【事例紹介】物だと思ったと容疑を否認しているひき逃げ事件①

2024-03-29

【事例紹介】物だと思ったと容疑を否認しているひき逃げ事件①

車が人に追突した人身事故

高齢女性が車でひかれ死亡したひき逃げ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

今月24日、東京の池袋駅近くの路上で、高齢の女性が頭から血を流して倒れているのが見つかりその後死亡した事件で、警視庁はひき逃げなどの疑いで62歳の男を逮捕しました。
警視庁によりますと、(中略)容疑者は今月24日、豊島区東池袋の路上で(中略)さんを車でひき、そのまま逃走した疑いがもたれています。(中略)さんは搬送先の病院で死亡が確認されました。
(中略)
調べに対し、(中略)容疑者は「何かにぶつかった衝撃はあったが物だと思った。車を見たが壊れてなかったし、何にぶつかったか見えなかったので家に帰った」と容疑を否認しているということです。
(3月27日 日テレNEWS 「高齢女性ひき逃げか 男を逮捕 東京・池袋駅近くの路上」より引用)

ひき逃げ

道路交通法第72条では交通事故があった場合に取らなければならない措置について規定しています。
事故があった際は、負傷者の救護を行い、最寄りの警察署の警察官に報告しなければなりません。(道路交通法第72条1項)
ひき逃げとは事故の対応を行わずに、事故現場から去ることをいいます。
負傷者の救護や警察署への報告は義務ですので、行わなかった場合には、道路交通法違反が成立します。
ですので、ひき逃げをした場合には道路交通法違反が成立することになります。

今回の事例では、容疑者が被害者を車でひき、そのまま逃走したと報道されています。
また、「何かにぶつかった衝撃はあったが物だと思った。車を見たが壊れてなかったし、何にぶつかったか見えなかったので家に帰った」と容疑を否認しているようです。
繰り返しになりますが、ひき逃げは事故が起きているのに、負傷者を救護しなかったり、事故の報告をしないことをいいます。
今回の事例では、実際に容疑者が救護や報告をしていないのであればひき逃げにあたりそうですが、容疑者は道路交通法違反の罪に問われるのでしょうか。

実は、事故に気づかなかった場合にはひき逃げにあたらず、道路交通法違反が成立しない可能性があります。

では、今回の事例について考えていきましょう。
「何かにぶつかった衝撃はあったが物だと思った。車を見たが壊れてなかったし、何にぶつかったか見えなかったので家に帰った」と容疑者は供述していると報道されています。
何かにぶつかった衝撃はあったようなので、事故について何も気づかなかったというわけではないようです。
また、通常、運転している車が何かにぶつかってしまった場合、運転をやめて何にぶつかってしまったのかを確認すると思います。
車から降りて確認をしていれば人にぶつかってしまったことがわかったでしょうから、おそらく容疑者は事故後すぐに車から降りて確認することを怠ったのだと思われます。
検察官や裁判官は何にぶつかったのかをきちんと確認しなかったことを疑問に思うでしょうし、人にぶつかったとわかったから確認せずに逃走したのではないかと疑う可能性が高く、何かにぶつかったことはわかっている状況で人だと思わなかったという主張を認めてもらうのはかなり難しいかもしれません。
ですので、報道内容が事実であった場合には、容疑者に道路交通法違反の罪が科されてしまう可能性があります。

自らの運転が原因で人を死傷させ救護を行わなかった場合に、道路交通法違反で有罪になると、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。(道路交通法第117条2項)
事故の報告をせずに道路交通法違反で有罪になった場合には、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられます。(道路交通法第119条1項17号)

ひき逃げは懲役刑を科される可能性があり、決して科される罪の軽い犯罪だとはいえません。
また、事故を起こして人を死傷させてしまった場合、過失運転致死傷罪などが成立するおそれがあります。
今回の事例でも、報道によれば事故により人が亡くなっているようなので、過失運転致死罪が成立する可能性が考えられます。
過失運転致死傷罪も懲役刑が規定されており、執行猶予付き判決獲得に向けた弁護活動が重要になってくる可能性が高いです。

弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決を獲得できる場合がありますので、ひき逃げなどの道路交通法違反事件過失運転致死傷罪でお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

次回のコラムでは、過失運転致死傷罪について解説します。

Copyright(c) 2016 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.