Archive for the ‘交通事故(人身事故)’ Category

【事例紹介】てんかんの発作で事故を起こし危険運転致傷罪で逮捕された事例

2024-03-06

【事例紹介】てんかんの発作で事故を起こし危険運転致傷罪で逮捕された事例車が人に追突した人身事故

てんかんの発作が起こる可能性を知りながら車を運転し、発作で事故を起こしたとして危険運転致傷罪の容疑で再逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

福岡県宇美町の県道で(中略)、登校中の高校生らの列に軽乗用車が突っ込み、歩行者9人が重軽傷を負った事故で、県警は4日、車を運転していた同県須恵町上須恵、(中略)容疑者(66)を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)容疑で再逮捕した。(中略)容疑者は運転中にてんかんの発作を発症し、意識喪失状態となったとみられ、県警はそうした危険性を知りながら運転したとして危険運転致傷容疑を適用した。容疑を認めているという。
再逮捕容疑は(中略)、持病の影響で正常な運転ができない恐れがあると知りながら軽乗用車を運転し、(中略)宇美町宇美5の県道で対向車線の路側帯に進入して歩いていた当時16~28歳の男女9人をはねて顔の骨折など重軽傷を負わせたとしている。(中略)
県警によると、(中略)容疑者は22年3月に医療機関でてんかんと初めて診断され、薬を処方された。その際、医師からは発作が出る恐れがあるとして、運転を禁止されたという。(後略)
(3月4日 毎日新聞デジタル 「危険運転致傷容疑で66歳を再逮捕 発作の恐れ知りながら運転か」より引用)

危険運転致傷罪

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条
1項 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2項 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

大まかに説明すると、事故を起こす危険性があると知りながら運転に支障を及ぼすおそれがあるとして政令で定められている病気の影響で事故を起こし人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。

今回の事例では、容疑者がてんかんの発作で事故を起こす危険性を知りながら車の運転をし、てんかんの発作によって事故を起こして9人に重軽傷を負わせたと報道されています。
てんかんは自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項が規定する病気にあたるのでしょうか。

道路交通法第90条1項では、幻覚症状を伴う精神病発作により意識障害や運動障害をもたらす病気にかかっている者については運転免許試験に合格していたとしても免許を与えなくてもいいと規定しています。
また、道路交通方施行令第33条の2の3第2項では、幻覚症状を伴う精神病として統合失調症意識障害や運動障害をもたらす病気としててんかんなどを規定しています。
ですので、統合失調症てんかんなどの病気がある場合には、免許を取得できない可能性があります。
幻覚症状や意識障害、運動障害が発生すれば重大な事故につながるおそれがあるため、統合失調症てんかんなどの病気を患っている方は免許の取得が認められない場合があるのでしょう。
道路交通法施行令は政令にあたりますので、統合失調症てんかんなどが、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第3条2項が規定する、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気にあたる可能性が高いといえます。

今回の事例では容疑者はてんかんだと診断され、医者から運転を禁止されていたようですから、実際に容疑者がてんかんの発作で事故を起こしたのであれば、危険運転致傷罪が成立するおそれがあります。

事故を起こす危険性を知りながら病気の影響で事故を起こした場合に危険運転致傷罪で有罪になると、12年以下の懲役が科されることになります。
今回の事例では医者から運転を禁止されていたようですので、悪質性が高いと判断される可能性が高いですし、事故により9人が重軽傷を負っているようなので被害も軽いとはいえないでしょうから、重い判決が下される可能性があります。

危険運転致傷罪では、初犯であっても実刑判決を下される可能性があります。
弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決を獲得できる場合がありますので、危険運転致傷罪でお困りの方は、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。

【事例紹介】電動キックボードの無免許運転でひき逃げ事故を起こした事例①

2024-02-21

【事例紹介】電動キックボードの無免許運転でひき逃げ事故を起こした事例①

電動キックボードに乗る男性

無免許電動キックボードを運転し、ひき逃げ事故を起こしたとして、無免許過失運転致傷罪道路交通法違反の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

無免許で電動キックボードに乗って歩行者と衝突し、大けがをさせたまま逃げたとして、愛知県警は8日、(中略)容疑者(44)を自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕した。ひき逃げ容疑は認める一方、「免許が必要だと思っていなかった」と一部を否認しているという。
中署によると、(中略)容疑者は2月3日午後5時10分ごろ、同市中区栄4丁目の路上で電動キックボードを無免許で運転。一方通行を危険な速度で逆走し、路上を横断していた同市東区の自営業男性(47)とぶつかり、そのまま逃げた疑いがある。男性は鎖骨が折れるなどの重傷を負った。
(中略)
県警によると、(中略)容疑者が乗っていた電動キックボードは、最高速度が時速25キロに達し、緑色のランプもないなど新分類に該当せず、免許が必要だった。
(2月9日 朝日新聞デジタル 「電動キックボードでひき逃げ容疑 逮捕の男「免許不要だと思った」」より引用)

電動キックボードと無免許運転

道路交通法第64条1項
何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(中略)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。

電動キックボードは原動機付自転車に該当します。
原動機付自転車、いわゆる原付バイクを運転する際は免許が必要ですから、原付と同じ分類である電動キックボードを運転する際にも当然、免許が必要になります。
しかし、原動機付自転車を細分化すると、一般原動機付自転車と特定小型原動機付自転車、特例特定小型原動機付自転車の3分類に分けることができ、特定小型原動機付自転車、特例特定小型原動機付自転車の2分類に限って免許がなくても運転できることになっています。
どういったものが特定小型原動機付自転車や特例特定小型原動機付自転車に分類されるかは、車体の大きさや最高速度などで判断されています。

