自動車運転免許証の偽造

2022-03-09

自動車運転免許証の偽造について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさん(20歳)はBさん(40歳)名義の自動車運転免許証を拾いました。
Aさんは自動車運転中に警察官に停められたらこの免許証を提示しようと考え、この免許証に貼ってあったBさんの顔写真を削り、Aさん本人の顔写真に張り替えました。
その後某日、Aさんは千葉県船橋市内で職務質問を受け、その際に顔写真を張り替えた免許証を提示しました。
千葉県船橋警察署の警察官は免許証に記載されている生年月日と顔写真に違和感を感じたため、偽造したのではないかとAさんに確認したところAさんは認めました。
Aさんは後日、占有離脱物横領罪と有印公文書偽造罪、および偽造公文書行使罪で千葉県船橋警察署で話を聴かれることになりました。
(フィクションです)

~Aさんが問われる罪~

Aさんの行為がどのような罪に問われるのか順番に確認してみましょう。
①他人の免許証を拾って自分の物とした
免許証を拾った場合、警察に届け出ることなくこれを自分の物とした場合、道ばたに落ちていた免許証は、持ち主の支配を離れたものつまり占有を離れた物であり、これを自分の占有下に置いた場合は、占有離脱物横領罪(遺失物横領罪ともいいます)が成立します。
法定刑は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料です。(刑法第254条)
②免許証の写真を貼り替えた
公文書偽造罪は、行使の目的で公文書を偽造することです。
公文書偽造罪の行使の目的とは、偽造・変造した不真正文書を真正文書として使用する意図、あるいは虚偽記入した虚偽文書を内容真実の文書として使用することです。
行使の目的が無ければ、公文書偽造罪は成立しません。
Aさんは公安委員会の名をかたる身分ではありませんので、自動車運転免許証を作る権限はありません。
自動車運転免許証は、公安委員会作成名義の同委員会の印章のある公文書です。
Aさんはこの免許証を、警察官から停止を求められた時に提示することを考えて免許証の写真を貼り替えたものですが、これは写真を貼り替えた免許証を真正なものとして警察官に提示することを目的として行ったものと判断され、行使の目的が認められます。
また、文章偽造と文書変造がありますが、偽造と変造の違いは、文書の本質的部分ではないところに権限無く変更を加えることが変造であることに対して、本質的部分であるところを変更する場合は偽造にあたります。
免許証は誰に対してどのような許可をするかということを内容とする公文書であり、その写真を貼り替える行為は、免許証の本質的部分を変更することであるので新しい証明書の作成にあたるので偽造になります。
以上により有印公文書偽造罪が成立し、法定刑は1年以上10年以下の懲役です。(刑法155条1項)
③偽造免許証を職務質問時に提示した
偽造公文書行使罪における行使とは、偽造・変造した不真正文書を真正なものとして使用し、虚偽作成した虚偽文書を内容が真実な文書として使用することです。
相手方がその文書を閲覧できる状態に置かれたことを必要とします。
偽造免許証については、真正な免許証として警察官その他の者に提示したときに行使となりますので、偽造公文書行使罪が成立します。
法定刑は公文書偽造罪・公文書変造罪と同様になります。(刑法第158条1項)

~文書偽造罪、偽造文書行使罪について警察で話を聞かれることになったら~

警察署に呼ばれて話を聞かれる(任意出頭や任意同行)というだけでは、必ずしも逮捕されるとは限りません。
警察署が人を呼んで話を聞く目的は、犯人と疑わしい人や参考人などから事情を聞くためです。
ただ、警察署が既に逮捕状を準備しており逮捕を予定して警察署に来て話を聞かせてほしいという場合や、警察署に来た後の取調べにおいて容疑が濃厚になったとして逮捕に至る場合もあります。
警察署に来て話を聞かせてほしいと連絡が来た時は、できれば警察署行く前に対応方法を弁護士に相談しておくと良いでしょう。
先に述べたように、文書偽造罪は「行使の目的」がないと成立しません。
偽造文書を使うつもりがなかったとか偽造文書で他人を騙すつもりがなかったなどの事情がある場合には、文書偽造に「行使の目的」がなかった又は偽造文書の「行使」には該当しないことを主張・立証することで、不起訴処分又は無罪判決を目指す弁護活動を行います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、自動車運転免許証を偽造して不安な方について、弁護士による警察署への出頭付添サービスや取調べのアドバイスも行っております。

 

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