あおり運転が社会問題化

2019-11-12

あおり運転が社会問題化

あおり運転の社会問題化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

会社員のAさんは、埼玉県鶴ヶ島市内の片側2車線の高速道路において普通乗用自動車を運転し、追い越し車線を走行していました。
Aさんは、同じく追い越し車線を走行するVさん運転の普通乗用自動車を確認しました。
Aさんは急用で、急いで行き先へ向かっていたにもかかわらず、Vさんが一向に追い抜き車線に車線変更しなかったことに憤慨し、V車の高校からヘッドライトを繰り返し点滅させました。
それでもVさんは車線変更しなかったことから、AさんはさらにV車の後方約1メートル以内に自車をつけ、約500メートルにわたり走行し続けました。
その後、AさんはV車に続いてSAに入り、車から降りてきたVさんと口論となりました。
Aさんは周囲の人に割って入られ、通報を受け駆け付けた埼玉県西入間警察署の警察官に事情を聴かれました。
そして、VさんのドライブレコーダーにAさんのあおり運転の一部始終が記録されていたことなどから、Aさんは道路交通法違反の被疑者として検挙されてしまいました。
(フィクションです。)

~ あおり運転が社会問題化 ~

あおり運転が連日のようにニュースなどで大きく取り上げられています。
少し前には、

・常磐自動車道で、あおり運転をした男性が強要罪(刑法223条)で再逮捕された件
・東名自動車道で、あおり運転をした男性が、エアガンを使って前を走っていた車を傷つけ、器物損壊罪(刑法261条)の疑いで逮捕状が発布された件

など、あおり運転についての事件が大きく報じられています。

~ あおり運転の態様と罰則 ~

警察庁が公表しているあおり運転の態様は以下の7つです。

① 前方の車に激しく接近し、もっと速く走るよう挑発する
② 危険防止を理由としない、不必要な急ブレーキをかける
③ 後方から進行してくる車両等が急ブレーキや急ハンドルで避けなければならなくなるような進路変更を行う
④ 左側から追い越す
⑤ 夜間、他の車両の交通を妨げる目的でハイビームを継続する
⑥ 執拗にクラクションを鳴らす
⑦ 車体を極めて接近させる幅寄せ行為を行う

しかしながら、罰則は、以下のように比較的軽い罰則しか規定されていません。

①(車間距離保持義務違反)、②(急ブレーキ禁止違反)、④(追い越しの方法違反)、⑦(安全運転義務違反):3月以下の懲役又は5万円以下の罰金

③(進路変更禁止違反)、⑤(減光等義務違反)、⑦(初心者運転者等保護義務違反):5万円以下の罰金

⑥(警音器使用制限違反):2万円以下の罰金又は科料

加えて、①から⑦までの行為は全て反則行為とされます。
反則行為を行った場合、「刑事手続」ではなく交通反則通告制度により、上記の懲役、罰金ではなく「反則金」が科され、納付をすれば刑事手続によらず事件は終了、ということになります。

つまり、あおり運転の明確な定義はなく、かつ、あおり運転を行って懲役や罰金の刑罰ではなく反則金を科されるのが通常、というのが現行制度なのです。
なお、普通乗用自動車の①(車間距離保持義務違反)、②(急ブレーキ禁止違反)、⑦(安全運転義務違反)の反則金は「1万5000円」です。

~ 現在はあおり運転に刑法犯を適用 ~

このように、現在はあおり運転そのものに対する罰則が低いことから、警察は、悪質なあおり運転については刑法を適用して対応しています。
警察庁のホームページでは、「故意に自車を他人の車に著しく接近させるなどの運転態様、当事者の認識、周囲の道路状況等に照らし、その行為が、相手の運転者に対する有形力の行使と認められる場合には暴行罪(刑法208条)が成立する場合がある」としています。
また、先にご紹介した常磐自動車道の件では、全国で初めてあおり運転に強要罪が適用されています。
強要罪は暴行罪と異なり、罰金刑が設けられていません。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法223条1項(強要罪)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

このように、あおり運転が社会問題化され、さらには刑法犯として刑事事件となることも十分考えられるようになっています。
あおり運転刑事事件化しお困りの際は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所である弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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