電動キックボードというと免許が不要なイメージもありますが、特定小型原動機付自転車、特例特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボードのみ免許が不要ですので、一般原動機付自転車に該当する電動キックボードについては免許が必要になります。
特定小型原動機付自転車は最高速度が時速20キロメートル以下である必要がありますし、特例特定小型原動機付自転車に関しては最高速度が時速6キロメートル以下でなくてはなりません。
今回の事例の容疑者が運転していたとされている電動キックボードは最高速度が時速25キロメートルに達するとのことですので、一般原動機付自転車に分類されるでしょう。
一般原動機付自転車は免許が必要ですので、事例の電動キックボードを運転する際には免許が必要であったと考えられます。

無免許運転は道路交通法で禁止されていますから、無免許運転をした場合には道路交通法違反が成立することになります。
今回の事例でも、一般原動機付自転車に分類される電動キックボード無免許で運転したのであれば、道路交通法違反が成立する可能性があります。

無免許運転による道路交通法違反の法定刑は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金です。(道路交通法第117条2の2)

無免許過失運転致傷罪

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第6条4項
前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

過失運転致傷罪は、簡単に説明すると、運転するにおいて払うべき注意を払わずに事故を起こしてけがを負わせた場合に成立する犯罪です。
過失運転致傷罪では、けがの程度が軽い場合には、刑が免除されることがあります。

無免許過失運転致傷罪は、無免許運転過失運転致傷罪にあたる行為をした際に成立する犯罪です。
過失運転致傷罪では刑の免除についての規定がありましたが、無免許過失運転致傷罪には免除の規定はありません。
また、無免許過失運転致傷罪には罰金刑の規定がなく有罪になれば懲役刑が科されることになるわけですから、過失運転致傷罪よりもはるかに重い刑罰が規定されていることがうかがえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
交通事故に精通した弁護士に相談をすることで、不起訴処分執行猶予付き判決を獲得できるかもしれません。
無免許過失運転致傷罪電動キックボードなどの事故でお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

次回のコラムではひき逃げについて解説します。

【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検②

2024-01-31

【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検②

取調べを受ける男性

前回に引き続き、モペット無免許で運転し、赤信号無視で事故を起こしたとして、無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

原付き運転免許が必要なペダル付き原動機付き自転車(モペット)を無免許で運転し、赤信号を無視して自転車の女性にけがをさせたとして、警視庁は(中略)男(24)=東京都新宿区=を自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)などの疑いで書類送検し、発表した。
(中略)
男の送検容疑は、(中略)新宿区大久保2丁目の都道で無免許でモペットを運転し、赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入。自転車に乗った70代女性に衝突し、頭部打撲など8週間のけがをさせた疑いがある。
モペットは、見た目は自転車に似ているが、法律上は原付きバイクと同じ扱いだ。原付き免許、ナンバープレート、自賠責保険への加入、ヘルメットが必要だが、男はいずれもなかったという。(後略)
(2024年1月18日 「無免許でモペット乗り、赤信号無視 女性をけがさせた疑いで書類送検」より引用)

赤信号無視と見落とし

赤信号で交差点に進入して起こしてけがを負わせた事故でも、赤信号を故意に無視したのか、それとも赤信号を見落としてしまったのかで成立する罪が大きく変わる可能性があります。
例えば、赤信号を故意に無視した場合には、前回のコラムで解説した危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

一方で、赤信号を故意に無視したのではなく、見落としてしまった、つまり過失があった場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
過失運転致傷罪は自動車運転処罰法第5条に規定されており、大まかに説明すると、運転中に周囲の確認を怠ったなどの過失によって人にけがをさせてしまった場合に成立します。
不注意によって赤信号を見落としてしまった場合などには、この過失運転致傷罪が成立する可能性が高く、法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、危険運転致傷罪よりも科される刑罰が軽く規定されています。
また、過失運転致傷罪では、けがの程度が軽い場合には刑を免除される場合があります。

このように危険運転致傷罪過失運転致傷罪では、刑罰の重さがかなり異なります。
ですので、故意に赤信号を無視したのでない場合には、そのことを主張していく必要があります。

交通事件では、刑事事件と同様に取調べを受けることになります。
上記のような主張は取調べですることになるのですが、警察官や検察官はあなたの味方になってくれるわけではありませんので、話しを聞いてもらえないどころか、赤信号を無視したととれる内容の供述をするように誘導してくる可能性があります。
自分の言い分を聞いてもらえない状態が続くとかなりのストレスになりますし、不安にもなるでしょう。
自分に限って供述の誘導に乗ることはないと思っていても、ストレスや疲れで判断能力が鈍り、誘導に乗ってしまうことがあります。
取調べで作成される供述調書は裁判で重要な証拠として扱われますので、赤信号を故意に無視した内容の供述調書が作成されてしまった場合は、たとえ事実に反していたとしても、内容を覆すことは容易ではありませんので、裁判の際に窮地に立たされる可能性がかなり高くなってしまいます。
そういった事態を避けるためにも、取調べ前に準備を行っておくことが重要です。

取調べの準備といっても何をどうすればいいのかわからない方がほとんどでしょう。
ですので、取調べ前に弁護士に相談をすることをおすすめします。
刑事事件や交通事件の経験豊富な弁護士であれば、取調べの際にどういった内容のことが聞かれるのかをある程度予測することができます。
その予測を基に、供述する内容をあらかじめ考えておくことで、取調べに落ち着いて挑むことができる可能性があります。

また、事案によっては、供述した方がいい内容や黙秘した方がいい内容があります。
供述すべき内容なのか、そうでない内容なのかは事案によって異なりますので、警察の捜査を受けている場合には、弁護士に一度、相談をすることが望ましいでしょう。

