(中略)、大阪府寝屋川市仁和寺町の府道交差点で車を無免許運転して右折しようとしたところ、横断歩道を歩いていた(中略)男性(49)と衝突したが、逃走したとしている。男性は右足骨折などで全治2カ月の重傷。
(10月3日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「「無免許ばれるのが怖くて…」ひき逃げ 容疑で64歳男逮捕 大阪・寝屋川署」より引用)
無免許運転と過失運転致傷罪
前回のコラムでは、今回の事例で過失運転致傷罪が成立する可能性があると解説しました。
報道によると、今回の事例は無免許運転による事故だそうです。
無免許運転で事故を起こした場合は、どのような罪が成立するのでしょうか。
無免許運転
無免許運転で事故を起こした場合に成立する罪を解説する前に、無免許運転について解説していきます。
無免許運転とは、その名の通り、免許を取得しない状態で運転する行為を指します。
道路交通法第64条第1項
何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。
道路交通法第64条第1項では、無免許運転を禁止しています。
ですので、無免許運転を行った場合、道路交通法違反が成立することになります。
無免許運転により道路交通法違反で有罪になった場合は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条の2に2第1項第1号)
無免許過失運転致傷罪
では、無免許運転で事故を起こしてしまった場合には、道路交通法違反以外の罪は成立するのでしょうか。
前回のコラムで解説したように、事故を起こして相手にけがを負わせた場合には、ほとんどの場合、過失運転致傷罪が成立します。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第5条に規定されています。
自動車運転処罰法には、無免許運転で過失運転致傷罪が成立した場合の加重規定が存在します。
自動車運転処罰法第6条第4項
前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。
上記が無免許過失運転致傷罪の条文になります。
無免許過失運転致傷罪は、過失運転致傷罪が成立する場合に無免許運転だったときに成立します。
過失運転致傷罪の法定刑が七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金(自動車運転処罰法第5条)なのに対し、無免許過失運転致傷罪は十年以下の懲役です。
無免許過失運転致傷罪は罰金刑や禁固刑の規定がないので、有罪になると、懲役刑が科されることになり、罰金刑の規定のある過失運転致傷罪と比べると、圧倒的に重い刑罰が科されていることがわかります。
今回の事例では、容疑者が無免許運転だと報道されています。
前回のコラムで解説したように、今回の事例では、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
過失運転致傷罪が成立する場合で、無免許運転であれば無免許過失運転致傷罪が成立しますので、今回の事例では、無免許過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
無免許過失運転致傷罪と弁護活動
過失運転致傷罪や無免許過失運転致傷罪は、示談を締結することで、科される刑罰を軽くできる場合があります。
交通事故の場合、被害者と知り合いではない場合がほとんどだと思います。
被害者の連絡先を知らないと示談締結はおろか、示談交渉すらできません。
ですので、警察官などに被害者の連絡先を聞くことから始める必要があるのですが、被害者保護などの事情から加害者本人には被害者の連絡先を教えてもらえない場合があります。
しかし、弁護士であれば連絡先を教えてもらえる場合がありますので、示談交渉を行う場合には弁護士を介して行うことが望ましいといえます。
また、弁護士を介して示談交渉を行うことで、トラブルを回避できる可能性があります。
一度示談を断られた場合であっても、弁護士が再度示談交渉を行うことで、示談が締結できる場合もありますので、示談締結を考えている方は、弁護士に相談をしてみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
示談のことでお悩みの方、過失運転致傷罪や無免許過失運転致傷罪などで捜査されている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
次回のコラムでは、ひき逃げについて解説します。
【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪①
【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪①
大阪府寝屋川市で起きた無免許運転によるひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
