【さいたま市】飲酒運転と犯人隠避罪②

2019-04-21

【さいたま市】飲酒運転と犯人隠避罪②

Aさんは,さいたま市浦和区の居酒屋で一緒に酒を飲んでいた交際相手であるBさんから「ちょっとコンビニまでたばこを買いに行きたい」「車を貸してほしい」と頼まれ,運転キーをBさんに渡しました。
そして,Bさんは,Aさん名義の車を運転してコンビニまで向かう途中,運転を誤って車を道路端の電柱にぶつけてしまいました。
Bさんは,車を動かすことができず,警察に電話しようかと考えました。
しかし,Bさんは飲酒運転をしてきた上に,大事な就職試験をひかえていたことからAさんに電話し,「大変なことをしてしまった」「飲酒運転がばれると就職できなくなるから,ここはお前が運転していたことにしてくれないか」といいました。
Aさんはどうしようか迷いましたが,長年交際してきたBさんのためならと思い,急いで現場に急行し,現場に来た警察官に自分が飲酒運転の犯人である旨を言いました。
ところが,後日,Bさんが飲酒運転していたことが判明し,Aさんは犯人隠避罪,道路交通法違反(車両提供の罪),Bさんは道路交通法違反(酒気帯び運転の罪),犯人隠避教唆の罪で逮捕されました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

先日の「飲酒運転犯人隠避罪①」では,Aさんの犯人隠避罪,道路交通法違反(車両提供の罪)についてご説明いたしました。
本日は,Bさんの道路交通法違反(酒気帯び運転の罪)及び犯人隠避教唆の罪についてご説明したいと思います。

~ 酒気帯び運転の罪 ~

酒気帯び運転の罪に関する規定は,道路交通法(以下「法」)65条1項,117条の2の2第3号,道路交通法施行令(以下「施行令」)44条の3にあります。

法65条1項
何人も,酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

法117条の2の2 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く)を運転した者で,その運転した場合いおいて身体に政令で定める程度以上に  アルコールを保有する状態にあったもの

施行令44条の3
法第117条の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は,血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとする。

これからすると,酒気帯び運転とは,血液1ミリリットルにつき0.3mg又は呼気1リットルにつき0.15mg以上アルコールを保有する状態で車両等(軽車両(自転車など)を除く)を運転することをいいます。
そして,酒気帯び運転の罪では,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑を科されるおそれがあります。

~ 犯人隠避教唆の罪 ~

犯人隠避についてご説明する前に,まず,「教唆」とは何なのかご説明いたします。

= 教唆とは =
教唆とは,まだその犯罪に対する実行の決意を生じていない他人を唆して,犯罪実行の決意を生じさせることをいいます。
教唆は,特定の犯罪の実行を決意させるに足りるものでなければならないとされています。
よって,例えば,単に「何か犯罪をやってこい」とか,漠然と「何か金になるものを盗ってこい」といっても教唆には当たりません。
しかし,実行すべき犯罪を特定して教唆すれば,いちいち,犯罪の日時,場所,方法,客体など詳細まで指示する必要はないとされています。

本件では,BさんがAさんに,電話で「飲酒運転がばれると就職できなくなるから,ここはお前が運転していたことにしてくれないか」といっています。
これは,犯人隠避罪という特定の犯罪を決意させるために必要,十分な言葉だといえます。
よって,Bさんのかかる行為は「教唆」に当たり得るのです。

= 犯人蔵匿・隠避罪 =
しかし,ここである一つの疑問が生じます。
それは,なぜBさんは犯人隠避罪ではなく,犯人隠避教唆の罪に問われているのかという点です。

まず,犯人自身が逃げ隠れても犯人隠避罪に問われることはありません。
これは犯人隠避罪を規定した刑法103条を見ても明らかです。
また,実際上も,犯人が自ら逃げ隠れたりするのは人情の自然であり,一般に期待可能性がないからなどと説明されています。
つまり,罪を犯した人に逃げも隠れもするなと法律で求めようとしても,そういったことを犯人に期待するのは無理な話だろう,ということです。

しかし,他人を教唆してまで逃げ隠れすることは犯人隠避罪の教唆犯に当たるとするのが最高裁判所の考え方です(昭和40年2月26日)。
その理由とするところは,犯人自身の隠匿行為が不可罰とされるのは,これらの行為を罰することが刑事訴訟法における被告人の防御の地位と相容れないからであるのに対して,他人を教唆してまでその目的を達成しようとすることは,もはや法の放任する防御の範囲を逸脱するという点にあるとされています。

先日,Aさんに犯人隠避罪が成立することはご説明いたしました。
Bさんは,そのAさんを唆しているわけですから犯人隠避教唆の罪に問われているわけです。

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