取調べでどういった対応を取るかによって、危険運転致傷罪過失運転致傷罪のどちらが成立するのかが変わってくる可能性があります。
ですので、赤信号無視による危険運転致傷罪の容疑をかけられている際は、できる限り早い段階で弁護士に相談をすることを強くおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件、交通事件に精通した法律事務所です。
経験豊富な弁護士と取調べ対策を行うことで、不利な状況に陥ることを防いだり、執行猶予付き判決などの良い結果を得られる可能性があります。
交通事件でも、取調べの対策を練っておくことはかなり重要ですので、取調べでご不安な方、危険運転致傷罪などの容疑をかけられている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検①

2024-01-24

【事例紹介】モペットの無免許運転で事故 無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検①

赤信号を無視して走る車

モペット無免許で運転し、赤信号無視で事故を起こしたとして、無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

原付き運転免許が必要なペダル付き原動機付き自転車(モペット)を無免許で運転し、赤信号を無視して自転車の女性にけがをさせたとして、警視庁は(中略)男(24)=東京都新宿区=を自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)などの疑いで書類送検し、発表した。
(中略)
男の送検容疑は、(中略)新宿区大久保2丁目の都道で無免許でモペットを運転し、赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入。自転車に乗った70代女性に衝突し、頭部打撲など8週間のけがをさせた疑いがある。
モペットは、見た目は自転車に似ているが、法律上は原付きバイクと同じ扱いだ。原付き免許、ナンバープレート、自賠責保険への加入、ヘルメットが必要だが、男はいずれもなかったという。(後略)
(2024年1月18日 「無免許でモペット乗り、赤信号無視 女性をけがさせた疑いで書類送検」より引用)

モペットと原動機付自転車

モペットは自転車と違い、モーターなどでペダルをこがずに自走することが可能なようです。
ですので、モペットは道路交通法上の原動機付自転車に分類されており、自転車のような見た目をしていますが原付バイクと同様の扱いになります。
ですので、自転車の運転には免許は不要ですが、原動機付自転車にあたるモペットの場合は運転をする際に免許が必要になります。

モペットと事故

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」と言います。)では、自動車による事故で人にけがを負わせたり、人を亡くならせた場合に成立する犯罪などを規定しています。

今回の事例では、容疑者がモペット無免許で運転し、赤信号を無視して女性にけがを負わせたとして無免許危険運転致傷罪の容疑で書類送検されたようです。
無免許危険運転致傷罪は、自動車運転処罰法で規定されており、危険運転致傷罪にあたる行為を無免許で行った場合に成立します。

危険運転致傷罪は、自動車運転処罰法第2条、第3条で規定されています。
アルコールや薬物の影響で正常な運転ができない場合や制御できないほどのスピードで運転する行為などが危険運転致傷罪の対象となっています。
今回の事例では赤信号無視が問題になっているようですが、赤信号無視についても上記の場合と同様に危険運転致傷罪の対象です。

自動車運転処罰法第2条7号
赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

自動車運転処罰法第2条では危険運転致傷罪を規定していますので、上記の自動車運転処罰法第2条7号の行為をして人にけがを負わせると、危険運転致傷罪が成立することになります。
自動車運転処罰法第2条7号を簡単に説明すると、赤信号を無視して事故が起こるような危険性のあるスピードで運転する行為を規定しています。

今回の事例は、この自動車運転処罰法第2条7号の行為にあたるのでしょうか。

報道によると、容疑者は赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入したようです。
時速25キロで歩行者や自転車にぶつかれば人にけがを負わせたり死亡させてしまう危険性があるといえます。
ですので、時速25キロは重大な交通の危険を生じさせる速度だと判断される可能性があります。
今回の事例で容疑者が赤信号を無視して時速25キロで交差点に進入し、自転車に乗っていた女性にけがを負わせたのであれば、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。

無免許危険運転致傷罪

自動車運転処罰法第6条では無免許危険運転による加重処罰を規定しています。

赤信号無視による危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の懲役(自動車運転処罰法第2条)なのですが、無免許運転だった場合には6月以上の有期懲役(自動車運転処罰法第6条1項)になります。
赤信号無視の場合の無免許危険運転致傷罪には刑の上限が規定されておらず、通常の危険運転致傷罪に比べてより刑罰が重く規定されていることになります。
ですので、無免許運転の場合に有罪になると、無免許運転ではない同種事案に比べて、より重い刑罰が科されることになります。

また、無免許過失運転致傷罪の法定刑は10年以下の懲役です。(自動車運転処罰法第6条4項)
懲役刑しか規定されていない時点で、無免許過失運転致傷罪もかなり刑罰の重い罪だといえるのですが、赤信号無視の場合の無免許危険運転致傷罪よりも科される刑罰は軽く規定されています。

書類送検

書類送検とは、事件が検察庁に送られたことを指します。
ですので、書類送検で事件が終わることはなく、これから検察官によって起訴、不起訴の判断がされます。
起訴された場合には裁判が行われることになりますので、書類送検後も気を抜かずに取調べなどを受ける必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
交通事件に精通した弁護士に相談をすることで、より良い結果を得られるかもしれません。
モペットなどの運転で捜査を受けている方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

次回のコラムでは、危険運転致傷罪と取調べについて解説します。

【事例紹介】停車中の車に追突してけがを負わせ、逃走した事例

2024-01-11

【事例紹介】停車中の車に追突してけがを負わせ、逃走した事例

路上駐車の車に追突した物損事故車を運転中に停車していた軽自動車に追突し、けがをさせて逃走したとして、過失運転致傷罪などの疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