無免許運転でひき逃げ事故を起こしたとして、大阪府警寝屋川署は3日、自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)や道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、大阪府守口市(中略)容疑者(64)を逮捕したと発表した。逮捕は2日付。「無免許がばれて処罰されるのが怖くなった」などと容疑を認めているという。
逮捕容疑は(中略)、大阪府寝屋川市仁和寺町の府道交差点で車を無免許運転して右折しようとしたところ、横断歩道を歩いていた(中略)男性(49)と衝突したが、逃走したとしている。男性は右足骨折などで全治2カ月の重傷。
(10月3日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「「無免許ばれるのが怖くて…」ひき逃げ 容疑で64歳男逮捕 大阪・寝屋川署」より引用)
過失運転致傷罪
車で事故を起こし、相手にけがを負わせた場合には、罪に問われる可能性があります。
では、車の事故でけがを負わせた場合にはどのような犯罪が成立するのでしょうか。
車の事故でけがを負わせた場合の多くが、過失運転致傷罪という犯罪が成立します。
過失運転致傷罪は、簡単に説明すると、車を運転するのに必要な注意を怠り事故を起こしてけがを負わせた場合に成立する犯罪です。
過失運転致傷罪は刑法に規定はなく、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)で規定されています。
自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
上記が過失運転致傷罪の条文です。
過失運転致傷罪で有罪になった場合には、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金が科されることになります。
しかし、けがの程度が軽い場合には、刑罰が科されるのを免除できる場合があります。
今回の事例では、容疑者が交差点を右折する際に、横断歩道を歩行していた男性と追突したと報道されています。
右折する際には、歩行者などがいないか注意し、安全を確認してから右折する必要があります。
容疑者が男性に気付かずに右折してしまったのであれば、車を運転するうえで必要な注意をはらえていなかったことになります。
また、この追突により男性が全治2か月のけがを負ったと報道されていますので、今回の事例では、過失運転致傷罪が成立する可能性があるといえます。
報道によると、今回の事例は無免許運転だと報道されています。
無免許運転で事故を起こした場合は、どのような刑罰が科されるのでしょうか。
次回のコラムでは、無免許運転で事故を起こした場合に成立する犯罪、科される刑罰を解説していきます。
過失運転致傷罪と弁護活動
今回の事例では、過失運転致傷罪を解説しましたが、自動車運転処罰法では危険運転致傷罪という犯罪が規定されています。
危険運転致傷罪は、大まかに説明すると、アルコールなどで正常な運転や、悪質なあおり運転など、危険な運転で事故を起こし、相手にけがを負わせた場合に成立する犯罪です。
危険運転致傷罪の法定刑は、十五年以下の懲役です。(自動車運転処罰法第2条)
過失運転致傷罪の法定刑は七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金でしたので、危険運転致傷罪ではかなり重い刑罰が科されることになります。
また、過失運転致傷罪の場合は、けがの程度が軽い場合に刑の免除規定がありましたが、危険運転致傷罪にはありません。
過失運転致傷罪と危険運転致傷罪のどちらが成立するかの判断基準は明確に規定されているわけではありません。
そのため、当初は危険運転致傷罪の容疑をかけられていたが、最終的に過失運転致傷罪が成立する場合などもあります。
過失運転致傷罪と危険運転致傷罪の境界線は曖昧であるため、過失運転致傷罪が成立するような事故であっても、危険運転だと判断され、危険運転致傷罪が成立してしまう可能性もあります。
繰り返しになりますが、危険運転致傷罪は過失運転致傷罪に比べてかなり刑罰が重いため、危険運転致傷罪の容疑をかけられた場合の多くは、過失運転致傷罪の成立を目指していくことになります。
弁護士は、あなたの主張を検察官に訴えることができます。
弁護士が、危険運転ではなく過失による事故だったと検察官へ訴えることで、危険運転致傷罪ではなく、過失運転致傷罪での起訴や略式命令による罰金刑が望める場合があります。
また、事故を起こした加害者本人が取調べなどで、危険運転はしていない、過失による事故だったと弁明しても警察官や検察官に聞く耳すらもってもらえないことが多々あります。
そういった場合でも、弁護士が弁護人として付くことで、あなたの主張を弁護士が検察官に訴えることができます。
ですので、危険運転致傷罪の容疑をかけられている場合や、取調べで訴えを聞いてもらえないなど、取調べで困っている方は、弁護士に相談をしてみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故の豊富な弁護経験をもつ法律事務所です。
交通事故に強い弁護士を選任することで、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪の成立を目指せる可能性がありますし、弁護士があなたの主張を検察官に訴えることができます。
