(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

2022-10-13

(事例紹介)滋賀県でひき逃げをして逮捕されてしまったケース

~事例~

滋賀県警草津署は25日、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、滋賀県守山市に住むフィリピン国籍の飲食店経営の女(28)を逮捕した。
逮捕容疑は、同日午前1時41分ごろ、滋賀県栗東市で軽乗用車を運転し、左折するため減速した甲賀市の男性(48)のオートバイに追突、首にけがを負わせてそのまま逃げた疑い。
(※2022年5月26日20:30京都新聞配信記事より引用)

~ひき逃げをした際の刑罰は?~

今回取り上げた事例では、ひき逃げの容疑で女性が逮捕されています。
よく「ひき逃げ」と呼ばれる行為は、「事故を起こしてそのまま逃げた」というイメージだと思われます。
この「ひき逃げ」は、実は正式な犯罪名ではありません。

そもそもひき逃げとは、人身事故を起こした後、道路交通法に定められている義務を果たさずにそのまま事故現場から離れることを指します。
道路交通法では、人身事故を起こしてしまった場合、負傷者を救護する義務(いわゆる「救護義務」)や、警察署などに通報し事故を報告する義務(いわゆる「報告義務」)、道路上の危険を防止する措置をする義務(いわゆる「危険防止措置」)を定めています。
よくイメージされる「事故を起こして逃げた」ひき逃げは、義務を果たさずに事故現場から逃げていることになる=これらの義務に反するため、道路交通法違反という犯罪になるのです。

加えて、ひき逃げ事件の場合、そもそも人身事故を起こしているということにも注意が必要です。
この時成立する罪は、人身事故がどのように起きたか、例えば、わき見運転などの不注意による人身事故なのか、赤信号を殊更に無視するなどの危険運転行為による人身事故なのかといった事情によって異なります。
不注意=過失によって起こった人身事故であれば、今回取り上げた事例同様、自動車運転処罰法に定められている過失運転致傷罪となるでしょう。

なお、この際に無免許運転や飲酒運転といった事情があれば、当然その分も罪が成立することになります。

おさらいをすると、ひき逃げ事件では、人身事故を起こしたこと自体による過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪、義務を果たさなかったこと(ひき逃げ)による道路交通法違反という2つの犯罪が成立します。
さらに、無免許運転や飲酒運転の事情があれば、上記2つの犯罪に加えてその犯罪も成立します。
今回取り上げた事例でも、女性の逮捕容疑は過失運転致傷罪と道路交通法違反という2つの犯罪になっています。

ひき逃げ事件では、単なる不注意による人身事故よりも成立する犯罪の数が増えていることだけでなく、義務を果たさずにその場から離れるという悪質性の高い行為をしていることからも、起訴され正式な刑事裁判を受ける可能性や厳しい処分を受ける可能性が高いと考えられます。

例えば、過去には以下のような裁判例があります。
・普通貨物自動車の運転中、横断歩道上の歩行者に気が付かず衝突し、加療約11日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、被害者との示談が成立し懲役10月執行猶予3年となった事例(判決:平成26年5月)
・普通乗用車の運転中、一時停止標識を無視して一時停止をせず、普通乗用車と衝突し、同乗者に加療約22日間の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年執行猶予4年が言い渡された事例(判決:平成26年8月)
・普通乗用自動車の運転中、前方左右の安全確認を怠り、被害者と衝突し、加療約94日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年6月執行猶予3年が言い渡された事例(判決:平成25年4月)
(参照:第一東京弁護士会刑事弁護委員会・編(2018)『量刑調査報告集Ⅴ』第一東京弁護士会)

もちろん、刑罰の重さは人身事故の態様や原因、被害者が亡くなっているのか、けがの重さはどの程度か、被害弁償はできているのかといった様々な事情に左右されますので、詳細な見通しなどは弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げ事件に関連したご相談・ご依頼も承っています。
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