過失運転致傷などの疑いで、長岡市に住む会社員の男(50)が9日、逮捕されました。
警察の調べによりますと、(中略)乗用車を運転中、前に停まっていた軽自動車に追突する事故を起こし軽自動車に乗っていた40代女性と50代男性に頸椎捻挫などのケガをさせたのに逃走した疑いです。
(後略)
(1月11日 TeNY NEWS NNN 「大みそかの未明 追突事故おこし2人にケガさせ、車を残して逃走 会社員の50歳男を逮捕《新潟》」より引用)

過失運転致傷罪

過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動運転処罰法」といいます。)第5条で規定されています。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

簡単に説明すると、自動車を運転するのに必要な注意をせずに人にけがを負わせた場合に、過失運転致傷罪が成立します。

今回の事例では、容疑者は車を運転中に前に停車していた軽自動車に追突して事故現場から逃走したとされています。
また、報道によると、追突された軽自動車に乗っていた女性と男性は頸椎捻挫などのけがを負っているようです。
車を運転するうえで前方に注意を払うのが当然ですし、通常は前方をしっかりと確認していれば追突する前に停車している車に気づくと思います。
ですので、実際に容疑者が停車中の車に追突する事故を起こしており、前をしっかりと見ていれば避けられるような事故だった場合には、運転上必要な注意を怠ったとして、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

ひき逃げ

ひき逃げは道路交通法第72条1項に規定されています。

道路交通法第72条1項(一部省略しています。)
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

事故を起こした場合には、負傷者の救護警察署への報告の2点を行う必要があります。
負傷者の救護や警察署への報告を行わない場合には、ひき逃げとして扱われることになります。

今回の事例では、容疑者は追突事故を起こして逃走したとされています。
実際に容疑者が事故を起こして、被害者の救護や事故の報告を行わずに逃走したのであれば、道路交通法違反が成立するおそれがあります。

自己の運転が原因で事故を起こしてけがをさせ、救護をしなかった場合に道路交通法違反で有罪になれば、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条2項)

また、事故を起こして警察に報告せずに道路交通法違反で有罪になった場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第119条1項17号)

逮捕されたら

刑事事件や交通事件では、逮捕されると72時間以内に勾留の判断がなされます。
勾留が決定した場合には、最長で20日間、勾留前の期間も合わせると23日間にわたって身体拘束を受けることになります。
この期間は自由が制限されますので、会社へ通勤することはできませんし、家族との面会も制限されます。
普段の日常とはかけ離れた生活を送ることになりますので、1か月に満たない期間であってもかなりのストレスがかかることが予想されます。

精神的に不安な状態で取調べを受けることで、意に反する内容の供述調書が作成されてしまう危険性もあります。
法律に詳しい弁護士が接見を行うことで、少しでも今後の不安が和らぐ可能性がありますし、取調べのアドバイス等も受けられますので、ご家族が逮捕された際には、弁護士に相談をすることをお勧めします。

また、弁護士は勾留前や勾留決定後に釈放を求める働きかけを行うことができます。
弁護士が釈放に向けた身柄開放活動を行うことで、早期釈放を実現できる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービスを行っています。
弁護士に相談をすることで、少しでもご家族の不安を和らげることができるかもしれません。
また、早期釈放を実現できる可能性がありますので、ご家族が逮捕された方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【事例紹介】赤信号無視による事故 危険運転致傷罪で起訴された事例

2023-12-06

【事例紹介】赤信号無視による事故 危険運転致傷罪で逮捕された事例赤信号を無視して走る車

赤信号を故意に無視して事故を起こしたとして、危険運転致傷罪道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で起訴された事例について、弁護士法人あいち刑事総合法律事務所が解説します。

事例

札幌地検は29日、危険運転致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪で石狩市の(中略)を起訴しました。
起訴状などによりますと、(中略)被告は11月8日、乗用車を運転し、パトカーからの追跡を免れるために、赤信号を故意に無視して時速約42キロから49キロで交差点に進入。
横断歩行中の韓国籍の観光客で27歳の女性と31歳の女性を乗用車のフロントガラスに衝突させ、それぞれ全治約3日と約1週間のけがをさせました。
さらに、乗用車を停止させて救護に必要な措置をせず、その場から立ち去り、警察官に報告しなかったとされています。
(後略)
(11月30日 STVニュース 「韓国人女性2人をひき逃げ 赤信号を故意に無視 23歳男を危険運転致傷などの罪で起訴」より引用)

赤信号無視と危険運転

アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での運転や進行を制御することが困難な高速度での走行、赤信号の殊更な無視かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転などで、人にけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立します。(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)第2条)

今回の事例では、容疑者は故意に赤信号を無視して時速約42キロから49キロで交差点に進入したと報道されています。
時速42キロから49キロで走行している車が歩行者などに追突すれば、何らかのけがを負わせる可能性がありますので、時速42キロから49キロでの交差点の侵入は、交通の危険を生じさせる速度での運転だと判断される可能性があります。
実際に容疑者が赤信号を故意に無視したのであれば、赤信号の無視かつ重大な交通の危険を生じさせる速度での運転をして人にけがをさせたとして、容疑者に危険運転致傷罪が成立するおそれがあります。

赤信号無視による危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役ですので、危険運転致傷罪で有罪になった場合には必ず懲役刑が科されることになります。(自動車運転処罰法第2条)

赤信号無視と過失運転

危険運転致傷罪を規定している自動車運転処罰法では、過失運転致傷罪についても規定しています。
過失運転致傷罪とは、簡単に説明すると、運転上払うべき注意を怠り、人にけがを負わせた場合に成立する犯罪です。

