飲酒運転で交通事故を起こしたら
飲酒運転で交通事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府泉佐野市に住むAさんは、自宅で朝まで飲酒していました。
Aさんは、「酒が残っている感じはあるけど、どうせバレないだろう。」と思い、バイクで知人宅に向かうことにしました。
知人宅に向かう途中、Aさんのバイクは、信号待ちのために止まっていた車に追突してしまいました。
Aさんは、すぐにバイクを止め、前の車に駆け寄り運転手の安否を確認しました。
幸い、運転手に怪我はありませんでしたが、通報を受けて駆け付けた大阪府泉佐野警察署の警察官が呼気検査をしたところ、0.5mgのアルコールが検出されたため、警察官はAさんを道路交通法違反の容疑で現行犯逮捕しました。
(フィクションです)
先月、元アイドルが酒を飲んでバイクを運転したとして逮捕されるという事件がありました。
飲酒運転で検挙される方の多くが、「ちょっとそこまでだからバレないだろう。」、「事故さえ起こさなければ大丈夫。」などと飲酒運転を甘く見た結果、事故を起こしたり、警察による検問に引っかかったりして飲酒運転が発覚する、といった経緯を経ている傾向にあります。
飲酒運転に対する処罰
飲酒運転とは、一般的に、酒を飲んだ後に車などを運転することをいいます。
飲酒運転は、「道路交通法」という法律によって禁止されています。
道路交通法第65条
1 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
「酒気を帯びて」とは、社会通念上、酒気帯びと言われる状態をいうものであって、外見上認知できる状態にあることをいうものと理解されています。
本条は、酒気を帯びて車両等を運転することを禁止するものであり、この禁止に違反した場合、その違反が、「酒酔い運転」または政令数値以上の「酒気帯び運転」に当たるときに限って、罰則が設けられています。
本条は、政令数値未満である酒気帯び運転については、訓示規定にとどめており、これについては罰則が設けられていません。
①酒気帯び運転
道路交通法は、酒気帯び運転等の禁止の規定(道路交通法第65条1項)に違反し車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者について罰則を定めています。
「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態」というのは、血液1mlにつき0.3mgまたは呼気1lにつき0.15mgです。
これに該当する者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
②酒酔い運転
酒気帯び運転等の禁止(道路交通法第65条1項)の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態であった者についても、道路交通法において罰則が定められています。
「酒に酔った状態」というのは、①酒気帯び運転のように、アルコール保有についての基準値があるわけではなく、アルコールの影響によって運転に支障をきたしている状態のことをいいます。
当該状態であったか否かは、まっすぐ歩くことができるかどうか、呂律が回っていないか等、客観的にみてアルコールが原因で正常な判断・動作ができているかが判断されます。
酒酔い運転に対する罰則は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金であり、①酒気帯び運転よりも重くなっています。
酒酔い運転は、基準値にかかわらず、酒に酔った状態にあるか否かが問題となるため、理論上は、①酒気帯び運転に該当しない程度のアルコール保有量であっても、酒に弱い体質であるため足元がふらついていたり、呂律が回っていない場合には、酒酔い運転に該当することもあります。
飲酒運転で交通事故を起こしたら
飲酒運転それ自体についても上のような罪が成立する可能性がありますが、飲酒運転の結果、交通事故を起こしてしまった場合には、他の罪も成立することがあります。
①過失運転致死傷罪
自動車の運転上必要な注意を怠ったことにより、人を死傷させた場合に成立する罪です。
「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作して、そのコントロール下において、自動車を動かす上で必要とされる注意義務を怠ることをいいます。
前方不注意や左右確認を怠るなどといったことが原因で交通事故を起こし、人を死傷させた場合には、本罪が成立する可能性があります。
飲酒運転で人身事故を起こし、人身事故について過失運転致死傷罪が成立する場合、道路交通法違反(酒気帯び運転/酒酔い運転)との2罪が成立しますが、両罪は併合罪となり、法定刑は刑の長期を罪が重い方の刑期の1.5倍とします。
②危険運転致死傷罪
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行い、よって、人を死亡または負傷させる罪です。
「正常な運転が困難な状態」とは、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることをいいます。
正常な運転が困難な状態であることの認定は、呼気検査等の結果、直立・歩行能力や事故直後の言動等の鑑識結果、飲酒事実の裏付け、事故の態様、事故前後の運転状況や運転者の状況についての目撃者の供述、本人の供述等を総合的に判断して行われます。
本罪の法定刑は、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役です。
また、アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた場合には、12年以下の懲役が、人を死亡させた場合には15年以下の懲役が科される可能性があります。
危険運転致死傷罪の成立には、酒酔い運転などに該当していることが前提であるため、道路交通法違反は別途成立しません。
以上のように、飲酒運転自体に対しても厳しい罰則が設けられていますが、飲酒運転で交通事故を起こした場合には、より厳しい罰則が科されることになります。
飲酒運転で交通事故を起こしてしまい、刑事事件として立件されたのであれば、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
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