危険運転致傷罪や過失運転致傷罪などの交通事故でお困りの方は、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120―631―881までご連絡ください。
無免許運転の成立要件と罰則
日本の道路交通法において、無免許運転は厳しく取り締まられています。
この記事では、無免許運転の成立要件とそれに伴う罰則について、具体的な事例を交えて詳しく解説します。
1. 無免許運転の定義
無免許運転とは、道路交通法に基づいて、運転免許を持っていない状態で自動車を運転する行為を指します。
この定義は非常に広く、いくつかのケースが含まれます。
免許未取得: 全く運転免許を取得していない状態での運転
免許の不適用: 免許を取得しているが、その免許が適用されない車種(例:二輪車免許しかないのに四輪車を運転する)
有効期限切れ: 免許の有効期限が切れている状態での運転
例えば、普通自動車の免許しか持っていないのに大型トラックを運転する場合、この「免許の不適用」に該当します。
また、免許の有無を確認することは運転者自身の責任であり、無知や過失は免責要件にはなりません。
以上が無免許運転の基本的な定義です。
次のセクションでは、この無免許運転が法的にどのように成立するのかについて詳しく見ていきます。
2. 成立要件について
無免許運転の成立要件は、基本的に以下の三点に集約されます。
運転行為: 被告が自動車を運転していたこと
免許の不所持または不適用: 被告が適切な運転免許を持っていない、または持っているがその免許が適用されない車種での運転であること
公道での運転: 運転が公道(一般道、高速道路など)で行われたこと
これらが揃った場合、無免許運転として罰せられる可能性が高くなります。
特に、「公道での運転」は重要なポイントで、人の往来のない私有地での運転は一般的には罰せられません(ただし、事故を起こした場合などは別)。
成立要件の確認は、一般的には警察が行い、証拠が揃った場合に検察官へ送検されます。
成立要件が確認できない場合、例えば、公道での運転でなかった、運転していたのは他の人物であった等、無免許運転の疑いが晴れるケースもあります。
以上が無免許運転の成立要件です。
次のセクションでは、これに対する具体的な罰則について詳しく解説します。
3. 罰則の内容
無免許運転に対する罰則は、道路交通法に基づき厳格に定められています。
無免許運転により道路交通法違反で有罪になった場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(道路交通法第117条の2の2)。
一度罰せられた後に再度無免許運転を行うと、罰則はさらに重くなる場合が多いです。
また、無免許運転により交通事故を起こした場合、刑罰だけでなく、民事責任も問われる可能性があります。
これにより、多額の賠償責任を負うことになる可能性も考慮しなければなりません。
さらに、無免許運転は自分だけでなく、他の道路利用者にも大きなリスクをもたらす行為です。
したがって、このような行為は、社会全体で非常に厳しく取り締まられています。
4. 無免許運転と人身事故
人身事故により、人にけがを負わせてしまった場合の多くで、過失運転致傷罪が成立します。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第5条で、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています。
また、過失運転致傷罪は、無免許運転の場合には加重規定が定められており、10年以下の懲役に処されることになります(自動車運転処罰法第6条4項)。
つまり、無免許運転により人身事故を起こし、人にけがを負わせた場合には罰金規定がないことから、有罪になってしまうと懲役刑が科されることになります。
5. 無免許運転の影響:保険と賠償責任
無免許運転がもたらす罰則は刑事面だけでなく、保険や賠償責任にも大きな影響を与えます。
自動車保険の無効化
無免許で運転して事故を起こした場合、多くの自動車保険は適用されなくなります。
この場合、全ての賠償責任が運転者の個人負担となる可能性が高いです。
第三者への賠償責任
無免許運転によって他人に損害を与えた場合、賠償責任が発生します。
事故によっては、数百万~数千万円の賠償責任が生じることもあります。
保険料の高騰
事故を起こした後、何らかの方法で免許を取得しても、過去の無免許運転が原因で保険料が高騰する場合があります。
前科の将来への影響
無免許運転で有罪になった場合には、罰金刑や懲役刑が科されることになります。
罰金刑であっても、有罪になってしまえば前科が付くことになります。
前科が付くことで、就職や転職の際に不利な状況になる可能性があります。
無免許運転の影響は、一時的なものではなく、長期にわたって多方面でリスクが続く可能性があります。
このようなリスクを十分に理解した上で、運転を行うことが重要です。
6. 無免許運転を防ぐための対策
無免許運転は多くのリスクを伴うため、違法行為を未然に防ぐ対策が求められます。
以下は、いくつかの主要な対策です。