例えば、赤信号を青信号だと誤信して横断歩道を横断中の歩行者をはねてけがを負わせてしまった場合、運転手は信号を確認するといった運転上払うべき注意を怠ったことで、歩行者にけがを負わせたことになりますので、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。
赤信号だと認識しながら殊更に赤信号を無視して事故を起こしけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪が成立するおそれがあり、過失により赤信号を見落とし事故を起こしてけがを負わせた場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。

今回の事例では、赤信号を故意に無視して事故を起こしたとして、危険運転致傷罪の容疑で起訴されています。
もしも赤信号無視が故意ではなく、信号の見落としなどの過失であった場合には、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金であり、相手のけがの程度が軽い場合には情状により刑が免除される場合があります。(自動車運転処罰法第5条)
赤信号無視による危険運転致傷罪15年以下の懲役ですので、危険運転致傷罪過失運転致傷罪よりも科される量刑が重くなります。

取調べと危険運転致傷罪

赤信号での事故の場合、故意による赤信号無視なのか、過失による赤信号の見落としなのかで、危険運転致傷罪過失運転致傷罪のどちらの罪が成立するかが変わってきます。
先ほども述べたように、危険運転致傷罪過失運転致傷罪に比べてはるかに科される刑罰が重い犯罪です。
過失運転致傷罪では罰金刑の規定がありますが、危険運転致傷罪にはないため、危険運転致傷罪で有罪になった場合には、執行猶予付き判決を得ない限り刑務所で刑務作業に従事することになります。

逮捕されると、警察官や検察官から連日、取調べを受けることになります。
取調べでは、警察官や検察官が供述を誘導することがあります。
誘導された供述で作成された供述調書だったとしても、署名押印してしまった場合には内容の訂正をすることができません。
供述調書は裁判で証拠として使用されますので、意に反した供述調書を作成されてしまった場合には、裁判で不利な状況に陥ってしまう可能性が非常に高くなります。

例えば、過失により赤信号を見落とした事故の場合に、警察官などに「赤信号だとわかっていて突っ込んだよね」と言われ、赤信号の見落としと故意の赤信号無視どちらも一緒だろうと思い「はい」と答えたとします。
赤信号だとわかっていた場合には、過失によって赤信号を見落としたわけではありませんので、危険運転致傷罪が成立する可能性があります。
ですので、実際には過失により赤信号を見落とした事故であっても、故意に赤信号を無視したという内容の供述調書が作成されることで、危険運転致傷罪で実刑判決が下されてしまうおそれがあります。
こういった事態を避けるためにも、取調べ前に弁護士と取調べ対策を行い、成立する可能性のある犯罪やその犯罪の成立要件を理解したうえで供述すべき内容を整理することが非常に重要になります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
経験豊富な弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決の獲得など、少しでも良い結果を得られるかもしれません。
弁護士法人あいち刑事総合法律事務所は、愛知県をはじめ全国に支部がございます。
札幌支部もございますので、北海道で交通事件のことでお困りの方は、弁護士法人あいち刑事総合法律事務所にご相談ください。

無免許運転で人とぶつかってしまった事例

2023-11-22

無免許運転で人とぶつかってしまった事例

車が人に追突した人身事故

無免許人身事故を起こした場合、どのような罪が成立するのでしょうか。
今回のコラムでは、無免許人身事故を起こした場合に成立する罪や科される量刑について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

Aさんは友達の車を借り、ドライブをしていました。
さいたま市大宮区の路上を走行中、道路を横断している歩行者に気づくのが遅れてしまい、ぶつかってしまいました。
その後、埼玉県大宮警察署から連絡があり、この事故が原因で、歩行者は全治4か月のけがを負ったと知らされました。
後日取調べのために、埼玉県大宮警察署に来てほしいと言われたAさんですが、実はAさんは車の免許を取得していません(無免許)でした。
Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(事例はフィクションです。)

人身事故を起こした場合に成立する罪

人身事故を起こした際に成立する可能性が高い犯罪として、過失運転致傷罪が挙げられます。
過失運転致傷罪は、運転者が運転上必要な注意を怠り、その結果として人にけがを負わせた場合に成立する罪です。
また、運転上の不注意で人を死亡させてしまった場合には、過失運転致死罪が成立します。
過失運転致傷罪過失運転致死罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以降「自動車運転処罰法」といいます。)第5条で定められており、運転中の不注意や前方不注視などが原因で他人にけがを負わせた場合や死亡させた場合に適用されます。

過失運転致傷罪過失運転致死罪で有罪になると、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)
ただし、けがの程度が軽い場合には、情状によって刑が免除されることもあります。(自動車運転処罰法第5条)

無免許運転の法的影響

無免許運転過失運転致傷罪に与える影響は、法的に重大です。
無免許での運転は、自動車運転処罰法において別途罰せられる行為であり、これが過失運転致傷罪と組み合わさると、無免許過失運転致傷罪が成立し、罪の重さが増します。
具体的には、無免許過失運転致傷罪の場合、法定刑は10年以下の懲役となり、通常の過失運転致傷罪における罰金刑の適用はありません。(自動車運転処罰法第6条4項)
このように、無免許運転過失運転致傷罪の刑罰を重くする要因となり、法的な責任が大幅に増加することになります。
運転免許を持たない状態での運転は、万が一事故を起こした場合、その法的な結果は非常に深刻なものとなるのです。

Aさんに成立する犯罪は

今回の事例のAさんは、道路を横断している歩行者に気づくのが遅れたことで衝突してしまいました。
前方に注意していれば事故を防げた可能性は高いでしょうから、事例の事故はAさんの前方不注意による事故だと推測できます。
前方を注意してみることは運転上必要な注意ですから、必要な注意を怠ったとして、過失運転致傷罪の成立が考えられます。
今回の事例ではAさんは免許を持っていませんので、Aさんには無免許過失運転致傷罪が成立する可能性が高いといえます。

