愛知の薬物運転事故事件で逮捕 無罪の弁護士

2015-03-24

愛知の薬物運転事故事件で逮捕 無罪の弁護士

Aさんは、友人に勧められた薬物を使用した後、自宅に向かって車を運転していました。
その途中、急激に意識が薄れていき、気が付くと歩行者を死亡させる人身死亡事故を起こしていました。
Aさんを逮捕した愛知県警小牧警察署によると、Aさんが使用していた薬物は、薬事法の指定薬物に当たるそうです。
(フィクションです)

~危険運転致死傷罪の改正~

危険運転致死傷罪」は、平成13年に刑法という法律に規定され、現在では自動車運転処罰法という法律に移行されました。
同罪の中でも特に典型となるのが、アルコール又は薬物影響下における危険運転です。
刑法に規定されていたころから、
「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」
と定められていました。
こうした態様の自動車の運転行為により、人を死傷させた場合、危険運転致死傷罪が成立します。

もっとも、この規定には大きな欠陥がありました。
簡単に言えば、危険運転致死傷罪にあたるケースが少なすぎたのです。
危険運転致死傷罪は、故意犯と言って、条文で規定されている行為をする意思がなければ罪に問われません。
例えば、上記の危険運転致死傷罪が成立するには「アルコール又は薬物の影響で正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる」意思が必要です。
しかし、「正常な運転が困難な状態」というのは、かなりの酩酊状態である場合などを指します。
そのため、実際の裁判では「かなり悪質・危険な飲酒運転だが、危険運転とまでは言えない」などという事例が相次ぎました。

そこで自動車運転処罰法では、アルコール又は薬物影響下における危険運転について、新たな類型が設けられました。
「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転」した場合も、危険運転に含むとしたのです。
つまり、正常な運転が困難な状態での運転を認識していなくても、正常な運転に支障が生じるおそれを認識していれば足りることとなったのです。

例えば、飲酒運転による人身事故の場合、飲酒運転の認識さえあれば、危険運転致死傷罪が成立しえます。
また、薬物を使用した運転の場合も、薬物使用後の運転であることさえ認識していれば足りることになります。
発車時に何ら問題が無かったとしても、正常な運転に支障が生じるおそれ自体は、認定できるからです。

なお、今回取り上げた危険運転の場合、従来の危険運転致死傷罪の法定刑よりも少し軽くなります。
人を負傷させた場合は12年以下の懲役、人を死亡させた場合は15年以下の懲役です。

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