免許の種類の把握
1つでも免許を取ればすべての車両を運転できるわけではありません。
原動機付自動車の免許では自動車は運転できませんし、普通車の免許では大型車の運転はできません。
ですので、運転をする前に、自分が取得した免許で運転が可能な車両を把握しておくことが重要になります。
免許更新の重要性
有効期限が切れた免許証では運転ができません。
更新時期になったら速やかに手続きを行い、常に有効な免許証を所持することが必要です。
7. まとめと今後の注意点
無免許運転は、刑事罰だけでなく、事故を起こした場合には民事面でのリスクも多く、無免許運転にならないための対策が非常に重要です。
罰則の厳格性
無免許運転を行った場合には、罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。
賠償責任と保険
無免許運転での事故では、相手の怪我の程度によっては高額な賠償責任が伴う可能性が高く、保険も適用されない場合が多いです。
社会的リスク
無免許運転であっても有罪になると前科が付きます。
前科があることで就職や転職に支障をきたす可能性があるなど、長期的に見ても多くのリスクがあります。
防止策の重要性
免許の有効期限の確認、運転できる車両の確認などの対策が必要です。
無免許運転に関わるリスクをしっかりと認識し、法律を守って安全な運転を心がけることが、自分自身と他者を守る最良の方法になります。
(事例紹介)電動キックボードでひき逃げした事例②~過失運転致傷罪~
(事例紹介)電動キックボードでひき逃げした事例②~過失致傷罪~
前回のコラムに引き続き、電動キックボードで歩行者をひき逃げしたとして、道路交通法違反の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
電動キックボードで歩行者をひき逃げしたとして、警視庁池袋署は、道交法違反(ひき逃げ)などの疑いで、埼玉県吉川市、(中略)容疑者(23)を再逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。調べに対し「当たってはいないが、女性が転倒したのは私が原因だと思う」と容疑を一部否認している。
再逮捕容疑は、(中略)電動キックボードを運転中、東京都豊島区東池袋の歩道で、商業施設から出てきた60代の女性と衝突し、肋骨(ろっこつ)骨折などの重傷を負わせたが、立ち去ったとしている。
(中略)容疑者が乗っていた電動キックボードはレンタルしたもので、歩道を走行できない機種だった。(後略)
(9月11日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「電動キックボードでひき逃げ 女を再逮捕 警視庁」より引用)
電動キックボードと過失致傷罪
今回の事例では、容疑者が運転する電動キックボードが被害者に衝突し、被害者が肋骨を骨折したと報道されています。
電動キックボードで人にけがを負わせた場合には、罪に問われるのでしょうか。
車で事故を起こし、人にけがを負わせると過失運転致傷罪が成立する場合があります。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます)第5条で、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています。
原動機付自転車は、車と同様に自動車運転処罰法が規定する「自動車」に該当します。(自動車運転処罰法第1条1項)
前回のコラムで解説したように、電動キックボードは原動機付自転車にあたりますので、電動キックボードであっても、運転上必要な注意を怠って人にけがを負わせた場合には、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
では今回の事例では過失運転致傷罪は成立するのでしょうか。
今回の事例では、容疑者が歩道を電動キックボードで走行し、被害者と衝突したと報道されています。
一部の電動キックボードは歩道の走行を許可されていますが、容疑者が運転していた電動キックボードは歩道の走行を禁止されていました。
歩道の走行を禁止されている以上、容疑者が運転していた電動キックボードは歩道を走行すると事故の危険性があったのだと考えられますので、容疑者が歩道の走行を認められていない電動キックボードで歩道を走行する行為は、歩道は走行しないといった運転上必要な注意を怠っていたと判断される可能性があります。
今回の事例では、被害者は肋骨を骨折するけがを負っていますので、容疑者の運転によりけがを負ったのであれば、過失運転致傷罪が成立するかもしれません。
過失運転致傷罪と示談
今回の事例では、被害者が肋骨を骨折するという大けがを負っています。
被害者が重症であり、禁止されている歩道を走行していることから、悪質であると判断されるおそれがあり、裁判になってしまう可能性が考えられます。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、裁判になってしまうと懲役刑が科される可能性があり、刑務所に行かなければならなくなってしまうおそれがあります。
