無免許運転と緊急避難

2022-01-13

無免許運転と緊急避難について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは、交通違反を繰り返し免許取り消しとなっていました。
ある晩、Aさんの子供(1歳)が高熱を出し意識不明となったため、Aさんは自家用車に子供を乗せて自分で運転して愛知県豊明市にある病院まで搬送しようとしました。
病院にまもなく到着しようとした時、警察官に車を停められ、Aさんは後日愛知県愛知警察署で無免許運転、道路交通法違反の疑いで話を聞かれることになりました。
Aさんは「無免許運転をしたのは悪かったが、緊急で子供を病院に連れて行かなければならなかったのだからやむを得ず無免許運転をしてしまったんだ。」と考えているため、刑事事件や交通事件に強い弁護士に相談しようとしています。
(フィクションです) 

~無免許運転~

何人も、公安委員会の運転免許を受けないで(運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車または原動機付き自転車を運転してはいけない。(道路交通法第64条第1項)
罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。(道路交通法第117条2の2第1号) 

無免許運転とは、運転免許を受けないで自動車又は原動機付自転車を運転することです。
今まで一度も運転免許を取得したことがない、運転免許の停止中や失効後、免許証の有効期間が切れた後に運転した場合なども無免許運転に該当します。

Aさんは、子供が意識不明であるという現在の危機を避けるため、やむを得ず無免許運転を行ったとAさんは主張しています。
この場合は、緊急避難という行為に該当するのか、が焦点となるかと思いますので、緊急避難とは何かを見ていきたいと思います。

~緊急避難~

自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした外の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた場合は、情状によりその刑を減軽し、または免除することができる。(刑法第37条1項)
  
1 緊急避難の成立要件
「現在」とは、危難が現在し、または間近に迫った状態をいいます。
「危機」とは、法益に対する侵害または侵害の危険性のある状態をいいますが、この場合は「不正な侵害」に限られないことから、動物の攻撃や自然現象であっても緊急避難の対象となります。
また、人の行為による「急迫不正の侵害」も、「現在の危機」に含まれ、「急迫不正の侵害」を受けた者が、侵害者に対して反撃を行えば正当防衛になり、第三者に対して避難行為を行えば緊急避難となります。

2 避難行為の相当性
緊急避難は、自己が直面した危機を避けるために、第三者の法益を犠牲にして避難行為を行うことから、厳格な相当性が要求され、「補充の原則」と「法益権衡の原則」が必要です。
「補充の原則」とは、その避難行為が唯一無二の手段であって他に方法がなく、真にやむを得ない行為であったことで、「法益権衡の原則」とは、小さな法益を守るために、大きな法益を侵害することは許されないことです。

~事例について~

Aさんはやむを得ず無免許運転をしたと考えていますが、119番通報をする、タクシーを頼むなど、他の方法があったと考えられるため、上記の「補充の原則」を満たすことができません。
よって緊急避難は成立せず、無免許運転、道路交通法違反が成立することとなると思われます。 

~無免許運転に対する弁護活動~

無免許運転に対しては、起訴猶予による不起訴処分や、正式な裁判ではない略式裁判による罰金処分になるように弁護活動を行っていきます。
具体的には、違反行為の態様、経緯や動機、回数や頻度、交通違反歴などを慎重に検討して、酌むべき事情があれば警察や検察などに対して主張していきます。
(事例のAさんの場合は経緯や動機、酌むべき事情について特に検討していくことになるかと思います。)
更に、無免許運転の再犯防止のために具体的な取り組みや環境作りが出来ていることを客観的な証拠に基づいて主張することも重要です。
また、正式裁判になった場合でも、裁判所に対し上記のような主張や立証をすることで、減刑又は執行猶予付き判決を目指していきます。
 
上記のような弁護活動をしていくには、早期に当事者の方に事情等を伺うことが大切です。
そのためにも早期に刑事事件や交通事件に強い弁護士に、相談や弁護の依頼をすることをおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無免許運転をした方、道路交通法違反に問われている方に対して様々な弁護活動を行っております。

 

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