刑罰と執行猶予

事例のAさんに成立する可能性のある、無免許過失運転致傷罪の法定刑は10年以下の懲役となり、罰金刑の適用はありません。
しかし、有罪判決を受けた場合でも、すべてのケースで実際に刑務所に収容されるわけではありません。
裁判所は、被告人の過去の犯罪歴、事故の状況、被害者との示談状況などを考慮して、執行猶予を付与することがあります。
執行猶予付き判決を得ることができれば、被告人は刑務所に行くことなく、一定期間の猶予期間中に新たに犯罪を起こすことがなければ通常の生活を続けることができます。
このため、無免許過失運転致傷罪で起訴された場合、弁護士と協力し、示談締結など執行猶予付き判決の獲得に向けて入念に裁判の準備を行う必要があります。

交通事件と示談

刑事事件と同様に、無免許運転過失致傷罪などの交通事件に関しても、被害者との示談の締結は有利に働く可能性が高いです。
例えば、被害者と示談を締結していることで、不起訴処分の獲得や執行猶予付き判決の獲得、科される罪の減刑など、あなたにとってより良い結果につながる可能性があります。

ただ、今回の事例では被害者が全治4か月に及ぶけがを負っていますし、そのうえ、加害者が無免許だったこともあり、処罰感情が苛烈である可能性があります。
被害者が強い処罰感情を持っている場合、加害者本人からの連絡は火に油を注いでしまうことにもなりかねません。
そういった事態を避けるためにも、示談交渉は弁護士を代理人として行うことをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談を行っています。
人身事故を起こしてしまった場合、今後の生活が不安になるかと思います。
ですが、弁護士に相談をし、今後の事件の展開や見通しを聞くことで、少しでも不安を和らげられるかもしれません。
無料法律相談のご予約は、0120―631―881で受け付けております。
埼玉県で交通事故、刑事事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部にご相談ください。

自賠責保険に加入しないと犯罪になるの⁈無保険で事故を起こすとどうなるの?無保険運転で捜査を受けたらどうしたらいい?

2023-11-08

自賠責保険に加入しないと犯罪になるの⁈無保険で事故を起こすとどうなるの?無保険運転で捜査を受けたらどうしたらいい?

無保険状態で事故を起こし、途方に暮れる男性

自賠責保険などの保険に加入せずに車を運転する行為によって、罪が成立してしまう可能性があります。
今回のコラムでは、無保険で車を運転した場合に成立する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

無保険での車の運転

自賠責保険などの加入していない状態、つまり無保険状態での車の運転は、自動車損害賠償保障法で禁止されています。(自動車損害賠償保障法第5条)
この法律は、自賠責保険などの保険への加入を義務づけており、事故発生時の被害者保護を目的としています。

保険への加入は義務ですので、保険未加入の状態で車を運行した場合には、自動車損害賠償保障法違反が成立することになります。
また、無保険で車を運転した場合の法定刑は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。(自動車損害賠償保障法第86条の3)

保険に加入していないだけで懲役刑が科される可能性があるのは重すぎるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、交通事故を起こして被害者が重症を負った場合に保険に加入していないと、被害者に十分な補償がされない可能性が非常に高くなります。
そういった事態を避けるためにも、交通事故による被害者の権利を保護し、運転者に対する責任感を強化するためにこのような罰則が規定されているのでしょう。

法定刑とその適用

繰り返しになりますが、無保険状態で車を運転した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
懲役刑が科されるのか、罰金刑が科されるのかは、事件によって異なります。
例えば、事故を起こしてしまった場合、その責任はさらに重くなり得ます。
また、過去に同様の前科がある場合には、より厳しい刑が科される可能性が高まります。

無保険の車で事故を起こした事例

東京都練馬区で起きた事例を見てみましょう。

30代の女性Aさんは、無保険の状態で車を運転中、前方を歩いている歩行者を見落とし、歩行者に衝突してしまいました。
この事故により歩行者は全治5日の擦り傷を負いました。
Aさんは過失運転致傷罪無保険による自動車損害賠償保障法違反の疑いで東京都練馬警察署の警察官に逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

この事例では、無保険状態で車を運転していたわけですから、自動車損害賠償保障法違反が成立してしまう可能性が高いといえます。

また、逮捕罪名である過失運転致傷罪とは、簡単に言うと、運転上の不注意で事故を起こし、相手にけがを負わせてしまった場合に成立します。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金であり、けがの程度が軽い場合には情状により刑が免除される可能性があります。(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)

事例では、Aさんが事故を起こし、歩行者がけがを負っています。
Aさんが前方を歩いている歩行者を見落としたようなので、この事故は前方不注意が原因で起きた事故=過失による事故だといえます。
過失による事故でけがを負わせていますので、今回の事例では自動車損害賠償保障法違反だけでなく、過失運転致傷罪も成立してしまう可能性があります。
ただ、歩行者が負ったけがは全治5日の擦り傷ですので、けがの程度が軽いと判断され、過失運転致傷罪については刑が免除される可能性もあります。

無保険での事故と弁護士

保険の加入の有無にかかわらず、車で事故を起こした場合には、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いです。

過失運転致傷罪は被害者と示談を締結することで、不起訴処分を得られる可能性があります。
加害者が被害者と直接示談交渉を行う場合には、被害者保護の観点や証拠隠滅のおそれから、被害者の連絡先を教えてもらえない場合があります。
そうなってしまうと示談締結はおろか、示談交渉さえ行えません。
弁護士が警察官や検察官などを通じて被害者と連絡を取ることで、示談交渉に応じてもらえる場合がありますので、示談交渉を行う際は弁護士を介して行うことが望ましいでしょう。

