交通トラブルで正当防衛主張

2019-02-05

交通トラブルで正当防衛主張

A車は、神戸市兵庫区の道路で信号が青に変わったにもかかわらずそれに気づかず停車し続けていた。
そのため後続のV車がA車を追い越して発進したところ、青信号に気付いたA車が発進しようとし、両車両は接触しかけ停車した。
これに激高し自車から降りたVは、A車の開いていた運転席の窓から頭を入れ「ぶっ殺すぞ」などと怒鳴り込んだ。
これにおびえたAは自車を徐行発進させたものの、Vが窓枠を掴んだまま怒鳴り続けていたことから徐々にスピードを上げてVを振り払った。
その結果、Vは転倒し、全治1か月の怪我を負った。
Vが警察に相談したことにより、兵庫県兵庫警察署の警察官は、Aを傷害罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は、交通事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~交通事件と傷害(暴行)罪~

人の負傷などを伴う交通事故事件では、刑事事件となる場合、「道路交通法」や近年新設された「自動車運転処罰法」による処罰が通常と追われるかもしれません。
もっとも、交通事件が傷害罪や暴行罪といった刑法犯によって処罰されることも少なくありません。
本件も、交通トラブルから加害者と被害者とのさらなるトラブルに発展し、傷害罪や暴行罪といった刑法犯の成否が問題になってしまったケースです。

まず、本件Aが自車のスピードを上げVを振り払った行為は「人の身体を傷害」するものといえ、刑法204条の傷害罪に該当します。
傷害罪は暴行罪の結果的加重犯 であり、本罪の成立には傷害に対する故意は必要なく、暴行の故意があれば、傷害罪は成立してしまいます。
では、暴行の故意(刑法38条1項)が認められるのでしょうか。
本件では、Vが窓枠を掴んだままA車を発進させれば、Vの身体に危険が生じることは十分に認識できたといえます。
したがって、暴行の故意が認められ、結果としてVに傷害を負わせている以上、傷害罪が成立するようにも思われます。

~正当防衛を主張する弁護活動~

しかし、Aとしては、Aが上記のような行為に及んだのは、Vによる危害を避けるためであって、これを回避するためにやむを得なかったと主張することが考えられます。
この点、刑法36条1項は、「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」と規定し、正当防衛による刑の不成立を定めています。
まず「急迫不正の侵害」とは、法益侵害が現存し、又は間近に差し迫っていることをいい、VはAを「ぶっ殺すぞ」などと脅しており、「急迫不正の侵害」は認められる可能性があります。
また「自己……の権利を防衛するため」とは、防衛の意思を意味するところ、これは急迫不正の侵害を認識しつつ、これを避けようとする単純な心理状態で足り、Aにこのような意思があるのは明らかです。
では、Aの行為は「やむを得ずにした行為」といえるのでしょうか。

「やむを得ずにした行為」といえるためには、防衛行為として相当であることが必要であるとされています。
まず、Vの行為は「ぶっ殺すぞ」などと繰り返し脅すものですが、何ら凶器等も持っていません。
これに対し、Aの行為は自動車の窓枠を掴んだVを、自動車を発進させ徐々にスピードを上げ振り落とすもので、Vの身体や生命への危険性を有する行為といえます。
もっとも、Aは徐々にスピードを上げたにすぎないことや、運転席の窓を閉め警察官を呼ぶなどの行為によってはVによる侵害を避けることができない可能性があったことなどを考えると、Aが車を発進させる以外にVによる侵害を避けることは困難であり、防衛行為として相当性を越えていないということもできるでしょう。
つまり、今回のケースの場合、正当防衛と認められる可能性はあるものの、より事件の詳細を専門的知識によって検討しなければならないということになるでしょう。

このように、正当防衛の成否に関しては相当性の判断が争いになることも多く、その際には弁護士による専門的な判断が不可欠です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事故事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
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