(酒酔い運転で任意同行)取調べ中に手首を捕まれたら強制処分?任意捜査?
(酒酔い運転で任意同行)取調べ中に手首を捕まれたら強制処分?任意捜査?
警察官Vは、東京都東久留米市にて、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚なAさんに、警視庁田無警察署への任意同行を求めた。
Aさんは、任意同行には応じたものの、呼気検査は拒否した。
警察官Vは、Aに呼気検査に応じるよう説得を続けたがAさんは受け入れず、Aさんが急に取調べ室から出ようとしたため、警察官VはAさんの左斜め前に立ち、Aさんの左手首を両手で掴んだ。
(最大決昭51.3.16を基にしたフィクションです)
~任意捜査の限界~
刑事訴訟法第197条但書には、強制処分は法律に定めがない場合はすることが出来ないと規定されています。
そのため、被疑者に対する重要な権利侵害が生じる逮捕(刑事訴訟法第199条)や捜索・差押え(同法第218条)は、法律で定められており、裁判所が発行する令状がなければ行うことが出来ません。
しかし、強制処分として法律に規定されていなかったとしても、今回のケースで警察官Vがしたような、被疑者の前に立ち手を掴んで退室を阻む行為は、一見Aさんの自由を制限し身体を拘束しているともとれるため、任意捜査の範囲を逸脱した強制処分に当たるようにも思えます。
この点、今回のケースの基となった判例では、強制処分とは、個人の意思の制圧し、身体、住居、財産を制約する行為であるとし、強制処分に当たらない有形力の行使(今回のケースでは、被疑者の前に立つ、手首を掴む)であったとしても、被疑者の権利を侵害するおそれがある以上、その必要性や緊急性・相当性が認められる場合のみ任意捜査として許容されるとしました。
そして、今回のケースでは、Aさんが任意同行には応じているため意思を制圧されているとまではいえないこと、警察官Vの行為も呼気検査に応じるよう説得する流れの中でおこなわれたものでその程度もさほど強いものとはいえないこと(前記2つが相当性)、そして酒酔い運転の嫌疑が強いこと(必要性と緊急性)から、警察官Vの行為は適法な任意捜査の範囲内であると判断されました。
上記のケースのように、捜査機関の捜査が任意捜査の範囲を超えた、行き過ぎた捜査だった場合、被疑者・被告人が必要以上に重い罪に問われたり、冤罪を招くことに繋がりかねません。
こういったことを防ぐ為にも、刑事事件を起こしてしまったら出来るだけ早い段階で弁護士に依頼し、捜査に対する対処法についてアドバイスを受けることをお勧めします。
捜査機関からの捜査についてお悩みの方は、まずは、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談下さい。
(警視庁田無警察署の初回接見費用 36,700円)