また、今回の事例のように、被害者のけがの程度が軽微である場合、被害者と示談を締結できなかったとしても、弁護士が検察官と処分交渉を行い、不起訴処分を求めることで、不起訴処分を獲得できる可能性があります。

加えて、無保険運転による自動車損害賠償保障法違反についても、無保険状態での運転は故意ではなく過失であったことや保険に入っていると過信していてもおかしくない状況であったことなどを弁護士が訴えることで、不起訴処分の獲得や略式命令による罰金に抑えられる可能性もあります。

無保険での自動車事故は弁護士に相談を

車を運転する場合には、自賠責保険などの保険に入っていないと、犯罪行為になってしまいます。
無保険運転自動車損害賠償保障法違反が成立し、罰金刑や懲役刑が科されてしまった場合には前科が付くことになります。
そういった事態を避けるためには、自賠責保険に加入することが一番なのですが、気づかないうちに保険の加入期間がきれていたなど、知らないで無保険運転をしてしまうケースもあると思います。
そういった場合でも、弁護士に相談をすることで、不起訴処分など良い結果を得られる場合がありますので、弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
東京にお住まいの方で、無保険運転による自動車損害賠償保障法違反過失運転致傷罪などでお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部(新宿)・八王子支部にご相談ください。

ひき逃げと弁護活動

2023-11-01

ひき逃げと弁護活動

ニュースでひき逃げの報道を目にする人は多いのではないでしょうか。
ですが、ひき逃げをした場合にどのような量刑が科されるのか知らない方もいらっしゃると思います。
今回のコラムでは、具体的な事例を交えて、ひき逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

Aさんは、北海道札幌市中央区の道路で車を運転していました。
道路を左折しようとした際に、道路を横断していたVさんにに気づかず巻き込んでしまいました。
怖くなったAさんはその場を離れました。
Vさんは事故が原因で全治3か月のけがを負っており、後日、Aさんは札幌方面中央警察署の警察官に逮捕されました。
(事例はフィクションです。)

ひき逃げとは

ひき逃げという言葉は、交通事故を起こした後、その場から逃げる行為を指します。
ひき逃げはひき逃げ罪というものがあるわけではなく、道路交通法で規定されています。

道路交通法第72条第1項前段では、交通事故が発生した場合、関係する車両の運転手は直ちに停車し、負傷者に対する救護や危険の防止など、必要な措置を講じなければならないとされています。
この義務を怠った場合、救護義務違反となる可能性があります。

また、道路交通法第72条第1項後段では、交通事故を起こした場合に、警察署へ事故を報告しなければならないと定めています。
この警察への事故の報告も救護義務と同様に義務ですので、事故の報告を怠った場合は、報告義務違反になるおそれがあります。

救護義務違反報告義務違反にあたる場合に、ひき逃げとして扱われます。

道路交通法におけるひき逃げの罰則

ひき逃げ事件が発生した場合、その運転手は道路交通法に基づいて厳しく罰せられる可能性があります。
具体的には、加害者の運転が原因で被害者がけがを負い、救護をしなかった場合には、道路交通法第117条第2項により、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。

この罰則は、交通事故によって人々が受ける影響の深刻さと、運転手が負うべき社会的責任を反映しています。
特に、ひき逃げ事件では事故後すぐに被害者が適切な医療措置を受けられない可能性が高く、その結果、命に関わる事態にもつながりかねません。

また、罰則が厳しい理由の一つとして、ひき逃げ行為が他の交通違反とは異なり、故意によるものであることが多い点も挙げられます。
運転手が故意に逃走することで、事故の解決が困難になる場合が多く、そのために厳罰化されているのです。

また、報告義務違反に該当し道路交通法違反で有罪になる場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第119条第1項第19号)

今回の事例のAさんは事故を起こしたにもかかわらず、事故現場を去っていますので、ひき逃げにあたり、道路交通法違反が成立するおそれが高いといえます。

過失運転致傷罪とは

ひき逃げ事件においては、救護義務違反報告義務違反による道路交通法違反だけでなく、過失運転致傷罪も問われる可能性があります。
この罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます。)で規定されています。

簡単に説明すると、運転上必要な注意を怠って事故を起こし、人を傷つけた場合に過失運転致傷罪が成立します。
過失運転致傷罪で有罪になると、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科されます。(自動車運転処罰法第5条)
ただし、その傷害が軽い場合には、情状によっては刑罰が免除される可能性もあります。

過失運転致傷罪は、故意ではなく過失によって人を傷つけた場合に適用される罪です。
しかし、その過失が重大であればあるほど、罰則も厳しくなる傾向にあります。

この罪に問われると、運転免許の剥奪や社会的信用の失墜、さらには職を失う可能性も考えられます。
そのため、過失運転致傷罪は、単なる交通違反以上の深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。

今回の事例のAさんに過失運転致傷罪は成立するのでしょうか。

今回の事例では事故に巻き込まれたVさんが全治3か月のけがを負っています。
この事故はAさんが周囲の確認をしっかりと行わずに左折したことで起きた事故だと考えられます。
今回の事故の原因はAさんによる過失だと推測できますので、Aさんの運転上の過失によりVさんにけがを負わせた行為は、過失運転致傷罪が成立する可能性が極めて高いといえます。