刑事事件では示談を締結すると科される罪が軽くなると聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
これは交通事故の場合も例外ではなく、事故被害者と示談を締結することで、科される罪が軽くなる場合があります。
示談交渉をするには、相手の連絡先を知る必要があります。
交通事故の場合、被害者の連絡先を知らないことがほとんどでしょうから、警察官などを通じて連絡先を手に入れることになります。
しかし、連絡先を教えてもらえるように警察官に頼んでも、被害者保護や証拠隠滅の観点から、加害者には連絡先を教えてもらえないことがあります。
警察官に連絡先の入手を断られてしまっても、再度弁護士が依頼することで教えてもらえる場合がありますので、示談交渉を考えている方は、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
また、連絡先を教えてもらえた場合であっても、加害者本人が被害者に直接示談交渉をすることで、被害者の処罰感情が激化し、トラブルを生んでしまうおそれがあります。
弁護士が代わりに示談交渉を行うことで、そういったトラブルを回避できる可能性がありますので、示談交渉を行う際は、事前に弁護士に相談をした方がいいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
示談を締結することで、執行猶予付き判決の獲得や不起訴処分を獲得できる場合があります。
弁護士が代理人となって示談交渉をすることで、円滑に示談を締結できる場合がありますので、示談を考えている方、示談交渉でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(事例紹介)トラックの荷台に人を乗せ、過失運転致死罪①
(事例紹介)トラックの荷台に人を乗せ、過失運転致死罪①
トラックの荷台から人が転落死したとして、過失運転致死罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
群馬県片品村の国道401号で14日夜、走行中の軽トラックの荷台から転落した同県高崎市の男性(中略)が死亡した事故で、沼田署は16日、軽トラックを運転していた同県渋川市の消防士の男(23)を、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)容疑で逮捕した。
現場は片側1車線の右カーブ。同署によると、2人は親戚同士で、荷台にはほかにも複数人が乗っていたとみられる。
(後略)
(8月16日 読売新聞オンライン 「軽トラック荷台から17歳転落死、運転していた消防士逮捕…親戚同士でほかにも複数人同乗か」より引用)
過失運転致死罪
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
上記の条文が過失運転致死罪の条文です。
過失運転致死罪は大まかに説明すると、運転中に払うべき注意を怠った結果、事故により人を殺してしまった際に成立します。
今回の事例では、被害者が走行中の軽トラックの荷台から転落して亡くなったと報道されています。
走行中の車の荷台に人を乗せる行為は原則として、道路交通法第55条1項で禁止されています。
荷台に人を乗せて走行しなければ今回の事故を起きなかったでしょうから、荷台に人を乗せて走行した行為自体が運転上必要な注意を怠ったと判断されるおそれがあり、今回の事例では過失運転致死罪が成立してしまう可能性があります。
過失運転致死罪と執行猶予
過失運転致死罪の法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、有罪になると懲役刑が科されてしまう可能性があります。
懲役刑が科されてしまうと、刑務所に収容され刑務作業に従事しなければなりません。
刑務所に入るとなると、今まで通りの生活は送れないですし、当然仕事にも行けませんから、仕事を解雇されてしまう可能性があります。
執行猶予という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
執行猶予はその名の通り、刑の執行が猶予されることを指しますので、執行猶予付き判決を獲得できれば、刑務所に収容されずにすむ場合があります。
刑事事件では、示談を締結することで科される刑罰を軽くできる場合があります。
これは交通事故の場合も同様であり、被害者遺族と示談を締結することで、執行猶予付き判決の獲得などを目指せる可能性があります。
ただ、今回の事例のように被害者が亡くなっている場合は、遺族の処罰感情が苛烈であることが多く、連絡を拒まれたり、示談交渉が難航する可能性が高いです。
弁護士が代わりに示談交渉を行うことで、スムーズに示談交渉を行える場合がありますので、示談でお困りの方は弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
過失運転致死罪などの交通事故でお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881までお電話ください。
次回のコラムでは、今回の事例を用いて、人を荷台に乗せて走行した際に成立する犯罪について解説します。
