信号無視を指示し死亡事故をひきおこした助手席の男を逮捕

2025-03-14

信号無視を指示し死亡事故をひきおこした助手席の男を逮捕

赤信号を無視して走る車

信号無視を指示し死亡事故をひきおこした助手席の男が逮捕された刑事事件に対する弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例

京都府山科警察署は昨年3月10日、京都市山科区内で車を運転中に赤信号を無視し、男性をはねて死亡させたとして、危険運転致死罪で会社員の男2人を逮捕いたしました。
同署によると事故は昨年3月9日18時すぎに発生し、運転をしていた男が、上司である助手席の男(46)から「時間がないから信号は無視して」などと指示され、赤信号を無視して交差点に進入し、自転車で横断中の女性(85)をはねて死亡させたということです。
助手席の男は運転手である実行犯と同等の責任がある「共謀共同正犯」として、危険運転致死罪逮捕されました。
(※実際にあった事件をもとに作成したフィクションです)

共謀共同正犯とは?

刑法第60条に「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」共同正犯について規定されております。
共同正犯とは2人以上の者が共謀し犯罪を実行・実現させた場合に該当します。
その中でも共謀共同正犯とは2人以上の者が犯行を共謀し、そのうちのある者がこれを現に実行に移したとき、実行しなかった共謀者も正犯として扱われることををいいます。
①共同の意思ないし正犯意思②共謀の事実③共謀に基づく実行行為、の3要件が成立してはじめて共謀共同正犯に該当し、共謀者も正犯者と同等の罪に問われることになります。

例えば、
複数の者が共謀した上で,そのうちの一人が単独で実行行為を行った強盗事件について,強盗を実行する前の段階で,共謀した者の間で強盗を共同して遂行する合意があったこと、実行者以外の者も自己の犯罪を行う意思で強盗に加担したとして,強盗についての共同遂行の合意及び正犯意思が認められるとし、共謀共同正犯の成立が認められるとされ、実行犯と同じ強盗罪が成立した事例(平成27年3月31日富山地裁判決)があります。

共謀共同正犯と教唆犯、幇助犯との違いは?

教唆犯は刑法第61条1項に「人を教唆して犯罪を実行させた者には,正犯の刑を科する。」と規定されております。
共謀共同正犯には共謀して実行に移す「意思」が必要ですが、教唆犯では実行者に「単独」で犯行を行う決意をさせる点に相違があります。
教唆犯も他人に犯行を決意し実行させ、犯行を実現させているため正犯と同等の罪に問われます。

また幇助犯は刑法第62条1項に「正犯を幇助した者は、従犯とする。」と規定されております。
従犯(幇助犯)が成立するためには、正犯(実行犯)に犯行が容易に行われるよう助ける行為と意思が必要で、さらに正犯の実行行為があったことを要します。
例えば、強盗を目的と知りつつ道具を貸したなど物理的に実行行為を促す行為はもとより、行為者を励まし犯意を強化するなど心理的に実行行為を促した場合も、幇助となります。

今回の事例では同じ車に乗っている助手席の男が運転手の男に信号無視をするように命令(共謀)することによって、運転手が犯行を現に実行し、犯罪が起こっております。
そのため、共謀共同正犯が成り立ち、運転手と同罪である危険運転致死罪が該当するでしょう。
ちなみに、赤信号無視により危険運転致死罪で有罪になった場合には、1年以上の有期懲役が科せられます。(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条7号)

逮捕・勾留されてしまったら

今回の事例では、部下に軽い気持ちで指示(共謀)し部下が犯行(赤信号無視)に至った結果、危険運転致死罪という大きな犯罪につながっております。

共謀共同正犯逮捕された場合、実行犯やその他の共謀者との間で口裏合わせをするなどの証拠隠滅をするのではないかとの恐れから勾留される可能性は十分にあるでしょう。
万が一勾留されることになれば、裁判所が勾留決定をした日から最大20日間、身柄拘束されることになります。
また釈放されずに起訴されれば、さらに身柄拘束が続き、通常の社会生活を送ることは難しくなります。
そのため、失業や退学を余儀なくされることもあるでしょう。

被害者の有無・犯罪の態様によっては、被害者との示談交渉により、早期に身柄解放につながる可能性もあります。
また前科がつかない不起訴になったり、量刑が軽くなる場合もあるでしょう。
そのためには法律に精通した弁護士を通して、示談交渉をしてもらったり、警察や検察に働きかける防御活動が重要になってきます。
法律や手続きに詳しくない方にとって、弁護士のサポートは心強い味方となるでしょう。

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