事故を起こした夫をかばい同乗していた妻が運転をしていたと嘘をつき逮捕
事故を起こした夫をかばい同乗していた妻が運転をしていたと嘘をつき逮捕
犯人隠避罪の容疑で逮捕された刑事事件に対する弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事例
京都府宇治警察署は今年1月30日、免許停止中に自動車を運転し事故を起こした夫と、この車に同乗し運転をしていたと虚偽報告をしたその妻を逮捕いたしました。
逮捕されたのは京都府宇治市に住む自営業の夫(36)と、その妻(32)です。
昨年(2024年)10月28日、京都府宇治市の国道で男が乗用車を運転し、車線変更をした際に乗用車に衝突しました。
この事故で乗用車の女性が全治1か月のケガをしました。
駆け付けた警察官に対して妻は「私が運転をしていました。夫は助手席でした」と虚偽申告をし、ドライブレコーダーもSDカードを抜いて提出をしませんでした。
その後、被害者が保険会社に提出したドライブレコーダーの映像が警察にも共有され、虚偽申告が発覚しました。
1月30日、無免許過失運転致傷罪の疑いで夫が、犯人隠避罪の疑いで妻が逮捕されました。
警察の調べに対し妻は「自営業の夫が事故を起こしたことが知れれば、売り上げに影響があるかもと思い、嘘をいいました」と話しているということです。
(※実際にあった事件をもとに作成したフィクションです)
犯人蔵匿罪・犯人隠避罪とは?
犯人蔵匿罪・犯人隠避罪ともに、刑法第103条に規定されています。
「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の懲役に処する。」(刑法第103条)
犯人蔵匿罪では罰金刑以上の罪を犯した者や拘禁中に逃走した者(以下「犯人」)を、捜査機関からの逮捕・発見を免れるために、場所を提供して犯人をかくまう行為が該当します。
一方犯人隠避罪では、「蔵匿」以外の方法で犯人をかくまう行為が該当します。
例えば、犯人に逃亡のための金銭を供与する、犯人が自宅にいるのに捜査機関に別の場所にいると告げる、犯人の身代わりとして捜査機関に出頭するなどがあります。
罰金刑以上の罪を犯した者が対象になるので、拘留や科料、没収など罰金刑より軽い刑の場合が対象外になります。
しかし今回の事例のように、刑が確定していない者をかばった場合も適用されるのでしょうか。
犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の客体は真犯人である必要はないため、被疑者・被告人という立場の者(結果として裁判で無罪になったとしても)の場合にも犯罪は成立します。
進行中の刑事手続が円滑に行われることが、保護法益になるためです。
今回の事例は夫が免許停止中に人身事故をおこしています。
そのため無免許運転過失致傷罪に該当することになるので、無免許運転よりもさらに科される刑が重く、法定刑は10年以下の懲役(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第6条4項)になります。
そのため罰金刑より重い罪が科される犯罪を犯したことになるので、その夫をかばおうとした妻には犯人隠避罪が該当することになるでしょう。
犯人隠避罪で逮捕されたら
今回の事例では妻が夫をかばう行為をしています。
このように親族をかばった場合、刑法第105条には、「犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。」が適用になります。
つまり、親族を蔵匿した、隠避した場合は刑を科さないことができると定められています。
親族間の人情を考慮して犯罪としては成立しますが、裁量的に刑の免除事由とされた規定です。
しかし条文には刑を免除することが「できる」と定められているので、必ずしも免除になるとは限りません。
免除を目指すには捜査機関に対し、相当の事由(理由)の立証、親族としての心情などを訴えることが重要になります。
刑事事件の専門知識と経験豊富な弁護士を通して、捜査機関に働きかけることで免除への道がひらけてくるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に精通した弁護士がご相談にのります。
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