ひき逃げ事件での弁護活動のポイント

ひき逃げ事件が発生した場合、被疑者やその家族が最初に考えるべきは、適切な弁護活動を行うことです。

ひき逃げ事件で行う弁護活動として、大きく以下の4つが挙げられます。

①釈放を求める活動

逮捕された場合は逮捕後72時間以内勾留の判断が行われます。
勾留が決定してしまった場合には、最長で20日間勾留されますので、早期釈放を目指す場合には勾留を阻止する弁護活動を行う必要があります。
弁護士は勾留の判断前であれば、意見書を検察官や裁判官に提出することができます。
意見書を提出することで、早期釈放を認めてもらえる可能性があります。

勾留が決定し、身体拘束が続けば、学校や職場に事件のことを知られるリスクが高く、最悪の場合には退学処分解雇処分に付されてしまう可能性もあります。
弁護士に相談をすることで勾留を阻止できる可能性があるので、早期釈放を目指す場合には弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

②不起訴処分を目指す活動

ひき逃げによる交通事件では、被害者と示談を締結することで不起訴処分を獲得できる可能性があります。
加害者本人が示談交渉をしても応じてもらえない場合が多々あります。
弁護士を介して示談交渉を行うことで示談に応じてもらえる場合があります。

③執行猶予の獲得を目指す活動

示談を締結することで、執行猶予付き判決を得られる可能性があります。
また、示談を得られない場合であっても、加害者が反省し、二度と事故を起こさないような対策を立てていることなどを弁護士が裁判官に主張することで、不起訴処分を得られる場合があります。

④ひき逃げについて争う

運転する車の種類や事故の程度によって、人を轢いたことに気づけない場合があります。
そういった場合には、弁護士がひき逃げの成否を争うことで、ひき逃げによる道路交通法違反について無罪を得られる可能性があります。

ひき逃げに強い弁護士を

ひき逃げ事件は、その行為自体が非倫理的であるだけでなく、法的にも厳しく罰せられる行為です。
事件後すぐに弁護士に相談をすることで、不起訴処分執行猶予付き判決の獲得など、良い結果を得られる可能性があります。
ひき逃げで捜査を受けている方、ご家族が逮捕された方は、お早めに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120ー631ー881で受け付けております。

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪③

2023-10-18

【事例紹介】無免許運転でひき逃げ事故 大阪③

前回のコラムに引き続き、大阪府寝屋川市で起きた無免許運転によるひき逃げ事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

無免許運転でひき逃げ事故を起こしたとして、大阪府警寝屋川署は3日、自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)や道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、大阪府守口市(中略)容疑者(64)を逮捕したと発表した。逮捕は2日付。「無免許がばれて処罰されるのが怖くなった」などと容疑を認めているという。
逮捕容疑は(中略)、大阪府寝屋川市仁和寺町の府道交差点で車を無免許運転して右折しようとしたところ、横断歩道を歩いていた(中略)男性(49)と衝突したが、逃走したとしている。男性は右足骨折などで全治2カ月の重傷。
(10月3日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「「無免許ばれるのが怖くて…」ひき逃げ 容疑で64歳男逮捕 大阪・寝屋川署」より引用)

ひき逃げ

救護義務報告義務といった言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
救護義務は、事故を起こした場合に負傷者を救護する義務。
報告義務は、事故を起こした場合に警察に事故を報告する義務を指します。

道路交通法第72条1項では、交通事故があったときは負傷者を救護し、警察官に事故を報告しなければならないとしています。
ですので、救護義務報告義務を怠った場合、つまり、事故を起こして相手にけがを負わせたのに救護をしなかった場合や、警察に事故の報告をしなかった場合には、道路交通法違反が成立することになります。

ひき逃げは事故を起こしたのに救護を行わなかったり、事故の報告をしないことをいいますので、ひき逃げをした場合は、道路交通法違反が成立することになります。

自分の運転により人にけがを負わせ、なおかつ、救護を行わなかったことで道路交通法違反で有罪になった場合には、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条2項)
また、事故を起こしたのに報告を行わず、道路交通法違反で有罪になった場合は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第119条1項17号)

今回の事例では、車を運転している容疑者が歩行者に追突し、逃走したと報道されています。
実際に容疑者が歩行者の救護や事故の報告をしていないのであれば、ひき逃げにあたり、道路交通法違反が成立することになります。

逮捕とひき逃げ

逮捕されると刑罰が確定するまでは留置場などから出られないと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、釈放が認められれば、刑罰が確定していなくても普段通りの生活に戻れる場合があります。

刑事事件では、逮捕されるとそのまま身体拘束が続くのではなく、逮捕後72時間の間に、勾留をするかどうかの判断が行われます。
勾留は1回につき10日間認められており、1回までであれば延長が認められていますので、勾留が決定してしまうと長い場合には20日間勾留が続く可能性があります。

勾留の判断基準については、刑事訴訟法第60条1項で規定されています。

刑事訴訟法第60条1項
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まった住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

上記の3つのうちの1つでも当てはまるのであれば、勾留が決定するおそれがあります。

ひき逃げ事件では、一度容疑者が事故現場から逃走していますので、3つ目の「逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」に該当してしまう可能性が高いです。

ですが、ひき逃げをしたからといって、必ずしも勾留が決定してしまうわけではありません。

弁護士は勾留が決定される前であれば、検察官や裁判官に働きかけを行うことができます。
ですので、勾留が決定する前に、容疑者に身元引受人がいることや、容疑者が逃亡しないように監視監督ができる人がいることを検察官や裁判官に訴えることで、勾留されずに釈放される可能性があります。

この勾留前の検察官や裁判官への働きかけは、逮捕後72時間以内に行う必要があります。
提出する書類等の準備もありますので、早期釈放を目指す場合には、早い段階で弁護士に相談をすることが望ましいです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービスを行っています。
初回接見サービスのご予約は、0120―631―881で受け付けておりますので、ご家族が逮捕された方、ひき逃げでお困りの方は、即日対応可能弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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