(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例②
(事例紹介)睡眠障害であるバス運転手が危険運転致傷罪で送検された事例②
睡眠障害をもつバスの運転手が追突事故を起こし、危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例を基に、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた際の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
睡眠障害を自覚しながら路線バスを運転して事故を起こし、乗客7人に重軽傷を負わせたとして、警視庁は29日、バス会社(中略)社員の男(60)(東京都町田市)を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検した。(中略)
捜査関係者によると、男は(中略)睡眠障害で正常な運転ができない恐れがあると認識しながら、東京都町田市内で路線バスを運転。居眠りして住宅の外壁に衝突し、10~60歳代の乗客の男女7人に顔の骨を折るなどの重軽傷を負わせた疑い。
男は事故直後、「貧血を起こしたような感じで記憶がなくなった」と説明した。警視庁が持病を捜査したところ、医師から睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、呼吸を楽にする装置を就寝時に着けるよう指導されていたのに、着けていなかったことなどが判明したという。
(中略)は取材に「産業医からは(SASの)治療を受けながらの通常勤務が可能との診断を受けていた」としている。
(6月30日 読売新聞オンライン 「「睡眠障害」自覚しながら路線バス運転、7人重軽傷事故…「危険運転」適用し書類送検」より引用)
危険運転致傷罪と刑事罰
危険運転致傷罪は有罪になった際に、12年以下の懲役が科されます。(自動車運転死傷行為処罰法第3条1項、2項)
危険運転致傷罪には罰金刑の規定がありませんので、有罪になってしまった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り、刑務所に行かなければなりません。
事故の報道で過失運転致傷罪という罪名を目にする方も多いと思います。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金(自動車運転死傷行為処罰法第5条)であり、危険運転致傷罪は過失運転致傷罪と比べると、刑期も長く、罰金刑の定めがないなど、かなり重い刑罰が規定されていることが窺えます。
また、今回の事例では、バスによる事故ですし、容疑者はバスの運転を職業としています。
バスのような大型車での事故や、車の運転を業務としている場合は、事故の危険性や責任が重いと判断され、科される刑罰が重くなる可能性が高いです。
持病による危険運転致傷罪と弁護活動
刑事事件の重要な証拠のひとつに供述調書というものがあります。
供述調書は取調べの際に作成される書類のひとつで、容疑者が供述した内容を基に作成されます。
供述調書は裁判などの証拠として扱われますので、万が一、供述内容とは異なる内容や貴方の不利になるような内容の供述調書が作成されてしまった場合は、後の裁判で窮地に陥ってしまう可能性があります。
そういう状況にならないためにも、事前に取調べの対応を行っておくことが大切です。
とはいえ、取調べ対応と言われてもイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。
取調べでは、事故の状況や原因などを聴かれることになります。
今回の事例であれば、睡眠障害の程度や事故の前日に呼吸を楽にする装置を付けていたのかどうか、運転時に眠気があったか、睡眠障害により事故を起こす可能性を自覚していたのかなどを聴かれるのではないでしょうか。
取調べでは、事前に聴かれる内容を想定し、供述すべき内容を整理しておくことが重要になります。
弁護士であれば、聴かれる内容を事前に予測することで、供述内容をアドバイスすることが可能です。
ですので、取調べを受ける際には、事前に弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
また、今回の事例の事故の原因が、容疑者による睡眠障害ではない可能性もあります。
危険運転致傷罪は、簡単に説明すると、政令で定められている病気が運転に支障をきたすおそれがある状態で、その病気の影響により事故を起こし、人にけがを負わせた場合に成立します。
ですので、容疑者の持病である睡眠時無呼吸症候群が事故の原因でない場合には、危険運転致傷罪が成立しない可能性があります。
交通事故に精通した弁護士による弁護活動で、危険運転致傷罪ではなく、過失運転致傷罪での適用を目指せる可能性があります。
事故の状況や持病の程度によって事件の見通しは異なりますので、危険運転致傷罪の嫌疑をかけられた場合は、一度、弁護士に相談をすることをお勧めします。
危険運転致傷罪でお困りの方は、ぜひ一度、交通事故に精通した弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。