交通事故(死亡事故)
【交通事故(死亡事故)の法定刑】
1 交通死亡事故のうち過失運転致死罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です(自動車運転死傷行為処罰法第5条)。
2 交通死亡事故のうち危険運転致死罪の法定刑は、危険運転の態様に応じて、1年以上20年以下または15年以下の懲役刑です(自動車運転死傷行為処罰法第2条、第3条)。
3 交通死亡事故のうち業務上過失致死罪・重過失致死罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です(刑法第211条)。
【交通事故(死亡事故)の解説】
1 死亡事故について
交通事故のうち死亡事故の多くは、警察に逮捕されて身柄を拘束されるケースが多くなります。
但し、交通死亡事故の現場で逮捕された場合、その後の適切な弁護活動を行うことによって、早い段階で留置場から釈放される場合が少なくありません。
2 過失運転致死罪
自動車交通事故のうち死亡事故の多くは、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称、自動車運転死傷行為処罰法)違反として、過失運転致死罪に問われることになります。
2007年の刑法改正で自動車運転過失致死傷罪が新設されて、2013年の自動車運転死傷行為処罰法の新設によって従来の自動車運転過失致死傷罪から過失運転致死傷罪に罪名変更されました。
交通事故のうち死亡事故のケースでは、初犯でも執行猶予がつかない実刑判決の可能性が生じます。
3 悪質で危険性の高い運転行為を伴う死亡事故
交通死亡事故の中でも、アルコールや薬物を摂取しての運転や大幅な速度超過での信号無視などの暴走行為など、悪質で危険性の高い運転行為を伴う死亡事故については、より法定刑の重い危険運転致死罪に問われます。
危険運転致死罪で刑事処罰を受ける場合には、そのほとんどが執行猶予の付かない実刑判決となり、長期間刑務所に入らなければならない可能性が生じます。
4 自動車運転死傷行為処罰法第3条、6条
2013年の自動車運転死傷行為処罰法の新設によって、従来の危険運転致死傷罪の類型に新たな類型が加わり、危険運転致死傷罪の適用される範囲が拡大されるとともに、無免許運転で死亡事故を起こした場合には法定刑が加重されることになりました(自動車運転死傷行為処罰法第3条、6条)。
5 ひき逃げ
交通死亡事故を起こして事故現場から逃走する「ひき逃げ」はさらに罪が重くなります。
6 自転車による交通事故
自転車による死亡事故では、過失運転致死罪・危険運転致死罪の適用がないため、重過失致死罪が適用されることが多くなっています。
【交通事故(死亡事故)の刑事弁護活動】
1 身体拘束からの解放
交通死亡事故で逮捕・勾留されてしまった場合には、事案に応じ、釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行います。
2 不起訴・無罪判決(前科回避)
身に覚えのない交通死亡事故の容疑を掛けられてしまった場合、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関または裁判所に対して、不起訴処分又は無罪判決になるよう訴えていきます。
具体的には、アリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出したり、被害者や目撃者の証言が信用できないことを指摘したりして、過失運転致死罪又は危険運転致死罪等について不起訴処分又は無罪判決を目指します。
実際に、交通死亡事故を起こしてしまった場合でも、運転者に不注意(過失)がないこと、注意しても交通事故の発生を避けることができなかったことなどを主張・立証することで、過失運転致死罪又は危険運転致死罪を立証する十分な証拠がないことを訴えて不起訴処分又は無罪判決を目指します。
3 正式裁判回避
過失運転致死罪・危険運転致死罪等の成立に争いのない場合、被害者遺族への被害弁償と示談交渉を行うことで、正式裁判の回避を目指した弁護活動を行います。
死亡事故については、公判請求によって正式裁判が行われることが多いですが、運転態様が悪質でなく被害者遺族の処罰感情が和らいでいれば、略式裁判による罰金処分を目指すことも可能です。
4 刑務所回避・減刑
交通死亡事故で裁判になった場合でも、被害者遺族との間で被害弁償又は示談をしたり、運転の態様や不注意(過失)の程度などから被告人に有利な事情を主張・立証することで、減刑及び執行猶予付き判決を目指します。